現在、21_21 DESIGN SIGHTのギャラリー1&2では、
“もじ イメージ Graphic展”という展覧会が開催されていますが。
ギャラリー3では、“ダニエル・ブラッシュ展―モネをめぐる金工芸”が開催されています。
本展の主役は、ダニエル・ブラッシュ(1947~2022)。
“素材の詩人”とも称されるアメリカ人のアーティストで、
金属加工職人や宝飾職人でもあり、画家や彫刻家でもあり、
さらには、哲学者、エンジニアとしての顔も持つ多彩な人物です。
そんなダニエル・ブラッシュを日本で初めて本格的に紹介する展覧会。
入場料はなんと無料です!
さて、展覧会でまず紹介されていたのは、
ダニエル・ブラッシュによる巨大な絵画の数々。
“ブラッシュ”という名前だけに(?)、
巨大な刷毛(ブラッシュ)で一気呵成に描かれたように見えますが。
実は、1本1本描かれた細い線の集まり。
余白の美しさといい、線の繊細さといい、
どこか日本的で、幽玄な印象を受ける作品です。
・・・・・と思ったら、それぞれのタイトルには、
山姥や小町、増女といった能の演目が付けられていました。
どうりで日本的で、幽玄な印象を受けたわけです。
ちなみに、ブラッシュは13歳の時に、
母親から「山姥」の能面をもらったことがあるのだそう。
母から能面をもらうって、
どんなシチュエーションなのでしょう??
絵画に続いて紹介されていたのは、
ブラッシュが様々な素材で作ったジュエリーたち。
ゴールドを使ったものもあれば、スチールを使ったものも。
さらには、アルミニウムとダイヤモンドを組み合わせたものもあります。
なお、アルミニウムの表面に施された無数の線は、
絵画作品と同様に、1本1本手作業で彫り込まれたもの。
ジュエリーにはあまり使われないアルミニウムも、
ブラッシュの手にかかると、これほど魅力的になるのですね!
そして、展覧会の最後に紹介されていたのが、本展のハイライト。
世界初公開となるブラッシュの連作《モネについて考える》です。
長い展示ケースにズラっと並んでいるのは、スチール製の小さな板。
一見すると、ただの金属板なのですが、
よく見れば、その表面には無数の線が彫り込まれています。
それゆえ、見る角度によって、
淡いピンクや鮮やかな紫など、多彩に変化。
光の屈折によって、複雑な表情を見せます。
頭では、これが金属の表面だと理解しているつもりなのですが、
見れば見るほど、光を反射しキラキラと輝く水面のように思えてきます。
↑こちらの作品の表面なんて、まるで夕日を浴びる海面のよう。
思わず、昔の『金曜ロードショー』のオープニングを連想してしまいました。
ただの鋼の板が、これほどまでに美しい姿に生まれ変わるとは!
ダニエル・ブラッシュこそが、まさに“鋼の錬金術師”です。