『そろそろ美術の話を…』にご出演頂いた、
東京国立近代美術館(=近美)の成相学芸員も仰っていましたが、
近美の常設展、通称、MOMATコレクションは近頃特に気合が入っています。
「来たるべき貴方のために」というのは、
具体的には、一体どういうことなのかはよくわからないですが(笑)。
ただの常設展ではないであろうことは、ひしひしと伝わってきますね。
そんなMOMATコレクションのオープニングを飾るのが、
コレクションの中でも屈指の名品を紹介する「ハイライト」のコーナー。
これまでは名品の数々を普通に(?)展示しているだけでしたが、
今期ではそれぞれ、ちょっとした演出をプラスした形で紹介されていました。
もちろんハイライト以外の展示室も充実しています。
「流通するわれら」や「芹沢銈介と、新しい日々」といった
多彩なテーマで、MOMATコレクションが紹介されています。
中でも個人的に一番興味深かったのは、
3室の「麗子、生誕110年」の特集展示です。
実は今年2014年は、《麗子微笑》でお馴染みの、
岸田劉生の娘、麗子が生まれて110年目の節目の年だそうで。
それを記念して、近美が所蔵する「麗子像」が一挙公開されています。
それらの中には、レアな麗子像も。
タイトルは《麗子鬼を打つの図》。
容赦なく、鬼に襲い掛かる麗子。
もはや鬼よりも鬼に見えます。
展示ではさらに、麗子本人の写真や、
麗子が描いた絵の数々も紹介されていました。
ちなみに。
麗子が8歳の時には、
資生堂主催の「第三回お子様作品展覧会」で見事、優等に選ばれたそう。
劉生の血をしっかりと受け継いでいたのですね。
さてさて、現在MOMATコレクションでは、
新収蔵されたばかりの作品もお披露目されています。
その一つが、海老原暎さんの《事故現場見取図集》です。
こちらは1971年の個展で発表された際に、
大きな話題となったという彼女の出世作にして代表作。
実際の新聞の中に掲載されていた、
事件現場や事故現場の見取り図を拡大して模写したものです。
事件や事故に関する見取り図なので、
ネガティブなものであるわけなのですが。
こうして改めて、見取り図だけを観てみると、
手描きであるため、妙なユーモラスさを感じます。
とりわけ印象的だったのが、こちらの見取り図。
人の描き方は、もう少しどうにかならなかったものでしょうか??
アブラムシのようにも見えます。
そして、もう一つお披露目されているのが、
フランスの彫刻家ジェルメーヌ・リシエの《蟻》です。
ジェルメーヌ・リシエは近年再注目を集めている、
20世紀後半における女性彫刻家の先駆的存在の一人。
人間と動植物を掛け合わせた「ハイブリッド」シリーズで知られています。
こちらの《蟻》は、そのシリーズのうちの1点です。
ちなみに。
この作品の購入金額は・・・・・
337,686,800円
とのこと。
ハイブリッドでもあり、ハイプライスでもあり。