2012年一発目は、
サントリー美術館で開催中の “殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次” に行ってきました。
こちらでは、那珂川町馬頭広重美術館が所蔵する、
歌川広重の代表作 《東海道五拾三次之内》 が一挙に公開されています。
《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》 や、
《東海道五拾三次之内 原 朝之冨士》
…といった永○園のお茶づけ海苔でお馴染み (?) の浮世絵が続々登場。
ちなみに、僕のお気に入りは、 《東海道五拾三次之内 箱根 湖水圖》
箱根の山越えは、旅人にとって、東海道でも1、2を争う難所。
確かに、この山はキツそうです…。
そんな難所を、1時間16分39秒で走破してしまった東海大の柏原選手は、
相当にスゴい選手なのだと、改めて実感いたしました。
また、全55点を、ただ展示してあるだけでなく。
それぞれに詳細な解説パネルが添えられているので、
江戸の知識が無くても、きちんと楽しめるように配慮されていました。
例えば、 《東海道五拾三次之内 吉原 左冨士》
ここ吉原付近は、東海道が大きく北に迂回しているため、
江戸から京都まで、絶えず右手側に見えていた富士山が、唯一、左手に見える場所なのだそうな。
そのことを知らなかったら、
広重が何故わざわざこの場所を描いたのか、わからないままでした。
さてさて。
今回の浮世絵展の見どころは、 《東海道五拾三次之内》 が一挙公開されているだけではありません。
サントリー美術館が所蔵する 《隷書東海道》 も、
《東海道五拾三次之内》 と対比させる形で、一挙に公開されているのです。
実は、歌川広重。
《東海道五拾三次之内》 が大ヒットしたことにより、
その後、生涯を通じて、約20種にも及ぶ “東海道物” を世に送り出しました。
(20匹も、ドジョウを狙うとはwww!!)
そのうちの1つが、今回展示されているサントリー美術館所蔵の東海道物。
画中の題が隷書で書かれているため、 便宜上、 《隷書東海道》 と呼ばれています。
(いわゆる 《東海道五拾三次之内》 は、版元の名を取って、保永堂版と呼ばれています)
展覧会場では、53点すべて、対比されていますが、
このブログ上でも、1つ対比させてみたいと思います。
こちらが、 《東海道五拾三次之内》 での 「四日市」 。
風が強いという四日市地方の特徴が、見事に表現された一枚。
構図の面白さもありますが、
純粋に、風で飛ばされた蓑を追いかける男性の姿に面白さを感じます。
一方、こちらが、 《隷書東海道》 での 「四日市」 。
・・・あれっ?
もう一つ見比べてみましょう。
こちらが、 《東海道五拾三次之内》 での 「荒井」 。
荒井関に向かう2隻の舟。
一隻は、幕を張りめぐらした大名の渡し舟。
そして、もう一隻は、その従者たちの乗る舟。
従者たちは、ちょうど緊張感が解放されているようです (笑)
そして、一方、こちらが、 《隷書東海道》 での 「荒井」 。
・・・あれあれっ?
あまり、こんなことを言いたくはないですが。
《隷書東海道》 は、ショボい!
広重が手抜きをしたのか。
はたまた、シリーズを重ねすぎて、ネタ切れしたのか。
ともあれ、
「1作目がヒットしたからと言って、続編を作り続けると、ロクな作品が生まれない!」
という典型的な例を目の当たりにした気がします (笑)
ただ、この噛ませ犬 (?) のおかげで、
《東海道五拾三次之内》 が、いかに素晴らしい作品なのかを再確認できた気がします。
それは、企画したサントリー美術館が一番よくわかっているはず。
あえて、自分の館が所蔵する 《隷書東海道》 を、
那珂川町馬頭広重美術館所蔵の 《東海道五拾三次之内》 の引き立て役にしたサントリー美術館に乾杯。
また、展示の随所で、 《厳島三保松原図屏風 右隻》 など、
東海道中にまつわる浮世絵以外の所蔵品を展示したり、
《東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景》 の立体パネルを作っていたり (まさに、東海道五拾三次之内3D!) 、
飽きさせない工夫も随所に見られました。
サントリー美術館、グッジョブ。
ちなみに、 《隷書東海道》 も、全部が全部ダメというわけではなく。
それなりに印象的なものもありました。
1点だけ挙げるならば、 「鞠子」 を描いた一枚。
《東海道五拾三次之内》 では、名物のとろろ汁を前面に押し出した絵になっています。
しかし、 《隷書東海道》 では、
鞠子が、東海道で最も小さな宿場であることを表現するために、俯瞰で描いています。
まさに、
上から鞠子
・・・おあとがよろしいようで。
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殿様も犬も旅した 広重・東海道五拾三次
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