2022年秋。
日本全国のミニチュアファンの心をくすぐる展覧会、
“ちぃさい、ちっこい、ちっちゃ!”が、紅ミュージアムで開催されました。
会期の後半では、60分待ち以上の入場制限が掛けられたほどの人気ぶり。
紅ミュージアムの歴史における伝説的な展覧会となりました。
その続編ともいえる展覧会が、現在開催されています。
展覧会タイトルはズバリ“ミニチュア愛”です。
(なお、『愛』と書いて『らぶ』と読みます)
本展で紹介されているのは、雛道具研究家・川内由美子さんが、
長年にわたって蒐集したコレクション、通称、川内コレクションの数々。
中でもメインに紹介されているのが、
雛道具をさらに小さくしたミニチュア雛道具類です。
雛道具というと、女の子向けのものというイメージがありますが。
実は、その昔は趣味人や文化人の大人も、
それも男性がこぞってコレクションをしていたのだそう。
その最高峰ともいうべきが、七澤屋の雛道具です。
江戸時代後期、上野の池之端にあったという七澤屋。
七沢屋は別名「贅沢屋」とも呼ばれていたそうで、
『その値は実に世帯を持つより貴し』とまで言われていました。
それゆえ、江戸時代のお金持ちたちにとって、
七沢屋の雛道具を手に入れることは、ある種のステータスだったとか。
本展では、そんな七澤屋の雛道具が、
展示ケースにズラリと飾られていました。
おそらく、当時の江戸の人々が、
この光景を目にしたら、卒倒してしまうのではないでしょうか。
江戸の人々ほどには、七澤屋に憧れのない僕ですが、
やはり実物を観たら、その小ささ&精巧さに思わず目が釘付けになりました。
実物がどれほど小さいのか。
展示ケースの手前には、目盛りが設置されています。
大体どれも数センチほど。
モノによっては、数ミリです。
その小ささだけでも、十分に驚きですが、
なんと七澤屋の雛道具は基本的に動きます。
例えば、引出は実際に開けることが可能、
鏡立も角度を調整することができるようです。
また、実物と同じように作られているのも、七澤屋クオリティ。
こちらの和綴じの本は、実際に紙を1枚1枚まとめて作られています。
それも、全ページに文字も書かれています。
こちらの火鉢の金網部分も、よく見ると、
ちゃんと1本1本ねじって作られていました。
極めつけは、すごろくや囲碁、将棋のセット。
サイコロや将棋の駒の小ささには、狂気すら感じました。
人間が作ったとは思えないレベル。
スモールライトで小さくしました、
と言われた方が、まだ納得できる気がします。
展覧会では他にも、七澤屋と並んで、
人気が高かったという武蔵屋をはじめとする、
同時代に作られた雛道具も紹介されていました。
さらに、時代は進んで、
明治から昭和にかけてのミニチュアも紹介されていました。
ちなみに。
展覧会のラストを飾るのは、
川内さんが幼少期にクリスマスプレゼントで貰ったという、
ポリロイド製ミニチュア家電や家具の数々です。
これでも十二分に小さいのですが、七澤屋の雛道具を筆頭に、
それまでに展示されていたミニチュアがあまりにも小さかったため、
目に飛び込んできた瞬間に、「デカっ!」と思ってしまったのは、ここだけの話。
スケール感が完全にバグってしまいました(笑)。
バグったといえば、時間感覚も。
展示室が広くないので、展示室に入った際には、
“10分もあれば観終わるかも”と思っていたのですが。
1つ1つのミニチュアの見ごたえがありすぎて、
気づいたら、1時間近くあっという間に経過していました(汗)。
これから展覧会を訪れる皆さまも、
スケール感と時間感覚の狂いにはお気を付けくださいませ。
七澤屋やそれ以外のミニチュアを作った職人や、
これらのミニチュアを一人で集めた川内さんに拍手を送るとともに、
こんなに小さいものを無くさず保管していたかつての所有者にも拍手。
僕なんかいくつかのパーツを無くす自信しかありません。