現在、NTTインターコミュニケーション・センター [ICC]では、
“坂本龍一トリビュート展 音楽/アート/メディア”が開催されています。
こちらは、昨年3月に惜しまれつつ、
この世を去った音楽家・坂本龍一さんへの、
追悼企画展として開催されているものです。
キュレーションを務めるのは、ICCの学芸員さんと、
坂本さんと深い親交のあったライゾマティクスの真鍋大度さん。
展覧会の冒頭で紹介されているのは、その真鍋さんが、
生前の坂本さんと共同で制作したインスタレーション作品の2023年ver.です。
「都市における電磁波=血流」と捉え、
その情報を可聴化・可視化したインスタレーション作品とのこと。
真っ暗な展示室内に、ポツンとコントローラーが設置されており。
このダイヤルを回したり、押したりすることで、電磁波が変化。
それにより、空間内に流れる音や、
画面に映し出されるビジュアルも変化します。
お客さんが誰もいなかったら、ダイヤルを回したかったところですが、
坂本龍一展を訪れるお客さんは、きっと耳が肥えている方ばかりでしょうから、
下手にダイヤルを動かして、「センスのない音だな」とは思われたくなく。
他の人が動かす様を、ただただ見つめ続けていました。
なお、この作品の反対側の展示空間では、
3つの映像作品が間隔を置いてループ上映されています。
さてさて、それらの暗い展示室を抜けた奥の部屋では、
生前の坂本さんと縁の深かったアーティストたちの作品が展示されています。
例えば、ダムタイプによるサウンド・インスタレーション作品《Playback》。
地図が表面にプリントされた特殊なレコード16枚には、
それぞれの地域で採取されたフィールド・レコーディングが収録されているそう。
そのディレクションを担当したのが、何を隠そう坂本龍一さんでした。
さらに、その16枚のレコードに、
坂本さんの未発表音源『Tokyo 2021』をプラスした、
全17枚組の限定ボックスが昨年発売されているそうです。
世界限定100セットとのことで、
なかなか聴けない『Tokyo 2021』ですが、
本展では特別に、会場内に30分に1回流れる仕様となっています。
どんな音が流れるのかは会場でのお楽しみです。
また例えば、毛利悠子さんの《そよぎ またはエコー》という作品。
こちらはもともと、札幌国際芸術祭2017のために制作されたもので、
発表時は100mを超える細長く伸びた空間を使ったインスタレーション作品でした。
この作品のために、なんと坂本龍一さんが楽曲を提供したそうで。
本展ではその曲が自動演奏されるようになっていました。
映像作品から流れてくる音声に、
《Playback》で流れる『Tokyo 2021』に、
《そよぎ またはエコー》での自動再生に。
会場にいろんな音が交じってしまいそうな気がしますが、
キュレーションを務めた真鍋さんによる完璧なタイムシーケンスにより、その問題は解決。
作品同士が干渉することなく、純粋に音を楽しむことができました。
坂本龍一さんへの敬意を感じる展覧会です。
ちなみに。
展覧会では、李禹煥さんによるドローイングも紹介されています。
こちらのドローイングは・・・・・
坂本龍一さんの最後のオリジナルアルバム、
『12』のジャケットの原画に採用されたものです。
観比べてみると、ジャケットのほうは、
原画と比べて傾いているのがわかります。
これは、李さんのアイデアによって、
ドローイング部分のみを13度の角度に傾けたからなのだとか。
そこは12度ではないのですね。
李さんによるドローイングはもう1点。
こちらは、坂本さんの病気平癒を願って描かれたそうで、
その裏面には、李さんから坂本さんへのこんなメッセージが書かれているそうです。
このdrawingは時計まわりと反対に描いたものです
従って見る時も左回りに目を回しながら見ます
そうすれば力が湧いてきます
時々10分程やってみてください
せっかくなので、やってみたところ、
1分もしないうちに目が回って気持ち悪くなりました(笑)。
果たして、病気平癒に効果はいかに?!