先日の記事でもお伝えしましたが、いわさきちひろが亡くなって、
ちょうど50年目となる今年2024年は、東京と安曇野のちひろ美術館の両館で、
1年にわたって3つのテーマで“こどものみなさまへ”という展覧会が開催されます。
そのちひろ美術館・東京での初回を飾るのが、“あれ これ いのち”。
「自然」をテーマにした展覧会です。
(注:写真撮影は、特別に許可を得ております。)
“いわさきちひろ=子どもを描いた絵”。
そんな印象が強くありますが、
実は、野の草花や生きものも多く描いています。
ちひろのアトリエがかつてあった、
現在のちひろ美術館・東京の周囲は、
今では、すっかり住宅街となっていますが。
ちひろがこの地に住み始めた頃は、
いわゆる武蔵野の風景が残っていたそうです。
さて、安曇野ちひろ美術館での展覧会も、
美術とは違う分野の専門家が企画協力していましたが、
こちらの展覧会では、東京大学名誉教授で、
生態学、保全生態学を専門とする鷲谷いづみさんが企画協力しています。
さらに、鷲谷さんのお仲間の専門家も協力してくださったそうで。
ちひろが描いたこちらの謎のスケッチに関して・・・・・
生物学的な観点からきっちりと同定が行われていました。
その文面の中には、「かなり微妙」とか、
「厳密に言えば、どちらも科の特定さえ困難」とか、
『ジョブチューン』の一流料理人ばりの厳しいジャッジも。
まさか自分の描いたスケッチが、こんな大ごと(?)になっているとは!
いわさきちひろも夢にも思っていなかったことでしょう。
また、鷲谷さんの解説によると、
植物と動物、人間が共に暮らすこの世界において、
共生関係をもっとも支える色は、紫色とのこと。
花や果物にもっとも多くみられる色が、紫色なのだそうです。
そのことを知っていたかどうかは定かではありませんが、
実は、いわさきちひろが好んだ色の一つが、紫色だそうで。
実際、彼女が手掛けた作品や絵本のなかには、
紫を含む赤から青にかけた色がよく使われているようです。
しかも、帽子や洋服の色として使われているだけなく、
雨や空、海を紫色で表現した絵本や作品も制作しているほど。
ちひろ作品に特に紫色のイメージは無かっただけに、新鮮な発見でした。
これから鑑賞する際には、紫色を意識することになりそうです。
なお、そんなちひろの紫色ワールドは、
展示室2の「あれこれむらさき」でたっぷりと堪能することができます。
ちなみに。
本展の会場にも、ディレクターを務めるアートユニット、
plaplaxによる楽しい仕掛けがいろいろと用意されています。
例えば、こちらは水たまり遊びができる装置。
展示室ゆえ、実際に水を張るわけにはいかないので、
その代わりに、プロジェクターで水たまりが表現されています。
・・・・・・って、いやいや、ただの光の円でしょ。
と思いきや!
足を踏み入れると、ちゃんと水紋が広がる仕掛けとなっています。
大人になってから久しく、
水たまり遊びをしていなかったので、
ついつい長い時間、ぴちゃぴちゃ歩き回ってしまいました。
それから、こんな遊びも用意されています。
用意された草葉を折ったり、
曲げたり結んだりして、好きな形を作り、
その一部にクリップを取り付けたら完成です。
で、それを特製の台の上に乗せると・・・・・
ユーモラスな動きを見せてくれます。
シンプルながら、いつまでも見ていられる不思議な面白さがありました。