ドイツ初のアーバン・アートに特化した美術館として、
2016年に開館したMuseum of Urban and Contemporary Art。
通称、MUCA(ムカ)。
その1200点を超えるコレクションの中から、
選りすぐりのアーバン・アートの数々が来日した展覧会が、
現在、六本木の森アーツセンターギャラリーで開催されています。
その名も、”MUCA展 Icons of Urban Art ~バンクシーからカウズまで~”。
ちなみに。
アーバン・アートとは、なかなか聞き慣れないですが、
「現代の都市空間で発達した視覚芸術」全般を指すものとのこと。
いわゆるグラフィティ・アートやストリート・アートもアーバン・アートに含まれています。
ところで、サブタイトルには、“バンクシーからカウズまで”とありますが、
展覧会の冒頭を飾っていたのは、カウズによる、
《4フィート・コンパニオン・ディセクテッド・ブラウン》という作品で。
展覧会のラストに展示されていたのは、
バンクシーの代表作《Girl with Balloon》でした。
揚げ足を取るようで大変恐縮なのですが、
それならサブタイトルは“カウズからバンクシーまで”で良かったような。
と、それはさておき。
本展のためにMUCAから来日した作品は60点を超えていました。
それらの中には、カウズやバンクシーの作品以外にも、
サンフランシスコ生まれのグラフィティ・アーティスト、バリー・マッギーや、
ブラジル人の双子のアーティストデュオ、オス・ジェメオスの作品も。
さらには、フランスを拠点に活躍する、
ストリート・アーティスト、インベーダーの作品も含まれていました。
なお、こちらのインベーダーの作品は、
一見すると、ただのドット絵のように思えますが。
実は、これらはすべて、ルービックキューブを組み合わせて描かれているもの。
真正面から見ただけでは、そこまでルービックキューブ感はないですが、
サイドから覗き込んでみると、ルービックキューブで作られているのがよくわかります。
さてさて。
直接作品とは関係ないものの、印象的だったのが、
アーバン・アーティストたちに付けられたあだ名(異名)です。
例えば、ストリート・アーティストの、
「ヴィルズ」ことアレクサンドル・ファルト。
彼は長年、廃墟の壁や廃材の表面を削り取ることで、
人物の顔を浮かび上がらせるという活動をしているそうです。
そんな「ヴィルズ」に付いた異名は、
『現代の都市考古学者』とのことでした。
『劇的ビフォーアフター』に登場する匠のようなニックネームです。
また例えば、カナダ出身のリチャード・ハンブルトン。
バスキアやキース・へリングととともに、伝説のクラブ57に通った経験を持ち、
今なおバンクシーらアーバン・アートの作家に大きな影響を与えている人物です。
そんな彼に付いた通り名は、『ストリート・アートのゴッドファーザー』とのこと。
『印象派の父』や『現代美術の父』は聞いたことがありましたが、
まさかそれを大きく飛び越えて、ゴッドファーザーが存在していたとは?!
他にも、スゥーンやJRといったアーティストも紹介されていましたが、
本展の主役は、やはり今アーバン・アート界でもっとも人気のあるバンクシー。
バンクシーのオリジナルとされる作品が17点も来日しています。
しかも、それらの中にはなんと、現時点で、
バンクシーによる油彩画でもっとも大きいとされる作品も。
元ネタは、エドワード・ホッパーの《ナイト・ホークス》。
どう見てもヤバそうなタイプの男性、
ユニオンジャックのパンツを履いているのでイギリス人?が、
お店に対して、ひと悶着を起こしている様が描かれています。
間違いなく、通報レベルの案件です。
なお、大分、京都と巡回してきた本展ですが、
ラストの会場となる東京会場だけの特別出展として、
MUCAではなく個人が所有するバンクシー作品が出展されています。
それが、こちら↓
正直なところ、僕も思わず二度見してしまいましたが、
オークションでのシュレッダー騒ぎで話題になったあのバンクシー作品です。
レプリカか何かかと思いきや、本物とのこと。
まさか、あのワールドクラスのお騒がせ作品の実物に出逢えるとは!!
サプライズにもほどがありました。
世界的規模の衝撃という意味では、
大谷翔平の結婚に匹敵するものがあります(←?)。
ちなみに。
例のオークションの事件の際には、
“額縁にまさかシュレッダーが仕掛けられているなんて・・・”的なことを、
オークションが行われたサザビーズの担当者が発言していましたが。
この実物の額縁を観ると、何かが仕込まれていたのは明白でした。
だって、横から見たら、明らかに厚みがあるんだもん。