今でこそすっかり日本に浸透した、
「イラストレーション」や「イラストレーター」といった言葉を、
1960年代に広めた人気イラストレーター、宇野亞喜良さん。
90歳を迎えた今なお現役で活躍する、まさに生けるレジェンドです。
そんな宇野さんの実に14年ぶりとなる、
東京の美術館では意外にも初めてとなる大規模な展覧会が、
この春、東京オペラシティアートギャラリーで開催されています。
その名もずばり、“宇野亞喜良展 aquirax uno”です。
過去最大規模の宇野亞喜良展。
そう自負するだけあって、その出品点数は圧倒的!
なんと900点を超える作品が会場を埋め尽くしています。
それらの中には、初期の貴重な作品もあれば、
近年話題となった「マジョリ画(※)」の原画、
(※マジョリカ マジョルカの似顔絵ジェネレーター)
宇野さんがこれまでに手掛けた膨大な数のポスターといったものも含まれています。
さらには、これまでまとまった形で発表される機会が、
あまり無かったという舞台美術の道具や衣装、原画といったものも紹介。
ちなみに。
会場で紹介されている900点超えの作品でも、
宇野さんの全ワークスのうちの一部に過ぎないそうです。
仕事量どんだけ!
そして、仕事の幅広さどんだけ!
とても一人の仕事とは思えないアウトプットぶりに、ただただ驚愕しました。
しかもその上に、「質より量」では決してなく、
どの仕事もクオリティが高いから、さらに驚きを禁じえません。
なお、本展を通じて、強く実感したのは、
宇野さんの世界観の絶対的な力強さでしょうか。
『平家物語』を題材にした絵本を描いても、
ピカソやセザンヌをモチーフにした作品を描いても、
ディズニーとコラボをしても、
© Disney
ちゃんと宇野さんの世界になっています。
かといって、全部同じ味付けなのではなく、
それぞれでまったく違う味わいになっているのです。
個性を発揮しつつ、でも、あくまでイラストレーションに徹する。
一流のアーティストと一流の職人の両方の気質を兼ね備えた、まさに二刀流です。
日本が誇るイラストレーター、宇野亞喜良さん。
そのスゴさに圧倒されっぱなしの展覧会でした。
ちなみに、本展では貴重な高校時代の作品も紹介されています。
こちらが、その高校1年生の時に描かれたデッサン↓
藝大生が描いたデッサンと言われれば、信じてしまうほどの画力です。
しかも、高2の時には、新聞でも取り上げられ、
「壁画・彫塑なんでもアッパレ16歳の少年藝術家」と紹介されたとか。
なお、その頃に描かれたデッサンの中には、こんなものも。
高1の時のデッサンは、絵が上手い人のデッサンといった印象でしたが、
高2の時に描かれたこちらのデッサンは、まさに宇野亞喜良ワールドといった印象。
この頃からすでに、宇野さんの世界観は確立していたのですね。
そんな愛知が生んだ天才宇野少年ですが、
上京後すぐにイラストレーターデビューしたわけではなく、
高校時代の先生の推薦を受け、最初はカルピス食品工業に入社したのだとか。
配属先の広告課には、コピーライターがいなかったそうで、
パッケージデザインだけでなく、キャッチコピーも考案していたそう。
本展には、その時の貴重な原画も出展されています。
個人的には、今の「カラダにピース。」より、
若き日の宇野さんによる「清純の味」のほうが刺さりました。
久しぶりにカルピスが飲みたくなりました。