「大正の歌麿」と謳われた美人画の名手、竹久夢二。
そんな夢二が描いた美人ではなく、
動物の絵に注目したユニークな展覧会が、
現在、竹久夢二美術館で開催されています。
その名も、“夢二がえがく動物ワンダーランド”。
会期は6月30日までです。
会場では、夢二の絵に登場する動物が、
イヌやウマなどグループごとに紹介されています。
中でももっとも夢二が描いていたのは、ネコ。
その多くは、美人とセットで描かれていました。
なるほど。美人に猫はよく似合うものなのでしょう。
そう言えば、本展には出展されていませんが、
夢二の代表作の一つ《黒船屋》の女性も黒猫を抱いていましたっけ。
と思っていたら・・・・・
黒猫を抱く女性の絵が他にもままありました。
夢二はこの組み合わせを、実は何度もこすっていたのですね。
なお、夢二が女性が抱いていたのは、猫だけではありません。
ウサギを抱いた女性も描いていました。
ただ、ちょっとウサギが大きいような。。。
顔のサイズが女性とほぼ一緒です。
ウサギの大きさもさることながら、リボンもなかなかの大きさ。
この女性は全体的にサイズ感覚がおかしいのかもしれません。
また、動物そのものを描いたパターンもあれば、
一見すると、どこに動物がいるのかわからないパターンも。
例えば、こちらの《夢香洲夏夕幻影》という1枚。
一体どこに動物がいるのかといえば、
女性が着ている服の柄にご注目ください。
よく見ると、コウモリの柄になっています。
なんでも江戸時代の後期に、
七代目の市川團十郎がコウモリを、
家紋や染柄にして大流行したのだそうです。
ちなみに。
夢二が描いた数々の動物の絵の中で、
一番ツボだったのが、こちらのトラの絵です。
どこかネズミのようなトラ。
コイツになら素手でも勝てそうな気がします。
いや、その前に、襲ってくる気配すらなさそうです。
さてさて、ここまで夢二が描いた哺乳類を紹介してきましたが、
本展では、夢二が描いた鳥や虫といった生きものたちの絵も展示されていました。
意外なところでは、カタツムリやサソリを描いたものも。
夢二の守備範囲(?)は意外と広かったようです。
ちなみに。
夢二は爬虫類も描いており、それらに混じって、
髪の毛がヘビのメドゥーサ(ゴーゴン)の絵もありました。
メドゥーサはロングヘアー。
そんな固定観念が僕の中ではありましたが、
夢二が描くメドゥーサは、まさかのショートヘアでした。
そのオリジナリティが、さすが一流芸術家です。
最後に、個人的にどうしても気になってしまったことを。
こちらは、夢二による絵の描き方の手本帳、
『夢二絵手本』に掲載された動物たちを紹介するパネルです。
(実際の手本帳では、人物や植物といった他のモチーフも掲載されているそう)
あえて簡素な線で描かれているのは、
子どもや絵の初心者でも模写しやすい配慮から。
つまり、この手本の通りに写せば、
誰でもトラやペリカンが描けてしまうわけです。
そして、とかげのたぐいも(←いや、たぐいって!)
と、それらの中には、くじゃくの絵手本も。
・・・・・何で閉じたバージョンなん?
子どもは、開いたくじゃくを描きたいでしょうに。