現在、東京国立近代美術館で開催されているのは、
“TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション”という展覧会です。
(注:展示室内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
パリ市立近代美術館東京国立近代美術館、そして、大阪中之島美術館。
その3館のコレクションから共通点のある作品で、
オリジナルのトリオを組んで展示する、ありそうでなかったスタイルの展覧会です。
本展のために誕生したトリオは、実に34組。
主題やモチーフが共通するトリオもあれば、
色や形が似ているという理由で生まれたトリオも。
実に、さまざまなタイプのトリオが紹介されていました。
例えば、展覧会の冒頭を飾るのは、
安井曽太郎の《金蓉》、佐伯祐三の《郵便配達夫》、
ロベール・ドローネーの《鏡台の前の裸婦(読書する女性)》のトリオ。
“TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション”(東京国立近代美術館) 展示風景
最初に購入された作品であったり、
開館のきっかけとなる作品であったり、
実はこの3点には、「コレクションのはじまり」という共通点があります。
さらに、どの絵も座っている人物像という共通点もあり。
まさに、組むべくして組んだトリオといった感じです。
また例えば、本展のメインビジュアルにも採用されている、
マティスの《椅子にもたれるオダリスク》、重要文化財である萬鉄五郎の《裸体美人》、
そして、モディリアーニ《髪をほどいた横たわる裸婦》からなるトリオ。
(注:萬鉄五郎《裸体美人》(重要文化財)の展示期間は5/21~7/21、8/9~8/25)
展示風景
寝そべったポーズをする女性モデル、という共通点があります。
しかも、3人ともこっちに視線を送ってきています。
何このシンクロ率。
もともとこういう3人組だったかのような、しっくり感がハンパなかったです。
展覧会では他にも、少女トリオや、
展示風景
抽象画のトリオ、
展示風景
現代アートのトリオなども紹介されていました。
展示風景
3館のコレクションを組み合わせて、
トリオを作り出すのは大変だったでしょうが、
それと同時に、楽しくもあったのでしょう。
そんな企画者の皆様のワクワク感が伝わってくるようでした。
なお、出展作品は、約150点。
ピカソやダリ、藤田嗣治、岡本太郎、
さらには、奈良美智さんや草間彌生さんまで、
古今東西110作家の作品が集結しています。
それらの中には、先ほど紹介したマティス(先日まで国立新美術館で個展が開催)や、
デ・キリコ(現在、東京都美術館で個展が開催中)やブランクーシ(現在、アーティゾン美術館で個展が開催中)も。
展示風景
さらに、間もなく麻布台ヒルズ ギャラリーにて、
東京では約35年ぶりとなる大規模個展が開催される、
アレクサンダー・カルダーも含まれています。
展示風景
今、東京で開催中のさまざまな展覧会を、
ちょっとずつ味わうことができて、お得な気分を味わえました(←?)。
そうそう、お得と言えば。
つい最近、東京国立近代美術館のコレクションに、
女性彫刻家の先駆的存在ジェルメーヌ・リシエの作品が加わり、話題となりました。
その作品は、MOMATコレクション展のほうで展示されていますが、
実は、国内の美術館にはもう1点、リシエの作品があります。
それが、大阪中之島美術館が所蔵する《ランド地方の羊飼い》。
本展には、このもう一つのリシエ作品も出展されています。
展示風景
彼女の2つの作品が同時に観られるまたとない機会。
どうぞお見逃し無きように!
ちなみに。
数ある出展作品の中で、とりわけ印象に残っているのが、
マグリットの《レディ・メイドの花束》と有元利夫の《室内楽》と、
トリオを組んでいたヴィクトル・ブローネルの作品です。
展示風景
タイトルの《ペレル通り2丁目2番の出会い》にある、
「ペレル通り2丁目2番」とは、かつてあのアンリ・ルソーが住んでいた住所。
ブローネルは、この住所に引っ越した縁で、
ルソーの《蛇使いの女》をオマージュした作品を制作したのだそうです。
とはいえ、ただ模写しただけでなく、
自身が生んだオリジナルキャラも描き込んでいます。
ヴィクトル・ブローネル《ペレル通り2番地2の出会い》 1946年、パリ市立近代美術館
photo: Paris Musées/Musée d’Art Moderne de Paris(トリオ、テーマ<現実と非現実のあわい>より)
そのキャラの名は、コングロメロス。
巨大な頭部と2つの身体、6本の腕を持っています。
元の絵に描かれた蛇使いの女も、
なかなかクセのあるキャラクターですが、
この絵では、その存在が完全にコングロメロスに食われていました。
ペリカンもまるでフリーズしているようです。