東京都現代美術館で開催中の “アートと音楽―新たな共感覚をもとめて” 。
こちらは、タイトルを読んで字のごとく、 「アートと音楽の関係性」 に迫る美術展です。
「アートと音楽の関係性」 というテーマ自体は、特に目新しいものでもない気がしますが。
いざ、 「アートと音楽の関係性」 に迫った他の美術展を挙げてみよう・・・と思っても、パッとは思い浮かびません。
そういう意味では、「アートと音楽の関係性」 というテーマは、
実は、ありそうでなかった、盲点のような美術展テーマだったのかなと思います。
それだけでも、十分に興味が湧きましたが。
さらには、この美術展の総合プロデューサーを務めたのが、
“世界のサカモト” でお馴染みのあの坂本龍一教授とのこと。
どんな美術展に仕上がっているのか、非常に興味津々です。
というわけで、会期終了まで、あと1週間を切ってしまいましたが、
本日、何とか滑り込むような形で、 “アートと音楽” を鑑賞して参りました。
さてさて、会場で、まず出会うのが、
セレスト・ブルシエ=ムジュノの 《クリナメン》 というインスタレーション作品です。
展示室の真ん中には、なんと大きなプールが!
そして、そのプールに、大きさの異なる白磁の器が、いくつもプカプカと浮いています。
水流の影響によって、それらの白磁の器が、ぶつかり合った時に、
展示室には何とも言えない爽やかで心地よい音が鳴り響くのです。
(参考までに、セレスト・ブルシエ=ムジュノさんの過去の展示)
↑こちらの映像の時の作品と比べると、
今回の作品の方が、より音が澄んでいたような気がします。
ただ白磁の器がぶつかり合っただけの音なのに、その音色は、想像できないくらいに恍惚的。
いつまでも浸っていたくなるインスタレーション作品でした。
この 《クリナメン》 という作品と出合えただけでも、十二分に行った価値があった気がしましたが。
これ以外にも、ステキな作品と多数出合うことが出来ました。
その一部をご紹介しますと・・・
・池田亮司さんの 《data.matrix [n°1-10]》 は、サイバー&クールな映像インスタレーション。
『攻殻機動隊』 が好きな人が、ハマりそうな作品です (←僕の勝手なイメージ)
data.matrix [n°1-10] 2006-09年ⓒ2009 ryoji ikeda
Photo: 丸尾隆一 Courtesy of Gallery Koyanagi, Tokyo
・大友良英リミテッド・アンサンブルズによる 《with without record》 は、
一昔前のポータブル・レコードプレイヤーを119台 (!) も使用した圧巻のインスタレーション作品。
大友良英+青山泰知 《without records》 2008年
写真提供:山口情報芸術センター[YCAM] 撮影:丸尾隆一(YCAM) 【参考図版】
・“自然の声” が聞こえるというクリスティーネ・エドルンドは (ちょっと電波系?) 、
植物の危険信号をヴィジュアル化した 《セイヨウイラクサの緊急信号》 という作品を発表しています。
2010年Courtesy Galleri Riis, Oslo / Stockholm
Photo: Jean-Baptiste Beranger
普通の美術展では出合えないような作品が多く、とても新鮮な印象の美術展でした。
また、現役作家の作品だけでなく、ワシリー・カンディンスキーをはじめ、
《「E.R.キャンベルのための壁画No.4」の習作(カーニバル・冬)》
パウル・クレー、ジョン・ケージ、武満徹…など、
美術史に名を残す 「アートと音楽の関係性」 に迫った作家の作品も、併せて展示したことで、
美術展に深みが出ていた気がします。
2つ星。
逆に、残念だったのは、
総合プロデューサーの坂本龍一さんのインスタレーション作品が、あまりパッとしなかったこと (苦笑)
餅は餅屋。音楽は音楽屋。アートはアート屋ということでしょうか。
最後に、個人的に、とっても印象に残った作品をご紹介。
それは、マノン・デ・ブールの 《二度の4分33秒》
こちらは、アメリカの作曲家ジョン・ケージが作曲した、
4分33秒何も演奏しないという衝撃的なピアノ曲 『4分33秒』 をモチーフにした映像作品。
(ちなみに、美術展には、そのジョン・ケージによる 《4分33秒》 の譜面も出展されています)
タイトルに “二度の” とあるように、
一度目に、『4分33秒』 を演奏するピアニストの様子を流し、
二度目に、 その 『4分33秒』 の演奏を観賞している人々の様子を流すという映像作品です。
ただでさえ、 無音が続くだけの4分33秒間は、長く感じられますが、この作品は、その2倍。
苦痛も2倍です。
それに追い打ちをかけるように、超個人的な理由ですが、
ちょうどこの映像作品が始まったあたりで、トイレに行きたくなってしまい、
4分33秒が、と~~~~~~~~っても長く感じられました (しかも、2ターン!)
僕にとってのあの4分33秒間は、永遠を感じられるほどの長さでした。
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