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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展

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個人的に、 『美術館界のイチロー』 と呼んでいる練馬区立美術館にて、
2月17日より、 “超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展” が開催されています。
(『美術館界のイチロー』 と呼ぶ理由は、この記事に)

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-小林猶次郎
(注:美術館内の撮影は、特別に許可を得ています)


こちらは、画家・小林猶治郎の公立美術館における没後初の回顧展です。


・・・・・・・・・・・・・・・。


ではでは、ここらで、練馬区立美術館の美術展を紹介する時のお約束となったあのフレーズの登場です。

「えっ、誰それ?!」

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-自画像


こちらの 《自画像》 の人物が、小林猶治郎。
肺結核のため、医者から、 「余命は25歳まで。」 と宣告されながらも、
好きな絵を描き続けていたら、なんと93歳まで生きてしまったという驚愕の人物です (笑)
ちなみに、その口癖が、

「こんなにいきて きまりがわるい」

だったというから、よほど飄々とした人物だったのでしょう (笑)

しかし、飄々としていたのは、生き様だけにあらず。
画家としての姿勢も、かなり飄々としていました。
というのも、画家でありながら (?) 、職業画家は目指しておらず、
その生涯で、自分の作品を売ることが無かったのだそうな (←!!)
さらに、歳を重ねるごとに、その傾向がエスカレートし、
最終的には、 “作品を見せたくもない!” という境地にまで達してしまったのだとか (←!!!)
・・・って、画家として、そんな境地を目指していいのか?!猶治郎!

そんな猶治郎だけに、ほとんどの作品が、今日までアトリエに残されており、
当然、そんな彼の画業の全貌が明らかになることも無かったというわけなのです。
こんな画家らしくない人生を送った小林猶治郎にも開いた口が塞がらないですが、
そんな画家を、発掘してきた練馬区立美術館のリサーチ能力の高さにも、開いた口が塞がりません。
会場では、もうず~~~っと口が開きっぱなしでした (笑)


小林猶治郎の作品の特徴は、何と言っても、スタイルが無さすぎること!
のどかな風景画 (《宿場(富士見)》) を描いたかと思えば、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-富士見


子供の落書きのような抽象画 (《軌》) を描いたり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-軌


はたまた、ドガみたいな人物画 (《髪》) を描いたり。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-髪


熊谷守一っぽい絵 (《日永》) を描けば、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-日永


ナンシー関っぽい絵 (《華子素描》) も描く。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-華子素描


よく言えば、型にハマらない。
悪く言えば、節操のない画家です (笑)
ただ、そのことが、いい方向に転ぶ場合もあるようで・・・。

《雪渓》 という絵の額を薪で作ってみたり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-雪渓


《小鳥》 という絵を金網で覆ってみたり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-小鳥


普通の画家が思いつかないような (思いついてもやらないような?) 、
斬新なアイディアが盛り込まれた作品を、いくつも目にすることが出来ました。


また、スタイルこそ定まっていないですが、
全体的に、絵の中に独特な “圧” が漂っており、グイグイグイと迫ってくるものがありました。
例えば、彼が妻をモデルに描いた 《擡頭》 という一枚。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-擡頭


目力が、ハンパないです。。。
何も悪いことはしていないですが、
つい 「すいません。。。」 と謝りたくなってしまいます。


また、彼が愛する息子と娘を描いた 《童心双六》 という一枚。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-童心双六


中心に描かれているのが、息子と娘の2ショット。
しかし、 「そこに愛はあるのかい?」 と思わず尋ねてしまいたくなるほど、
不気味な感じに仕上がっています。。。 (特に、娘さんはゾンビのようです。。。)
この絵で唯一可愛いのは、息子でも娘でもなく、その右下にいるヒヨコ。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ヒヨコ


脱力系にもほどがあります (笑)


極めつけの “圧” 作品は、 《手》
ただじゃんけんしている3人の手が描かれているだけなのですが・・・

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-手


まるで 『グラップラー刃牙』 の死闘レベルの殺気が漂っています。
一体、何を賭けたじゃんけんなのでしょうか?!


範馬刃牙 37 (少年チャンピオン・コミックス)/板垣 恵介

¥440
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web面の関係上、これ以上紹介できませんが。
まだまだまだ、今回紹介した作品とは、ガラッと違う作風の絵が、たくさん展示されています。
そのあまりの一貫性の無さに、正直、鑑賞側としては、
「もう少し、観る人を楽しませてくれよむかっ と、ちょっとイラッとしてしまいましたが。
よく考えたら、本人は、 “作品を見せたくもない!” と思っていたわけですし。
何より、描いた自分が楽しんで、
その結果、長すぎる余命を過ごせたのですから、それでいいのですね (笑)
星
観た直後よりも、観てからしばらく経って思い返した方が、面白いと感じる美術展。
ジワジワくる美術展です。


ちなみに。
1階の展示室では、現代美術家による “富田有紀子展” が同時開催されています。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-富田由紀子


実は、この富田有紀子さん。
小林猶治郎さんの孫に当たる人物です。
時空を超えて、祖父と孫のコラボレーションをさせるだなんて、何とも粋な計らいです。




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