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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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生誕120年 木村荘八展

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東京駅から徒歩0分。
抜群のアクセスの良さを誇る東京ステーションギャラリーへ行ってきました。
現在開催されているのは、 “生誕120年 木村荘八展” という美術展です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-チラシ


ちなみに、こちらは、東京ステーションギャラリー再開記念として開催されている美術展。

“あれっ、前回の美術展も、そうだったような??”

いえいえ、前回の “始発電車を待ちながら” という現代アート展は、
東京駅復原工事完成記念展として開催されていた美術展。
似ているようで、全然違うのです。
というのも、そもそも東京ステーションギャラリーは、
これまでに企画された長谷川利行展や河野通勢展…etcのように、
あまり日の目を見なかった近代美術の作家にスポットを当てることに定評のある美術館。
そんな東京ステーションギャラリーの再開記念には、
現代アート展よりも、東京で20年ぶりの回顧展となる木村荘八展の方が相応しいと言えましょう。


ではでは、木村荘八 (しょうはち 1893~1958) とは、一体どんな人物だったのでしょうか?
まずは、簡単に彼のプロフィールをご紹介いたします。

木村荘八の父は、当時日本最大の牛鍋チェーン店 「いろは」 を経営した木村荘平。
その妾腹の八男として生まれたので、 『荘八』 と名付けられます。
ちなみに、木村荘平は、たくさんの愛人にそれぞれ子供を作らせたそうで、
作家になった荘太や荘十、映画監督になった荘十二など、計30人以上もの兄弟が荘八にはいるのだとか。
(↑ビッグダディもびっくりですw)

荘平の愛人の一人だった荘八の母は、いろは牛肉店第八支店を任されていたそうで、
荘八は、在りし日のその店の様子を、脚色を織り交ぜながらも、 《牛肉店帳場》 という絵に描いています。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-牛肉店帳場  1932年 油彩・カンヴァス 公益財団法人北野美術館


洋画家としては、大正元年に画壇にデビュー。
気鋭の洋画家と持て囃され、美術に関する翻訳や執筆を続けながら、洋画家として活躍を続けます。
ところが、ある時期から挿絵の仕事が増え、
昭和12年に永井荷風の新聞連載 『濹東綺譚』 の挿絵を担当すると・・・

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-濹東綺譚  1937年 墨・インク・コンテ・紙 東京国立近代美術館


大衆に絶大な支持を受け、挿絵画家としての名声が高まります。
それでも、 「自分は洋画家だ!」 という信念を曲げず、生涯に渡って洋画を描き続けたのだそうな。
(しかし、洋画は、あまり売れなかったとか)


今回の木村荘八展では、彼の代表作を含む油彩等約70点、
さらに、 『濹東綺譚』 34点をはじめとする挿絵原画が、一堂に会しています。
「よくぞこれだけ集めたなぁ。。。」 と思わず感心してしまうほど気合の入った美術展です。
さすが、東京ステーションギャラリー再開記念
さらに、東京駅の煉瓦壁を活かした東京ステーションギャラリーの館内が、
荘八の描く東京の風景と絶妙にマッチしていて、より魅力的な木村荘八展に仕上がっていた気がします。
(どこからか古いラジオの音が聞こえてきそうな館内の雰囲気でした♪)
星星
2つ星。


さてさて、社長の息子 (=ボンボン) ということもあって、
当時は高価だった西洋の画集を目にする機会が多かった木村荘八。
それだけに、彼の作品に、さまざまな西洋の巨匠たちの影響が見て取れるのが面白かったです。
例えば、 《祖母の像》 という肖像画は、ゴッホっぽく、
《幽霊せり出し》 という歌舞伎の舞台裏を描いた作品は、ドガっぽい。
《ストリップショー楽屋》 は、ロートレックを彷彿とさせますし、
ポスターに使われている 《浅草寺の春》 は、どこかアンソールっぽい印象です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-浅草寺の春 1936年 油彩・カンヴァス 公益財団法人北野美術館


また西洋の巨匠たちの影響ばかりでなく、
交流の深かった岸田劉生の影響をモロに受けている作品も、ちらほらとありました。
良く言えば、素直で器用な画家だったのでしょう。
もちろん、全く個性が無いわけではなく、木村荘八ならではの作品もあります。
その中でも、僕が特に気に入ったのが、 《新宿駅》 という一枚。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-新宿駅 1935年 油彩・カンヴァス 東京国立近代美術館寄託


今も昔も変わらない新宿駅の喧騒が、この絵から伝わってきます。
また、喧騒 (=音) だけでなく、人いきれ (=熱気) のようなものも伝わってきました。

“なぜに、こんなにも熱気を感じるのだろう??”

と、絵に近づいてみると、普通の絵よりも油彩がこってりたっぷり使われていることが判明。
これでもかというくらいに絵肌はテッカテカでした (笑)
しかし、この表現だからこそ、
離れて観た時に、ちょうどいい感じで雑多な新宿に見えるのです。
新宿を知り尽くしていないと描けない作品ですね。
あと、よく見ると、絵の中の看板の 『のりば案内』 の文字が、かなり雑なのがわかります。
この雑さが、やはり雑多な新宿感 (←造語?) を高めている気がしました。



最後に、読者の皆様へのプレゼント。
この “生誕120年 木村荘八展” のペアチケットを、5組10名様にプレゼントしちゃいます♪

住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
http://homepage3.nifty.com/art-teller/tony_contact.htm
(〆切は、4月15日。当選は発送をもって代えさせていただきます)




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