~前回までのあらすじ~
NO NATIONAL TRAESURE,NO LIFE.
そんな国宝を愛する国宝ハンターは、人生初となる奈良県に上陸。
2日間という限られた時間の中で、
100件の国宝を見るという目標のために、奈良を自転車 (=ママチャリ) で駆け巡る。
唐招提寺、薬師寺、法隆寺、中宮寺とテンポよく巡り、4時間で49件の国宝をゲット。
そして、1日目の午後に突入する―
【1日目】 の続き。
1日目の午前中は、自分でも驚くほどのハイペースで国宝をゲットしました。
あまりの国宝の過剰摂取ぶりに、何か体に影響が出ないか心配なほどです (←?)
さてさて、そんな僕が、法隆寺の次に向かったのは、
今回の国宝旅の一番のメインと言っても過言ではない當麻寺。
実は、現在、奈良国立博物館で “當麻寺―極楽浄土へのあこがれ―” が開催中でして。
それを記念して、
「日本最古の梵鐘として名高い當麻寺の国宝梵鐘が、展覧会会期中當麻寺境内で特別公開されます」
とのこと。
このレアな機会があったからこそ、今回の奈良行きを決めたようなものです。
それだけに。
法隆寺から當麻寺まで、何度も道に迷い、トータルで1時間半近く自転車を漕ぎ続けることになりましたが。
そんな苦労はなんのその。
着いたときは、むしろテンションが上がりきっていたくらいです。
「高まる~」
《當麻寺本堂(曼荼羅堂)》 (ジャンル:建造物) を見て、
《當麻寺東塔》 (ジャンル:建造物) を見て、
《當麻寺西塔》 (ジャンル:建造物) を見て、
本堂内の 《当麻曼荼羅厨子》 (ジャンル:工芸品) を見て、
金堂に安置されている 《塑造弥勒仏坐像(金堂安置)》 (ジャンル:彫刻) を見て。
いよいよ、 《梵鐘》 (ジャンル:工芸品) とご対面。
こちらが、日本最古の梵鐘なのですね。
確か、妙心寺で国宝の梵鐘を観た時も、 “日本最古の梵鐘” と言っていたような。。。
(その模様は、こちら)
ただし、妙心寺の梵鐘は、698年製。
當麻寺の梵鐘は、それよりも古い680年製。
こちらの方が、正真正銘の “日本最古の梵鐘” であるようです。
「・・・・・・・・・・・・・・・ん?」
日本最古の梵鐘の前で、ひとしきり思いにふけったところで、とある疑問が。
どう見ても、この梵鐘をおさめる鐘楼が、
今回の特別公開のために作られたようなものには見えないのです。
思い切って、お寺の関係者さんらしき人に聞いてみました。
「あの~。この鐘楼って、今回の特別公開のために作られたものなのですか?」
「いやいや、そんなまさか。昔からありますよ」
「えっ、じゃあ、あの梵鐘って、昔から普通に見れたんですか?」
「見れましたよ」
「えっ、えっ、じゃあ、特別公開ってのは??」
「あぁ、それは、この足場のことですよ」
案内されるがままに、鐘楼の裏手に回ってみると・・・
「・・・・・。(絶句)」
「この足場に上れば、近くで見ることが出来ますよ。どうぞ」
仕方がないから、足場に上りましたとも。
間近で写真も撮りましたとも。
でも、一言だけ言わせてください。
「これは、特別公開とは言わないのだーーー!!!」
特別に公開されているのは、梵鐘ではなく、むしろ、この足場です。
このために奈良県まで来たのかと思うと泣けてきます。
「だーーー!!!」
傷心の国宝ハンターは、その後、一心不乱に自転車を漕ぎ続け、西へ。
気づけば、桜井市に付いていました (1時間以上は漕いでいたでしょうか)
実は、この街には、今年指定されたばかりの新国宝があるとのこと。
予定にはありませんでしたが、立ち寄ってみることにしました。
阿倍仲麻呂、安倍晴明 (安倍なつみも?) などを輩出した安倍一族の氏寺・安倍文殊院です。
拝観料にお抹茶とお菓子代も含まれているので、まずは一服。
梵鐘に関してのモヤモヤが、スーッと消えていくようでした。
結構なお点前で。
そして、いよいよ新国宝 《木造騎獅文殊菩薩及脇侍像》 (ジャンル:彫刻) とご対面。
高さ7メートルもある騎獅文殊菩薩像のお姿は圧巻も圧巻。
これまでに国宝ハンターである前にアートテラーとして、
国内外さまざまなアーティストのインスタレーション作品を目にしてきましたが、
それらと比較しても、1、2を争うほどの素晴らしさだったと思います。
圧倒的な美しさや力強さもさることながら、
チョロチョロしている (?) 脇侍の善財童子像を、
文殊菩薩を乗せている獅子がガンつけている様子が、とってもユーモラス。
スゴいんだけど、どこかほっこりもする。
アートとして不足の全くない作品でした。
これは、むしろ今まで国宝で無かったことが驚きなくらいの傑作です。
さて、阿部文殊院を観終ったところで、時間は15時。
ここから足を延ばせば、もう一か所くらい回れそうな気はします。
地図や奈良のガイドブックを睨みつつ、考えること数分。
一つの決断をしました。
「ここで、一旦、相棒 (=緑のレンタサイクル) と別れて、電車で移動しよう!」
近鉄桜井駅から電車で移動し、室生大野口駅へ。
そこから、さらにバスに乗って、室生寺に到着。
どうにかこうにか拝観時間ギリギリに間に合いました。
なんとも辺鄙な場所にあるお寺ですが。
真言宗のお寺ながら、女人でも入山が許されたことから、
「女人高野」 と呼ばれ、昔から信仰を集めてきたお寺なのだとか。
高校で言うならば (?) 、男女共学って感じなのでしょうか。
見どころはなんと言っても、 『美の巨人たち』 でも取り上げられた・・・
《室生寺五重塔》 (ジャンル:建造物) です。
美しい。ただただ美しい。
あまりの美しさに、どう写真に撮るべきか悩んでいると、
お寺の方がベストアングルを教えてくださいました。
それが、こちら↓
拝観時間ギリギリについたおかげで、人がほとんどいないこと。
ちょうど西日が当たっていること。
そして、シャクナゲのシーズンであったこと。
そんな3つの奇跡が重なっていることで、素晴らしい写真が撮れていると、お寺の人が絶賛。
(僕は、そう思っていませんがf^^;)
「この写真は、大きく引き伸ばして、額に入れるべきだよ!
その時は、5000円くらいの額を買って、額と写真の間の縁は黒い紙だな。うん。」
と、仰っていました。
まだ話は続きそうだったのですが (笑)
他の国宝も見たいので、上手くフェイドアウトし、 《室生寺金堂》 (ジャンル:建造物) へ。
こちらの本堂の中には、 《木造釈迦如来立像(金堂安置)》 (ジャンル:彫刻) と、
《木造十一面観音立像(所在金堂)》 (ジャンル:彫刻) 、
さらには、 《板絵著色伝帝釈天曼荼羅図(金堂来迎壁)》 (ジャンル:絵画) が祀られています。
ちなみに、この伝帝釈天曼荼羅図。
なんと木造釈迦如来立像が前に立っているため、よく見えないという有様なのです。
国宝が国宝にカブって、よく見えない。
ある意味で、なんとも贅沢な状況です。
その後、 《室生寺本堂(灌頂堂)》 (ジャンル:建造物) と、
《木造釈迦如来坐像》 (ジャンル:彫刻) も無事にハンティングし、帰路へ。
こうして激動の一日目が終了しました。
この一日でゲットした国宝の数は、63件。
間違いなく、国宝ハンターとして1日で目にした国宝数の新記録です。
・・・・・しかし、この時、国宝ハンターは翌日に待ち受ける過酷な状況を知る由も無かったのです。
今現在の国宝ハンティング数 413/1088(1085改め)
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第五十五話 国宝ハンター、決断する!
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