J.M.W.ターナーに、
《金枝》 1834年 テイト、ロンドン © Tate, London 2013
伊藤若冲に、
《梅と鶴》 江戸時代(18世紀)
(注:展示は、 6/11~7/7の期間です)
J.W.ウォーターハウスに、
《人魚》 1900年 王立芸術院、ロンドン
© Royal Academy of Arts, London;Photographer: John Hammond
酒井抱一に、円山応挙に、黒田清輝に、ロセッティに・・・と、
東京藝術大学大学美術館で現在開催中の美術展に、超豪華な顔ぶれが勢ぞろいしています。
・・・・・が、いまいち彼らの共通項が、よくわかりません(;^_^A
皆さんは、何のくくりですか??
その答えは、全員、夏目漱石の作品と深い関係がある芸術家ということ。
例えば、代表作の 『坊つちゃん』 の文中には、
「あの松を見たまえ、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」 と赤シャツが野だに云うと野だは 「全くターナーですね。どうもあの曲り具合ったらありませんね。ターナーそっくりですよ」と心得顔である。
という一節が登場。
確かに、ターナーの作品には、上が傘のように開いている松が描かれています。
『草枕』 の文中では、
床にかかっている若冲の鶴の図が目につく。これは商売柄だけに、部屋に這入った時、すでに逸品と認めた。
という一節が登場し、
『三四郎』 では、 画集に登場するウォーターハウスの 《人魚》 の絵に惹かれた三四郎と美禰子が、
「人魚 (マーメイド)」 と二人でささやくシーンが描かれています。
・・・と、例を挙げればキリがないくらいに、
夏目漱石の小説は、美術と深~い関係があるのです。
「だったら、夏目漱石にまつわる美術作品、それも本物を、一堂に集めてしまおう!」
と開催されているのが、 “夏目漱石の美術世界展” という美術展。
「その発想はなかったわ」 と思わず膝を叩きたくなる斬新な企画です。
もちろん企画倒れになっておらず、内容も秀逸。
“むしろ、何で今まで、こういう美術展がなかったんだろう?”
と、不思議に思うくらい夏目漱石と美術との相性はバッチリでした。
7月7日まで開催されています。
漱石よりも前の時代に活躍した芸術家の作品を小説に登場させるだけでなく、
『三四郎』 の中では、同時代の芸術家・黒田清輝をモデルにした人物を登場させるなど、
夏目漱石が、その小説でやっていることは、今でいうところのメディアミックス。
その概念がない時代に、小説世界に、積極的に美術という分野を取り入れたのは、まさに慧眼です。
改めて、夏目漱石の天才ぶりを実感した美術展だったと思います。
ただ、その天才ぶりに感じ入る一方で。
夏目漱石が批評した同時代の作家たちの作品も展示されているのですが。
その批評が、あまりに毒舌すぎて、夏目漱石という人物が、ちょっとイヤになります (笑)
井筒監督や有吉弘行以上に、毒舌。
愛のある毒舌でhなく、愛の感じられない毒舌です。
特に印象的だったのが、中村不折の 《巨人の蹟》 に対するコメント。
「巨人ではなく、単なる汚らしい男」 だと、一刀両断していました。
まぁ、確かに、そうなんですよね・・・ (苦笑)
ちなみに。
会場では、夏目漱石が描いた文人画も紹介されています。
《山上有山図》 1912年 岩波書店
お世辞にも、あまり上手ではないと思っていたら・・・。
キャプションにも、そのようなことが書かれていました (笑)
自分が他人に対して行ったことは、必ず自分自身に返ってくるのですね。
夏目漱石を反面教師にして (←?) 、天に向かって唾を吐かないよう気をつけます。
他にも、橋口五葉による 《『吾輩ハ猫デアル』下編装幀画稿》 をはじめ、
1907年 鹿児島市立美術館
漱石の小説本の秀逸なブックデザインも紹介されていて、
実に、バラエティ豊かで、内容の充実した美術展になっていました。
漱石の小説をカバンに忍ばせて訪れたい美術展です。
最後に。
今回の美術展で強烈なインパクトがあった作品をご紹介。
B.リヴィエアーの 《ガダラの豚の奇跡》 です。
1883年 テイト、ロンドン © Tate, London 2013
数万匹もの黒豚の大群が追いかけてくるシーンが描かれています。
まるで悪夢です。。。
何をしたら、こんな状況を招いてしまうのでしょう。。。
ちなみに、この絵を観た漱石は、
『夢十夜』 の中に、豚の大群が追いかけてくる場面を登場させています。
夏目漱石にとっても、相当インパクトのあった絵なのですね。
<巡回情報>
7月13日(土)~8月25日(日) 静岡県立美術館
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夏目漱石の美術世界展
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