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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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生誕120年 宮芳平展

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突然ですが、皆様に質問です。
こちらの人物は、一体、誰でしょう?

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-自画像  《自画像》 安曇野市豊科近代美術館蔵


え~、ドランクドラゴンの鈴木でも、髭男爵の男爵じゃない方でもありません。
正解は、宮芳平。
現在、練馬区立美術館で開催中の “生誕120年 宮芳平展” で注目を集めている画家です。
その生涯の大半を、女子高の美術教師として過ごしたため、ほとんど無名に近い画家なのですが。
実は、何を隠そう、森鴎外の短編小説 『天寵』 の主人公M君のモデルが、宮芳平。
他にも、デッサンコンクールにて村山槐多をうならせたという逸話があるなど、
まさに、知る人ぞ知る伝説的な市井の画家なのです。


その作風は、モーリス・ドニのようでもあり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ドニ  《母と子 その1》 茅野市美術館蔵


モローのようでもあり、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-白馬  《白馬》 安曇野市豊科近代美術館蔵


ルオーのようでもあり。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-聖夜  《聖夜》 安曇野市豊科近代美術館蔵


宮芳平スタイルのようなものが、なかなか見えてきません。
作風が掴みづらいことが、最大の作風とでも言えましょうか。
ちなみに、今回出展されている作品の中で、
特に多くみられたのは、 《海 その2》 のように、激しい筆致で描かれた作風です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-海 その2  安曇野市豊科近代美術館蔵


・・・・・と言っても、パソコンの画像では、全く伝わらないですね (汗)
画像でも、穏やかではない海の表情が、多少は伝わるとは思いますが。
実物は、この何十倍も、穏やかではありません。
その激しい筆致を眺めていると、酔ってしまいそうになってしまったほど。
海が持っている満ち引きのパワーのようなものが、
画面に詰め込むかのように、グワングワンと描きこまれているような印象でした。
「東京湾に沈めるぞ!」 と脅されるよりも、
《海 その2》 に沈めるぞ!」 と脅される方が、何十倍も怖いです (←?)



ただ、今回の宮芳平展を通じて、初めて宮芳平なる人物を知ったのですが。
何よりも興味を惹かれたのは、作品以上に、宮芳平その人自身でした。
森鴎外の短編小説のモデルになるほどまでに、森鴎外と交流を深めた宮芳平。
その出会いは、とてもユニークなものでした。

まだ東京美術学校の画学生だった頃の話。
自信作の 《椿》 を第8回文展に出品するも・・・

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-椿  安曇野市豊科近代美術館蔵


結果は、あえなく落選。
どうしても納得のいかなかった宮は、
その理由を直接聞くべく、審査委員だった森鴎外の家に乗り込んだのだとか。
M-1グランプリに例えるならば (?) 、
予選で落ちたことに納得いかないアマチュアが、大会審査委員の中田カウスの家に直談判にいくようなもの。
そのバイタリティーや行動力には、常識非常識は抜きにして、一種の清々しさすら感じます (笑)


また、図録で紹介されていた宮のエピソードに、
ミレーのような画家になりたいと思い、東大の農学部を受験したというものがありました。
「ミレー=農民画家→農業を学ばねば!」 と考えてしまったのだそうです。
真っ直ぐというか、おバカというか・・・ (笑)
結局、農学部への進学を思いとどまり、ちゃんと美術学校に進んだそうです。



こんな愛すべき画家の存在を知ることが出来ただけでも、足を運ぶ価値はありました。
星
このように、知る人ぞ知る芸術家にスポットを当てる美術展は、まさに練馬区立美術館のお家芸。
次は、どんな芸術家を紹介してくれるのか。
これからも練馬区立美術館から目が離せません。




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