現在、根津美術館では、 “井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ” が開催されています。
こちらは、侘び茶道具の最高峰と称される 「井戸茶碗」 をテーマにした展覧会です。
出展されているのは、根津美術館が所蔵する井戸茶碗だけでなく、
小井戸茶碗 銘 忘水 朝鮮・朝鮮時代 16世紀 根津美術館蔵
重要文化財の 《井戸茶碗 銘 越後》 や、五指に入る大井戸茶碗との定評がある 《大井戸茶碗 銘 有楽》 など、
日本全国の美術館や寺社が所蔵する井戸茶碗界 (?) のトップスターばかり。
さらには、個人蔵の井戸茶碗の名品も沢山紹介されているので、
陶磁器ファンには、まさに夢のような井戸茶碗展と言えましょう。
さて、陶磁器ファンには夢のような展覧会でしょうが。
そこまで陶磁器ファンでない僕のような人にとっては、
同じような茶碗が、ズラ~っと並んでいるだけの地味な展覧会です。
でも、並べられた井戸茶碗の名品たちと、じっくり向き合ってみると、
ただ地味な展覧会なのではなく、滋味深い展覧会であることに気づかされました。
一見すると、どれも同じようなベージュ色 (注:正しくは枇杷色と表現するようですが) の茶碗なのですが。
見比べてみると、それぞれに個性があるのが、よくわかります。
例えるなら、サル山を、ずっと眺めていたら、
それぞれの猿の個性がわかってくるような感覚に近いです。
・・・・・猿に例えるのは、マズかったでしょうか。
例えるなら、日本酒を飲み比べることで、
それぞれの日本酒の味わいの違いがわかるような感覚に近かったです。
そう。
今回の展覧会は、まさしく井戸茶碗のテイスティングのようなもの。
これまでも、井戸茶碗を目にしたことはありますが。
見比べる機会には恵まれなかったので、
「井戸茶碗は、井戸茶碗。」 という認識でしか見てなかった気がします。
今回の展覧会を通じて、初めて、ちゃんと井戸茶碗を観ることが出来た気がします。
数多く展示されている井戸茶碗の中で、
やはり別格は、国宝の 《大井戸茶碗 銘 喜左衛門》 でした。
国宝 大井戸茶碗 銘 喜左衛門 朝鮮・朝鮮時代 16世紀 大徳寺孤篷庵蔵
一目見るやいなや、頭の中に流れてきたのは、平原綾香の 『Jupiter』 。
おそらく、 《大井戸茶碗 銘 喜左衛門》 の風格や肌合いに、木星を感じたのだと思います。
『Jupiter』 の歌詞に、 「♪私のこの両手で 何ができるの?」 とありますが。
万が一、 《大井戸茶碗 銘 喜左衛門》 でお茶を飲む機会に恵まれたら、
きっと両手で持つのが畏れ多くて、 「私のこの両手で 何ができるの?」 と思ってしまいそうです。
木星を連想する一方で、やはりその風格や肌合いから、ローマの遺跡も連想しました。
ともあれ、どちらにしても、雄大で悠久なイメージ。
小さな茶碗なのに、感じられるスケールは、とてつもく大きかったです。
根津美術館が所蔵する 《青井戸茶碗 銘 柴田》 も、印象深い一碗。
重要文化財 青井戸茶碗 銘 柴田 朝鮮・朝鮮時代 16世紀 根津美術館蔵
青井戸茶碗とは、釉に青みがかかったものを指すのだそうですが・・・・・青くはないですよね。
ちなみに、銘の柴田とは、この茶碗を、柴田勝家が織田信長から拝領したことに由来するとのこと。
印象としては、何というか真面目なイメージ。
ものすごく真面目な陶芸家が、ものすごく真面目に作ると、このような茶碗が出来るのでは。
他にも、繋ぎの部分が大槻ケンヂを彷彿とさせる (?) 《青井戸茶碗 銘 慈照寺》 や、
ピンクベージュでキュートさを感じる 《大井戸茶碗 銘 細川》 など、挙げていたらキリがありません。
皆様もお気に入りの井戸茶碗に出合ってみてくださいませ。
ちなみに。
根津美術館の茶道具コレクションを、
季節に合わせて紹介する展示室6では、国宝の 《鶉図》 が展示されています。
こちらもお見逃しなく。
国宝 鶉図 伝李安忠筆 中国・南宋時代 12-13世紀 根津美術館蔵
5位以内を目指して、ランキングに挑戦中!(現在11位です)
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!
↧
井戸茶碗 戦国武将が憧れたうつわ
↧