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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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愛せよコスメ!~message from KISS ME~

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根津美術館から、六本木方面へ向かって骨董通りを歩いていたときのこと。
何やら気になるミュージアムを発見してしまいました。

紅ミュージアム


その名も、伊勢半本店 紅ミュージアム。
“くれない” ではなく、 “べに” と読みます。
それもそのはず、こちらのミュージアムを運営する伊勢半本店とは、
文政8年に創業して以来、約190年にわたって、当時と変わらぬ製法で紅を守り続けている老舗。
現在では、日本で唯一の紅屋さんなのだそうです。

メイク男子でもなんでもないので、入るのに、ちょっと戸惑ってしまいましたが。
このブログを読んでくださる方の多くは女性なので、勇気を出して入って見ることにしました。

サロン
(注:この記事に使用している写真は、特別に伊勢半本店 紅ミュージアムさんより提供頂いたものです)


館内は、ミュージアムというよりも、美容院のような印象。
そんなサロン的なスペースで、パネルや実際の商品などを交えて、紅に関するあれこれが紹介されています。

「まぁ、紅なんだから、赤いんでしょ。」

くらいの軽い気持ちで、サラサラッと展示を眺めていたのですが。
伊勢半を名実ともに、江戸一の紅屋にまで押し上げた人気商品の小町紅。
その実物を目にした瞬間、思わず目の色が変わってしまいました。

小町紅


「あ、赤くないっ!」

赤とは真逆(?) の美しく神秘的な玉虫色が光を放っているではないですか。
そのあまりの玉虫色の美しさに、しばしボー然。
これまでに観た、どんな玉虫色よりも確実に美しかったです (もちろん美術品を含む)
ちなみに、この一杯のおちょこの内側を刷くために使われる紅花の数は、なんと1000輪!
紅花の花びらに含まれる赤色色素は、わずか1%に過ぎないそうで、
伊勢半の小町紅は、その希少な赤のみで丹念に作られているのだとか。

「まぁ、紅なんだから、赤いんでしょ。」

などと、何も知らず甘く考えていたことを、心から反省です。

そんな玉虫色に輝く小町紅。
実際に使ったら、唇まで玉虫色になってしまいそうな気がしますが。
水に溶くと、ちゃんと赤くなるので、ご心配なく (←?)
その人の持つ唇の色を反映して発色するため、人によって発色は違うようです。
ちなみに、黒人の女性が付けた時は、鮮やかなゴールドカラーになったのだとか。
なんと神秘的なキラキラ
希望の方は、紅を試すことも可能だそうですので、是非体験されてみてはいかがでしょう。
(自分は、その後に仕事が控えていたので、さすがに遠慮しましたw)


さてさて、すっかりサロンスペースだけでも楽しんでしまいましたが。
現在、こちらの奥にある展示スペースでは、
特別展として、 “愛せよコスメ!~message from KISS ME~” が開催されていました。

ポスター


こちらは、伊勢半から昭和初期に誕生したコスメブランド 「キスミー」 に焦点をあてた展覧会。
貴重な商品や資料を展示しながら、キスミー化粧品の歩みが紹介されていました。

企業史展


会場には、紅屋ならではのこだわりが詰まった口紅の数々がズラリ。
それらを眺めるだけでも、十二分に楽しめます。

口紅


ちなみに、キスミーの看板商品は、こちらのシャインリップ。

シャインリップ


多い時には年間1000万本以上を販売し、
当時の女子高生からOLまで誰もが必ず持っていたという伝説のリップだそうです。
あまりに売れすぎて、学校の近くの薬局では取り扱わないようにとお達しが出たとか出なかったとか。


個人的に興味深く観賞したのは、キスミーのユニークな商品・宣伝活動を紹介するコーナーでした。
今ではすっかり当たり前の台紙付き商品のセルフ販売。

キスミー


この販売方法を最初に初めたのは、なんとキスミーだったのだとか。
当時の化粧品の販売は、デパート等での対人式販売が主流。
そんな時代に、まだ食料品を買う場所のイメージが強かったスーパーで、
気軽に化粧品を手に取って買うことが出来るようにと考えられた販売方法だったようです。

この他にも、キスミーのさまざまな販促活動が紹介されていましたが、
特に衝撃的だったのは、 「10万円のネグリジェが当る」 というキャンペーンでした (笑)
昭和30年代には、 「キスミーマンボ祭り八千人ご招待」 というキャンペーンも。
どんな祭りだったのでしょうか?!


純粋に文化史として興味深かい展覧会でした。
男の僕でさえ興味深く感じたので、女性ならば、もっと興味を惹かれることでしょう。
キスミーの口紅に特にお世話になった世代の方ならば、なおさらです (←?)
星




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