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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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皇室の彩 百年前の文化プロジェクト

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現在、東京藝術大学大学美術館で開催されているのは、
東京藝術大学創立130周年記念特別展 皇室の彩 百年前の文化プロジェクト” という展覧会です。

会場
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


大正から昭和の最初期にかけて、皇室の方々の御成婚や御即位といった御祝いのために、
一流芸術家たちが技術の粋を尽くして献上品を制作した国家規模のプロジェクトがありました。
まさに、文化版&芸術版のプロジェクトⅩ。
国内最高峰の技術をもって作られた美術品ながらも、
献上後は、宮殿などに飾り置かれていたために、一般の人々の目に触れる機会はほとんどなし。
いつしか、その存在はを知るものはほとんどいなくなっていました。
そんな知られざる名品の数々が、宮内庁から約100年ぶりに、
当時プロジェクトを指揮した東京美術学校 (現・東京藝術大学) に里帰りした展覧会です。

大観


展覧会の目玉は何と言っても、献上後はじめて皇居外での公開となる 《御飾棚》

鶴


皇太子 (昭和天皇) ご夫妻のご成婚を祝して、
時の文武官 (内閣総理大臣以下、官吏) 一同から送られたものだそうです。

飾り棚4
《御飾棚》 鳳凰菊文様蒔絵(昭和天皇へ献上) 昭和3年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵

飾り棚
《御飾棚》 鶴桐文様蒔絵(香淳皇后へ献上) 昭和3年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵


お二人がご成婚したのは、大正13年ですが。
実は、この豪華絢爛な棚が献上されたのは、昭和3年のこと。
なんでも飾棚と付属の棚飾を完成させるのに、
5年 (!) の歳月がかかってしまったのだそうです。
結婚祝いというには、時間が経ちすぎてしまっている気もしますが。
それだけの時間をかけてでも、最高峰のものを制作し、献上したかったのでしょう。
飾棚の金具一つ一つからも、その気概がひしひしと伝わってきました。

皇居内では、付属の棚飾が棚を飾っている状態がデフォルトのようですが。
今回の展覧会では、棚飾は展示ケース内で独立する形で展示されています。

棚


棚飾の作者は、板谷波山をはじめとする当時の一流芸術家ばかり。
豪華絢爛な棚飾を飾るための、豪華絢爛な飾棚なのか。
それとも、豪華絢爛な飾棚に飾られるための豪華絢爛な棚飾なのか。
“鶏が先か、卵が先か” みたいな状態です (←?)。

ちなみに、担当学芸員さん曰く、
《御飾棚》 を鑑賞する際のオススメポイントは、裏側とのこと。

裏


献上されて以来、ずっと壁を背にして設置されていたとのことで、
《御飾棚》 の裏側は当時の輝きをほとんどそのまま残しているのだとか。
確かに、裏側と比べてしまうと、表側は輝きが落ち着いているような気がします。
というか、壁に接するところなのに、裏側もこんなに贅の限りが尽くされているのですね。
さすが皇室。
我が家にある棚の裏側なんて、ペッコペコの板です。


さてさて、今回出展されている献上品の中で、
特に個人的に印象に残っているのは、《東京名勝図・萬歳楽図衝立》

東京名勝図・萬歳楽図衝立


こちらは、大正4年に東京市より大正天皇に献上された衝立で、
表面の中央には、当時の東京市の地図 (縮尺2万分の1) がドーンと配置されています。
さらに、その周囲には、浅草観音堂や上野公園といった東京の名勝地が扇面図の形で配置。
それぞれの扇面図を手掛けたのは、東京市に在住だった一流工芸家15名とのこと。
これまで様々な古地図を目にしてきましたが、
こんなにも豪華絢爛な古地図が存在していたとは!
思わず食い入るように見入ってしまいました。
古地図マニア必見の作品です。


ちなみに、工芸品だけでなく。
山口蓬春の 《三熊野の那智の御山》 をはじめ、

山口蓬春《三熊野の那智の御山》
山口蓬春 《三熊野の那智の御山》 大正15年 宮内庁三の丸尚蔵館蔵


宮内庁三の丸尚蔵館が所蔵する絵画作品の数々も、会場に彩を添えていました。

宮内庁三の丸尚蔵館


日本屈指のプライベートコレクション (?) が堪能できる貴重な展覧会です。
これらの作品を一同に目にできる機会は二度とないかも。
皇室を訪れるご予定がない方は、是非、この機会をお見逃しなく!
星


┃会期:2017年10月28日(土)~11月26日(日)
 ┃会場:東京藝術大学大学美術館
 ┃
http://www.geidai.ac.jp/museum/exhibit/2017/koshitsu/koshitsu_ja.htm

~読者の皆様へのプレゼント~
こちらの “皇室の彩” のペアチケットを、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。

https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
(〆切は、11月15日。当選は発送をもって代えさせていただきます)




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わらしべ長者生活

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美術品を手に、銀座を代表するギャラリーの数々を訪問し、
昔話 『わらしべ長者』 のように、物々交換してもらおうという企画。
それが・・・

わらしべ


まずは、日本画家・阿部瑞樹さんの作品が、靖山画廊でツジモトコウキさんの日本画作品に。
そして、前回、その日本画作品が柴田悦子画廊にて、
馬場京子さんの 《虫かごワインケース》 ・・・もとい、《くちなし》 というちょっと怪しげな作品に大変身。
何と変わるかわからない。
それが、この “わらしべ長者生活” の醍醐味です。


とは言え、早くも2回目にして、変身のクセがすごかったので、
ここは一度企画を立て直すためにも、頼れるギャラリストさんのもとへと向かいました。
訪れたのは、松屋銀座のすぐ裏にあるギャラリーアートもりもと

もりもと


1階のほうではなく、2階にあるギャラリーです。

2階


ギャラリーアートもりもとは、洋画や彫刻を中心に取り扱っているギャラリー。
中堅や若手作家の企画展をコンスタントに開催しています。
僕が訪れた日に開催されていたのは、“辛文遊展「君を映す」”
(注:展示は11/11まで)

展示


こちらは、辛文遊(かのとふみゆ) さんの記念すべき初個展です。
実は、辛さんとは第2回ホキ美術館大賞展の内覧会で、
受賞者とインタビュアーという関係でお会いしています。


(辛さんとのくだりは、12分30秒頃)


あれから、約1年。
久しぶりにお会いしたら、髭が立派になっていました。

ひげ


ちなみに、辛さん本人と映っているのは、
5年前に東北芸工大の修了制作として描いたという大作。
タイトルは、《むきだしの彼女》 です。
彼女さんのくつろぎっぷりからも、相当にラブラブぶりが伝わってきますが。
何気なく画面に描かれたかっぱえびせん (?) に目を向けたところ・・・

かっぱえびせん
アップ
アップ


「ラブラブだよ!ヒューヒューだよ!」

彼女さんへの愛が溢れに溢れていました。

「今もお付き合いしているのですか?」

と伺ったところ、

「今は妻です。」

とのこと。

ご馳走さまでした!!


と、辛さんとの旧交を温めたところで、いよいよ本題へ。
ギャラリーアートもりもとの佐々井智子さん (森本さんではない!) 、よろしくお願いいたします。

佐々井


と言うや否や、早速バックヤードから作品を持ってきてくれました。
いつもチャキチャキ、さすが仕事が早い佐々井さんです。

miniQ.P


手にしていたのは、林茂樹さんの 《miniQ.P》 という作品。
プニプニしていて可愛らしいと思ったら・・・肌が全然プニプニしていません!
それもそのはず、こちらはなんと陶磁器作品。
林茂樹さんは、セラミック表現の可能性を追求し、
モビルスーツに身を包む子供などの立体作品を制作している陶造形家とのことです。

「この作品と交換でも面白いと思うんだけど。
 今のところ現役作家の作品が続いているから、
 物故作家の作品という展開も面白いと思うのよね」

というなり、すぐさまバックヤードに別の作品を取りに向かいました。
やはり仕事が早い。
そして、企画の展開も考えてくれている。
さすが仕事のできる佐々井さんです。

「ちなみに、その 《miniQ.P》 は限定200体で、
 うちのギャラリーで販売しているから、それが気に入ったなら、いつでも言ってくださいねー」

さりげなく告知を織り交ぜてくる。
そんな仕事のできる佐々井さんが、バックヤードから一つの作品を持って戻ってきました。

「とに~さん、この作品、0円と言えば0円なんだけど」

「えっ、どういうことですか?!」

まさか、3回目にして価格が0円に。
予想を遥かに超える急展開です。

「有元利夫 (※) の版画作品なんだけど、サインが無いの」
(※有元利夫・・・1946年生まれ。「ロマネスクな異色新人」としてデビューし、「画壇のシンデレラボーイ」とも呼ばれた天才画家。38歳で夭折。
 没後25周年展の記事は、こちらをクリック→https://ameblo.jp/artony/entry-10580731641.html


有元


生前の有元利夫と関係の深かった、とある額屋さんから戴いたものだそうで、
作品に一切サインがないため、値段が付けられず、売るつもりのない作品とのこと。
これまでにギャラリーに飾ったことは何度かあるそうです。

サインは無いですが、来歴は確か。
有元利夫の作品であることは間違いありません。
もし仮にサインがあったら、それなりの価格になるそうです。
しかし、佐々井さん曰く、サインなしである以上、売値が付けられないので、
次のギャラリストさんの判断次第では、0円となる可能性も大いにあるのだとか。

「とに~さん、どうします?」

ここで勝負に出るか。
それとも、堅実な交換をするか。
さんざん悩みましたが、

“有元利夫の作品と交換できるチャンスを逃す手はないでしょ!”

というわけで、交換成立。

有元


我が家に有元利夫の作品がやってくることとなりました。

部屋
アップ


この交換が吉と出るか凶と出るか。
次回にご注目。

はたして鑑定やいかに?!
(↑なんと、あのギャラリストさんが登場します)




【今回ご協力いただいた画廊】
ギャラリーアートもりもと
住所:東京都中央区銀座3-7-20 銀座日本料理会館2階




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超絶記録!西山夘三のすまい採集帖

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LIXILギャラリーで開催中の “超絶記録!西山夘三のすまい採集帖” に行ってきました。

lixil


こちらの展覧会の主役は、西山夘三 (にしやまうぞう 1911~1994)。
庶民の生活実態を詳細に調査し、日本のすまい研究を牽引してきた建築学者、建築家です。
西山


ちなみに、西山夘三は、「食」 と 「寝」 の分離の必要性をいち早く唱え、
食堂と台所を一続きとしたダイニングキッチンを導入した人物としても知られています。

今回の展覧会では、そんな西山夘三の業績の数々も紹介されていますが。

業績
記録


それ以上に・・・

超絶的


“超絶記録” と評される西山夘三の記録魔・メモ魔ぶりにスポットが当てられていました。
新聞記事を切り抜くのは当たり前 (←?)、

スクラップ


日記も生涯にわたって書き記しています。
その数、なんと400冊

日記


しかも、字ビッチリ。

字


読める気がしません。
というか、読む気がしません (笑)

また、生涯で撮った記録写真も相当な数だったようで、
なんと約20万コマにも及ぶといわれています。

写真


もはや、ここまで来ると個人というより、業者のレベルです。
さらに、それらとは別に、商店街の出店をひとつひとつ記録したり、

商店街


食べたメニューをひとつひとつイラスト入りで記録したり、

記録


と、記録魔ぶりは留まるところを知りません。
訪れた展覧会は、こうして記事にしていますし、
読んだ本は、mixiのレビュー機能を使って感想をつけていますし、
僕もどちらかと言えば、記録魔のケがあるほうですが。
西山夘三には負けます。
彼に比べたら、優しい記録魔です。


ちなみに、建築学者、建築家のわりには (←?)、
絵がお上手だなぁと思っていたら、幼い頃は漫画家を目指していたとのこと。

漫画
漫画


どうりで。

記録より記憶に残る人物というのはいますが。
記録のしすぎで記憶に残る人物というのは、
西山夘三をおいて他にいないのではないでしょうか。
星
“記録する” という行為に着目したユニークな展覧会であったことを、ここに記録しておきます。




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鏨の華 ―光村コレクションの刀装具―

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この秋、根津美術館で開催されているのは、
高嶺の花・・・ではなく、“鏨の華” (たがねのはな) という展覧会。

たがね


で作られたやかな刀装具をテーマにした展覧会です。
根津美術館に伝わる約1200件の 「光村コレクション」 から選りすぐりの名品が紹介されています。

会場
会場


そんな光村コレクションなる刀装具の一大コレクションを築いたのが、こちらの人物。

光村


美術展の図録の出版などでお馴染みの光村印刷の創業者・光村利藻です。
なんでも長男の初節句がきっかけで、
刀剣や甲冑に興味を抱くようになり、次第に刀装具へとその関心が移っていったのだそうです。
名品をコレクションするに飽き足らず、
刀装具の美しさを自社が得意とする写真印刷で伝えようと、大型名品図録を制作。
この本は、刀装具研究の礎として名著と評されているのだとか。

鏨廼花


ちなみに、その書名こそが、
今回の展覧会のタイトルになっている 『鏨廼花』(たがねのはな) なのです。

刀装具の展覧会というと、男性向けのイメージがあるかもしれませんが。
花 (華) に例えられるだけあって・・・

刀装具

贅と技巧の限りが尽くされた刀装具は、まるでアクセサリーのよう。
表面に無数に打ち込まれた魚子地 (ななこじ) に、
スポットライトが反射して、キラキラと輝きを放っていましたキラキラ

反射


女性も十分に楽しめる展覧会です。
星

余談ですが、魚子とは魚卵のこと。
確かに、とびっこやシシャモの卵に似てはいますが、
綺麗かつ超絶的な技法だけに、これを魚卵に例えた先人のセンスを疑ってしまいます。


ちなみに、今回出展されていた刀装具の中で最も華麗で、
しかも、造形も素晴らしかったのが、重要文化財にも指定されている 《聖衆来迎図大小揃金具》
幕末から明治にかけて活躍した伝説の刀装金工職人・後藤一乗の代表作です。

後藤一乗
後藤一乗 《聖衆来迎図大小揃金具》 彫金・緋銅地 日本・江戸時代 19世紀 個人蔵


鍔には来迎する菩薩が7体。
目貫も菩薩となっています。
なんとも有難い、思わず手を合わせたくなる刀装具。
ただ、この刀で斬られる身になって考えてみると、皮肉がすぎる気がします。
「あの世からお迎えが来ているゼ」 的な?


また、刀装具は美しさ、技巧の素晴らしさだけに非ず。
まるでガチャガチャのような(?) 造形としてユニークな刀装具も多く存在しています。
《御伽噺図揃金具(鐔・小柄・目貫・縁頭・栗形・瓦金(裏瓦)・探金・鐺)》 や、

御伽噺図揃金具


《茂林寺釜図透鐔》 なんかも可愛かったですが、
(冷静に考えると、刀を飾る部品がカワイイってのはどうかとも思いますがw)

茂林寺釜図透鐔


個人的に一番気に入ったのは、《睡布袋図二所物(小柄・目貫)》 です。

睡布袋図二所物(小柄・目貫)


布の袋を担ぐのではなく、
布の袋に包まれた、ちょっと珍しい布袋様。
なんともシュールな造形ですが、不思議な可愛さがありました。


さて、刀装具にスポットが当てられた展覧会ではありますが、
せっかくならば刀装具だけでなく、日本刀そのものみたいという方は少なくないはず。
ご安心ください。
展覧会では、日本刀や拵 (鞘や柄など刀装全体) も展示されています。

こしらえ
日本刀


最後に、思わずツッコミたくなった刀装具をご紹介いたしましょう。

砲箭図目貫


その名も、《砲箭図目貫》
銃をモチーフにした目貫です。
刀の一部に銃を装着。
一体、どういうセンスをしているのか。
武器に武器。
発想が完全に小学生です。




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野生展:飼いならされない感覚と思考

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21_21 DESIGN SIGHTで開催中の展覧会、
“野生展:飼いならされない感覚と思考” に行ってきました。

野生


野生展
その字面から、会場はさながらサバンナのような、
はたまたアマゾンのような、野性味あふれる状況になっていることを予想していたのですが。
期待に反して、意外といつも通りの21_21 DESIGN SIGHT。
野性的に感じる作品もあるにはありましたが、

田島
ワイルド


全体的には、ワイルドというよりもマイルドな作品が多かったです。
それもそのはず。
こちらは、思想家で人類学者の中沢新一がディレクターを務めた展覧会で、
自分の中にある飼いならされていない心の領域を 「野生の領域」 と位置づけ、
どうすれば、人々は心の中の 「野生の領域」 に触れることができるか、
そのヒントを、現代の表現者が持つ 「野生」 から探ろうというものなのだとか。
どうやらワイルドな作品を集めた展覧会ではなさそうです。

・・・・・・・・・・・・・・・・。

“あっ、これ絶対、小難しいヤツ!”

僕の 「野生の領域」 が、確実に何かを察知しました。


例えば、こんなコーナーがありました。
なんでも、「かわいい」 は 「野生の魅力の表現」 なのだそうで、
埴輪や土偶の 「かわいい」 は、鳥獣戯画や郷土玩具に受け継がれ、

埴輪


そして、現代のハローキティやケロちゃんに至るとのこと。

キティ
キティ


・・・・・なんのこっちゃ。
その強引な展開が、何よりも野性的な感じがしました。
星


野生展としては、いまいち僕にはピンと来ませんでしたが。
個々の作品では、印象的なものもチラホラとはありました。
特に鈴木康弘さんの 《水の切り株》 がお気に入り。
一見すると何の変哲もない、水で満たされたコンクリート製の切り株のオブジェですが。

水


天井から結露が、はごろもフーズのCMばりにポチャンと落ちると・・・

水


波紋が年輪のように浮かび上がるという作品です。
シンプルですが、アイディアが秀逸。
飽きずに、ずっと見てられる作品でした。

さてさて、実はこの作品が発表されたのは約10年前のこと。
展覧会での役目を終え、屋外で保管していたところ、
いつの間にやら植物が生え、野性が住まうところへと変貌を遂げていたのだとか。
そんな野性化したかつての 《水の切り株》 (現在は、《土の切り株》) も合わせて展示されていました。

切り株


それから、もう一つ印象的だったのが、
渡邊拓也さんの 《道具と作ることのインスタレーション -case1》 という作品。

渡邊拓也


現代の道具の数々が、縄文土器に見られる 「手びねり」 の手法で表現されています。

渡邊拓也
渡邊拓也


この靴、硬くて履けないぜぇ。
このドライヤー、髪を乾かせないぜぇ。
ワイルドだろ~。


ちなみに。
「野生」 の能力を最大限に発揮した人物として、
明治時代の日本が生んだ大博物学者・南方熊楠がフィーチャーされていました。
そんな彼と意外なコラボを果たしていたのが・・・

あおきみか


ガラスアーティストの青木美歌さん。
今年の1月にポーラ ミュージアム アネックスで開催されていた個展で、
初めて青木さんの作品を目にしたときに、“粘菌みたいだなァ” と思いましたが。
まさか、南方熊楠ゆかりの品々と青木さんの作品が実際に競演する日がこようとは!

粘菌


普通の人は思いつかない、
もし仮に思い付いても実現させない取り合わせ。
これぞ、飼いならされない感覚と思考が産んだ展示スタイル。




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第百五十二話 国宝ハンター、視聴する!

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前回までのあらすじ~

日本全国の国宝をすべて目に焼き付ける!
そんな途方もないチャレンジに挑み続けて、6年目。
なんと、国宝ハンターとして書籍を出版することとなりました。
さらに、その縁でテレビに出演することに!
やっててよかった国宝ハンター!



11月3日、文化の日。
僕が出演するTBSの報道・情報番組 『Nスタ』 がオンエアされました。
ちょうどその時間は、外せない仕事があり、リアルタイムでは視聴できなかったのですが。
友人や知人より、

「今テレビ見てるよ!」

という知らせが届きました。
おおむね好反応でしたので、後日、録画したものを観てみることに。

なるほど


“お、始まりました♪”

そして、国宝ハンター・とに~登場。

国宝ハンター


その語感のイメージなのでしょう。
『世界ふしぎ発見!』 のオープニング曲が採用されていました。




登場するととともに、僕のことを軽く紹介してくれていましたが、
その中では、一切、「アートテラー」 というフレーズは出てきません。
代わりに登場したのは、「国宝マニアのとに~さん」 というフレーズ。

“あれっ、僕は国宝マニアなんだったっけ??”

僕自身が戸惑ってしまいましたが・・・

これが、テレビ!

その後、コーナー内に何度か登場するものの。

その後


解説した部分は、ほぼほぼカットされていました。
基本的に僕の役割は、トリビアを言うだけ。
関西のノリのカメラマンに乗せられて、
三条大橋を旅番組風に歩かされたシーンは、もちろんカット。
夜間の京都国立博物館でのシーンも、全編カットされていました。

これが、編集!

それでは、ここでクエスチョンです。

「果たして、国宝ハンター・とに~は、お茶の間にインパクトは残せたのでしょうか?」

おそらくインタビューで登場した、
夜なのにサングラスをかけていた白金マダムのほうが、お茶の間のインパクトを残したはず。
オンエアを楽しみにしてくださっていた皆様、なんかしょっぱい感じで申し訳ありませんでした。


さてさて、気を取り直して。
国宝ハンターの本業 (?) を頑張ります。

通算4度目の “国宝展” へ。
前回の反省を踏まえて、今回は早く着きすぎないようにしました。
到着したのは、8時。
すでに30名ほど並んでいます。
天気はあいにくの雨。

傘


傘を忘れてしまったので、心を無にして、雨の中、並び続けます。
ちょっとした滝行状態で開館を待っているわけですが、
この日、国宝展でハンティングできる国宝は、たったの1件だけしかありません。
すでに第Ⅲ期は観ているため、ほとんどはハンティング済。
しかし、11月7日から12日まで、たった5日間だけしか展示されない国宝が1点あるのです。
その国宝とは、《源氏物語奥入〈藤原定家筆/〉》(ジャンル:書跡・典籍)。

国保王


まぁ、地味です。。。
こちらは、小倉百人一首の撰者・藤原定家による 『源氏物語』 の注釈書。
定家は、自ら写本した本文の末尾に注釈を書き付けていたそうで、
それらの注釈を切り取って、1冊の独立した注釈書に仕立てたものなのだとか。
ちなみに、個人蔵です。

あまりに地味なため、他の人はほとんど見向きもしていませんでしたが。
このためだけに国宝展に来ているので、ガン見もガン見。
でも、何が書いてあるのか、さっぱりわからず (泣)
とりあえず、定家は字が汚いということだけは、わかりました。


国宝展を見終えた後は、法性寺へ。
法性寺は、924年に藤原忠平によって建立されたお寺です。
その後、藤原氏の氏寺として栄え、清水寺や大徳寺に匹敵するくらいの境内があったのだとか。
しかし、現在は・・・

法性寺


ちんまり。

サザエさん家くらいのサイズしかありません。
「大悲山」 という山号が、胸に迫ります。

さて、こちらの本尊が、通常は非公開の 《木造千手観音立像》(ジャンル:彫刻)。
国宝です。

木造千手観音立像


一番の特徴は、顔が正面の左右に1面ずつあること。
さらに、頭上には25面のお顔が。
計28面もお顔がある世にも珍しい千手観音なのです。
ただ、顔を作りすぎたのでしょうか。
肝心の手は、合掌している2本以外は、40本しかないそうです。

“960本は?!”

と思ったら、この千手観音は、手1本につき、25人救えるのだとか。

40 (本) ×25 (人) =1000

なるほどアンサー。


今現在の国宝ハンティング数 935/1108




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新海誠展 「ほしのこえ」から「君の名は。」まで

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2016年最大のヒット映画となった 『君の名は。』 でお馴染みの新海誠監督。
その作品の魅力や制作過程を約1000点の制作資料を交えて紹介する大大大規模な展覧会、
“新海誠展 「ほしのこえ」から「君の名は。」まで” が12月18日まで開催されています。

新海誠


監督からのメッセージがあったり、

監督
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


音声ガイドを担当するのが、『君の名は。』 で主役の声を務めた神木隆之介さんだったり、

音声ガイド


それだけもファンにはたまらない展覧会でしょうが。
会場は、なんと 『君の名は。』 の劇中にも登場する・・・

国立新美術館


国立新美術館。
こんなにもファンを喜ばせる展覧会が、かつてあったでしょうか。

ちなみに、現役のアニメーション監督の展覧会が、
国立の美術館で開催されるのは、これが初めてとのこと。
前前前例のない展覧会です。
また、深海監督は、今年がデビュー15周年。
おそらく、デビューから15年の作家が、
国立の美術館で個展が開催されるのも前前前例が無い気がします。


展覧会は、デビュー作の 『ほしのこえ』 から、

ほしのこえ


最新作の 『君の名は。』 まで。

気味の名は


新海監督が手掛けた6作品すべての魅力が余すことなく紹介されています。
しかも、“ただ制作資料を並べて、ハイ終わり” というような、

12「君の名は。」作画監督・安藤雅司によるレイアウト修正
作画監督・安藤雅司によるレイアウト修正 ©2016「君の名は。」製作委員会
資料


よくある感じのアニメーションの展覧会とは違って、
技術的な面や文学的な面など、あらゆる角度から作品の魅力に迫っていました。

ヒット
ヒット


さらに、映像インスタレーションのような演出など、
展覧会ならではのエンターテイメント性も多々ありました。

映像


新海監督ファンはもちろんのこと、
新海監督作品を1作も観ていない人でも楽しめる展覧会です!
そう断言できるのは、僕がまさにそうだから。
あれだけ世間が盛り上がっていたのに、『君の名は。』 も観ていないのです。

ちなみに、僕のように新海監督作品を1作も観ていない人は、
間違いなく展示を観ている最中に、深海作品が観たくなってくることでしょう。
それも、今すぐ。
特に 『君の名は。』!
早くTSUTAYA (もしくは、GEO) に行かないと!
こんなにも展覧会の鑑賞中に、早く帰りたくなってしまったのは初めてのこと。
そういう意味でも、前前前例のない展覧会でした。
星


┃会期:2017年11月11日(土)~12月18日(日)
 ┃会場:国立新美術館
 ┃
http://shinkaimakoto-ten.com/

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こちらの “新海誠展” のペアチケットを、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。

https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
(〆切は、11月25日。当選は発送をもって代えさせていただきます)




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【特別展】没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然―

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現在、山種美術館で開催されているのは、
“没後60年記念 川合玉堂 ―四季・人々・自然―” という特別展です。

玉堂
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


今年2017年は、『近代日本画壇の巨匠』 と呼ばれた国民的画家・川合玉堂の没後60年の節目の年。
それを記念して開催された回顧展で、
山種美術館が所蔵する玉堂作品を中心に、貴重な初期の作品から、


川合玉堂 《夏雨五位鷺図》 1899(明治32)年 絹本・彩色 玉堂美術館


晩年にいたるまでの代表作の数々が一堂に会しています。

晩年
川合玉堂 《屋根草を刈る》 1954(昭和29)年 紙本・彩色 東京都


ちなみに、川合玉堂の 『玉堂』 の中は、
最初の師である望月玉泉と祖父の佐枝竹堂に由来するとのこと。
『玉堂』 といえば、浦上玉堂という日本美術の巨匠がいますが。
名前がかぶったのは、たまたまだそうで、玉堂という名前を付けた後に、
先人に浦上玉堂という巨匠がいたことを知って、蒼ざめてしまったのだとか。
とはいえ、それで名前を変えることはなかったそうです。
肝が据わっているんだか、いないんだか。

さてさて、「日本の自然は、玉堂が作った」と言われるほどに、日本の自然を多く描いた川合玉堂。
今展にも、日本の自然をモチーフにした作品が多数出展されていました。

会場
左)川合玉堂 《小声雨声》 1951(昭和26)年頃 山種美術館
中央)川合玉堂 《湖畔墓雪》 1950(昭和25)年頃 山種美術館  左)川合玉堂 《涛声松籟》 1951(昭和26)年頃 山種美術館



会場には、マイナスイオンが充満しています。
空気が美味しい (気がする) 展覧会でした。

モチーフがモチーフだけに、
「これは!」 というインパクトの強い作品こそありませんでしたが。
ジワジワと、しみじみと “いいなぁ~” と思える滋味深い作品は多数ありました。

もっとも心に染みたのは、写真右の 《朝もや》 という一枚です。 (注:展示は、11月26日まで)

朝もや
左)川合玉堂 《春風 春水》 1940(昭和15)年 山種美術館  右)川合玉堂 《朝もや》 1938(昭和13)年 東京国立近代美術館


実に、澄んだ空気感。
思わず、スーッと大きく息を吸い込みたくなりました。
冷静に考えると初めて目にする光景なのに、
かつて、どこかで一度目にしたことがあるような (旅行先での早朝散歩?) 。
おそらく、そう感じた人は僕だけではないはず。
きっとみんなの心の中に、川合玉堂 (の絵の世界) が存在するのでしょう。


また、こちらも心に染みた一点。
《山雨一過》 です。

山雨一過
川合玉堂 《山雨一過》 1943(昭和18)年 絹本・彩色 山種美術館


のどかでポカポカした陽気で、観ていて心地良い絵でした。
平和だなぁ。
特にお気に入りな部分は、道の先。
その部分のカラーリングの表現が、なんとも洒脱です。
緑に茶色っぽいオレンジに、青に白。
と、心地良さは一旦脇に置いておきまして。

“はて、この配色、どこかで目にしたことがあるような?”

しばらく考えて、答えが判明しました。
昔のファミリーマートの制服。
ひらめいた瞬間に、あの入店音が頭に流れました。




他にも、猫の愛らしさが絶妙な絵や、

猫
川合玉堂 《猫》 1951(昭和26)年頃 山種美術館


軽やかさがまったく感じられないスケートの絵など、

スケート
川合玉堂 《氷上(スケート)》 1953(昭和28)年 山種美術館


普段の川合玉堂のイメージにはない作品と出会えたのは、嬉しい収穫。
玉堂の画業の幅広さ、底の深さを改めて感じる展覧会でした。
星星


ちなみに、やはり何と言っても一番印象に残っているのは、
山種美術館の玉堂コレクションの目玉である 《早乙女》 です。

早乙女
川合玉堂 《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館


ドローンで撮影したとしか考えられないアングル。
そんな斬新な構図のおかげで、
何の変哲もない田植えの光景がスペシャルな光景に感じられました。
田植えしている女性も、心なしかモデルさんのように感じられます。




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あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~

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現在、静嘉堂文庫美術館では、
“あこがれの明清絵画 ~日本が愛した中国絵画の名品たち~” が開催されています。

あこがれ


こちらは、泉屋博古館分館との初となる共同企画展で、
泉屋博古館分館で開催中の “典雅と奇想―明末清初の中国名画展” と同じく、
明清絵画・・・すなわち、明時代と清時代の中国絵画がテーマとなっています。

泉屋博古館分館の展覧会では、
明時代の末期から清時代の初期にかけての中国絵画に焦点が当てられていましたが。
静嘉堂文庫美術館の展覧会では、そこに限定せず、
明清時代 (1368~1912) の名画の数々が幅広く紹介されています。

明清
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


さらに、何よりも特徴的なのは、
“日本人が、いかに明清絵画に憧れを抱いていたか” に焦点が当てられていたこと。

例えば、こちらの2点の絵画。

谷7 谷
左)重要文化財 藍瑛 《秋景山水図》 明時代・崇禎11年(1638) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】
右)重要文化財 谷文晁 《藍瑛筆 秋景山水図模本》 江戸時代・18~19世紀 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】



左は、明時代後期を代表する職業画家で山水画を得意とした藍瑛 (らんえい) による一枚。
そして、右は、江戸時代に活躍した谷文晁が描いた一枚です。
もちろん、たまたまそっくりに仕上がってしまったわけではありません。
谷文晁が藍瑛の山水画を実際に目にして、丁寧に丹念に模写したものです。
単なる形だけの完コピではなく、ちゃんと空気感まで再現しています。
谷文晁がいかに中国絵画に憧れていたかがひしひしと伝わってきました。

また、当時の人々の中国の憧れぶりを伝えるこんなパターンも。

作品


左から2番目の張瑞図 (ちょうずいと)《秋景山水図》 の下にご注目。
何やら筆で文章がさらさらと書かれています。
こちらは、江戸時代中期の文人画家・柳沢淇園による跋文 (ばつぶん)
跋文とは、感想を述べた文のこと。
今風に言うならば、レビューです。
張瑞図の 《秋景山水図》 を実際に目にして、
「超スゴかった!」 的なことが、格調高い文章で表現されていました。
たぶん、☆5つ。


あまり馴染みのない中国絵画。
いきなり、「これって名品なんですよ!」 と紹介されるよりも。
今回の展覧会のように、

「谷文晁や応挙といった日本を代表する絵師たちも憧れていた名品なんですよ!」

と紹介されたほうが、スッと入りやすかったですし、より興味が持てました。
中国絵画を食わず嫌いしている方にもオススメの展覧会です。
星


ちなみに、今回の出展作品の中で特にお気に入りなのは、
若冲にも影響を与えた沈南蘋 (しんなんびん) による 《老圃秋容図》 という作品。

猫
沈南蘋 《老圃秋容図》 清時代・雍正9年(1731) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


猫の目線の先にいるのは、カミキリムシ。
今にも飛びかかる気満々です。
肉眼では見えにくいですが、単眼鏡で観ると猫の毛が白色で1本1本描かれているのがわかります。
毛並みモフモフ。
思わずお腹のあたりを撫でたくなること請け合いです。
と、ついつい猫にばかり目がいってしまいますが、
画面の上のほうに咲いているトロロアオイの表現も見事。
確かに、憧れるべき名画でした。


それから、李士達 (りしたつ)《秋景山水図》 も秀逸な一枚。

李士達
重要文化財 李士達 《秋景山水図》 明時代・万暦46年(1618) 静嘉堂文庫美術館蔵 【全期間展示】


画面手前の岩肌のゴツゴツ感。
奥に聳え立つ崖の圧迫感。
そして、画面全体を覆う靄のウェット感。
それらが混然と一体になって、単なる山水画なのに、なんともドラマチックな印象に。
映画のワンシーンのよう。
しかも、大作映画のオープニング。
中国語のナレーションが聞こえてくるようでした。


最後に、㊙お得情報を。
静嘉堂文庫美術館といえば、駅からやや遠いのが難点。
最寄りのバス停からも少し距離があり、しかも上り坂が続きます。
足腰に不安がある方は、タクシーを利用するのがベターでしょう。
もしタクシーを利用したら、必ず領収書をお受け取りくださいませ。
なんと、その領収書と引き換えに、タクシー代が200円キャッシュバックされるそうです!

アリ引き


おそらく美術館史上、初の試み。
是非、こちらのサービスをご利用くださいませ。




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!)
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度ご確認頂けますと幸いです。


11/19(日) 運慶展へ行こう!

今年の芸術の秋の大本命展覧会の一つ、運慶展
想定以上の人気ぶりで、早くも来場者数が20万人を突破しています。
2017年に、絶対に見逃すわけにはいかない展覧会の一つです!

“一人で並ぶのはなぁ・・・。”

でも、観たい!

そんな皆様のために、今回のイベントを企画しました!
みんなで並べば、行列もまた楽しい想い出になるはず。
図録や運慶特集の 『芸術新潮』 を持参しますので、
待ち時間の間に、展覧会の予習をすることも可能です。
もちろん、見どころもたっぷりガイド!
ちなみに、混雑の中でも仏像をじっくり観られるよう、単眼鏡を一人一台手配いたします♪

また鑑賞後は、カフェ休憩を挟み、
ちょうどこの日上野で開催されている “TOKYO数寄フェス2017” へ!
昨年32万人を動員した和なアートイベントを楽しみましょう♪

時間:13時~17時
定員:8名
参加費:1500円 (鑑賞代を含む)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/23(木・祝) ゴッホ!北斎!モネ!今日は一日“ジャポニスム”ツアー

今年の芸術の秋は、上野が熱い!
東京都美術館と国立西洋美術館でそれぞれ、
『ジャポニスム』 をテーマにした大型展覧会が開催されています。
(ジャポニスム…19世紀のヨーロッパ、特にフランスで起こった日本ブーム。ゴッホもモネも日本美術の影響をもろに受けた)
その2つをまとめて楽しんでしまおうというのが、今回のアートツアーです!

まず訪れるのは、東京都美術館の “ゴッホ展 巡りゆく日本の夢”
「ゴッホと日本」 の関係にスポットを当てた日本初となる展覧会です。
先行して開催された北海道立近代美術館では観客動員数で記録を作ったとのこと。
東京でも盛り上がること請け合いです。

展覧会を鑑賞後、一度カフェ休憩を挟みます。
その後、国立西洋美術館で “北斎とジャポニスム HOKUSAIが西洋に与えた衝撃” を鑑賞します。

北斎の作品だけでなく、モネやゴーギャン、
セザンヌなど19世紀の西洋美術のオールスターが勢ぞろい。
芸術の秋に相応しい、豪華な展覧会です。
是非お見逃しなく!

時間:12時半~17時半
定員:12名
参加費:3000円 (2館の鑑賞代を含む)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/26(日) みんなで並ぼう怖い絵展!

今年の芸術の秋の大本命展覧会の一つ、“怖い絵展”
先行して開催された兵庫県立美術館では最大で、チケット購入までに1時間待ち、
入場までに2時間待ち、さらに、音声ガイドを借りるまでに30分待ちだったとのこと。
東京ではこれ以上に並ぶことは必至です。

“一人で並ぶのはなぁ・・・。”

でも、観たい!

そんな皆様のために、今回のイベントを企画しました。
みんなで並べば、行列もまた楽しい想い出になるはず。
図録や 『芸術新潮』 を持参しますので、
待ち時間を使って、見どころをガイドさせて頂きます。
鑑賞後は、みんなでカフェでまったりトークをいたしましょう。
また、今回は特別にご参加者の中から抽選で1名様に、“怖い絵展” の図録をプレゼントいたします!

時間:13時~17時
定員:15名
参加費:1500円 (鑑賞代を含む)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


12/2(土) みんなの大東京建築ツアー【両国編】

世界中の建築ファンが憧れる街・東京。
この街には、たくさんの名建築が存在しています。
そんな東京で生活をしていながら、建築に興味が無いなんて。
何ともったいないことでしょう!

「・・・・でも、“建築” って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするのが、みんなの大東京建築ツアー。
実際に東京の街をぶらぶらしながら名建築を巡り、
進行役の自分と講師の建築家が掛け合いをしながら、その魅力をたっぷりお伝えするツアーです。

さてさて今年2017年は、相撲ブームが再来!
それにちなんで、建築家の照内創氏のガイドで、
今もっとも注目を集めている両国の建築ツアーをお届けいたします。
下町ならではのレトロな建築もありますが、それだけに非ず。
実は、世界的な建築家による最新建築も多く、
建築的にもっとも注目を集めているエリアの一つなのです。
そのうちの代表的な建築で、今年でちょうど開館1周年を迎えるすみだ北斎美術館も訪れます。
その他、どんな建築が登場するのか、どうぞお楽しみに♪

時間:13時~17時
定員:15名
参加費:1900円 (鑑賞代を含む)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
http://arc-tour.org/mail.html


12/3(日) 年末だよ!ドラえもん&新海誠 六本木アニメ展ツアー

年末と言えば、アニメ?!

そこで、今回は六本木で開催中のアニメをテーマにした2つの展覧会を巡るツアーを開催します。

一つは、村上隆さんや奈良美智さん、山口晃さんら、
日本を代表する28組のアーティストが 『ドラえもん』 をテーマに新作を制作した、
森アーツセンターギャラリーの “THE ドラえもん展 TOKYO 2017”

そして、もう一つは、国立新美術館の “新海誠展―「ほしのこえ」から「君の名は。」まで”
昨年 『君の名は。』 が爆発的にヒットしたアニメ監督、新海誠さんの初となる大個展です。

原作ファンの方はもちろん、知らない人でも楽しめる展覧会です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております♪

時間:13時~17時半
定員:10名
参加費:3200円 (2つの展覧会の鑑賞代を含む)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

わらしべ長者生活

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美術品を手に、銀座を代表するギャラリーの数々を訪問し、
昔話 『わらしべ長者』 のように、物々交換してもらおうという企画。
それが・・・

わらしべ


今、我が家には、有元利夫の版画作品があります。(サインはないけど)

部屋


机で作業をしているとき、ふと見上げると、
有元利夫の版画作品が目に飛び込んできます。(サインはないけど)

アップ


わらしべ長者生活、最高ーーー!

もう交換しないで、このまま手元に置いておきたいところですが。
この作品の元の持ち主であるギャラリーあーともりもとの佐々井さんより、
あのギャラリストさんが、いくらくらいの値段を付けて、何と交換するか確かめてきて欲しい、
と頼まれているので、わらしべ長者生活を続けるしかありません。


というわけで、今年の4月に銀座8丁目の地にオープンした河北新報ビルへ。

河北新報ビル


このビルの5階に新生オープンしたばかり、
現在、“第5回 白日会デッサン展” が絶賛開催中の銀座 永井画廊を訪れました。
(注:展示は11月18日まで)

オーナーはもちろんこのお方。

オーナー


『開運!なんでも鑑定団』 でお馴染みの永井龍之介さんです。
ちなみに、先月からは、 『発掘系アート番組!龍チャンネル』 というYoutube番組がスタート!




そんなお忙しい合間を縫って、わらしべ長者企画にご協力頂いているにも関わらず。

「せっかくなんで、いかにも “鑑定してます” 風な写真も撮っていいですか?」

と、調子に乗って、無茶ぶりする僕。

「えー・・・」

と言いながらも、ノってくれる永井さん。

永井さん


「あと、こんな感じのポーズでも取られること多いよね」

さらに、それっぽいポーズをしてくれる永井さん。
いろいろありがとうございます。

鑑定



さぁ、いよいよ鑑定結果の発表。

「同じような価格のもので交換するとなると、これがいいんじゃないかなぁ」

そう言って、永井さんが持ってきてくれたのは、意外にも掛軸の作品でした。

掛軸


「誰の作品ですか??」

「誰だと思う?とに~さんなら、たぶんわかるよ」

まさかの逆鑑定タイム。
アートテラーとして下手なことは言えません (汗)
作風からは、誰だかピンと来なかったので、サインに注目してみます。

サイン


及?人?及人・・・って、誰だよ?!

と、軽くパニックになっていると、見かねた永井さんより一言。

「とに~さん、それ、BとL」

「あー!バーナード・リーチ (※) ですか!」
(※バーナード・リーチ…1887年生まれ。イギリス人の陶芸家。民芸運動にも関わりが深い。
 日本民藝館の設立にあたり、柳宗悦に協力した。詳しくは、原田マハさんの 『リーチ先生』 で)



「有元利夫とバーナード・リーチを交換って、意外性があまり無くて面白くないかな。
 あの作品のほうが面白いかなぁ」

と、さらに別の作品を持ってくる永井さん。
それが、こちら。

抽象画


「どういう作品ですか??」

「とに~さんは、どう思う?」

再びの逆鑑定タイム。
今度こそ成功となるか。

「フランスっぽい感じもあり、日本っぽい感じもあり、
 戦後の抽象絵画のような風格もありながら、現代センスもあって・・・すいません。わからないです。」

「それはわからないと思うよ(笑)
 まだほとんど世に出てない作家さんだから。
 伊賀敢男留(いがかおる)さんっていう30歳のアール・ブリュットの作家さん。
 彼はこの先どんどん伸びると思う。
 とても品の良い青年でね。そういう品の良さが、この絵にちゃんと現れてるよね」

確かに!
観ていて、心がスーッと凪ぐような素敵な絵です。

「とりあえず2点並べてみようか」

そう言うなり、壁に展示し始める永井さん。

壁


「とに~さん、どっちがいい?」

“それはやっぱり、交換してもらえるなら、バーナード・リーチのほうが・・・ん?!

「どっちもいいですね!
 というか、バーナード・リーチの作品と並べても、
 まったく負けてない伊賀敢男留さんの作品、スゴいですね!」

「でしょ」

「どっちが巨匠で、どっちが新人の作品か、並べちゃうとわからないですね (笑)
 あと、不思議とこの2つの作品、並べてみると、妙にしっくりきますね」

「初めてこの2点を並べてみたけど、これは新鮮な感じがするね。
 2点に共通するのは、“意図せざる美”、
 もしくは、“ふとできてしまう最も自然に近い美しさ” なのかも」

その後、しばらく2人で芸術談義。
もし、撮影していたら、
『発掘系アート番組!龍チャンネル』 で流せるくらいトークが盛り上がりました。

「で、とに~さん、どっちと交換する?」

「そうですね・・・」

我が家


というわけで、今、我が家には、伊賀敢男留さんの 《OVER THE WALL》 があります。
我が家が一気に華やかになりました。
抽象画は3日で見飽きるかと思っていたのですが、全くそんなことはなし。
見れば見るほど発見があります。


ちなみに。
前回、佐々井さんと交換してもらった有元利夫の版画作品ですが、
実は、永井さんも佐々井さんと同じ額屋さんから同じような版画作品を贈られたことがあるそうです。
なので、現在、永井さんの手元には、同じような有元利夫の版画作品が2点。
ダブっています。


【今回ご協力いただいた画廊】
銀座 永井画廊
住所:東京都中央区銀座8-6-25 河北新報ビル5F




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レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル

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森美術館で開催中の “レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル” に行ってきました!

レアンド


こちらは、国際的に活躍するアルゼンチン出身の現代アーティスト、
レアンドロ・エルリッヒ (1973~) の過去最大クラスとなる個展です。
出展作は、新作を含む44点!
しかも、その8割が日本初公開の作品です。

「レアンドロ・エルリッヒ?誰??」

という方でも、彼の代表作の一つである・・・

スイミングプール
レアンドロ・エルリッヒ 《スイミング・プール》 2004年 コンクリート、ガラス、水
280x402x697cm 所蔵:金沢21世紀美術館 撮影:木奥惠三画像 提供:金沢21世紀美術館 ※参考図版

プール

金沢21世紀美術館にある 《スイミング・プール》 は、
きっと何らかの形で一度は目にしたことがあるはず。
もはや金沢21世紀美術館のメインビジュアルとでもいうべきあの作品の作者がレアンドロです。

《スイミング・プール》 もそうですが、
彼の作品の多くは、“鑑賞する” というよりも、“実際に体験する” ものとなっています。
しかも、小難しい理屈抜きに、子供から大人まで楽しめるのが最大の魅力です。

例えば、こちらの 《試着室》 という作品。

試着室


一見、何の変哲もない試着室です。

試着室


鏡の向こうに、ちゃんと僕が映っています。
しかし、作品の中に、一歩足を踏み入れ、左右を見渡してみると・・・

「!!!」

試着室


なんと試着室が無限に続いていたのです。
鏡かと思えば鏡でなく、空間の向こうに反転した試着室があったり。
反転した試着室かと思えば、今度は本当に鏡だったり。
まさに試着室の迷路。
抜け出すのに苦戦しました。
試着室なのに、入る時よりも出たときのほうが、着衣が乱れていました。


また、こんな作品も。

美容室


タイトルはHAIR SARON、《美容院》 です。

美容室


こちらも一見何の変哲もない美容院なのですが・・・

鏡


鏡を見て、ギョッ!
自分が映っていません。
それもそのはず、これは鏡ではなく、ただの穴 (?)。
鏡に映った光景ではなく、向こう側に同じ広さ反転した美容院の空間があるのです。


レアンドロ・エルリッヒの作品に仕掛けられたトリックは、とてもシンプル。
なのに、驚きは最大限。
費用対効果に優れた作品です (←?)。
まず、あり得ない世界にハッとさせられて、
そのあとで、実は単純だった仕掛けのタネがわかってニヤリとさせられて。
一粒で二度美味しいのが、レアンドロ・エルリッヒ作品の最大の魅力。
我ながらこの例えでいいのか疑問はありますが、
ナポレオンズやマギー司郎の手品に近いものがあります。


さてさて、今回のレアンドロ・エルリッヒ展は、写真撮影OK!
特にインスタ映え間違いなしなのが、《建物》 という作品です。

インスタ


子供が風船で飛んでいきそうになったり、
お母さんがジャッキー・チェンばりのアクションをしていたり。
思わず二度見、三度見する光景です。
(ちなみに、映っているのは内覧会時にいらっしゃったエキストラの皆さま)
こちらの作品も仕掛けは・・・

床


いたってシンプル。
なるほど、こうなっていたのですね。
せっかくなので、僕もチャレンジしてみました (笑)

チャレンジ


他にも、会場には、楽しい体験型作品がたくさん。
一人よりも二人。
二人よりも三人。
みんなで行くのがオススメ。
テーマパークのような展覧会です。
星星


ちなみに、会場でたくさんの作品を体験すると、こんな副作用が。
ただのエレベーターやトイレなのに、
「何か仕掛けがあるのでは?」 とイチイチ疑ってしまうのです。
森美術館にたまたまあったコレですら、

会場


レアンドロの作品かと思って、わざわざ写真に撮ってしまいました (笑)
家に帰るまでが、いや、家に帰ってからもレアンドロ・エルリッヒ展。




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没後150年記念 菊川英山

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今月と来月、前期と後期に渡って、
太田記念美術館で開催されているのは、“没後150年記念 菊川英山” という展覧会。
東京では実に32年ぶりとなる菊川英山 (1787~1867) の回顧展です。

展覧会


よく言えば、知る人ぞ知る浮世絵師。
悪く言えば、知る人しか知らないマイナーな浮世絵師。
それが、菊川英山。

叡山
作者不詳 《菊川英山実像》


ちなみに、ゴッホの 《花魁(溪斎英泉による)》 の元ネタとなった 《雲龍打掛の花魁》 の作者、
溪斎英泉は、「英」 の一字があることからも、なんとなく想像がつくように菊川英山の弟子です。

英山が浮世絵師デビューを果たしたのは、喜多川歌麿が人気絶頂のさなか、急死した頃。
その時代の英山は、世のニーズに合わせて、歌麿風の美人画を描きました。

英山
《青楼名君花合 丁子屋内丁山 錦戸》


「菊川英山」 というサインがなかったら、
歌麿の作品と言われても、気づかないほど、歌麿風です。
実際、「菊川英山」 のサインを消して、歌麿作品として出回っているものもあるとかないとか。

その後、歌麿風のスタイルとは決別して、
自分なりの美人画のスタイルを確立します。

当世子宝合 金魚


現代人の感覚からすると、歌麿の美人画と全然大差がないように思えますが (笑)
歌麿の描く美人が8頭身 (時には10頭身) の超スーパーモデル体型だったのに対し、
菊川英山の描く美人は、もう少し現実味のある6頭身くらいのプロポーションをしています。
さらに、目が黒目がちに。
これでもクリクリしているのです。


今回初めて、菊川英山の浮世絵をまとめて鑑賞しましたが。
よくも悪くも、クセがない美人画という印象を受けました。
おそらく英山の美人画をめちゃめちゃ嫌いという人は、いないはず。
でも、英山の美人画をめちゃめちゃ好きという人も、いないはずです。

ちなみに、32年もの間、日の目を見る機会がなかったのは、英山にとっては悲しいことですが。
鑑賞する僕らにとっては、嬉しい話。

せい桜むたま川のうち むさし 大文字屋内 ひともと
《せい桜むたま川のうち むさし 大文字屋内 ひともと》


展示される機会が少なかった分、保存状態が最高なのです。
色が褪せやすい紫色や青色も、ほとんど当時の色合いのまま残っています。
浮世絵の美しい色彩を楽しむには、ベストの展覧会です。
星


ちなみに、基本的にはクセがない美人画が多かったですが。
時には、クセのある作品もありました。
例えば、《江戸の華役者ひいき 坂東秀桂》

江戸の華役者ひいき 坂東秀桂


アゴのしゃくれ方は、やや悪意を感じるレベルです。
この世のものとは思えない輪郭をしています。

また、《風流花鳥風月内 月》 も、なかなかクセのある作品でした。

風流花鳥風月内 月


一見すると、特に普通の美人画ですが、左上の鳥の群れを思わず二度見。
鳥というよりも、「人」 という漢字でした。
たくさんの 「人」 が飛んでいる。
なんともシュールな光景です。


シュールな光景と言えば、《山王御祭札》 も。

山王御祭札


赤の花軍ve黄色の花軍の相撲対決?
おそらく男性でしょうが、髪型からは女性にも見えます。
ボディースーツ?
紅白歌合戦のDJ OZMA的な?
いろいろと謎な浮世絵です。


最後に、ご紹介したいのは、《青楼美人雪月花 扇屋内 花窓》

青楼美人雪月花 扇屋内 花窓


どうやら、江戸時代、雪だるまは、本当に達磨さんをモチーフにしていた模様。
しかも、ちゃんと筆で仕上げていたのですね。
本格派。




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装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法

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約半年ぶりに再オープンした東京都庭園美術館で、
現在開催されているのは、“装飾は流転する 「今」と向きあう7つの方法” という展覧会。

展覧会


原始の時代から人間の生活に存在しているにも関わらず、普段あまり意識されていない 『装飾』 。
そんな 『装飾』 にスポットを当て、今改めて、『装飾』 とは何かを考えてみようという展覧会です。

国内外で活躍する鬼才デザイナーにして、
「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」 代表の山縣良和さんを筆頭に、

山縣良和
山縣良和


ペルシャ絨毯の修復職人であったイラン系イギリス人の父を持ち、
異なる時代や文化圏のモチーフをリミックスしてペルシャ絨毯風に装飾的に描き出すコア・ポア

ポア
ポア


建築の天井や壁の装飾をシリコーンゴムでそのまま写し取って、
家具や彫刻へと変貌させるオランダ出身の女性作家ニンケ・コスターら、

任家


『装飾』 というキーワードで選ばれた、国籍や年齢が異なる7組のアーティストの作品が、
室内装飾が華麗な “アールデコの館” 東京都庭園美術館内に、これでもかと展示されています。
普段でもデコラティブな空間が、装飾的な作品の数々でデコレーションされていました。
デコ×デコ×デコな展覧会です。

デコ


エンジン全開、フルスロットル。
「今後これを超える展覧会はないのでは?」 と思えるくらいに、やりきった感のある展覧会でした。
あー、面白かった!!
星星


どの作家の作品も印象的でしたが、特にイチオシなのは、髙田安規子・政子さん。
身近な日用品を、アッと驚かせる作品に大変身させる一卵性双生児のアーティストユニットです。
例えば、こちらの 《カットグラス》 という作品をご覧ください。

カットグラス


パッと見は、切子細工のガラス器のようですが、その正体は、なんとゴム製の吸盤です。
安価なゴム製の吸盤が、カッティングを施されると、
切子細工のガラス器風のオシャレなアイテム (?) に大変身!
森泉の 「100均DIY」 のコーナーを見ているかのようです。

また、こちらのミニチュア風ペルシア絨毯の正体は・・・

トランプ
トランプ


トランプのカード。
裏面の模様に刺繍を施した 《切り札》 という作品です。
アイディアはシンプルですが、ひと手間どころか二手間も三手間もかかっています。

ちなみに、軽石を素材に、ローマの 《凱旋門》 を表した作品も。

軽石


こちらの作品は、本館の意外な場所に設置されていました。
是非、館内をくまなく探してみてくださいませ。


また、2014年の横浜トリエンナーレにも参加した・・・

ヴィム・デルヴォワ


ヴィム・デルヴォワも、7組のアーティストの中に名を連ねています。
同じ 「ゴシック」 シリーズの 《ノーチラス》 (=オウムガイ) も、かなりインパクトがありましたが。

ノーチラス
ノーチラス


個人的には、ゴムタイヤの表面にイスラム装飾を施した作品のが気になりました。

タイヤ


普通に売れそうです。
北関東のヤンキーに人気が出そう。
『チャンプロード』 に乗ってそう。

あと、こちらのリモワのスーツケースの表面に装飾作品も。

スーツケース


普通に売れそう。
ドン・キホーテで売ってそう。




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第百五十三話 国宝ハンター、気付く!

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前回までのあらすじ~

「重要文化財とは違うのだよ、重要文化財とは!」
そんな国宝至上主義、国宝馬鹿の男・とに~が、
日本全国を巡って国宝を目にする企画、それが国宝ハンター。
これまでに目にした国宝の数は、実に935件。
そして、次なる国宝を求めて、旅に出る。
フフフ……この風、この肌触りこそ国宝ハンターよ!



天高く馬肥える秋。
今回は、紅葉の季節にこそ行きたい国宝を求めて、滋賀県へとやってきました。

最寄りのJR稲枝駅からお目当ての国宝のある場所までは・・・

タクシー


この企画始まって以来初となるタクシーを利用。
もちろん金銭的に余裕があったからではなく、
予約型乗合タクシーなるこの地独自のサービスがあったからゆえ。
実際は3000円以上かかる距離ですが、なんと片道900円で乗せてもらえるのです。

ちなみに、僕が乗ったタクシーの運転手さんは、大の話好きのよう。
朝一だというのの、休みなく話しかけてきます。

「お客さん、滋賀は初めて?」

「まぁ、以前に1度」

「ここは琵琶湖と近江牛しかないから」

「そんなことないんじゃないですか?」

「何はともあれ、琵琶湖と近江牛は楽しんでってよ」

「・・・・・はい。」

そうこうしているうちに、目的に到着しました。

金剛輪寺


こちらは、滋賀県愛知郡愛荘町にある金剛輪寺。
紅葉の名所としても知られるお寺です。
あまりに赤く染まるため、「血染めの紅葉」 という、
“それって逆にイメージ悪いんじゃないの?” と心配になる呼び名も付けられています。

紅葉
紅葉
紅葉


確かに、紅葉はうっとりするほどに美しかったです。
あいにくの雨でしたが、お寺の人によれば、
雨の日のほうが、紅葉の色がクッキリして綺麗とのこと。
らしくなく、国宝そっちのけで、紅葉の写真をバシバシ撮ってしまいました。

と、そろそろ、国宝の本殿へ。
受付から本殿までは、まぁまぁの距離があるようです。

距離


参道の左右両側には、お地蔵さまがビッシリ。
開店直後の百貨店を彷彿とさせる光景です。

地蔵
地蔵


さらには、隊列を組んだお地蔵さまも。
これだけお地蔵さまがいると、有難いどころか、うっすら気味が悪いです。

地蔵


そんな大量のお地蔵さまに見守られながら、
ゴールの 《金剛輪寺本堂》(ジャンル:建造物) に辿り着きました。

金剛輪寺本堂
本堂


こちらは、元寇の役 、すなわち蒙古襲来の戦勝記念として、
当時の近江守護職であった佐々木頼綱によって建立された建造物。
それだけに、威風堂々とした佇まいです。
横綱のように風格のある立派な本殿でした。


本殿の内部も拝観し、下山。
次の目的地である西明寺を目指します。
西明寺があるのは、滋賀県犬上郡甲良町。隣町です。
道のりは3㎞ほどありますが、歩いて向かうことに。


さてさて、歩き始めてすぐに、猫らしきものが目の前を横切りました。
いや、明らかに、猫とは走り方が違います。
よく見ると、その正体は・・・

猿


猿!!!

しかも、見渡せば、そこかしこに猿がいるではないですか。
朝食のパンを食べながら歩いていたのですが、
なんとなく、そのパンが狙われているような気がします。
猿に襲われる前に、急いで口に詰め込みました。

山道


そんな猿出没ゾーンを越えて、
いくつもの田畑を越えて、お次は謎のフェンスが登場。
どうにも一筋縄ではいかないルートです。

フェンス


「行き止まり?」

と、一瞬焦ったのですが、どうやら先には進めるようです。

イノシシ


ただし、この先には、イノシシがいる模様。
このまま引き返すか、それともデンジャーな道を進むか。
悩みに悩みましたが・・・

山道


前進することにしました。
この日のスケジュールを考えると、ここでのタイムロスは避けたいところ。
というわけで、いつイノシシが現れるかわからない大冒険に挑むことにしました。
一人ドラゴンクエストの始まりです。

しばらく山道を進むと、今度は森が現れました。
雨のせいで、道はかなり滑りやすくなっています。

森


足元が危険なので、滑った時に両手が使えるよう、傘は畳むことに。
濡れ鼠になりながら、森の中を進みます。
すると、森の奥のほうからガサゴソという音が。

「もしかして、イノシシ?!」

脱兎のごとく駆け出す僕。
人間、危険を察知すると、自然と逃げるようにプログラミングされているようです。
これぞ本能。
しかし、周囲を森に囲まれているため、どちらに逃げればよいかわかりません。
完全に迷える子羊状態に陥ってしまいました。
そんな危機的状況の中に突如として現れたのが、この看板。

看板


「いや、どこにそんな余裕があんだよ!!」

さらに進むと、こんな看板も。

熊


「こんなところで、熊、出すなよ!!」

不本意にも思わず鳥肌が立ってしまいました。
そんなこんなが続き、途中何度も道に迷いながら、どうにか森を脱出。
先日の投入堂への道のりも相当にヘビーでしたが、今回も相当にヘビーな体験でした。

この後、無事に辿り着いた西明寺にて、

西明寺


国宝の 《西明寺本堂》(ジャンル:建造物)と、
《西明寺三重塔》(ジャンル:建造物) を観たわけですが・・・

本堂
三十頭


その感動よりも、イノシシと遭遇せず森から生還できた感動のが圧倒的に勝っています。
しかも、この日、運良く秘仏の虎薬師 (※) を拝観させて頂けたのですが。
(※虎の上に薬師如来が乗っているという超レアケースの仏像)
やはり森からの生還に比べたら。


ところで、こちらの西明寺。
立派な十二神将が祀られていることから、別名、「えとの寺」 とも呼ばれているそうです。

えと


ちなみに、僕の干支であるイノシシだけ、なぜかナルシストキャラでした (笑)

イノシシ


・・・・・ん?干支?

そういえば、ここまでの道のりを振り返ってみると・・・

天高く肥える秋。近江上郡甲良町。イノシシ
一人ドラゴンクエスト。濡れ。脱のごとく。肌が立って。
迷える子ヘビーな体験 (←これはちょっと無理があるw)。薬師。

干支が全部揃ってる!!

きっと西明寺のお導きです。


今現在の国宝ハンティング数 938/1108




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岡本太郎とメディアアート 山口勝弘-受け継がれるもの

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現在、川崎市岡本太郎美術館で開催されているのは、
“岡本太郎とメディアアート 山口勝弘-受け継がれるもの” という展覧会です。

展覧会


展覧会のチラシが、お世辞にも面白そうになかったので、

「行くのどうしようかなァ・・・」

と悩んでいたのですが、思い切って足を運んでみて大正解!
星星
妖しげでカオスで、かつスタイリッシュな唯一無二の世界が味わえる展覧会でした。

会場
会場


アートとテクノロジーを融合させた 「メディアアート」 と岡本太郎。
あまり関係がないように思えますが。
日本におけるメディアアートの先駆者・山口勝弘さんに、
大きな影響を与えたのが、何を隠そう、岡本太郎なのだそうです。
初期の 「ヴィクトリーヌ」 シリーズの作品に、太郎作品をモチーフにしたものがありますし、

山口


1990年代には、太郎さんの 《夜》 をオマージュした、
《黒い太陽―岡本太郎に捧ぐ―》 という作品も発表しています。

オマージュ


そんなメディアアートの先先駆者とでもいうべき、
岡本太郎の作品が常設されたいつもの展示室が、今回の展示会場。
現代のメディアアート界を担う10人のアーティストたちの作品と、
山口勝弘さんの作品が、太郎さんの作品とがコラボを果たしています。


例えば、東京駅の3Dプロジェクションマッピングにも関わった、
クリエイティブソリューションチームP.I.C.S. TECHは、太郎さんの 《樹人》 とコラボ。

樹人
樹人


《樹人》 を360度どこからでも楽しめる3Dプロジェクションマッピング作品に仕上げていました。
全く違和感なし。
元からこういう作品だったかと思うくらいに、しっくり来てました。
むしろ、《樹人》 は、3Dプロジェクションマッピングされるために、白い作品だったのかも。
そんな気すらしてきました。

360度どこからでも楽しめるといえば、原田大三郎さんによるVR映像作品も。
その名も、ズバリ 《TARO360°》

TARO360°


ヘッドギアを装着すると、太郎さんが生み出したあの宇宙人が迫ってきます。
まぁまぁシュールで、まぁまぁ悪夢な体験。
ちなみに、イスは、太郎さんの 《手の椅子》
シュールさに拍車をかけています。

手の椅子


今回特に一番印象に残ったのは、明和電機さんとのコラボ。

太郎


太郎さんのリアル人形が、明和電機の制服を着させられていました (笑)
あと、パチモク (ユビパッチンで木魚を鳴らす楽器) も装備。
手には、オタマトーン (音符の形をした電子楽器) も持たされています。
完全に明和電機の一員と化していました。
風格的には、明和電機の会長でしょうか。


ちなみに、現在、川崎市岡本太郎美術館は、
館内の一部を工事しているため、常設展は休室。
その代わり、館内の無料スペースで、太郎さんの彫刻や立体作品が展示されています。

カオス


密度、高すぎ!
こっちも、カオスでした。




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フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年

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現在、サントリー美術館で開催されているのは、
“フランス宮廷の磁器 セーヴル、創造の300年” という展覧会。

サントリー
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、今なおヨーロッパ磁器の最高峰として君臨するセーヴル磁器、
その300年の歩みを名品の数々とともに紹介する日本初の大々的な展覧会です。

まず展覧会のスタートを飾るのは、18世紀のセーヴル磁器。
ポンパドゥール夫人やマリー・アントワネットといった、
宮廷人たちの心を虜にした食器セット、壺、テーブルセンターピースなどが紹介されています。

セーヴル
セーヴル


会場には、豪華絢爛でラグジュアリーな磁器がズラリ。
思わず、花輪くんが自慢話をするときに流れているあのBGMが脳内で再生されました。




“こういうお上品な展覧会は、マダムが喜びそうだなァ”

・・・と、ここまでは想定の範囲内だったのですが。
続く、19世紀のセーヴル磁器では、
鳥類学や植物学などの知見が加わった博物学的な磁器が登場したり、

セーヴル
セーヴル


20世紀に入ると、アール・ヌーヴォーやアール・デコのデザインを取り入れていたり。

ヌーヴォー
デコ


僕がこれまでに抱いていたイメージとは違う、セーヴル磁器が続々登場。
時代や流行とともに、こんなにも変化し続けていたとは!
決して、ただのお上品な磁器ではありませんでした。
前言撤回。
マダム以外も楽しめる展覧会でした。
星星


特に個人的に一番惹かれたのは、現代のセーヴルを紹介するコーナー。
動く彫刻モビールの生みの親アレクサンダー・カルダーや、
フランスを代表する抽象画家ピエール・スーラージュといった、
一流アーティストとコラボしたセーヴル磁器の数々が紹介されていました。
その中には、日本を代表するあのアーティストとのコラボ作品も。

弥生


水玉がなかったので、パッと見では誰の作品かわかりませんでしたが。
背後に周ると、これでもかというくらいにデカデカとサインがありました (笑)

草間


また、こんなコラボのセーヴル磁器も。

セーブル


なんとなく、どこぞの百貨店のショッピングバッグっぽいなぁ、と思ったら。
やっぱり、人間国宝の友禅作家・森口邦彦さんのデザインによるものでした。


ちなみに。
現代のセーヴル磁器は、かなりアヴァンギャルドでしたが。
もっともアヴァンギャルドだったのは、こちらのボウル。
意外にも、18世紀製です。

マリー・アントワネットのための乳房のボウル(ランブイエの酪農場のためのセルヴィスより)


その名も、《マリー・アントワネットのための乳房のボウル》
マリーアントワネットのために制作されたカフェオレボウルで、おっぱいの形をしています。
色と形の再現度 (?) の高さは、思わず笑ってしまうレベル。
最高峰の技術を使って、何を作っているのやら。
歴史に残る “公式が病気” 作品です。




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オルビス30周年記念 「ケの美」展

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今年2017年は、ポーラの通販部門として設立したオルビスが創業して30年の節目の年。
それを記念して、ポーラミュージアムアネックスでは、
現在、“オルビス30周年記念 「ケの美」展” が開催されています。

ケ6


こちらは、意外にもオルビス初となる展覧会。
そんな 「ハレ」 の機会にもかかわらず、
あえて 「ハレ」 とは正反対の概念である 「ケ」 に注目した展覧会で、
第一線で活躍するクリエイターたちそれぞれが考える 「ケ」 の美を紹介するものです。

ケ


参加クリエイターは、全部で14名。
根津美術館やサントリー美術館などの設計でおなじみの建築家の隈研吾さんから、

隈研吾


『食堂かたつむり』 『ツバキ文具店』 で知られる作家の小川糸さん、

小川糸


くまモンの生みの親でもある放送作家・小山薫堂さんまで。

小山薫堂


実に、多種多様なジャンルの豪華なメンバーが勢ぞろいしています。
参加メンバーは、全然 「ケ」 でなく、「ハレ」 でした。
ちなみに、小山薫堂さんが考える 「ケ」 の美が、こちら↓

狐桶


京都の職人に特別に作らせたという狐桶だそうです。
さすが、センスが光っています。
が、特別に作らせたという時点で、それは 「ハレ」 なのでは?
そういう意味では、全体的に、
今一つルール (?) がわかりにくい、しっくりこない展覧会ではありました。

また、「ケ」 の美を紹介する展覧会なので、当然と言えば当然なのですが。
イラストレーターの塩川いづみさんのクマのポーチのように。

くま


鑑賞したところで、

「・・・・・・・・・・・・うん。」

としかならないものも多かったです。


「ケ」 の美に着目するというアイディアは非常に面白かったのですが。
展覧会として楽しむような内容ではなく、
『BRUTUS』 とか 『Pen』 とか雑誌の特集でいいような気がしてなりませんでした。
やっぱり、展覧会は、「ケ」 でなく 「ハレ」 でないと。

とは言え、「ケ」 の美について考えるきっかけとなった良い機会。
星
せっかくなので、帰宅後、自分の家にある 「ケ」 の美を探してみました。

ここまで、どちらかと言えば、ネガティブな意見をまき散らしているので、
絶対に、“「ケの美」展” の続編があっても、絶対に僕にオファーは来ないでしょうが (笑)
僕が思う 「ケの美」 は、こちら↓

鍋敷き


数年前に、とある北欧雑貨店で購入した鍋敷きです。
デザインに、一目惚れしました。
この鍋敷きがあれば、日常生活が楽しくなるだろうなぁと、即購入したわけですが。
一人暮らしゆえ、鍋敷きを使うタイミングなど一度もなく。
いまだに未使用のままです。
いつか当たり前に使う 「ケ」 が来るのを信じて、大切にしています。

それから、この爪切り。

爪切り


実家にいる時から使っていた爪切りです。
実家を出るときに、なぜかこの爪切りを母から手渡されました。
なので、生まれてから今日までずっと、この爪切りにお世話になっています。
それゆえ、僕にとって爪切りは、青い花が描かれているものなのです。
ただ、冷静に考えると、なぜに青い花?
てか、そもそも、何の花?
人生に当たり前に定着していた 「ケの美」 が、34年目にして初めてグラつきました。




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第百五十四話 国宝ハンター、遠のく!

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前回までのあらすじ~

「国宝道と云ふはハンティングする事と見つけたり」
日本全国にある国宝をすべて目にするべく、
日夜、国宝道を邁進する国宝ハンター・とに~は、紅葉シーズンの滋賀県へ。
秋を満喫する旅情溢れる旅路になるかと思いきや、
いつものように、いや、いつも以上に過酷な旅になったのであった―



西明寺を見終えた後は、再び予約型乗合タクシーを利用して河瀬駅へ。
ここから次の駅へと向かいます。


・・・・・・・・が。
この日の朝に沿線で起きたという踏切事故のせいで、1時間に1本しかない電車が遅延とのこと。
完璧に計画したこの日のスケジュールは、この時点で、音を立てて崩れてしまいました。

ということで、急きょ予定を変更して、別の国宝をハンティングすることに。
さらに北上し、「観音の里」 と呼ばれる長浜市高月町へ向かいました。

「観音の里」 というだけに、このエリアには、
たくさんの観音があるようなのですが、国宝の観音は1件だけ。
向源寺にある 《木造十一面観音立像(観音堂安置)》(ジャンル:建造物) ただ1つです。

最寄駅から向源寺へと向かうその途中、不思議な看板に遭遇しました。

案内


「渡岸寺?向源寺??」

なんでも国宝の十一面観音像を所蔵しているのは向源寺なのですが、
安置されているのは、向源寺の本堂ではなく、少し離れた場所にある観音堂とのこと。


向源寺
高源寺


で、この観音堂がある場所の地名が、渡岸寺なのだそうです。
ややこしいなぁ、もう。

さてさて、国宝の十一面観音像は、全部で7件ありますが。
その中で最も美しいとされているのが、向源寺の十一面観音像です。

の十一面観音像


均整の取れた顔立ち。
スレンダーなプロポーション。
長い脚。くびれたウエスト。
確かに、最も美しいとされる十一面観音だけはありました。
しかも、右足がちょっとだけ前に出ていて、ダンサブルな動きすら感じさせます。

う~ん、何かに似てるような。
しばし眺めていると、ふと脳内であの曲が再生されました。




観れば観るほどに、KARAに思えてきます。
ただ、周りを見渡してみると、真剣に拝んでいる人々。
そんな人たちに混ざって、懐かしの韓流ソングを脳内で流しているだなんて。
いますぐにMr. 鳴りやんでMr.です。


さてさて、たっぷり十一面観音を見終えた後は、一路京都へ。
5度目1週間ぶりとなる “国宝展” へとやってきました。
到着したのは、16時半。

京都


前回、前々回と2時間以上も行列に並んでいたので、
今回もかなりの時間並ぶだろうと覚悟していたのですが・・・

国宝


まさかの0分待ち!!

前回、前々回のあれは何だったのでしょうか。
夕方以降に訪れれば、待ち時間なしで入れることを5度目にしてようやく知りました。
とは言え、今回が国宝展を訪れるラスト。
もっと早く知っておきたかったです。

ちなみに、第Ⅳ期でゲットした国宝は、以下の4件。

《伝藤原行成筆仮名消息(十二通)》(ジャンル:古文書)
《絹本著色山水屏風〈/六曲屏風〉》(ジャンル:絵画)
《藤原忠通筆書状案》(ジャンル:古文書)
《一字一仏法華経序品》(ジャンル:書跡・典籍)


第Ⅰ期から第Ⅳ期まで、すべて通った甲斐もあり、
今回の国宝展を通じて、全部で20件の国宝をゲットすることが出来ました。
さすがに取りこぼしは無いと思っていたのですが、
展示替表を何気に見返してみると、衝撃の事実が判明!
どうやら、10月11日から15日の5日間限定で、
前田育英会が所蔵する未見の国宝 《古今集巻十九残巻(高野切)》 が出展されていたようです。
5度も通ったのに。
・・・・・1件、取りこぼしていました。

しかも、10月20日、僕が国宝展に必死になっているのを言いことに (?)、
文化庁は、三重県にある高田本山専修寺の御影堂と如来堂を国宝にすると発表していたようです。
・・・・・2件、ゴールが遠のきました。


今現在の国宝ハンティング数 943/1110(1108改め)




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現代の写実―映像を超えて

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誰が言ったか、「公募展のふるさと」 こと東京都美術館では、
来年1月6日まで、“現代の写実―映像を超えて” という展覧会が開催されています。

現代


こちらは、現在、公募団体で活躍している作家を紹介するシリーズ、
「上野アーティストプロジェクト」 の記念すべき初回を飾る展覧会で、
『現代の写実』 という観点から選抜された9人の画家の作品が紹介されています。

静物画を得意とする期待の新星・小森隼人さんや、

小森隼人


施設や工場など建築物の廃墟を得意とする若手の注目株・橋本大輔さん、

橋本大輔


今年7月に発売された初の画集が好評で熱い注目を集めている塩谷亮さんといった、

塩谷


王道を征くタイプの写実画家の作品も紹介されていましたが。
琳派の精神を現代に受け継ぐ気鋭の日本画家・岩田壮平さんの作品や、

岩田壮平


日本全国のローカル線を巡って描いている鉄道大好きな日本画家・小田野尚之さん、

小田野尚之


一貫して、「人間の脳」 をテーマにした作品を制作し続ける佐々木里加さんの作品といった、

脳


ホキ美術館では見たことがないタイプの写実絵画も多数紹介されていました。
それらの中でも、特にパンチが効いていたのは、
巨大な絵画を制作し続けているという稲垣考二さんの作品です。

三面
三面

今回出展されていた 《三面》 は、超特大。
近くで観ると、何だか色んな要素がゴチャゴチャ描かれている絵にしか見えませんが。
10メートルくらい離れてみると・・・

離れて


人の顔であることがわかります!
アルチンボルド風!
モデルは左から稲垣さんの息子さん、娘さん、奥さんとのこと。
どエラい描かれようです。

ちなみに、担当学芸員さんは、この作品を国立新美術館の公募展で初めて目にした際に、
この大きい作品を活かせるのは、東京都美術館の吹き抜けの展示空間だと強く思ったのだそう。

確かに


確かに、近くで観るだけでなく、引きで観ないと全貌が明らかにならない作品です。
近くで観れば、当然インパクトが強いわけですが。
かなり引いた位置に立っても、そのインパクトは減りません。
不思議なことに、むしろ増していたかも。

また、担当学芸員さんが関西で発掘してきたという蛭田美保子さんもインパクト大の画家でした。
東京の美術館で大々的に紹介されるのは今回が初めてとのこと。
しかも、ポスターには、彼女の作品が採用されています。
まさに大抜擢、シンデレラガールです。

パンチ


丸ナスがトマトを食べていたり、
巨大なトウモロコシがアクセサリーを付けていたり。
なんともシュルレアリスム風なのですが、想像の世界を描いたわけではないそうです。
蛭田さんが自分で食材を買ってきて、料理をして、
それらを自由に組み合わせたものを、写実的に描いているのだとか。
蛭田さんの家なのかアトリエなのかでは、現実に存在している光景なのです。

出展作の中には、巻き寿司が着物を纏っているものも。

発想


何がどうなったら、こういう発想が生まれるのか。
巻き寿司に着物を着せてみようと思うのか。
発想力が、斜め上にいきすぎています。
これらの食材は、この後蛭田さんがおいしく頂いたのでしょう。たぶん。


最後に、個人的に一番惹かれた作家をご紹介。
版画家の元田久治さんです。
彼の手にかかると東京の街並みも、

東京


世界のランドマークも、廃墟と化してしまいます。

海外


水道橋界隈もご覧の通り。

東京ドーム


東京ドームも大変なことになっていますが、
サンダードルフィンも大変なことになっています。
「後楽園ゆうえんちで僕と握手」 どころではありません。


個性豊かな作家を知れたことも収穫でしたが。
(これまでなんとなく足がむかなかった) 公募展に行けば、
こんな面白い作品にも出会えるかもしれないということが知れたのは、もっと収穫でした。
星

ちなみに、“ゴッホ展 巡りゆく日本の夢” の半券があれば、無料で観られるようです。
太っ腹!

ゴッホ


そうそう、東京都美術館といえば、先日、SPICEのコラム記事でお世話になりました。
お時間のある方、良かったら読んでみてくださいませ↓
美術館を擬人化してみた~「東京都美術館」編~




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