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明治維新150年 幕末・明治 ―激動する浮世絵

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今年2018年は、明治維新からちょうど150年目を迎える節目の年。
それを記念して、現在、太田記念美術館では、
“明治維新150年 幕末・明治 ―激動する浮世絵” という展覧会が開催されています。

太田


紹介されているのは、近代化したばかりの東京の街並みを描いた浮世絵や、

銀座
昇斎一景 《東京名所 銀座繁栄之図》


タイトルこそ 《信長公延暦寺焼討ノ図》 ですが、
明らかに薩長軍と彰義隊の上野戦争の様子を描いている浮世絵など、

上野戦争
歌川芳虎 《信長公延暦寺焼討ノ図》


幕末から明治にかけて、激動する時代に描かれた浮世絵の数々。
江戸時代ののんびりとした浮世絵と比べると、
明治時代の浮世絵は報道色が強まり、どこかピシッと、ピリッとしている印象がありました。


今回の展覧会の顔ともいえるのが、
現在放送中の大河ドラマ 『西郷どん』 の顔でもある西郷隆盛。

鈴木年基「文武高名伝 旧陸軍大将正三位西郷隆盛
鈴木年基 《文武高名伝 旧陸軍大将正三位西郷隆盛》


当時のヒーローだったゆえに、西郷隆盛を描いた浮世絵は多かったそう。
前後期合わせて、8点の西郷隆盛が紹介されるそうです。
2月2日から始まる後期には、幽霊となった西郷隆盛が描かれた浮世絵が登場とのこと。

月岡芳年「西郷隆盛霊幽冥奉書
月岡芳年 《西郷隆盛霊幽冥奉書》


ただ、その表情は、幽霊というよりも、
ウォーカー (@ウォーキング・デッド) に近いものがあります。
噛まれたり、引っ掻かれたりしないように要注意。

個人的に印象に残っている西郷隆盛作品は、こちら↓

珍雪
歌川国利 《流行星の珍説》


空に浮かぶ西郷星を拝む人々の姿が描かれています。
西郷星の正体は、明治10年に大接近したという火星。
当時の庶民は、火星という存在をまだ知りませんでした。
急に異様に明るい赤い星が現れただけでも驚いたでしょうが、
なぜか、その光の中に、軍服姿の西郷隆盛の姿を見たという人が続出。
西郷星と呼ばれるようになったのだとか。
ちなみに、絵の中に小さな字がいっぱい登場していますが、
これは、西郷星に向かって人々が、願い事を唱えている様子を表現しているそうです。
この時代、火星だけでなく、吹き出しという存在もまだ知らなかったのですね。


他に印象に残っている浮世絵に、歌川芳員の 《亜墨利加国蒸気車往来》 があります。

亜墨利加国蒸気車往来


画面の背後に大きく描かれているのは、蒸気船ではなく蒸気機関車とのこと。
2階建てだったり、大砲らしきものがあったり、
車両の先頭部分に仲良く3人並んで座っていたり。
いろいろ無茶苦茶です。
もちろん、こんな蒸気機関車が存在していたわけはなく。
すべて作者である歌川芳員の想像の産物なのだそうです。
元祖ロボット漫画家。


最後に紹介したいのが、月岡芳年の 《郵便報知新聞 第五百七号》

月岡芳年 郵便報知新聞 第五百七号


今の報知新聞の前身である郵便報知新聞の記事を、
月岡芳年がビジュアル化したシリーズのうちの1枚です。
「第五百七号」 が報じているのは、
73歳の女性と、その家に通っていた68歳の大工との駆け落ちのニュース。
超絶どうでもいいニュースです (笑)




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現代刀職展 ―今に伝わるいにしえの技―

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両国


今何かと話題の両国国技館のほど近く、
旧安田庭園の一角に、刀剣博物館が移転リニューアルオープンしました。

刀剣
刀剣


移転前の代々木時代の刀剣博物館は、
年季の入った病院みたいな建物と言いましょうか、
年季の入った剣道場みたいな展示室と言いましょうか。
全体的に、“どよんと” していて、どことなくかび臭いような印象がありましたが。
新生・刀剣博物館は、そんな古びたイメージを一刀両断。

館内
展示室


切れ味抜群のスタイリッシュな空間に生まれ変わっていました。
モダンなシティホテルのよう。

そんな劇的ビフォーアフターほやほやの刀剣博物館で、
開館記念展として開催されているのが、“現代刀職展 ―今に伝わるいにしえの技―” です。

現代


“新作名刀展” と “刀剣研磨・外装技術発表会”。
それぞれ毎年1回、刀剣博物館で開催されてきた伝統ある展覧会を、
今回の移転リニューアルを記念し、60年の歴史の中で初めて合同で展示するものです。


国宝の刀剣事情に関しては、多少なりとも勉強してきましたが。
現代の刀剣事情となると、全くの未知の領域。
「〇〇〇の知らない世界」 状態です。

刀剣界で最も権威ある 『高松宮記念賞』 も初耳なら、

高松宮記念賞


それに次ぐ薫山賞や寒山賞も初耳。
刀剣そのもののだけでなく、
柄前や鍔、白鞘といった刀装具ごとにも賞があるのも初耳でした。

ケース
ケース


平成の世でも、そういうニッチな世界の職人さんが健在であることに、ただただビックリ。
しかも、しのぎを削っているだなんて。
今回の展覧会を通じて、いろいろと学ぶものはありましたが、
この知識そアウトプットする機会は、おそらくそうそうないでしょう。
星


ちなみに、優秀作や努力賞、入賞の他に、
審査・鑑査なし (無鑑査) で出品できるレジェンドたちの作品もありました。
正直なところ、刀剣を見る目が僕には無いので、
高松宮記念賞の刀も、努力賞の刀も、無鑑査の刀も、そこまで大差がないような・・・。

刀


というか、刃紋がカモフラ柄っぽい小澤茂範さんの 《銘 相州住茂範 平成二十九年春吉日》 を除いて、

カモフラージュ
カモフラ


どれも似たり寄ったりにしか見えなかったのですが
羽川安穂さんの 《素銅地金赤銅着紋入刻み二重鎺》 しかり、

羽川安穂


長嶺雅臣さん 《家紋透象嵌鐔》 しかり、

家紋透象嵌鐔


刀装具に関しては、無鑑査の作品がやはり頭1つ2つ抜きん出ていました。
一流のオーラを放ちつつ、威厳もありつつ、どこか洒脱さ、チャーミングさもありつつ。
人に例えるなら、GACKTのような感じでしょうか。

個人的に一番惹かれたのは、三谷修史さんによる柄前です。

三谷修史


そのデザインに一目惚れ。
思わず欲しくなってしまいました。
・・・・・刀、持ってないですが。




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いのちの交歓-残酷なロマンティスム-

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現在、國學院大學博物館では、思わず・・・

「なんだ、これは!」

と声に出してしまいそうになる展覧会が開催されています。
その名は、“いのちの交歓-残酷なロマンティスム-”

いのち


こちらは、岡本太郎記念館とコラボした展覧会で、
タイトルは、人間と人間以外のモノたちとの 「食べる/食べられる」 の関係性を、
岡本太郎が “いのちの交歓” と呼んだことに由来しています。

展覧会場は、まさに食べるか食べられるかのカオス状態。
岡本太郎の作品を中心に、

岡本太郎
岡本太郎 《雷人》 岡本太郎記念館蔵


彫刻家・藤原彩人さんら若手アーティストの作品、

藤原彩人


さらに、地球が造りだした自然物や、

自然物と


旧石器時代以降の様々な人工物が、

旧石器時代以降の様々な人工物


まさにぶつけられるが如く、
荒々しくダイナミックに展示されていました。

会場
会場


岡本太郎×考古物。
普段は、決して交わることがないであろう取り合わせ。

孤高


その取り合わせがマッチしていたかというと・・・う~ん、難しいところです。
と言いますか、よくわからなかったというのが本音のところです。
共鳴していたようにも見えましたし、
ただ、共生していただけのようにも見えましたし、
むしろ、互いに打ち消しあっていたようにも見えました。
ただ、確実に一つ言えるのは、
この取り合わせを見たことによって、今までにない感情が芽生えたということ。
本能的にゾワゾワゾクゾクするものがありました。
「なんだ、これは!」 としか言いようのない展覧会。
星
衝撃の大きさと、その衝撃をうまく咀嚼できない感じは、
にゃんこスターのネタを初めて見たときに通ずるものがあります。


さてさて、面白い面白くない、理解できるできないは別として、
今回の展覧会もにゃんこスターのネタも、やっている人間が楽しんでいることは伝わってきます。
岡本太郎の 《遊ぶ字》 を床のあちこちに配置したり、

床


顔をモチーフにした岡本太郎の作品の下に、無数の土偶の顔を積んでみたり、

dpぐう


1950~60年代に作られた日本製の革製品と現代のイタリア製の革製品をこれ見よがしに並べてみたり、

川


いい意味で、学芸員さんが好き勝手やっていました。
ここまでやり切っていると、清々しくすら感じられます。
特に好感を抱いたのが、キャプションの言い回し。
こちらは、一見何の変哲もない米櫃ですが。

おひつ


キャプション上では、「人が食事に使った米櫃を虫が喰う」 となっていました。
なるほど。
その観点はなかったです。


ちなみに、今回の展覧会には、
2014年のVOCA賞を受賞した田中望さんの作品も出展されています。
VOCA賞受賞作である 《ものおくり》 も出展されており、久々の対面を果たしましたが、

ものおくり


個人的には、《イザナギ》 という作品がお気に入り。

イザナギ
アートフロントギャラリー蔵


人々の代わりに描かれるウサギたちの姿も愛らしかったのですが、
それ以上に仏様 (?) の代わりとして描かれた大根が愛らしかったです。

ウサギ


たまに、変な形の大根が収穫されたというニュースが報じられていますが。
だいたいは、セクシー系な感じで、
あぐらスタイルの大根は、目にしたことがありません。
いつかこんな大根に出会いたいものです (←?)。




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CASE5 アッシェンバッハさんは泣いている・・・。

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街を歩けば、きっと貴方もパブリックアートに出会うはず。
それらのパブリックアートは、美術館の中に展示されている作品と違い、誰にも守ってもらえません。
そう、常に、危機的状況に晒されているのです!
そんな街中で偶然発見した “悲しいことになっているパブリックアート”
通称 “悲パブ” の事例を紹介する社会派企画 (?)「パブリックアートは泣いている…。」
皆さま、パブリックアートには優しく接しましょう。


(パブリックアートは泣いている…。BGM)




八王子駅北口から八日町方面に向かう歩行者専用の道。
西放射線ユーロードと呼ばれるストリートに、その “悲パブ” はありました。




思わず何かの事件現場、もしくは事故現場なのかと、勘ぐってしまうほどの厳戒態勢。
ここが、西 “放射線” ユーロードであることも、緊迫感に拍車をかけます。




とにかく尋常でないくらいのガードっぷり。
尋常でないくらいのコーンの数です。

近づくのに躊躇するものがありますが、おそるおそる近づいてみると、




足元には、太さといい長さにはいい凶器にはジャストサイズの木材が。
なんかもう、いろいろと不穏です。

さらに回り込んでみると、怪しさ満点の紙袋を発見!




いよいよ、本格的に犯罪の匂いがしてきました。
こんな怪しげな紙袋に入っているのは、クスリ的なヤツか拳銃、
はたまた、使途不明の大量の札束のいずれかに決まっています。
中身はめちゃめちゃ気になりますが、
第一発見者として巻き込まれるのだけは勘弁です。
見なかったことにして、このまま立ち去ろうかとも思いましたが。
先ほどから、この悲パブの周りをグルグルしているところを、誰かに目撃されていないとも限りません。
のちのち、何かヤバいものが発見されて、通報されたら一大事です。
もはや、この悲パブ。
“怖いことになっているパブリックアート”、通称 “怖パブ” と化しています (←?)。

毒を食らわば皿まで。
勇気を振り絞って、紙袋の中を覗き込んでみることにしました。




・・・・・ポケットティッシュかよ!

ちゃんちゃん。


ちなみに、こちらのパブリックアート。
タイトルはというと・・・




《関係》 だそうです。

パブリックアートとコーン。
パブリックアートと木材。
パブリックアートと紙袋。
いろいろな関係を考えさせられました。


しかし、遠い日本の地で、
まさか自分のアート作品が、危険物扱いを受けていようとは。
アッシェンバッハは知りますまい。




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創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき

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昨年10月に新宿区弁天町にオープンした話題の美術館、草間彌生美術館に行ってきました!





こちらは、草間彌生さんの草間彌生さんによる、
草間彌生さん (とそのファン) のための美術館で、
5階建てのビル丸ごとを使って、草間作品のコレクションを展示しています。
ちなみに、チケットは、日時指定の予約・定員制。
1日4回の各回90分 (定員70名) の入れ替え制となっています。




昨年10月に開館した時点で、
すでに2月末までの予約が埋まってしまっていたとのこと。
早くもプレミアムチケットと化しています。
草間彌生人気、恐るべしです。

さてさて、そんな草間彌生美術館のこけら落しとなるのが、
“創造は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき” という展覧会。
こちらは、1日に1点、もしくは2点という驚異的なペースで、
現在も絶賛制作中 (増殖中) の絵画シリーズ 《わが永遠の魂》 を中心に、

展示
(注:参考画像。2017年国立新美術館で開催された “草間彌生 わが永遠の魂” の館内の様子です)


その先駆けとなるモノクロのドローイングシリーズ 《愛はとこしえ》 や、
最新インスタレーション作品や新作の立体作品など、草間彌生さんの近作を紹介する展覧会です。

《わが永遠の魂》《愛はとこしえ》 が展示されている2階と3階は、写真撮影NGでしたが。
4階と屋上は、なんと写真撮影がOKとなっています!
4階で紹介されているのは、
最新インスタレーション作品 《無限の彼方へかぼちゃは愛を叫んでゆく》
タイトルは、ちょっと何言ってるか分かりませんが (←オイッ!)。
実に摩訶不思議な体験が味わえるインスタレーション作品でした。

まず扉を開けると、そこには真っ暗闇の空間が。
そして、その中央にケースがポツンと設置されています。




ケースの中には、無数の光るかぼちゃ。




グッと覗き込んでみると前後左右、




さらに、上下までもが鏡張りとなっていることがわかります。




見渡す限り、かぼちゃ。
一面に広がるかぼちゃ。
かぼちゃは続くよどこまでも。
かぼちゃの無間地獄です。
このまま作品を、じーっと見つめていたなら、
いつの間にか、自分もあっち側の世界の住人 (=かぼちゃ) になってしまうのでは?
そんな妄想に捕らわれました。
ちなみに、こちらの作品は2分間の入れ替え制。
タイマーが鳴ると、次の鑑賞者と交換しなければなりません。
妄想も2分間で強制終了です。


そして、屋上空間へ。
こちらには、新作のかぼちゃ立体作品 《Starry Pumpkin》 が展示されています。




表面に貼られているのは、ピンクとゴールドのモザイクタイル。
吹き抜けから注ぐ太陽の光を浴びて、ひと際キラキラしていました。




これまで、直島のものをはじめ、
数々の草間さんのかぼちゃを目にしてきましたが、個人的には、「ふ~ん。」 としか思わず。
写真をバシャバシャ撮っている女子の気持ちがわからなかったのですが。
(SNSのアイコンにしている女子の気持ちはもっとわからなかったのですがw)
今回初めて、その気持ちがよくわかりました。
気づけば、《Starry Pumpkin》 の写真を何枚も撮影していました。
もしかしたら、SNSのアイコンにしちゃうかもしれません。
それくらい、《Starry Pumpkin》 は造形的に惹かれるものがありました。
星星


ちなみに、展示室以外も、草間彌生ワールド全開の草間彌生美術館。
エレベーターの内部も赤い水玉がビッシリ。




さらには、トイレも赤い水玉がビッシリです。




あまりに赤い水玉に毒されて (?)、火災報知器まで草間彌生さんの仕業に見えてきました。






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ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜

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現在、東京都美術館で開催されているのは、
“ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜” という展覧会。

ブリューゲル
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、美術界の華麗なる一族・ブリューゲル一族に焦点を当てた展覧会で、
16世紀のフランドルを代表する画家ピーテル・ブリューゲル1世の作品を筆頭に、
ピーテル・ブリューゲル2世ら二人の息子、孫、さらにひ孫の代の作品など約100点が紹介されています。

今回の出展作の多くが、普段公開されていない個人所蔵の作品。
しかも、ほとんどが日本初公開です。
そんな貴重な作品群で構成されていたのは、大変ありがたかったのですが。
風景画の章であったり、風俗画の章であったり。





時系列でなく、ジャンルごとに紹介されていたのは、ややしんどかったです。
というのも、「花のブリューゲル」 と呼ばれたヤン・ブリューゲル1世や、
さらに、その息子ヤン・ブリューゲル2世、ヤン1世の娘の夫のダーフィット・テニールス2世など、
さまざまなブリューゲル一族が神出鬼没に登場するので、誰が誰だったかを把握するのに一苦労。
中には、ヤン・ピーテル・ブリューゲルなる人物も。


ヤン・ピーテル・ブリューゲル 《花の肖像》


思わず、「どっちやねん!」 とツッコみたくなりました。
星


さてさて、今回出展されていた作品の中で、
気になった作品をいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、メインビジュアルにも使われているピーテル・ブリューゲル2世の 《野外での婚礼の踊り》


ピーテル・ブリューゲル2世 《野外での婚礼の踊り》 1610年頃 Private Collection


これでもかというくらいに、皆さまハメを外しています。
それも、中央奥に座っている花嫁、まったく関係なしに。
陽気に踊っている男性たちの股間が、まぁ、おかしなことになっています。
この時代のファッションなのでしょうが、今の時代なら変態扱いで一発アウトです。
乙女の皆さまは、あまりジロジロ見ませぬよう。
ちなみに、股間繋がり (?) で、
画面左の建物に向かい、こちらに背を向けている3人の黒い服の男性も気になりました。
おそらく、用を足しているのでしょうか。
飲みすぎからの、連れション。
2次会以降によく見られる光景です。


続いて印象に残ったのは、ピーテル・ブリューゲル2世の 《鳥罠》 という作品。


ピーテル・ブリューゲル2世 《鳥罠》 1601年 Private Collection


もともとは、父であるピーテル・ブリューゲル1世がオリジナルを生み出したのですが、
ブリューゲル一族作品の中でも特に人気作で、100点以上ものヴァージョンがあるのが知られています。
《鳥罠》 と名にあるものの、「肝心の鳥罠はどこに?」 と思ったら、画面の右に小さく描かれていました。
たくさんの鳥が集まっている板みたいなのが、鳥罠とのこと。
板でパーンとプレスする感じで、鳥を捕まえるようですね。
なんと残酷な。
ちなみに、この絵の中にはもう一つ罠があるそうです。
それは、画面左に描かれた氷の穴。
スケートやコマで遊ぶ人々は、その存在に気付いていないよう。
日常に潜む (リアルな) 落とし穴です。


個人的にもっとも印象的だったのは、ヤン・ブリューゲル2世と、
バルトロメオ・カヴァロッツィによる合作 《花輪に囲まれた聖家族》




聖家族の肖像と、周囲の花のフレームのアンバランスさが、何ともいえません (笑)
初期のプリクラを見ているかのようです。


最後に、普通にお気に入りの一枚をご紹介。


ヤン・ブリューゲル1世(?)、ルカス・ファン・ファルケンボルフ 《アーチ状の橋のある海沿いの町》 1590-1595年頃 Private Collection, Belgium


うっとりするほど青色が美しかった作品です。
ブリューゲル一族の作品は、人やモチーフがちまちま描かれがち (←ブリューゲルあるある)。
普段の展覧会以上に、目が疲れてしまいましたが、
そのたびに、《アーチ状の橋のある海沿いの町》 を見て、目の疲れを癒しました。


余談ですが。
今回の展覧会は、特にグッズが充実していました。
ブリューゲル一族が活躍したフランドルが、
現在のベルギーにほぼ相当することにちなんで、ベルギービールも大充実。
チャートまで用意されていました。




本気ぶりが伝わってきます。




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現代美術に魅せられて―原俊夫による原美術館コレクション展(前期)

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原美術館で開催中の展覧会、
“現代美術に魅せられて―原俊夫による原美術館コレクション展” に行ってきました。
こちらは、初めて館長の原俊夫さん自らがキュレーションを行なうコレクション展で、
原美術館が所蔵する絵画や立体、写真など約1000点の中から厳選した作品が紹介されています。


今でこそ、原美術館はもちろんのこと、
全般的に現代アートの美術館は、オシャレスポットの代名詞ですが。
原美術館が開館した1979年当時の日本は、現代アート専門の美術館がほとんどなかったそう。
オシャレも何も、そもそも現代アートを鑑賞するというカルチャーがなかったようです。
また、業界からも、「はっ?現代アートの美術館?」 と冷ややかな目で見られていたのだとか。
原美術館にも、そんな下積み時代 (?) があったのですね。

さてさて、今回の展覧会は、前期と後期の2期制。
現在開催中の前期では、周囲の雑音に屈せず、
原さんが1970年代後半から80年代前半にかけて収蔵した作品が紹介されています。


(左) 篠原有司男 《モーターサイクル ママ》 1980年 段ボール、アクリル絵具、ポリエステル樹脂 117×130×66 cm ©Ushio Shinohara
(右)今井俊満 《黒い太陽》 1963年 カンヴァスに油彩 195.1×129.8 cm ©Toshimitsu Imaï
撮影:木奥惠三



李禹煥 《線より》 1979年 カンヴァスに顔料 181x227cm ©Lee Ufan


李禹煥に、河原温に、フォンタナに、ラウシェンバーグに、アイ・ウェイウェイに…etc
現代アート界の巨匠たちの作品が勢ぞろいしていましたが、これらはすべて当時購入されたもの。
しかも、大半の作品は、アーティスト本人に会ってから、購入を決めたものなのだとか。
中には、当時は海のものとも山のものともつかない作品だって、あったはず。
原さんの先見の明を感じずにはいられない展覧会でした。
星星


もちろん、こちらの草間彌生作品も、初期の作品。


草間彌生 《自己消滅》 1980年 ミクストメディア ©Yayoi Kusama 撮影:木奥惠三 


今みたいに、オシャレなアート女子が草間作品を観てキャーキャー言っちゃう、
しかも、グッズを身に着けちゃう時代が来るなんて、想像すらしていなかったであろう時代の作品です。
改めて冷静に観てみると、なかなかに気味の悪い作品です。
生理的にゾワゾワ来るものがあります。
ただ不思議と、原美術館の建物とマッチしていました。
置かれるべくして置かれている、収蔵されるべくして収蔵された作品といった印象を受けました。


個人的には、工藤哲巳の 《平板な環体での増殖性連鎖反応》 やロスコの 《赤に赤》
リキテンシュタインの 《フレームⅣ》 など、思いがけない名品が観られたのも嬉しかったですが。
ポロックのスランプ時代 (?) の貴重な作品が、観られたのも嬉しかったです。


ジャクソン ポロック 《黒、白、茶》 1952年 カンヴァスに油彩 91×70 cm 撮影:木奥惠三


ちなみに、3月21日から始まる後期では、
企画展の開催などをきっかけに収蔵された作品の数々が紹介されるとのこと。
前後期合わせて、原美術館40年史。
つまりは、日本における現代アート40年史です。
現代アート好きであれば、どちらも見逃せません。




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禁断の調査⁈入館料が高い美術館ランキング

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先日、メトロポリタン美術館の入館料の支払いが、原則義務化されるというニュースが報じられました。
これまでは任意方式を採用していましたが、支払う人が減り、運営費は困窮。。。
そのため、来月3月1日より、入館者は、
メトロポリタン美術館が目安として掲げている 「推奨価格」 を支払わなければならないそうです。
その価格は、大人25ドル。
日本円にして、約2800円です。

意外と、高い・・・。


日本の美術館は、常設展であれば、高くても1000円前後。
特別展の鑑賞料も、1500円前後が相場です。

と、ここで一つの疑問が生まれました。
日本にも、2800円級の美術館はあるのでしょうか?
そこで、今回の 『お願い!アートランキング』 では、
日本全国にある美術館の入館料の価格設定を徹底調査!
ありそうでなかった禁断の入館料高額ランキングを発表いたします。

☆ Ranking ランキング

第10位  ホキ美術館 1800円

ホキ


千葉県が誇る写実の殿堂・ホキ美術館が、ランキング入り。
日本で唯一、世界でもほぼ類を見ない写実専門の美術館であるだけに、そこまで割高感はなし。
ちなみに、第10位には、もう1館ランクイン。

第10位  ポーラ美術館 1800円

ポーラ


モネやルノワール、ピカソらの名品が堪能できるうえに、
富士箱根伊豆国立公園内という自然豊かな環境も楽しめる。
価格としては、十分に納得です。


第8位  スヌーピーミュージアム 2000円

スヌーピー


六本木に2年半の期間限定でオープンしたスヌーピーミュージアムが第8位。
スヌーピーファンなら、2000円は妥当な価格か。
スヌーピーファンでなければ・・・う~ん。

さらに、同じく入館料2000円のミュージアムが存在していました。

第8位  建築倉庫ミュージアム 2000円

建築


オープンしてしばらくは、確か入館料は1000円だったはずですが。
昨年7月に、しれっと2000円に値上げていた模様。
いや、倍額って・・・。


第6位  地中美術館 2060円

地中美術館


60円という謎の端数のおかげで、地中美術館が第6位にランクインしました。
館内で見られる作品の数は、9点。
そう考えると、作品1点当たりの鑑賞料は、日本一です。

ちなみに、この2060円という謎の価格設定は、直島ではスタンダートのよう。
同じエリア内にある犬島精錬所美術館も、やはり2060円でした。

第6位  犬島精錬所美術館 2060円




しかし、2060円。
なんとも支払いづらい金額です。
もし紙幣しか持ってなかったら、
お釣りで小銭がジャラジャラ返ってきてしまいます。


第5位  足立美術館 2300円

庭


「庭園日本一」(※)に14年連続で選ばれている庭は、確かに一見の価値はありました。
(※アメリカの日本庭園専門雑誌 『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』 が行っている日本庭園ランキング)
ただ、やはり冷静に考えると、2300円はかなり強気の金額設定。
鑑賞オンリー、散策することは出来ない庭園なのに。


第4位  岡田美術館 2800円

岡田美術館


箱根の小涌谷に、2013年に鳴り物入りでオープンした岡田美術館は、
開館時から、その入館料が2800円という高額設定であることが話題でした。
個人的な見解としては、コレクションの質の高さに加えて、
都内のN美術館やG美術館の3倍以上のボリュームがあるので、キリ良く3000円でもいいかと。
あと、源泉掛け流しの足湯も楽しめるので、コスパはいいです。


第2位で、ついに3000円オーバー。
しかも、同額で2館の美術館がランクインしました。
まずは、昨年10月にオープンしたばかりのミュージアム。

第2位  小田原文化財団 江之浦測候所 3240円




写真家で現代美術作家の杉本博司さんが、
構想20年の末に小田原の地に完成させた芸術家人生の集大成ともいうべきミュージアム。
夏至光遥拝100メートルギャラリーをはじめ、
石舞台やら光学硝子舞台やら、様々な施設が存在しているそうです。
まだ未訪なので、今年中に訪れなくては!

第2位  大塚国際美術館 3240円

大塚国際美術館


展示品は全部ニセモノ (陶板でのレプリカ) なのに、入館料は日本一高い。
でも、訪れた人の満足度も高い。
そんな大塚国際美術館が、堂々の第2位にランクイン!
僕も2011年に訪れたことがありますが、まんまと (?) その魅力にハマってしまいました。
美術館というよりは、美術のテーマパークといった印象。
ディズニーランドやUSJの価格と比べたら、3240円は全然安く感じられます。

“入館料が日本一高い美術館” 大塚国際美術館よりも、入館料が高い美術館。
その価格は、なんと、まさかの6900円
その美術館とは、一体?!

第1位  ポルセレインミュージアム 6900円

ポルセレインミュージアム


『ポルセレイン』 とは、英語で “磁器” のこと。
ヨーロッパの貴族たちに愛された伊万里の磁器を中心に展示しているミュージアムです。
こちらは、長崎のハウステンボス内にあり、
ハウステンボスのパスポートを持っている方のみ入場可能なミュージアム。
鑑賞するために、パスポートを購入しなければならないとは、相当ハードルが高いです。
ちなみに、「1DAYパスポート」 は6900円ですが、
午後5時から使える 「光の街アフター5パスポート」 なら、4900円。
2000円オフです!


ちなみに、こども料金が最も高額な美術館も調べてみました。
それは・・・




横浜アンパンマンこどもミュージアム&モール神戸アンパンマンこどもミュージアム&モール
こども (1歳以上) で、1500円(記念品つき) だそうです。
愛と勇気だけが友達のアンパンマンは、意外とお金にはシビアなのですね。

以上、入館料が高い美術館ランキングでした。




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マイク・ケリー展 DAY IS DONE 自由のための見世物小屋

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ワタリウム美術館にて、マイク・ケリーの作品を紹介する展覧会シリーズ (不定期) がスタート!
その記念すべき第1弾を飾るのが、
現在開催中の “マイク・ケリー展 DAY IS DONE 自由のための見世物小屋” です。

マイク・ケリー (1954~2012) は、
ポップ・アートの 「裏の帝王」 とも評されるアメリカのアーティスト。
あの 『ニューヨーク・タイムズ』 では、

「過去四半世紀で最もアメリカ美術に影響を与えた1人であり、
アメリカにおける大衆文化と若者文化の代弁者」


と紹介されたこともあるそうです。


そんなマイク・ケリーが2005年に制作した 《デイ・イズ・ダーン》 が、今回の展覧会のメイン。



(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


写真にオブジェ、映像。
そのすべてが、《デイ・イズ・ダーン》 の一部なのだとか。

一体どんな作品なのでしょう??

さて、まず何と言っても気になるのは、
同じ写真のモノクロver.とカラーver.とがセットで展示されていること。





いや、よくよく見てみると、同じ写真ではないですね。
似てはいますが、間違いなく別人です。
実は、モノクロの写真のほうは、マイク・ケリーの住む地域の新聞や、
彼の高校のイヤーブック (日本でいう卒業アルバムのようなもの) に掲載されていたもの。
そして、カラー写真のほうは、それをマイク・ケリーが別の人を使って再現したものです。
高校時代のコスプレ写真という、
おそらく本人にとっては黒歴史かもしれないものを、アート作品としていじられる。
実にえげつない作品です (笑)

しかも、写真を再現するだけでなく・・・





歌やダンス付で映像化!
(ストーリー構成はもちろん、作詞作曲も振付もマイク・ケリーによるもの)

モノクロの写真の人物に同情を禁じ得ない。
なんとも容赦のない作品です。

肝心の映像は、相当にシュールなテイスト。




トラウマ必至。
心の奥底が、常にザワザワします。
しかし、内容といい、音楽といい、振付といい、妙に惹かれるものがあるのも事実。
映像は全部で30本以上、長いものでは20分くらいの尺のものもありましたが。
ついつい見てしまいました。
謎の中毒性があります。
星星
野生爆弾のくっきーの世界観に近い気がしました。


個人的にお気に入りなのは、「聖母マリアコンテスト」 をテーマにした作品です。
どこのどなたか存じませんが、
こんなダサいTシャツを着ていたばっかりに、写真で再現されるわ、




映像にされるわ、大量にTシャツを作られるわ。





挙句の果てには、ショップでも販売されるわ。




どこのどなたかが不憫でなりません。
でも、さすがに、このTシャツのセンスは・・・。
ないわぁ (笑)


ちなみに、展覧会には、大学卒業直後に制作したという、
マイク・ケリーの初期作品 《エクトプラズム#1~#4》 も出展されていました。




写真のモデルは、当時のマイク・ケリー自身。
鼻から出ているエクトプラズムは、もちろん本物ではなく。
白い布かなにかです。
おそらく、あえて狙っているのでしょうが、その再現のクオリティの低さたるや。
B級感がハンパない作品でした。




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谷川俊太郎 展

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名実ともに日本を代表する詩人・谷川俊太郎さんの最新個展 “谷川俊太郎 展” に行ってきました。




詩人の展覧会といえば、
2016年に東京国立近代美術館で開催された “声ノマ 全身詩人、吉増剛造展” がよぎります。

“あれは、難解な展覧会だったなぁ。。。
 今回は、楽しめる展覧会でありますように (>人<)”


そんな僕の願いが届いたのでしょうか (←?)。
今回の “谷川俊太郎 展” は、ちゃんと楽しい展覧会に仕上がっていました。
星星


まず、最初の展示室では、小山田圭吾さん (コーネリアス) の音楽と、
インターフェイスデザイナー中村勇吾さん (tha ltd.) の映像によるコラボ作品が展示されています。
国語の教科書でもお馴染みの 「かっぱ」 など、




谷川俊太郎さんのリズミカルな詩3編を、音と映像に合わせて紹介する、
「ハイテク詩の朗読」 「テクノ詩の朗読」 とでも言うような作品です。





この作品を通じて、改めて実感させられたのは、谷川さんの詩の耳心地の良さ。
目で読むよりも、耳で聞くほうが、魅力が増幅します。
さらに、他のお客さんもいましたので、すんでのところで思いとどまりましたが。
ずっと耳にしていたら、思わず自分も声に出してしまいたくなりました。
ライブ感、グルーブ感がハンパなかったです。


さて、続いての展示室では、谷川さんが2007年に発表した 《自己紹介》 の詩に合わせて、
谷川さんがこれまでに手掛けた作品や写真やハガキなどを含む貴重な私物が展示されていました。




詩の1行1行が、それぞれ展示スペースになっています。




こんな方法があったとは!
実に画期的でユニークな展示スタイルでした。
見やすいし、インスタ映えしそうだし (基本的に、展覧会場は写真撮影可)、何より楽しいし。
詩をテーマにした展覧会の一つの模範解答であったような気がします。
星星


「こっぷ」 の再現展示や、




本人の直筆による謎のメッセージなどが、




なんかツボ。
谷川さんの詩に漂う飄々とした雰囲気が、展覧会場全体にも漂っていました。


さてさて、実は何を隠そう、
僕の出身である八千代市立高津中学校の校歌の歌詞は、谷川俊太郎さんによるもの。
歌詞の中になぜか 「サバンナ」 や 「オリオン」 が登場します。
あまりにスケールが大きすぎる校歌です。
いや、むしろ、八千代市や高津のフレーズが出てこないので、校歌という感覚はありませんでした。
(八千代市立高津中学校の校歌の歌詞を見たいかたは、こちら

谷川さんが作詞する以上、校歌っぽくなくて当然かと、今日まで信じて疑わなかったのですが。
会場で紹介されていた市川市立幸小学校の校歌の歌詞を目にして、愕然としました!





「やりゃあ、出来んじゃん!!」

僕らは中学時代、何で宇宙のことを歌わされていたのだろう。。。


ちなみに、誰得なのかわかりませんが、
谷川俊太郎さんがプライベートで着るTシャツの数々も展示されていました。




この展覧会の開催が、もし夏だったら。
こんなに大量に展示されていなかったかもしれません。




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版画の景色 現代版画センターの軌跡

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埼玉県立近代美術館で開催中の展覧会、
“版画の景色 現代版画センターの軌跡” に行ってきました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


こちらは、版画の普及とコレクターの育成を目指して、
1974年に誕生した現代版画センターにスポットを当てた展覧会です。
活動期間は、10年あまり。
世に送り出した版画作品の数は、実に700点を超えるのだとか。
今回の展覧会では、そのうちの約3分の1ほどの作品が展示されています。




現代版画センターとタッグを組んだアーティストは、およそ80人。
その中には、草間彌生さんや、




安藤忠雄さんといった今をときめく芸術家の方たちも。




さらには、彫刻のイメージが強い・・・というか、
彫刻作品しか見たことない関根伸夫さんの版画作品もありました。
しかも、彫刻作品のクールな印象とは打って変わって、版画作品はユーモラスな作風。
意外な一面を覗かせています。




個人的には、美術界きってのスピード狂・菅井汲の版画作品や、




エンボスの表現を巧く利かせた高柳裕さんの作品が、味わい深くてお気に入りでした。




さてさて、当たり前ですが、ここに展示されている作品はすべて販売されていたもの。
気になるのは、そのお値段。

おいくら万円なのでしょうか??

こちらは、現代版画センターが最初にエディション販売した靉嘔さんの 《I love you》 という作品。




限定11111部 (!) で、価格は1000円 だったとのこと。
えっ、そんなに安かったの?!
確かに、この金額ならば、版画が世に普及した野も納得。
コレクターが育成されたことも納得です。
今さらながら、現代版画センターの功績に拍手を送りたくなりました。


また、版画作品を制作するだけにとどまらず、
版画の普及のために、さまざまなイベントを開催していたという現代版画センター。
展覧会では、各種資料を交えて、そんな活動の数々も紹介していました。
その中でも、とりわけ注目すべきは・・・





宇都宮の巨大地下空間でのウォーホル展。
会場が会場だけに、当時かなり話題となったそうです。
もし、今開催されたら、インスタ映え効果で、さらに話題になりそうな企画です。


資料と言えば、数多くの美術家や批評家が寄稿した現代版画センターニュースも展示されています。
実際に、手に取って読むことも出来ました。





ページをめくるたびに、現代版画センターや、
関わった芸術家、コレクターたちの版画熱のようなものが伝わってきます。
この時代の熱気を知っている人も、知らない人も一見の価値ありです。
星


・・・・・と、それだけに。
なぜ10年あまりで、その活動にピリオドが打たれたのか、理由が気になります。
しばらくして、会場であっけなく、その答えが判明しました。
なんと倒産してしまったとのこと。
なるほど。
ピリオドを打ったのではなく、打たざるを得なかったのですね。

さて、現代版画センターが倒産したのは、1985年の2月。
閲覧可能なファイリングされた関連資料の中に、
その1月前に現代版画センターから会員向けに送られたDMもありました。
そこに書かれていたのは、「今年もよろしくお願いいたします」 的な一文。
なんなら、カレンダーがに当たるプレゼントキャンペーンもしていました。
もちろん販売の案内も。
倒産する気配は、これっぽちも醸し出されていませんでした。
「てる●くらぶ」 や 「はれ●ひ」 とはまた違うでしょうが。
倒産から30年以上経った今だからこそ、
ようやく開催出来た展覧会だったような気がしてきました。

ちなみに、現代版画センターの代表だった方は、
現在、『ときの忘れもの』 というギャラリーのオーナーをしているそうです。
今回の展覧会を通じて、その過去の事実を知った人も少なくないはず。
まさに 『ときの忘れもの』 を掘り起こすような展覧会。




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わらしべ長者生活 <第十話 趣向>

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美術品を手に、銀座を代表するギャラリーの数々を訪問し、
昔話 『わらしべ長者』 のように、物々交換してもらおうという企画。
それが・・・

わらしべ


我が家に田中田鶴子による謎の抽象画が棲みついて(?) から、早1ヶ月が経ちました。

田中


出会った当初は、「暗い絵だなぁ。。。」 という印象しか抱けませんでしたが。
毎日、眺め続けていれば、きっと新たな気づきもあるはず。
そう思っていたのですが、結局のところ、今日の今日まで印象は変わりませんでした。
終始、“暗い絵だなぁ。。。” のまま。
おそらく、あと1年くらい飾っていても、その印象は変わることはないでしょう。

このままでは、心がどうにかなってしまいそうなので (?)、作品を交換してもらうことに。
そこで、今回は、GINZA SIXの真向かいにある・・・




”心と眼を大切にする” 至峰堂画廊銀座店にご協力を仰ぎました。





もともとは、1977年に大阪で開設された至峰堂画廊。
今も大阪店は現役ですが、銀座店は2009年にオープンしました。
創業者の息子である鈴木庸平さんが、そのオーナーを務めています。




そんな至峰堂画廊が特に力を入れているのが、日本近代洋画。
明治から昭和にかけて活躍した物故作家の作品に、思い入れが強いそうです。
応接室には、さらっと藤島武二と坂本繁二郎の作品が飾ってありました。
当たり前ですが、もちろん本物です。


さてさて、これまでの 『わらしべ長者生活』 企画の経緯を、
ちゃんとブログでチェックしてくれていた鈴木さんより、まずはこんな提案がありました。

「とに~さん、そろそろ企画的にインフレがあったほうが面白くないかな?」

「いや、まぁ、もしそうなったら、僕としては願ったり叶ったりですけど」

「田中田鶴子さんの作品と、どれを交換したらいいか考えていたら、候補がいろいろ出てきてね。
 で、それらの作品を今から全部見せるから、とに~さんが最終的に1点を選ぶってのは、どうだろう?
 中にはインフレする (=値段が何倍にもなる) 作品もあるし、反対にデフレとなる作品もあるよ」

さすが大阪出身 (←?)、サービス精神旺盛な鈴木さん。
オモロイ趣向を用意してくれていました。
ここは是が非でも、今回の交換でインフレを起こしたいところです。

それでは、今から登場する作品の中で、
もっともインフレする高額な作品はどれなのか、皆様も一緒にお考えください

①ラグーザ玉 (1861~1939) の水彩画




鈴木さん曰く、世界的にも活躍した女性作家繋がりで選んだ一枚。
日本に西欧美術を伝えた彫刻家ヴィンチェンツォ・ラグーザの妻であり、
日本初の女性西洋画家として知られるラグーザ玉が描いたチューリップの絵です。
画面の左半分が紙焼けしていますが、むしろそれすら味に感じます。


②小磯良平 (1903~1988) のエッチング




日本を代表する洋画家のひとり、小磯良平のエッチング作品。
ちなみに、この作品を鈴木さんが選んだ理由は、
小磯良平は、田中田鶴子が属した新制作協会の立ち上げメンバーの一人であるから。
それと、小磯作品は品が良いので、畳の部屋にも合いそうだからとのこと。
ブログを通じて、部屋の雰囲気までチェックしてくださっていたとは。


③石川欽一郎 (1871~1945) の水彩画




こちらも、僕の畳の部屋に合いそうな一枚とのこと。
日本では、ほとんどその名が知られていない石川欽一郎ですが・・・。
2期に渡って台湾で美術教育に携わったというその功績から、
台湾では、知らない人はいないであろうほどの人気画家なのだとか。
銀座ではともかくも、台湾に関してはインフレ必至ですね。


④須田剋太 (1906~1990) の油彩画




司馬遼太郎の紀行文集『街道をゆく』の挿絵を担当したことでも知られる洋画家。
田中田鶴子も須田剋太も、ともにサンパウロ・ビエンナーレに出品経験があります。
鈴木さんによれば、書としても抽象画としても楽しめる作品だそうです。
意外と、畳の部屋にもマッチするとのこと。


⑤香月泰男 (1911~1974) の水彩画




描かれたのは、田中田鶴子の作品とほぼ同時期の1958年。
香月泰男が一番脂が乗っていた時期に描かれた作品です。
香月といえば、シベリア抑留の記憶を基に、
故郷の山口県で制作し続けた 『シベリア・シリーズ』 でお馴染み。
まな板に描かれた鯉も何かを象徴しているのでは、と思わず勘繰ってしまいました。


⑤山本雄教さん (1988~) のフロッタージュ作品




今最も注目を集めている若手美術作家の一人・山本雄教さんのフロッタージュ作品 《990円札》
ドットのように見えているのは、実は1円玉。




麻紙の下には、1円玉が22×45枚、計990枚分敷き詰められています。
それを表面から鉛筆でフロッタージュ、つまり擦って、1万円札の姿を浮かび上がらせた作品です。
990円が1万円に!
確かに、インフレしています (笑)



さて、以上の6点の中から、交換したい作品を1つ選ぶことに。
物故作家は5人、現役の作家は1人。
しかも、僕より歳が若い作家です。
鈴木さんの言うデフレする作品は、ほぼほぼ確定したようなもの。
しかし、それでも残る選択肢は5点。
一番年代が古い作家の作品が高額なのか。
それとも、美術館でよく展覧会が開催される作家の作品が高額なのか。
う~ん。悩みます。

「鈴木さん、もう少し悩んでいいですか?」

「どうぞどうぞ。とに~さんの気が済むまで」

時計10分経過時計

小磯良平の作品が、高そうだなぁ。でも、版画だからなぁ・・・。
我が家に香月泰男とかラグーザ玉とかの絵を飾る日が来るなんて、想像したことなかったからなぁ。
いっそ、そのどちらかにしてみようかなぁ。でも、飾るなら、石川欽一郎かなぁ。いや、須田剋太も捨てがたい・・・。


悩みすぎて、若干吐き気すらしてきました。


時計さらに、5分経過時計

「・・・よし!決めました!!」

「どれと交換しますか?」

「山本さんの作品で!」

「えっ?!」

まさかの展開に、やや驚きを隠せない鈴木さん。
かくいう僕自身も、自分の決断に驚きは隠せません。

「インフレする作品は、たぶん香月泰男とかラグーザ玉とかの作品だと思うんですけど。
 散々悩んだ末に、“純粋に部屋に一番飾りたいのはどれ?” と考えると、山本さんの作品でした。
 作品として純粋に面白いですし、今後どんな作品を作っていくのかも純粋に気になります。
 山本さんは、きっと今後もっと活躍するはず。
 現時点では、デフレなのかもしれませんが、
 20年後30年後、長いスパンで見れば、一番インフレするかもしれないですし (笑)」

「そういうことなら、山本さんの作品と交換しましょう」




「ちなみに、ラグーザ玉の作品はおいくらだったのですか?」

「120万円くらいかなぁ」

!!!

「ちなみにちなみに、香月泰男の作品は?」

「150万円くらいかなぁ」

!!!!!

『あのアートテラーのとに~が、名だたる巨匠の作品を差し置いてまで交換した』

ということが、山本雄教さんの評価に、せめて1円でもプラスになりますように (笑)




【今回ご協力いただいた画廊】
至峰堂画廊
住所:東京都中央区銀座6-9-4 銀座小坂ビル4F




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MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958

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「マイブーム」 「ゆるキャラ」 などの命名者であり、
今年、還暦を迎えるMJこと、みうらじゅんさん。
そんなみうら氏のマイブームの起源と全貌を明らかにする展覧会が、川崎市民ミュージアムで開催中です。
その名も、“MJ’s FES みうらじゅんフェス!マイブームの全貌展 SINCE 1958”




入り口では、みうら氏がデザインした 《ツッコミ如来立像》 がお出迎え。
会場に入る前から、バカバカしさ全開です (笑)




展覧会で紹介されているのは、みうら氏のこれまでのマイブームの数々。
その過程で蒐集された膨大な数の “珍奇なモノ” がところ狭しと並べられていました。

例えば、こちらのコーナーでは、
観光地で 「誰がこんなもん買うわけ?」 と思わせる土産=いやげものの数々を紹介。




大量のゴムヘビや、




眠り小僧なる謎のキャラ、




ヘンな掛軸、略してヘンジクなどがフィーチャーされています。




一つ一つは取るに足らない、どうでもいいモノなのですが、
こうして一定の数が集まると、見るべきコレクションのように思えくるから不思議です。
アート性すら感じます。


冷蔵庫に貼るマグネット、略して 「冷マ」 の展示に関しては、もはや現代アート作品のよう。





柴田理恵と松村邦洋が、ちょくちょく登場しています。
日本の多くの家庭の冷蔵庫に、
このマグネットが貼ってあるのかと想像すると、なんかツボでした (笑)

他にツボだったのは、ムカつく絵馬=ムカエマと、




「バカ」「エロ」「カッコイイ」 の三拍子そろったフェロモンレコードジャケットです。




上半身ヌードの南こうせつ・・・。
どんな需要があったのでしょう??


さらには、18禁のエロコレクションコーナーあり、




一応 (?) 本業であるイラストレーターとしての作品を紹介するコーナーあり、




みうらじゅん氏の部屋を再現したコーナーもあり、




何でもありの素晴らしきゴチャゴチャ感の展覧会場でした。
まさに、現代版のヴンダーカンマー (驚異の部屋) 。
改めて、みうらじゅんという人物の底知れなさ、途方もなさを実感させられました。


今やすっかり定着した 「ゆるキャラ」 もそうですが。




みうら氏のスゴさは、まずは誰も目をつけていないところに気が付くこと。
で、それらを、グループ化すること。
そして、キャッチーなネーミングを付けること。
何よりその作業を、本人が面白がってやっていること。

モノ自体は、ハッキリ言えば、くだらないモノばかりなのですが (笑)
みうら氏のフィルターを通すと、どれも面白く感じられます。
「次は何が展示されているのかな♪」 と、
こんなにもワクワク、前のめりで鑑賞した展覧会は久しぶりでした。
実は、これこそが、展覧会というものの本質なのでは?
キュレーションの本質なのでは?
あえての3ツ星!
星星星




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Moving Plants 渡邊耕一展

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資生堂ギャラリーで開催中の “Moving Plants 渡邊耕一展” に行ってきました。




こちらは、イタドリに魅せられ、10年以上の歳月をかけ、
世界を飛び回って、イタドリを撮り続けている写真家・渡邊耕一さんの最新個展。
もちろん、紹介されているのはイタドリの写真です。




イタドリは、日本各地に生息するタデ科の雑草で、
古来より、食材としても、また薬草としても知られています。
痛みを取るから、イタドリとのこと。
もともとは日本を含む東アジアにしか分布していなかったそうなのですが。
今から遡ること約200年前、あのシーボルトによって、
園芸用のアイテムとして、日本からヨーロッパにイタドリが持ち出されます。




イタドリが輸入された始めた当時は、
その年の最も興味深い装飾用園芸種として金賞を受賞するなど、重宝されていたのですが・・・。
繁殖力が異常に強いイタドリは、その後、あっという間にヨーロッパ中を侵略!
ヨーロッパの生態系を大きく破壊してしまいました。

ちなみに、こちらはイタドリを一度駆除した時の写真。




そして、6年後に同じ場所を写した写真。




繁殖力、どんだけだよ!

その猛威から、アカミミガメやブラックバスと並んで、
イタドリは世界の侵略的外来種ワースト100にも選ばれているそうです。
また、生態系だけでなく、物理的に建築も破壊するイタドリ。
アスファルトやコンクリートを突き破って増殖を続けるそうで、
イギリスでは、イタドリが土地にあると不動産価値が大きく下がってしまうほどなのだとか。


まさか日本のイタドリが、世界でそんなことになっていたとは・・・。
池の水をぜんぶ抜く様子を見るたびに、「外来種め!」 と、被害者ぶっていましたが。
知らないところで、日本も迷惑をかけていたのですね。
悪いのはシーボルトですが 、少しは責任を感じてしまいました。

しかし、見た目から犯人面のアカミミガメやブラックバスと違って、イタドリは見た感じは大人し目。
なんなら濃いグリーンに爽やかさすら感じます。
人畜無害に見えて、行動は狂気的。
一番、たちの悪いパターンです。
美しきストーカーみたいな感じでしょうか。


ちなみに、2010年にイギリスは、
日本からイタドリの天敵であるイタドリマダラキジラミを導入。
イタドリを根絶するべく、研究を進めています。





「バイオハザード」 のマークがプリントされた袋の中から、死に体のイタドリの姿が透けていました。
思わずゾッとする光景でした。
イタドリを根絶させることが、果たして、正しいことなのかどうなのか。
いろいろと考えさせられました。
人生で最もイタドリについて考えた日です。
星




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ルドンー秘密の花園

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現在、三菱一号館美術館では、“ルドンー秘密の花園” という展覧会が開催されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


三菱一号館美術館では、2012年にも、
フランス象徴主義を代表する画家オディロン・ルドンの展覧会を開催していますが。
今回は、そのアップグレード版とでもいうべき展覧会。
世界有数のルドンコレクションを持つ岐阜県美術館の名品に加え、


《眼をとじて》 1900年以降 油彩/カンヴァス 岐阜県美術館蔵


MOMAやオルセー美術館といった世界の名だたる美術館からも、ルドンの名作が来日!


《蝶》 1910年頃 油彩/カンヴァス ニューヨーク近代美術館(MoMA)蔵 
The Museum of Modern Art, New York. Gift of The Ian Woodner Family Collection, 2000
©2017 Digital image,The Museum of Modern Art, New York/ Scala, Florence



考えうる限りのベストメンバーで構成された史上最強のルドン展です。
ちなみに、今回のルドン展のテーマは、「植物」。
ルドンが植物をモチーフに描いた作品の数々が紹介されています。




確かに、会場は、タイトルの通り、『秘密の花園』 状態でした。
いや、花がモチーフの絵ばかりでなく、
樹木がモチーフの絵もわりと登場していたので、『秘密の植物園』 状態でした。




展覧会の目玉は何と言っても、
フランスの美術愛好家ドムシー男爵がルドンに注文した城館の食堂の装飾画です。
現存する16点のうちの1点が、三菱一号館美術館が所蔵する 《グラン・ブーケ(大きな花束)》




こちらの作品は、前回のルドン展で初めてお披露目され、
以来、たびたび展示されている三菱一号館美術館のマスターピースともいうべき作品です。
今回のルドン展では、この 《グラン・ブーケ(大きな花束)》 とともに、
オルセー美術館より来日した残り15点の装飾画が合わせて展示されています。




つまり、16点が勢ぞろい!
ドムシー男爵の関係者しか見られなかった光景 (?) を目にすることができる超貴重な機会なのです。
星星星


《グラン・ブーケ(大きな花束)》 を1点だけ鑑賞しているときには、感じなかったのですが。
今回初めて、16点セットで鑑賞して感じたのは、
やはり装飾のために描かれた絵であるということ。




この装飾画が壁に掛かるだけで、
展示室内がいつも以上にクラシカルでノーブルな雰囲気になっていました。
装飾効果、抜群です。
しかも、普段は気にも留めなかった展示室内の扉も、ルドンの装飾画で装飾されるとこの通り。




なんとなく重厚感が増しています。
あの扉を開けると、その先に城館内の光景が広がっていそうな気さえしました。

ちなみに、もう一つ感じたのが、
16点のうち 《グラン・ブーケ(大きな花束)》 だけが群を抜いて、華やかなオーラがあるということ。
ぶっちゃけ、15点が束になっても、《グラン・ブーケ(大きな花束)》 には適わなかったです。
むしろ、《グラン・ブーケ(大きな花束)》 の魅力を引き立てるための15点。
バックダンサー的な役割の15点でした。

ただ、パッと見、15点の装飾画は地味ではあるものの。
じーっと見ていると、ポカポカ染みわたるものがありました。
地味というより、滋味。
象徴主義の画家としてのルドン、植物好きのルドン、装飾画にチャレンジしたルドン。
いろんなルドンの作風が混じりあって、ドロドロに溶けあって。
まるでポタージュスープのような味わいでした。




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!)
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度ご確認頂けますと幸いです。


2/12(月・祝) ドキッ!丸ごと半蔵門線!驚異だらけのアートツアー

今回お届けするのは、『驚異』 をテーマに、
半蔵門線の沿線にある3つの美術館をぶらりと巡るアートツアーです。

まず訪れるのは、水天宮前にある 「隠れ家系美術館」 ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクション。
こちらでは、現在開催中の展覧会 “忘れられない、” を特別ガイド付きで鑑賞いたします。
浜口陽三の驚異的な技法や、前原冬樹さんの驚異的な彫刻作品など、見どころ満載の展覧会です。

続いて、当日までお楽しみの隠し玉のミュージアムをご案内!
こちらでは、自然の驚異をご堪能くださいませ。

その後、休憩を挟み、 Bunkamura ザ・ミュージアムへ。
“神聖ローマ帝国皇帝 ルドルフ2世の驚異の世界展” をたっぷり鑑賞いたします。
展覧会を鑑賞する前に、見どころやオススメ作品などガイドさせて頂きますチョキ

定員:10名
時間:12時半~18時
参加費:2000円

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/



2/17(土) 高天麗舟先生と行く!仏像の手相 (勝手に) 鑑定ツアー

占い師の高天麗舟先生を講師に迎え、
仏像の手相を (勝手に!) 鑑定して巡るあの大人気企画の最新版!

今回は、秘仏が多数出展されることで話題のあの展覧会、
“特別展 仁和寺と御室派のみほとけ-天平と真言密教の名宝-” を舞台にします。

もっともありがたい手相の持ち主は、どの仏像なのか?!
はたまた、頼りがいのない手相の持ち主は、どの仏像なのか?!
内容盛りだくさんでお届けいたします。

もちろん、手相鑑定をしたことが無いという方 (多くの方がそうですがw) も、ご安心を。
手相の見方がわかる簡単なレクチャーコーナーを予定しています。
仏像を手相という視点から鑑賞しながら、自分の手相も知ることが出来てしまう。
一粒で二度美味しいアートツアーです。

時間:13時~17時
定員:12名
参加費:3000円 (鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/



2/24(土) 2018年展覧会仕分けの会

2018年。
今年も、見逃せない展覧会が続々開催されます。

・・・・・・・が、しかし。
見逃せない展覧会がたくさんあると、一体どれを優先すればいいのかわからなくなるというもの。

そこで、毎年好評の “展覧会仕分けの会” を今年も開催いたします!
“フェルメール展”や“ムンク展”といった話題の展覧会から、
アートテラーとして密かに注目しているマニアックな展覧会まで。
2018年に開催される展覧会から厳選した30の展覧会を、
独自に入手した最新情報を交えながら、プレゼンいたします。
参加者の皆様は、美味しいお酒や料理を楽しみながら、
「絶対に行く!」「行けたら行く。」「行かなくてもいっか。」 の3段階で仕分けくださいませ。

また、会のラストには、参加者全員に何かしらのプレゼントが当たる抽選会も。
どうぞお楽しみに♪
会場は、現在調整中です。
(例年と同じく池袋になる可能性が大ですが、変更の可能性もあり。その場合は、山手線の沿線で別会場を探します)

時間:18時~21時
定員:25名
参加費:5000円 (飲み放題・食事込)

ご参加希望の方は、イベント名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/



2/25(日) アートでオシャレな街 “丸の内” 徹底解剖ツアー

上野に六本木に銀座に。
東京には、さまざまなアートな街がありますが。
その中でも、特に押さえておきたいのが、丸の内です。

今回のアートツアーでは、そんな丸の内のアートな魅力を徹底解剖!
デートにピッタリの㊙ミュージアムやインスタ映えするパブリックアート、
レトロな名建築など、丸の内で押さえておきたいアートスポットを余すことなくご紹介いたします。

もちろん、アートタウン “丸の内” の顔ともいうべき、三菱一号館美術館も訪れます。
この春大注目の展覧会 “ルドンー秘密の花園” の見どころも解説しますので、どうぞお楽しみに♪

時間:13時~17時
定員:12名
参加費:1600円 (鑑賞料を含む。途中カフェ休憩を挟みます。飲食代は各自負担)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/



3/4(日) 至上の印象派展へ行こう!

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです♪

さて、今回みんなで訪れるのは、
2018年上半期大本命の展覧会 “至上の印象派展 ビュールレ・コレクション” です。
スイスの大実業家エミール・ゲオルク・ビュールレが所蔵するコレクションの中から、
4m超えのモネ晩年の睡蓮の大作をはじめ、セザンヌ、ゴッホなど名品の数々が来日する展覧会です。
さらに、最も有名な少女像ともいわれる、
ルノワールの 《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》 も来日!
絶対に見逃せない展覧会です。

展覧会を鑑賞したあとは、近くのカフェでまったりいたしましょう♪
図録を持参しますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなたでも気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

定員:12名
時間:13時半~17時
参加費:1500円 (展覧会の鑑賞料を含む)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/11(日) 今こそ「プラド美術館展」の話をしよう

今年の春大本命の展覧会 “プラド美術館展” が、ついにスタートします!




↑こちらの及川光博さん出演の㏚動画の脚本を担当させて頂くなど、
半年以上にわたって関わってきたので、アートテラーとしては、思い入れもひとしおな展覧会。
見どころや裏話など、当日は、いろいろとお話しできたらと思っております♪
一緒に展覧会を鑑賞した後、近くのカフェでお茶会も予定しています。

定員:12名
時間:13時~17時
参加費:1500円 (展覧会の鑑賞料を含む)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

Book:27 『画狂其一』

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■画狂其一

 作者:梓澤要
 出版社:NHK出版
 発売日:2017/10/21
 ページ数:320ページ

現代美術にも通ずる大胆な空間構成が高く評価され、
欧米の美術界で江戸琳派の旗手として広く知られる鈴木其一。
酒井抱一の内弟子として画業をスタートした其一は、
師の死後、どのようにして 「夏秋渓流図」「朝顔図屏風」 のような奇想の絵を描いたのか!?
絵師としての苦悩、波瀾に満ちたその生涯を描く歴史小説。
(NHK出版ホームぺージより)


「師匠の酒井抱一でも、一般的には知名度が低い気がしますが。
 さらに、その弟子である鈴木其一を主人公にした小説だなんて・・・誰が読むんだ?!

 と思いながらも、たぶん僕みたいな人間が読むんだろうなぁと購入してみました。

 鈴木其一といえば、画業の始めこそ、
 師匠の抱一のような品があって清冽な絵を描いているものの、
 師匠の死後は、急にキャラ変し、アバンギャルドな絵を描いた絵師というイメージ。

 


 この小説では、その辺りの画風の変化、心境の変化が巧く表現されていました。
 なるほど。だから、こんなにキャラが変わったわけか。
 ストンと落ちるものがありました。

 ちなみに、其一が主人公ではありますが、
 冒頭からの3分の1ほどは、其一から見た抱一の姿がメインで描かれます。
 抱一がリスペクトする尾形光琳の 《風神雷神図》




 その裏面に、抱一が 《夏秋草図屏風》 を描いているのは、わりと有名な話ですが。




 そのエピソードも、ばっちり登場しています。
 定期的に 《夏秋草図屏風》 は、トーハクで公開されるので、次に観に行くのが楽しみになりました。
 

 さてさて、其一といえば、時にくどくどしいイメージもありますが。

 掛け軸
 

 この小説の作者も、そんな其一に引っ張られたのでしょう。
 情報が盛り盛りで、全体的には、ややくどくどしい印象を受けました。
 特に気になったのが、其一が自分探し (?) のために、京都や奈良を中心に関西を旅行するくだり。
 その行程があまりに事細かく描かれていて、途中で投げ出したくなりました (笑)
 いつまで、旅の話が続くんだよ。
 無駄に長い旅行ブログを読まされているような気分でした。


 あと、実際に交流があった人もいるのでしょうが、有名人が登場しすぎ。
 葛飾北斎、歌川広重、谷文晁、七代目市川團十郎、井伊直弼、伊藤若冲・・・etc
 登場人物も、盛り盛りでした。


 それだけ盛に盛り込んだにも関わらず。
 ラストは、あっけないほどにあっさり。
 最後のほうだけ、別の作者に変わったのかと思いました。


 ちなみに、電車移動中に読んでいたのですが、
 装丁に採用されている 《朝顔図屏風》 が、よっぽど目を惹いたのでしょう。
 多くの人に、ジロジロ見られました。
 《朝顔図屏風》 のデザイン性は、今でも十分通用するようです。
スター スター スター 半分星 ほし(星3.5つ)」


~小説に登場する名画~

《朝顔図屏風》

金川晋吾 長い間

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横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の “金川晋吾 長い間” に行ってきました。




こちらは、2010年に若手の登竜門と呼ばれる三木淳賞を受賞し、
2016年に出版した写真集 『father』 が今なお注目を集めている写真家・金川晋吾さんの個展です。
会場に展示されているのは、謎のオッサンの写真の数々。





どう見ても、同一人物です。
「何者??」 かと思えば、こちらが金川晋吾さんの実の “father” とのこと。




金川晋吾さんの “father” には、失踪癖があるそうで。
ふらりと1週間いなくなるときもあれば、1ヶ月くらい姿を消す時も。
当然、そんな性質の持ち主ですから、仕事はままならぬ、
酒とパチンコに溺れるわ、借金を重ねるわ、自己破産はするわ。
典型的な 『ザ・ノンフィクション』 に登場するタイプの人物です。




「なぜ、失踪をしたのか?」 と問うても、
「わからない」 と答える金川晋吾さんの “father” 。
記憶とすべての感情を失ったような表情は、もはや人ではないナニモノかのよう。




そんなナニモノかの姿を、写真というメディアは、淡々と写し取ります。
冷酷さすら感じるほどのリアルが、そこにありました。

ぶっちゃけ、このオッサンには、何の感情移入もありませんが (笑)
そんな “father” と向き合い、被写体として撮り続けている息子の金川さんには、興味を引かれました。
どういう気持ちで撮影しているのか。
いや、むしろ、感情を抑えて撮影に徹しているのか
レンズの向こうに見えているのは、
肉親である父なのか、それとも、父の姿をしたナニモノなのか。




曇りガラス越しに映るセルフポートレート写真が、
金川さんと “father” との微妙な距離感を象徴しているようで、とても印象的でした。


さてさて、今回の展覧会では、“father” だけでなく、
金川さんの “father” の姉を映した写真シリーズも紹介されていました。




金川さんの伯母に当たるこちらの人物は、
20年ほど消息不明で、2010年に発見されたそうです。




“father” 同様、失踪の理由は不明とのこと。
「血筋」「家系」 という言葉が、頭をよぎります。
他人の僕でさえ、そうなのですから、
おそらく金川さん本人はもっと意識しているはず。
つくづく、どういう心境でカメラを構えているのか気になります。

ちなみに、金川さん自身の考えやこれまでの経緯は、
会場で無料で配れているテキストで、ビッシリと紹介されています。





情報量の多いテキストではありますが、読めば読むほど、
“father” と “father” の姉のことが、さらによくわからなくなりました。
彼らはナニモノなのだろう。。。


正直なところ、鑑賞してから数日経っていますが、
自分の中では、イマイチ作品をうまく飲み込めていません。
いや、むしろ、まだ咀嚼できていないかも。
他人の家に行って、その家ではポピュラーな妙な家庭料理を食べさせられたような。
決してマズくはないのですが、どう表現していいかわからない味。
とにもかくにも、心がザワザワする展覧会でした。
星


さてさて、現在、横浜市民ギャラリーあざみ野では、
同時開催として、“写真の中の身体” というコレクション展が開催中。
こちらも無料です。




数ある展示品の中で個人的に気になったのは、昔のアメリカの警察写真用の装置。





ちゃんと撮られたくないために、
暴れる人が多数いたとのことで、押さえつけるためのベルトが常備されていたそうです。
ちなみに、そんな風にして撮影された実際の警察写真も展示されていました。




暴れるどころか、微笑んでるじゃん!!




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会田誠展「GROUND NO PLAN」

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都市のあり方に強い興味を持つ国内外のアーティストが、
建築系の都市計画とは異なる視点から理想の都市のあり方を提案・提言する。
公益財団法人大林財団による新しい助成プログラム、
その名も、「都市のヴィジョン―Obayashi Foundation Research Program」 がスタートしました。
記念すべき第1回目の助成対象者に選ばれたのは、会田誠さん。
現代の日本社会を鮮烈に批評し続けている会田さんが、今回は一体どんな提案・提言をしたのか。

早速、“会田誠展「GROUND NO PLAN」” に足を運んできました。
ちなみに、会場は、青山クリスタルビルの地下にある特設会場。




そのオシャレな外観 (?) とは裏腹に、
地下の特設会場には、まぁ、カオスな空間が広がっていました (笑)




まず出迎えてくれたのは、絶えずみょんみょん動き続けている謎のオブジェ。




その名も、《Shaking Obelisk》 です。
どことなく不謹慎な感じもありますが、
ついつい動きに見入ってしまう、笑みがこぼれてしまう不思議な作品でした。

そんなみょうちくりんなオブジェがあちらこちらに。
さらに、みょうちくりんな絵画もあちらこちらに。




なおかつ、会田さんの手書きの文字もあちらこちらに。




“あれ、この雰囲気、どこかで見たような・・・”

完全なるデジャヴです。
しばらくして、その原因が判明。

「あっ、ヴィレヴァン (ヴィレッジヴァンガード) か!」

自分の中では、スッキリしました (笑)


《TOKYO 2020》 のロゴマークや、




東京オリンピック2020のメインスタジアムのためのイラスト、


(注:なんとなく、そのまま載せるのが憚られるので、自主規制していますw)


ジュリーの 『カサブランカ ダンディ』 の替え歌 『アーティスティック・ダンディ』 など、




攻めた新作も数多く出展されていましたが、
面白いことは面白いものの、旧作と比べてしまうと、ネタの小粒感はどうしても否めず。
作り込んだネタで勝負を挑んだ展覧会というよりは、
思い浮かんだネタを手あたり次第をぶっこんだ展覧会という印象でした。
どっちのほうが正解というわけではないですが、
個人的には、2001年に発表された 《新宿御苑大改造計画》 くらい作り込んだ新ネタも見たかったです。




暴れん坊と言われる大御所芸人のように、
芸歴 (アーティスト歴) を重ねたことで、暴れ方が省エネ化していたきらいはありましたが。
それでも、今なおブレることなく (成長することなく?)、
ちゃんと暴れているアーティスト・会田誠の生きざまに、素直に感銘を受けました。
ここまでアーティストが暴れ倒す展覧会はそうそうないので、一見の価値アリ!
しかも、入場料は無料です (500~1000円くらい入場料を取っても良かったのでは?)。
2週間しか開催されないので、鑑賞はお早めに!
星星


ちなみに、思わずブッと吹き出してしまったのは、こちらの作品。




群馬の皆さん、マジで怒ったほうがいいですよ。




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寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽

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現在、サントリー美術館で開催されているのは、
“寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


江戸幕府が政権を確立し、戦乱の世が終わりを告げた寛永年間 (1624~44) 。
その時期を中心に開花した 「寛永文化」 をテーマにした展覧会です。
江戸時代の文化というと、歴史の授業で、元禄文化と化政文化は習った記憶がありますが。
寛永文化なんて、習わなかったような。。。
それだけに、どんな文化なのか興味津々です。

まず、寛永文化の重要なキーワードは、『きれい』 とのこと。
平和な時代の訪れが、京都を中心とした優美で洗練された文化を産んだのだそうです。
確かに、寛永文化の名品で埋め尽くされた会場は、高貴で華やかでした。





これまで、“江戸時代の文化=町人の文化” と勝手に思っていましたが。
こんな平安時代の貴族文化のような文化もあったのですね。
星星


さてさて、今回の展覧会では特に、寛永文化の三巨匠にスポットライトが当てられています。
一人目は、寛永文化を代表する茶人にして、
江戸幕府の有能な官僚でもあった小堀遠州 (1579~1647) です。

会場には、遠州が京都の六地蔵で入手したといわれる 《小井戸茶碗 銘 六地蔵》 をはじめ、


小井戸茶碗 銘 六地蔵 一口 朝鮮時代 16世紀 泉屋博古館分館
(注:展示期間は、2/14~3/12)



遠州が茶会で実際に使用した茶道具や、記録から想定される茶道具が勢ぞろいしていました。
『きれい』 であり、かつ、『寂び』 も感じられる、
遠州オリジナルの美意識 『きれい寂び』 に満ちた空間は、一見の価値あり。




茶道具のことは、イマイチわからない僕ですら、「あぁ、なんかいいなぁ」 と感じられました。
心がフッと落ち着くような。思わず深呼吸したくなるような。
スーッとした清涼感を覚えました。
おそらく日本人のDNA的な何かが反応したのだと思います。


フィーチャーされている二人目は、狩野永徳の孫にして、
江戸狩野派の始祖といわれる狩野探幽 (1602~1674) です。




探幽といえば、余白の美。
余白の美といえば、探幽。


狩野探幽 《桐鳳凰図屛風》 六曲一双 江戸時代 17世紀 サントリー美術館 【全期間展示】


会場では、探幽が生んだ新たな美のスタイル “余白の美” を、余すことなく堪能することが出来ます。
スッキリとしているんだけど、決して味が薄いわけではない。
しっかりダシが効いている。
ラーメンでいうと (←?)、淡麗系スープのような味わいでしょうか。


そして、三人目の巨匠は、ろくろの名手であり、
京焼随一の名工として名高い野々村仁清 (生没年不詳)です。





個人的には、仁清のファンなので、
まとまった数の仁清の作品が観られる、この特集がもっともテンションが上がりました。
カワイイにもほどがある 《色絵鴛鴦香合》《色絵鵯香合》 (←これのガチャガチャないかな?) や、




釉薬のキラキラ感が水面の反射を連想させる 《飴釉白帆文茶碗》 (注:展示は3/12まで) も良かったですが。




やはり何と言っても、一番インパクトがあったのは、
今回の展覧会のメインビジュアルにも使われている 《白釉円孔透鉢》 です。


野々村仁清 《白釉円孔透鉢》 一口 江戸時代 17世紀 MIHO MUSEUM 【全期間展示】




その独創性溢れる造形は、現代作家による陶芸作品のよう。
海外の陶芸作家の作品と言われても、信じてしまいそうです。
なんなら、古代の謎の文明の出土品と言われても、信じてしまいそうですし、
21xX年の未来からやってきたオブジェと言われても、信じてしまいそうです。
いい意味で、年代不明、国籍不明、正体不明な作品でした。
なんだか穴の奥に別の世界が見えそうな気がして、
作品が展示されたガラスケースを何周もグルグルしながら鑑賞。
一度だけ、反対側にいる人と穴越しで目が合ってしまいました。
・・・・・気まずっ。

 ┃会期:2018年2月14日(水)~4月8日(日)
 ┃会場:サントリー美術館
 ┃
https://www.suntory.co.jp/sma/exhibition/2018_1/index.html




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