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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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マンモス展 -その『生命』は蘇るのか-

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日本最大級、いや世界最大級となる、まさにマンモス級のマンモス展。
日本科学未来館で開催中の “マンモス展 -その『生命』は蘇るのか-” に行ってきました!




会場に入って、いきなり出迎えてくれたのは、
世界的にも有名な仔ケナガマンモス “ディーマ” の全身標本。




4万年という長い年月が経っているので、さすがに全身ミイラ化してはいますが。
足元には、ふさふさした毛が残っていました。
こんな貴重な標本が、冒頭にサラッと展示されているだなんて!
世界最大規模のマンモス展の呼び声は、伊達じゃありません。


さてさて、展覧会は大きく分けて、
「過去」「現在」「未来」 の3つのパートに分かれています。
まずは、「過去」 のパートから。




こちらのパートで、ひときわ目を惹くのは、
1991年にサハ共和国で発掘されたケナガマンモスの全身骨格。
通称、チュラブチンスキーのケナガマンモスです。




大きいことは大きいのですが、
上野動物園にいるゾウと比べて、特別大きいかといえば、そうでもありませんでした。
実は、マンモスはそのイメージとは裏腹に (?) 、
そこまで大きくはないそうで、アフリカゾウよりも一回りくらい小さいのだとか。
また、現在のゾウの姿とパッと見は似ていますが、
頭骨の形 (マンモスは額が出っ張ってる) や耳のサイズ (マンモスの耳は小さい) など、様々な違いがあるのだとか。
ちなみに、全身骨格しか発見されていなかった約200年前までは・・・




マンモスはゾウではなく、
巨大なネズミや巨大なモグラの一種と考えられていたとのこと。
永久凍土の中から見つかって良かったですね。

なお、「過去」 のパートには、マンモス以外にも、
ケサイをはじめとする氷河期に生きた生物たちの貴重な全身骨格が展示されています。




個人的にオススメなのは、ホラアナライオンの子どもの全身骨格。




何でこのポーズ (笑)?
金持ちの家の床に敷いてあるカーペットみたいな感じで展示されていました。
全力でごねているようにも見えます。


続いては、「現在」 のパート。
2010年代に入って新たに発見されたばかり、
発掘されたてホヤホヤの古生物の冷凍標本の数々が展示されています。




マンモスの皮膚や仔ウマ、バイソンやライチョウなど、そのほとんどが、なんと世界初公開!
所蔵先であるロシアのマンモスミュージアムでも公開されていない貴重なものばかりです。
というのも、冷凍標本を展示公開するためには、
マイナス20度を保ちつつ、ガラス窓が曇らない特殊な冷凍展示室が必要となります。

こちらが今回のマンモス展のために制作された巨大な冷凍展示室。




その制作費は、東京にマンションが買えてしまうくらいの金額とのこと。
おそらく日本一高額な展示ケースではないでしょうか。

ちなみに、どの冷凍標本も見ごたえがありますが、特に見逃せないのは、
2013年に世界で初めて完全な形で発掘されたケナガマンモスの鼻の冷凍標本。
もちろんこちらも世界初公開です。




現存するゾウと同じで、マンモスの鼻には骨がないのだそう。
それゆえ、長い年月の間で、ちぎれてどこかに流されたり、
他の動物に食べられてしまったり、鼻がそのままの形で残るのは、超レアケースなのです。
これまで見つかっているのは、マンモスの鼻のごく一部。
このように全体の形が分かる鼻は、今のところ、この1点だけなのだそう。
まさに、世界に一つだけの “鼻” です。


最終章は 「未来」 のパート。
サブタイトルにある “その『生命』は蘇るのか” がテーマとなっています。




こちらでは、1996年から近畿大学で行われている 『マンモス復活プロジェクト』 が、
わかりやすく楽しく、そして、ちょっと暑苦しく (笑)、漫画チックに紹介されていました。




これまでの展示のテイストとガラッと変わって、やや戸惑いはありましたが。
マンモスを復活させることに対する倫理的な側面にも、
きちんと触れられていて、意外と考えさせられるパートでした。


さてさて、展覧会のラストを飾るのは、ユカギルマンモス。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


2005年に開催された 「愛・地球博」 で700万人が熱狂した、あのユカギルマンモスです。
ただのマンモスなのに、というと語弊がありますが、
どこか達観したかのような表情に、畏敬の念を覚えました。
思わず拝みたくなるほどの尊さ。
仏像を鑑賞している感覚に近いものがありました。
星星


ちなみに。
展覧会鑑賞後のお楽しみ、グッズコーナーもマンモス級に充実していました。
攻めたオリジナルグッズもチラホラあります (笑)




中でも最も攻めていたグッズが、こちら↓




コンプライアンス的に、いろいろ大丈夫なのでしょうか・・・。
冷凍展示室の前に立った時よりも、軽くヒヤっとしました (笑)




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第25回日本陶芸展

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都道府県の魅力度ランキング、6年連続最下位―


そんな不名誉な記録を持つ茨城県。
しかし、その一方で、実は今年、茨城県は偉大なる記録を樹立していました。
それは、1971年より隔年で開催され、今年で25回目を迎えた日本陶芸展でのこと。
会派や団体は関係なしで、実力日本一の陶芸作家を選ぶ、
そんなガチンコの公募展で、なんと茨城県の作家が3回連続で大賞を受賞したのだそうです。

その快挙に、地元の茨城県陶芸美術館は、大はしゃぎの模様。
今年の日本陶芸展の入選作品と招待作品が一堂に会す、
“第25回日本陶芸展” のポスターに、その想いが溢れまくっていました。




『平成快挙録』

↑正直なところ、会場を訪れるまで、
こっちが展覧会タイトルかと思っていたくらいです (笑)




さてさて、第23回の井上英基さん、第24回の井上雅之さんに続き、
見事、計509点の応募の中から、第25回の大賞・桂宮賜杯に輝いたのは、五味謙二さん。
五味さんといえば、どこかキャラクターを彷彿とさせる有機的で、
かつユニークなフォルムのパーツを2つ組み合わせた作品で知られています。
今回の受賞作品 《shi-tou『シサ』》 も、まさにそんな作品。




一人 (?) が、ゴロンと横たわるもう一人 (?) の上に、
「うんしょうんしょ」 と乗っかろうとしているような、愛らしい印象を受ける作品でした。
大賞おめでとうございます!

また、茨城県作家の快挙は、他にも。
優秀作品賞・文部科学大臣賞に選ばれたのも、なんと茨城県の作家!
弱冠24歳の若手作家アイザワリエさんによるモコモコした 《鱗》 という作品が受賞しました。




茨城県は、陶芸界においては、
魅力度ランキング1位の地位にあると言っても過言ではないようです。


なお、惜しくも大賞を逃したのは、石川県の田島正仁さん。




実は田島さんは、前回の第24回でも準大賞だったそうです。
まさに、陶芸界の和牛 (←?)。
第26回では、いよいよ大賞に輝くのか?!
それとも、茨城県の作家が、それを阻止するのか?!
早くも2年後の戦いが楽しみです。
星


さてさて、会場にズラリと並んだ作品の中には、
以前、出演した 『バカリズムの大人のたしなみズム』 の中で紹介した増原嘉央理さんや、




ターコイズブルーのうつわが、今若い女性に大人気だという鈴木麻起子さんの作品も。




陶芸の公募展というと、古臭い・・・もとい、伝統的で古風、
海原雄山のような年配の気難しい男性が好みそうな作品ばかりが入選しているのかと思いきや。
意外と、普段使いしたくなる女子ウケしそうな作品も多く入選していました。




オシャレカフェやオシャレ雑貨屋にありそう。
インスタ映えしそう。
実に、今っぽい陶芸作品です。


また、うつわではなく、オブジェとしての陶芸作品も多く入選していました。





その中でも特に目を惹いたのが、今井完眞さんの 《シーラカンス》 です。




なぜ、陶芸でシーラカンス??
と、頭にクエスチョンマークは浮かびましたが。
造形が完全再現されているだけでなく、
シーラカンスのゆったりした動きまでも完全再現されていました。
ただインパクトを狙っただけの作品では無いようです。
どうやら、今井完眞さんの父は、生物を彫刻的に造形する陶芸家、
祖父は、海洋生物をデザインに取り入れた作品で知られる陶芸家とのこと。
血筋的に、生まれるべくして生まれる作品だったのですね。


それと、もう一点目を惹かれたのが、
林茂樹さんの 《deva device “GR-F”》 という作品。




翼が付いたウェアとベルトを身に着けた少年の像。
どこかSFチックで、近未来の素材で作られているような印象を受けますが。
土を捏ね、形を作り、焼くという伝統的な磁器の製法で作られているそうです。




他のどの作家とも似ていない、唯一無二の作風でした。
ただ、少年の顔は、ボクシングの亀田一家顔。




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!
 お子様とご一緒の参加も大歓迎です[お子様の参加費は基本無料])
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


6/15(土) そうだ 江戸、行こう。【神田界隈編】

“浮世絵に描かれた街並みは、今、どのような光景になっているのでしょうか?”

浮世絵を手掛かりに、街をぶらぶら歩きながら、
江戸時代にタイムスリップする・・・気持ちになれるツアーです。
講師の太田記念美術館の渡邉晃学芸員とともに、
浮世絵に描かれた場所に実際に赴き、現在の光景と見比べてみましょう!

今回の舞台は、『神田』。
「江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ!」
でお馴染み (?) の神田を中心に、お茶の水や水道橋などを巡ります。

そんな神田界隈に関する浮世絵の数々が、
ちょうど太田記念美術館で開催中の "江戸の凸凹 ―高低差を歩く" に出展されています。
こちらは、渡邉さん渾身の展覧会!
神田界隈を巡る前に、展覧会で予習をいたしましょう。

時間:11時~18時
定員:12名
参加費:2600円 (展覧会鑑賞料を含む)
(注:おかげさまで、“そうだ 江戸、行こう。” 企画は特に人気が集中しております。
 そこで、“そうだ 江戸、行こう。” に初参加の方、もしくは今年2月以降に、“そうだ 江戸、行こう。” 以外のアートツアー、
 アートイベントにご参加、エントリー頂いた方のみの受付とさせて頂いております。 何卒ご了承くださいませm(__)m)


ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


6/16(日) 笑いと涙の町田アートツアー

都心にも横浜にもアクセスしやすい町田市。
実は、隠れたアートシティでもあります。
そこで今回は、これまで一度も取り上げなかった反省も込めて、
町田駅を中心に、町田市のアートな魅力に迫るアートツアーを開催いたします!

まず訪れるのは、町田市立博物館。
日本近代建築をリードした建築家・山口文象の最後の建築としても知られる、
この博物館の建物が、6月16日をもって、その45年の歴史に幕を下ろすこととなりました。
そう。この日が、町田市立博物館のラストデー!
ミュージアムのラストの日に立ち会える貴重な機会を体験いたしましょう。

続いて訪れるのは、町田市民文学館ことばらんど。
こちらでは現在、"大日本タイポ組合展「文ッ字-いつもの文字もちょッと違ッて見えるかも-」" が開催中!
アートテラーとして自信を持ってオススメする展覧会です!
騙されたと思って、是非ご一緒いたしましょう。

最後に訪れるのは、町田市立国際版画美術館。
こちらでは、"THE BODY―身体の宇宙―" という、
ちょっとマニアックな、でも、インパクト抜群な展覧会を鑑賞いたしましょう。

町田市が好きになる。もしかしたら、住みたくなる?
そんなアートツアーです。

時間:12時半~17時
定員:10名
参加費:1000円 (鑑賞料を含みます。交通費、休憩時の飲食代は各自負担)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


6/23(日) 世界初公開!マンモス展へ行こう!!

この夏、日本科学未来館で、“マンモス展” が開催されます。
2005年の 『愛・地球博』 で展示されたユカギルマンモスが14年ぶりに再来日!
1977年に完全体で永久凍土から発掘された仔ケナガマンモスディーマの標本も38年ぶりに来日!
さらに、氷河期の古代仔ウマが世界初公開される展覧会です!!
ちなみに、展覧会イメージキャラクターは、マツコ・デラックスとのこと(笑)

・・・と、見どころだらけ、
見逃すとマンモスかなピーな展覧会を、みんなで観に行きましょう。
一人で観に行くよりも、みんなで観た方がより楽しめる展覧会です。

時間:13時半~16時半
定員:10名
参加費:1600円 (鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


6/29(土) 松方コレクション展でアートオフ会

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです!

さてさて、今回みんなで訪れるのは、
国立西洋美術館の開館60周年を記念して開催される “松方コレクション展”
今年の上半期、大本命の西洋美術展の1つです。

川崎造船所 (現・川崎重工業株式会社) の社長で、世界的なアートコレクターだった松方幸次郎。
ゴッホの 《アルルの寝室》 や、2016年にルーヴル美術館で発見されたモネの 《睡蓮、柳の反映》 など、
国内外に散逸してしまった彼の幻のコレクションを、可能な限り再集結させた夢のような展覧会です!

展覧会を鑑賞したあとは、近くのカフェでまったりいたしましょう♪
図録を持参しますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなた様も気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

時間:13~16時
定員:12名
参加費:1500円 (鑑賞料を含む)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


6/30(日) エビスちょっと贅沢なアートツアー

今回は、恵比寿を舞台にしたアートツアーをお届けいたします。
まず訪れるのは、恵比寿の地に移転して、
今年でちょうど開館10周年を迎える山種美術館。
こちらでは、速水御舟の生誕125周年を記念して、
大々的な回顧展、"生誕125年記念 速水御舟" が開催されています。

この展覧会をたっぷりと鑑賞し、カフェ休憩した後は、徒歩圏内にある國學院大學博物館へ!
"浮世絵ガールズ・コレクション―江戸の美少女・明治のおきゃん―" を鑑賞いたします。
こちらのミュージアムでは、なんと贅沢にも特別に学芸員さんのガイド付き!
どうぞお楽しみに♪

時間:13~17時
定員:12名
参加費:1200円 (鑑賞料を含む)

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7/7(日) 現在最高水準の現代アートツアー

今回お届けするのは、現代アートをテーマにしたアートツアーです。
現在、六本木にて同時期に、
世界的に第一線で活躍中の現代アーティストの大々的な回顧展がされています。

まず訪れるのは、フランスを代表するアーティスト、
クリスチャン・ボルタンスキーの日本での史上最大規模の回顧展。
その名も、”クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime” です。
代表作から、貴重な初期作品、そして最新作まで。
約50点のボルタンスキー作品が一堂に会す作家渾身の回顧展です。

カフェ休憩を挟んだ後は、森美術館へ。
こちらでは、”塩田千春展:魂がふるえる” を鑑賞いたします。
ベルリン在住で国際的に第一線で活躍する塩田千春さんの過去最大規模の個展。
彼女の代名詞ともいうべきインスタレーション作品が、
森美術館の広い展示室全体に広がる様は、必見も必見です。

どちらも、まず間違いなく2019年大本命の現代アート展。
現代アートがお好きな方はもちろん、
これを機に好きになってみたい方も大歓迎です!

時間:13~17時
定員:12名
参加費:3200円 (2展の鑑賞料を含む)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


7/13(土) みんなの大東京建築ツアー【つくばエクスプレス編】

世界中の建築ファンが憧れる街・東京。

この街には、たくさんの名建築が存在しています。
その東京で生活をしていながら、建築に興味が無いなんて!
あぁ、何ともったいないことでしょう!!

「・・・・でも、“建築” って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするのが、みんなの大東京建築ツアー。
実際に東京の街をぶらぶらしながら名建築を巡り、
進行役の自分と講師の建築家が掛け合いをしながら、その魅力をたっぷりお伝えするツアーです。

ツアーのスタート駅となるのは、浅草。
東京屈指の国際的観光地には、国際的な建築家の手掛けた建築の数々が点在しています。
平成を象徴する建築から、令和を代表するであろう建築家の超最新建築までをご紹介いたします。
続いては、東京のお隣・千葉県の柏の葉キャンパス駅へ!
この駅近辺は、実は隠れた建築タウン。
講師の伊藤氏の師匠が手掛けた建築を筆頭に、名建築の数々をご案内いたします。
ツアー後半は東京へと戻り、
建築ツアー初登場となる有名建築家が手掛けたミュージアムを訪れます。
こちらでは、なんと施主さんご本人も登場予定!
施主だけが知る貴重な裏話が飛び出すかも?!
そして、ラストは、北千住駅界隈をブラブラします。
いつになく多彩な建築が登場する建築ツアー的ぶらり途中下車の旅。
是非ご期待くださいませ♪

時間:13時~18時
定員:15名
参加費:1800円(入館料を含む。交通費は各自負担)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
http://arc-tour.org/mail.html


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

新公式プロフィール写真オーディション!

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「うさんくさそう」 だとか、
「表情が半分死んでる」 だとか、
「地方選挙の泡沫候補みたい」 だとか。
これまで散々に言われてきた現在の公式プロフィール写真。
新しいのに変えないとなァと思いつつも、なかなかそのタイミングがありませんでした。


しかし、遡ること数か月前。
ひょんなことから、失踪を繰り返す父を被写体にした写真集 『father』 で注目を集め、
第44回木村伊兵衛写真賞にノミネートされた写真家金川晋吾さんと飲み会でご一緒する機会が。
その帰り道に、酔っていたのをいいことに、
「今度、僕の公式プロフィール写真を撮ってくださいよー」 と、軽々しくオファー。
すると、「僕でよければ是非」 と金川さんがご快諾してくれました。
(ちなみに、飯田橋のアンスティチュ・フランセ東京ギャラリーにて、
 現在、最新個展となる “金川晋吾『同じ別の生き物』” が絶賛開催中です)



というわけで、新たなプロフィール写真に合わせて、
新たなスーツをオーダーし、ヨハネ企画でダイエット。
さまざまな準備を整えた上で、先日撮影して頂きました。
ロケ地は、僕がアートに興味を持つきっかけとなった東京都美術館&その周辺。
心機一転の気持ちも、新たなプロフィール写真に込めています。

さてさて、100カット近く撮影して頂いた中から、
金川さんがセレクトしてくれたのは、以下の6点の写真。
当たり前ですが、街の写真屋さんで撮ってもらった現在のプロフィール写真とは全然違いますね。
被写体は置いておいて、アート作品に仕上がってます。
僕自身では、どれにすべきか決めがたいので、
是非、読者の皆さまの率直なご感想をお寄せいただければ嬉しいです。
その中からもっとも好評だったものを、新公式プロフィール写真に採用しようと思っています。


エントリーNo.1 

 ©Shingo Kanagawa


エントリーNo.2 

 ©Shingo Kanagawa


エントリーNo.3

 ©Shingo Kanagawa


エントリーNo.4

 ©Shingo Kanagawa


エントリーNo.5


©Shingo Kanagawa


エントリーNo.6

 ©Shingo Kanagawa


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漢字展―4000年の旅

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現在、東洋文庫ミュージアムで開催されているのは、"漢字展―4000年の旅" という展覧会。
身近でありながら、意外と知らないことも多い漢字にスポットを当てた展覧会です。




そもそも、漢字は、世界で最も字数の多い文字なのだとか。
その文字数は、なんと10万文字を超えるそとのこと。
さすがに、普段の生活で10万文字も使いませんが、
2010年の時点での常用漢字表に示された漢字は、2136字もあるそうです。
それに加えて、ひらがなとカタカナ、
さらに、アルファベットまで使いこなしている日本人は、ひょっとしたら語学の天才なのかも?
日本人であることが、誇らしくなりました。

また、実は漢字には発明者がいるのだそうです。
その人物は、黄帝に仕えたとされる蒼頡 (そうけつ)
彼は、地面の足跡から鳥や動物を推測できることにヒントを得て、
「文字によって、概念を表現できるのでは?!」 ということに気が付いたのだそうです。
ちなみに、そんな彼の肖像画がこちら↓




観察力が並外れていた蒼頡は、
目を4つ持っていたという伝説があるのだそう。
ファッションも含めて、妖怪感がハンパありません。
漢字一文字で表すなら、「怪」 です。


さてさて、展示室には、最初期の漢字である甲骨文字が刻まれた 《甲骨卜辞片》 や、




古代中国で使われていた漢字辞典の数々、




うんこ漢字ドリルの遠い遠い先祖に当たる古代中国の子ども向け漢字学習書 《千字文》 など、




漢字にまつわる様々な品々が展示されていました。
中でも目を惹いたのが、あのナポレオンも使っていたという漢字辞典。




収録字は、14000文字。
持ち運びが不可能そうなくらいの分厚さです。
ちなみに、辞書の中には、
漢字の中で最も画数が多い 「龍を4つ並べた漢字(読み方は、テツ)」 の字はありました。
不可能の文字はないくせに (←?)。




また、新元号になって最初の展覧会ということもあり、
日本人にとって馴染みの深い漢字2字 「昭和」 と 「平成」 の元となった 《尚書正義》 や、





これからお世話になる漢字2字 「令和」 の元となった 『万葉集』 も出展されています。





他にも、国宝の 《史記 秦本紀》 や 『解体新書』 など、
漢字と関わりの深い貴重な資料や書籍が、ズラリ勢ぞろい。
100万冊を所蔵する東洋文庫ミュージアムならではの展覧会でした。
星


ちなみに、漢字展とは関係ないのですが、印象的だった展示品を。
こちらは、名品室に展示されていた 『日本誌』 という一冊。




ドイツ出身の医師で博物学者だったケンペルが、
滞在した日本の社会や自然について記したもので、
日本を知るための基本書として、ヨーロッパで長く読まれ続けたのだそう。




・・・・・が、ケンペルは一体、日本で何を見たというのか。
こんなオバちゃんみたいな仏像あるわけないだろ。
日本のことを伝えるなら、ちゃんとした情報を伝えて欲しいものです。


間違った日本の情報といえば、ポーランド語訳版の芥川龍之介の 『河童』 も。
ポーランドを代表するというアーティスト、
ヤン・ムウォドゼニッツによって挿絵が描かれているのだそうですが。
河童が日本人が思い浮かべるビジュアルとは全くかけ離れていました。





・・・・・・・・プリングルス?




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クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime

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フランスを、いや現代を代表するアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキー。
その日本国内で過去最大規模となる回顧展、
“クリスチャン・ボルタンスキー ―Lifetime” が、いよいよ国立新美術館で開幕。
その内覧会にお邪魔してまいりました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


出展作品は、代表作を含む約50点。
初期の貴重な映像作品から、今展のために制作された最新作まで、
ボルタンスキーが約50年にわたるアーティスト人生で制作した作品が一堂に会しています。

それぞれの作品には、キャプションは付けられていません。
また、時系列に沿って並べられているわけでもありません。
「空間のアーティスト」 であるボルタンスキー自らによって、
約50点の作品が、1つのインスタレーション作品であるかのように構成されていました。





展覧会場は、さながらお化け屋敷状態。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』 な光景が目の前に現れたかと思えば、




『ツイン・ピークス』 を連想させるような作品や、




「来世」 の2文字が突如として現れます。




何が待ち受けているかわからない。
ただでさえドキドキゾクゾクが止まらないのですが、
会場内に鳴り響く心臓音が、さらにそのドキドキゾクゾクを増幅させます。
おそらく現在開催されている展覧会の中で、もっとも吊り橋効果の高い展覧会。
意中の人を誘って訪れてみては、いかがでしょうか?
素敵な “LIfetime(=人生)” が待ち受けているかもしれませんよ。
星星


ちなみに、こちらがボルタンスキーご本人。




見た目は、007シリーズの悪役っぽい感じですが (←失礼!)。
外見及びシリアスな作風とは裏腹に、意外とチャーミングな印象の人物でした。
その持ち前のサービス精神を発揮し (?)、
内覧会の間ずっと、会場内をうろうろするボルタンスキー。




神出鬼没する彼自身が、作品の一部のようでした (笑)


さてさて、どの空間も印象的でしたが、個人的に一番印象的だったのは、
子供たちのモノクロ写真と、複数の電球を組み合わせた作品 《モニュメント》 のある空間でした。


《モニュメント》 1986 / 写真、フレーム、ソケット、電球、電気コード / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo © The Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner



どこか祭壇を思わせるこの作品と対峙するように、
広いスペースを挟んで、《死んだスイス人の資料》 が展示されています。



(↑無数に積み上げられたビスケットの缶の一つ一つに、新聞の死亡告知欄から切り取られたスイス人の顔写真が貼られた作品)


さらに、その両サイドにも死をモチーフにした作品が設置されていました。
厳かで敬虔な気持ちになる一方で、どこか居心地の悪さも覚えます。
まるで見知らぬ人の葬儀に参加させられているような、
これまでに経験したことのない不思議な気分にさせられる空間でした。

それから、もう一つ印象的だったのが、
近作である 《ぼた山》 を中央にそびえ立つ空間です。




うず高く積み上げられた真っ黒な衣服の山が、
空間的にも精神的にも圧迫してくるようでした。
もしかしたら、いずれ自分もこの一部になってしまうかも。
そんな奇妙な絶望感、焦燥感を覚えました。
ふと天上に目をやると、そこには大量のベールが。
それぞれのベールには、写真がプリントされています。





たぶん・・・いや、絶対気のせいなのですが、
どの写真も、『奇跡体験!アンビリバボー』 で見たことがあるような気がしました (笑)


ちなみに。
奇跡体験といえば (?)、海をイメージしたエマージェンシー・ブランケット上で、
電球がぶら~んぶら~んと揺れ動く 《黄金の海》 という作品を鑑賞していたときのこと。




写真を撮影したら、緑色の光のようなものが映り込んだのです。
えっ、もしや、オーブ?!
そこで急きょ動画を撮影してみることに。

すると・・・





ハッキリと左右にふらふらと動くオーブが映っているではないですか!
マジでアンビリバボー。




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【山種美術館広尾開館 10周年記念特別展】 生誕125年記念 速水御舟

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今年2019年は、山種美術館が現在の広尾の地に移転し、開館してから10年目の節目の年。
そして、大正から昭和を駆け抜けた日本画家・速水御舟の生誕125年という節目の年。
そんなダブルアニバーサリーを祝して、現在、山種美術館では、
【山種美術館広尾開館 10周年記念特別展】 生誕125年記念 速水御舟” が開催されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


40年という短い生涯の中で、約700点の作品を残したという速水御舟。
そのうちの計120点を所蔵していることから、
山種美術館は、「御舟美術館」 とも称されています。
今回の展覧会では、前後期に分けて、その120点すべてを一挙公開!
出し惜しみ一切なし、本気度100%、もとい本気度120%の速水御舟展です。




なお、7月7日までの前期では、
御舟の数多い名作の中でただ2点、重要文化財に指定されている 《炎舞》 と、


【重要文化財】速水御舟 《炎舞》  1925(大正14)年 絹本・彩色 山種美術館


《名樹散椿》 が、贅沢にも同時公開されています。


【重要文化財】速水御舟 《名樹散椿》  1929(昭和4)年 紙本金地・彩色 山種美術館 (注:展示は、前期[6/8~7/7]のみ)


つまり訪れるなら断然、前期!
・・・・・・・と言いたいところですが。
普段あまり公開される機会がない御舟の写生作品は・・・




後期にゴッソリ入れ替えられるとのこと。
前後期それぞれ訪れるのが、ベストです!
星星


ちなみに、これまで幾度となく、《名樹散椿》 を鑑賞しているのですが。
今回改めて、じーっと鑑賞していたところ、
枝ぶりが異様なほどウニョウニョとしていることに気が付きました。
なかには、蛇のように巻き付いている枝もあります。
この木のモデルになっているのは、京都の地蔵院にある五色八重散椿とのこと。
というわけで、「地蔵院 五色八重散椿」 でネット検索してみました。
がしかし、実際の椿からは、御舟の絵のような “寄生獣感” は感じられません。
どうやらこのウニョウニョぶりは、御舟の想像 (妄想?) の産物であるようです。
それに注目して、他に植物を描いた絵を観てみると・・・




やはりウニョウニョとしていました。
こちらの 《春地温》 という作品に関しては、




ウニョウニョとはしていませんが。
1本だけありえないほどのカーブを描いた枝がありました。
どういう成長を遂げたら、こうなるのでしょう?
植物の描き方のクセがすごい。
今展を通じて初めて知った御舟の一面です。

それから、初めて知った一面は、もう一つ。
展覧会では、御舟の作品とともに、彼の残した言葉も多く紹介されていたのですが。
「梯子の頂上に登る勇気は貴い、
 更にそこから降りて来て、再び登り返す勇気を持つ者は更に貴い」
や、
「絵が早くできすぎて困る」「必然的に生れて来るものは貴い。自分はそれを真実と呼ぶ」 など、
中二病っぽい発言が、ちょこちょこ登場していました。
そういえば、もともとは 「蒔田」 という苗字でしたが、
母方の祖母の養子となり、途中から 「速水」 を名乗るようになります。
もしかしたら、「速水」 のほうがカッコよかったから?
御舟に中二病の疑いありです (笑)


ちなみに。
会場には、若き日の御舟の写真も紹介されていました。
こちらは、とある展覧会場で画家仲間たちと撮ったという記念写真です。




全員マント。
全員無表情。
フリーメーソン感がハンパなかったです。


最後に、個人的に一番印象に残った作品をご紹介いたしましょう。
群馬県で出土した武人埴輪をモデルにした 《供身像》 という一枚。




御舟が描くと、植物だけでなく、埴輪にも生命感が宿るようです。

吉田せしゃ


なぜか含み笑い。
そのテイストは、どこか吉田戦車を彷彿とさせるものがあります。
もしくは、よーじや。




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本日のお客様:アルトゥール・レスラー

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大都会の片隅に、
芸術家や絵画のモデルが訪れる占いの館があるという―





おや、今宵も占い師の高天麗舟さんのもとへ、誰かお客様がやってきたようです。



【プロフィール】
高天麗舟 (たかま れいしゅう)
書家・占い師。群馬県高崎市生まれ。書家・野尻泰煌先生に師事。
書を通じて漢籍・思想・哲学・芸術全般に親しみ、
本来の人間表現に到達することを目的として手相・四柱推命・易・生命学 (姓名判断) などの研鑚を積む。
手相:西谷泰人先生に師事/四柱推命:浅野太志先生に師事/易:天道春樹先生に師事
現在、埼玉大学・教育学部にて障害児育児をテーマとした講話や、
「手相×アート」トークショー、仏像手相鑑定ツアーなどを含む多分野での活動を展開。
書作品寄贈:ハンガリー・ケチケメート市、ハンガリー・ケチケメート市ラダイ博物館

HP:https://www.reishu-takama.com/


レスラー「ごめんください」

高天「はーい、いらっしゃいませ」

レスラー「占いをしてくださる高天先生というのは、あなたですかな?」

高天「はい。私ですけども」

レスラー「そうでしたか。先生に是非占ってほしく、ウィーンからやってまいりました」

高天「まぁ!それはそれは」

レスラー「私が今の仕事に向いているのか占ってほしいのですな」

高天「わかりました。ところで・・・」

レスラー「あっ、自己紹介がまだでしたな。改めまして、レスラーです」

高天「へー、レスラーなんですか!!
    ・・・・・でも、失礼だけど、そこまで筋肉質なタイプじゃないわよね?」


エゴン・シーレ 《アルトゥール・レスラーの肖像》


レスラー「・・・・・・・先生、何か勘違いされていませんかな?」

高天「えっ?」

レスラー「私の名前がレスラー。アルトゥール・レスラーなんですな。
      職業は、美術評論家なんですな」

高天「あらー。それは失礼いたしました。
    気を取り直して、占っていきましょうね。手を見せてください」



レスラー「こんな感じですかな?」


エゴン・シーレ 《美術評論家アルトゥール・レスラーの肖像》 (注1)
(注1) 現在、国立新美術館で絶賛開催中の “ウィーン・モダン展” に出展中!


高天「甲じゃなくて!手のひらのほうです」

レスラー「大変失礼いたしました。こんな感じですかな?」


エゴン・シーレ 《アルトゥール・レスラーの肖像》 (注2)
(注2) 現在、国立新美術館で絶賛開催中の “ウィーン・モダン展” に出展中!


高天「はい。ありがとうございます。
    単刀直入に言って、美術評論家に非常に向いていますよ」

レスラー「本当ですか?」

高天「えぇ。レスラーさんの指ですが、全体的に関節が目立ちますよね。
    このタイプは冷静な思慮型です。
    突き詰めて考えるのが得意で、研究職に就いていらっしゃる方によく見られる指なんです」

レスラー「ほぅほぅ」

高天「また、手のひらが正方形に近く、指が長いですよね。
    そういう手の持ち主は、知性が鋭く、探究心旺盛です。
    決まりきった繰り返しよりも、変化を好む傾向にあるでしょう。
    また、言葉の扱いが巧みなので、口頭での説明や文章など伝達力に長けていますよ」

レスラー「自信が湧いてきましたな。評論がたくさん書けそうな気がしますな(注3)
(注3) 実際、アルトゥール・レスラーはその生涯で50近い本を出版している。その中にはエッセイ集も。

高天「小指に向かう縦線も多いので、独創的な発想で表現力も豊かなんですね」




レスラー「そ、それほどでもないんですな (照)
      ところで、先生、今後の美術評論家人生において何か気を付けることはありますかな?」

高天「特に左手が顕著なんですが、
    中指と薬指はくっつき、人差し指と小指が離れた指の開き方になっていますね。
    意識せず、このように指が開いてしまう方は、自分の信念や規範に忠実に生きるタイプです。
    自分が弱い立場であっても相手に媚びずに意見できる強さを持っています。
    ある意味、敵を作りやすいタイプともいえますが、
    自分に正直に生きる姿勢を貫いたほうが、より信頼へと繋がっていくようですよ」

レスラー「手相だけでなく、指の開き方でもいろんなことがわかるなんて面白いですな。
      美術だけでなく、ゆくゆくは手相も研究してみたものですな」

高天「それと、右手の感情線が、人差し指と中指の間に入り込んでいますよね。




    人の面倒見が非常に良く、感情のバランスもとれているため、周囲から信頼される方ですよ。
    困っている人がいると、一肌も二肌も脱いでしまう尽くし過ぎなところもありそうです。
    そういえば、この指の開き方や感情線の感じ、とに~さんに似ているわね」




レスラー「とに~っていうのは、何者ですかな?イタリア人かアメリカ人ですか?」

高天「あぁ、とに~さん (注4) は日本人。アートテラーの。
    美術評論家ではないけど、レスラーさんと近い職種と言えば近い職種ね」
(注4) 高天先生とタッグを組んで不定期に手相×美術のイベントを開催している。
ブログの読者の皆様からの投票を基に、つい最近、公式プロフィール写真が新調した。
(投票コメントしてくださった皆様、ありがとうございます。接戦でしたが、わずかにNo.2が一番人気となりました!byとに~)



レスラー「そんな人物がいるのですか。
      しかし、日本人なのに、“とに~” と名乗るふざけた感じは、いかがなものでしょうな」

高天「フフフ。やっぱりレスラーさんも、とに~さんとおんなじタイプだわ」

レスラー「どういうことですかな?」

高天「そういう感情線の方は、あまり表には出さないんですが、
    心の中では、人に対して好き嫌いのハッキリとした線引きがあるんです。
    先ほど、面倒見が良いとは言いましたが、
    ちゃんと面倒をみられるのは、自分の常識の範囲におさまるタイプの人だけ。
    それ以外の人には、興味をまったく示さないことでしょう」

レスラー「(ギクッ!)」

高天「何か心当たりがあるんですか?」

レスラー「いや、実はエゴン・シーレ (注5) という大変才能豊かな若い画家がいるんですな。
      ただ、彼の生活態度があまりにも子供じみていましてな。
      さすがに黙認しかねて、忠告の手紙を送ったところ、
      『俺は永遠の子供だ!』 的な逆ギレな返信が届いて、ほとほと愛想が尽きていたのですな。
      だから、このまま彼を評論するべきなのかどうなのか・・・。
      まぁ、悩んでいたわけですな」
(注5) 28歳という若さでこの世を去ったウィーン出身の画家。クリムトに才能を見出され、終生可愛がられた。
デヴィッド・ボウイや荒木飛呂彦さん、藤井フミヤさんなど、シーレのファンを自認する人は多し!



高天「まぁ、そうだったのですね。
    レスラーさんは、読み手や聞き手に好き嫌いを悟られないよう、
    個人的な感情を取り除いて、お仕事をされていくと良いようですよ」

レスラー「わかりました。先生の言う通りにしてみるんですな。(注6)
      今日はありがとうございました!」
(注6) 高天先生のアドバイスを受けたから・・・かどうか真偽のほどは不明ですが。
シーレとの交友関係が途絶えたあとも、アルトゥール・レスラーは積極的にシーレの評論を発表。
今現在シーレが世界的に人気なのは、レスラーの評論活動のおかげといっても過言ではない。





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国立西洋美術館開館60周年記念 松方コレクション展

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今年でめでたく還暦 (=開館60年) を迎えた国立西洋美術館。
それを記念して、現在開催されているのが、
“開館60周年記念 松方コレクション展” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


国立西洋美術館のコレクションの中核をなす松方コレクション。
普段、常設展示室で当たり前のように常設されているだけに、
あまり注目されていない (?) 松方コレクションにスポットライトを当てた展覧会です。

松方コレクションとは、神戸の実業家・松方幸次郎 (1865〜1950) が、
1910年~1920年代にかけてヨーロッパで収集した美術のコレクション。
西洋美術約3000点、浮世絵約8000点、計1万点を超える・・・いや、超えていた大コレクションです。
というのも、ロンドンの倉庫で保管していたコレクションは、火災で焼失し、
パリのロダン美術館に預けていたコレクションは、フランス政府に差し押さえられ、
日本国内にあったコレクションは、関東大震災や昭和金融恐慌による負債整理のため国内外に散逸。
結果的に残ったのは、サンフランシスコ講和会議の際に、
吉田茂がフランスに掛け合って、どうにか返還された375点だけ。
(ちなみに、この375点の松方コレクションを礎にして、国立西洋美術館は誕生しました)
実に波乱万丈な人生 (?) を歩んだ美術コレクションなのです。


こちらが、その1万点以上あった美術品の大半を失ってしまった松方幸次郎その人。


松方幸次郎 写真提供:川崎重工業株式会社


世界的にも有数な個人コレクションを築いた人物ながらも、
絵画を選別する審美眼は持ち合わせていないと自認していました。
そんな絵を観る目のない松方が、大量の美術品を購入した理由。
それは、日本人に本物の西洋絵画を見せたかったから。
私利私欲や金持ちの道楽ではなく、日本の文化のために優れた美術品を買い集めていたのです。


松方が描いた希望は、残念ながら100%の形では叶いませんでしたが。
今回の展覧会では、松方が夢見た光景を100%に近い形で実現させるべく、
展覧会場には、国内外に散逸してしまった旧・松方コレクションが大集結!





現・松方コレクションと同じ空間で、夢の競演を果たしています。

さらに!

ゴッホの 《アルルの寝室》 をはじめ、


フィンセント・ファン・ゴッホ 《アルルの寝室》  1889年 油彩・カンヴァス オルセー美術館
Paris, musée d’Orsay, cédé aux musées nationaux en application du traité de paix avec le Japon, 1959 Photo
©RMN-Grand Palais (musée d’Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF



当時のフランス政府が、その重要性から、
どうしても日本に返還してくれなかった作品も特別に来日。
国立西洋美術館の壁に収まっています。




この光景を目にしたら、きっと松方さんは涙を浮かべるだろうなァ。
そう想像したら、僕の目にもうっすら涙が (←最近、涙もろくなりました)。
それと同時に、当時のフランス政府が、
「まぁいっか」 と日本に返されてしまった375点の画家たちの気持ちを想うと、それはそれで涙。
とにもかくにも、泣ける展覧会です。
星星星




さてさて、会場には150点を超える作品が出展されていましたが。
その中でも特に印象に残っているのは、ドガによる 《マネとマネ夫人像》


エドガー・ドガ 《マネとマネ夫人像》 1868-69年 油彩、カンヴァス 北九州市立美術館


カンヴァスの右側がバッサリと切り取られています。
なんでも、マネがドガの描いた夫人の顔の歪みが気に入らず、切り取ってしまったのだとか。
後日、ドガは変わり果てた自分の絵を目にして激怒。
マネのもとから取り返したそうです。
そんなに気に入らなかったなら、マネは画家なのだから、上から描けば良かったのに。
どちらにしろ、ドガはキレるでしょうが。
とはいえ、そこまで気に入らないほどの歪みって、どんな仕上がりだったのでしょうか。
欠損しているからこそ、想像力が掻き立てられます。


なお、展覧会のラストを飾るのも、大半が欠損している作品。
2016年に約60年ぶりにルーヴル美術館で発見され、
その後、国立西洋美術館に寄贈されたことで話題となったモネの 《睡蓮、柳の反映》 です。


クロード・モネ 《睡蓮、柳の反映》 1916年 油彩、カンヴァス 国立西洋美術館(旧松方コレクション)※修復前


松方幸次郎がモネ直々に譲り受けたとされる1枚。
発見時は、キャンバスの大半が欠損していたそうです。
残った部分もボロボロの状態でしたが、
今回の展覧会での公開に合わせ、急ピッチで修復されたのだとか。
無事に、かつての鮮やかな色合いを取り戻していました。




欠損した部分は黄昏色の空のようにも見え、これはこれでアリな印象。
残った睡蓮の部分と、不思議な調和を見せていました。

とは言っても、欠損した部分が気になるという方もご安心を。
展覧会の冒頭に、残された白黒写真から、AIが元の色を推定、
最新鋭のデジタル技術で復元された 《睡蓮、柳の反映》 も紹介されていましたよ。




ちなみに、残念ながら実現はしなかったわけですが。
松方幸次郎は、自分のコレクションを基にした美術館を構想していました。
その名も、共楽美術館。
「松方美術館」 という案も出ていたそうですが、
彼はそんな考えを 「ケチくせえ!」 と一蹴したそうです。
あの美術館とかあの美術館とかあの美術館とか、
自分の名前を冠した美術館は、松方曰くケチくさいのですね (笑)
それはともかく、“共に楽しむ” 共楽美術館。
何て素敵なネーミングなのでしょう。
60周年を機に、国立西洋美術館から共楽美術館に改名してみるのもいいのでは?




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モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち

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現在、国立西洋美術館の企画展示室では、
“開館60周年記念 松方コレクション展” が絶賛開催中です。



・・・・・ん?ということは、常設展示室は、スカスカなのでは??
と思ったら、新館では、日本とフィンランドの外交関係樹立100周年を記念して、
“モダン・ウーマン―フィンランド美術を彩った女性芸術家たち という別の展覧会が開催されていました。




こちらは、ロシアから独立した1917年前後に活躍した、
フィンランドの女性芸術家たちに焦点を当てた日本初の展覧会。
フィンランド国立アテネウム美術館のコレクションから、
フィンランドの女性芸術家の作品約90点が来日しています。
そういえば、フィンランドの芸術家と聞いて思い浮かべるのは、
先日まで東京ステーションギャラリーにて日本初個展が開催されていたルート・ブリュックや、
『ムーミン』 の作者でもお馴染みのトーベ・ヤンソンなど、女性芸術家が多い気がします。
というのも、19世紀半ばに設立されたフィンランドで最初の美術学校は、
当時世界的にも珍しく、創立当初から男女平等の美術教育を奨励していたのだそう。
それゆえ、女性でも十分に芸術家としてのキャリアを切り開くことができたのだそうです。
(むしろ、そのせいで、フィンランドの男性の芸術家はあまりスポットが当てられていない気がしますが・・・)


さてさて、今展で紹介されている女性芸術家は、
フィンランドでは知らない人はいないほどの国民的画家ヘレン・シャルフベックを含む7名。
ヘレン・シャルフベック以外は、“はじめまして” の芸術家ばかりでしたが。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


それぞれ個性があって、見ごたえがありました。
また、彼女らの作品は、現代の眼で見ても十分に新鮮に映りました。
まさに、「モダン・ウーマン」 の看板に偽りなし。
星
“松方コレクション展” と併せて楽しみたい展覧会です。
(嬉しいことに、“開館60周年記念 松方コレクション展” の観覧券で鑑賞することも可能です!)


さてさて、今回紹介されていた7名の芸術家の中で、
特に個人的に印象に残っているのが、エルガ・セーセマンです。


エルガ・セーセマン 《自画像》 1946年 フィンランド国立アテネウム美術館
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum  Photo: Finnish National Gallery / Yehia Eweis



目元の部分が執拗に塗りつぶされた女性。
全身から得体の知れない負のオーラが発せられていました。
この世のものではない印象。
タクシーの後部座席に乗せたら、絶対に途中でフッと消えることでしょう。
で、シートがぐっしょりと濡れているはず。

そんな 《自画像》 とともに展示されていたのが、写真左のこちらの作品↓




もはや目元どころか、顔全体が、
まるでセメントでパックをしたかのように塗り込められていました。
タイトルは、《カフェにて》
カフェにて・・・何があったのか?!
気になって気になって仕方ありません。
もしかしたら、ドリフのようにパイ投げされたのかも。
ともあれ、エルガ・セーセマンの絵は、基本的に不穏な空気に満ちていました。


その他、特に印象的だったのが、
マリア・ヴィークの 《ボートをこぐ女性、スケッチ》 という作品です。


マリア・ヴィーク 《ボートをこぐ女性、スケッチ》 1892年頃 フィンランド国立アテネウム美術館
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Granberg Collection  Photo: Finnish National Gallery / Jenni Nurminen



まさに、スナップショットのような1枚。
幸せオーラに満ち満ちた明るい印象の作品です。
披露宴で流れるプロフィールムービーで目にするようなシーン。
もしくは、一昔前のカラオケビデオで目にするようなシーンです。

なお、展覧会場の一つである版画素描室では、
そんなマリア・ヴィークが美術学校在籍時代に描いたデッサンも紹介されていました。




写真左の男性モデルの臀部にご注目ください。
男なのに、Tバッグ。
こんなところも男女平等だったのですね (←?)


ちなみに、紹介されている芸術家は、画家だけにありません。
ロダンに学び、ロダンの代表作 《カレーの市民》 の助手も務めた・・・




女性彫刻家シーグリッド・アフ・フォルセルスも紹介されていました。


シーグリッド・アフ・フォルセルス 《青春》 1880年代 フィンランド国立アテネウム美術館
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen



ロダンの人体彫刻は、筋肉のゴツゴツした質感が特にリアルであるのに対し、
シーグリッド・アフ・フォルセルスの彫刻は、女性の頬や唇のプニプニした質感がリアル。
ブロンズとは思えない、やわらかさを感じました。


さてさて、いろいろ紹介してきましたが、
やはり最も目を惹かれたのは、ヘレン・シャルフベックの作品群。
さすが、フィンランドを代表する画家だけはあります。





それらの中でひときわ異彩を放っていたのが、
画面手前の 《コスチューム画Ⅰ》 という一枚でした。




女性の顔があきらかに不自然。
能面のような表情を浮かべています。
というか、よく見たら、髪の生え際と能面のような表情の間に、地の肌が見えています。
これは本当にお面を被っているのでしょう。
なんとも不気味な作品です。


ちなみに、今展のメインビジュアルに採用されているのも、ヘレン・シャルフベックの作品。


ヘレン・シャルフベック 《占い師(黄色いドレスの女性)》 1926年 フィンランド国立アテネウム美術館
Finnish National Gallery / Ateneum Art Museum, Kaunisto Collection  Photo: Finnish National Gallery / Hannu Aaltonen



どことなく、霜降り明星の粗品に似ています。
「モダン・ウーマン!」 も粗品のツッコミフレーズの一つに思えてきました。


 ┃会期:2019年6月11日(火)〜9月23日(月・祝)
 ┃会場:国立西洋美術館
 ┃
https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2019modernwoman.html

~読者の皆様へのプレゼント~
こちらの “モダン・ウーマン展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、7月5日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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マッチ ~魔法の着火具・モダンなラベル~

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現在、たばこと塩の博物館で開催されているのは、
“マッチ ~魔法の着火具・モダンなラベル~” という展覧会。
かつて喫煙には欠かせないアイテムだったものの、
最近ではすっかり見かけなくなったマッチに焦点を当てた展覧会です。




そもそもマッチが誕生したのは、19世紀半ばのヨーロッパ。
簡単に火を点けられる魔法のような道具として、世界に広がっていったそうです。
展覧会の冒頭でまず紹介されていたのは、
マッチが登場する前に、日本で使われていた着火具の数々。




火打石や種火を保つための火入れに交じって、
なんとなくマッチっぽい形状のアイテムがありました。




こちらは、硫黄付け木。
マッチのような着火具ではなく、
種火を大きな火にするためのアイテムなのだそうです。
日本にマッチがもたらされた時期はハッキリとはしていないそうですが。
1860年頃の浮世絵には、マッチで火をつける様子が描かれていました。




ちなみに、マッチが登場する浮世絵と言えば、歌川芳年の 《機嫌競 貧書生》 も。
こちらは、当時の風俗を職業ごとに紹介するシリーズのうちの1枚。
明治時代のとある貧しい書生の日常の一コマが描かれています。




一升瓶を片手に、ゴロゴロゴロゴロ。
もう片方の手には、こんにゃくがあります。
床に散らばっているのは、煙管と刻み煙草、そして、マッチです。
典型的なダメ野郎。
いつの時代もこんな輩はいるのだなァ。


会場では続いて、マッチを入れるためのマッチスタンドや、




歴史的にも貴重な最初期の国産マッチ、




マッチの製造工程を記録した大正時代の写真など、




トゥーマッチなくらいに、マッチにまつわるあれこれが紹介されていました。
まるで、テーマがマッチの回の 『まんがはじめて物語』 を見ているかのよう。
知ったところでそこまで披露する機会は無いでしょうが、確実にマッチに関する豆知識は増えました。
星

さてさて、展覧会のハイライトとなるのは、こちら↓




マッチラベルの数々です。
日本から世界へと輸出された明治・大正のマッチラベルから、昭和初期の広告用マッチラベルまで。
ノスタルジックでポップ、独創的なデザインのものが一堂に会しています。
中には、ツッコミどころ満載、なんともシュールな味わいのマッチラベルも (笑)

image


それらすべてにツッコミを入れていたら、キリが無いので、
ここからは、厳選したマッチラベルだけをご紹介いたしましょう。
まずは、こちら。




自分よりも大きな鹿を背負う。
どういうシチュエーションなのか、まったく想像がつきません。
もはや 「自分よりも大きな鹿を背負う」 というのが、何か新手のことわざのように思えてきました。

続いては、こちらのマッチラベル。




桃太郎なのに、熊?!
金太郎とごっちゃになっています。
熊をお供にしたのなら、犬、猿、雉はいらないですね。

お次は、こちら。




赤ちゃんがマッチを触らないように、全力で阻止する3匹の猿。
さすが、セーフティ (安全) マッチ。
しかし、その止め方は、おいはぎのよう。
安全とは程遠い気がします。


最後は、こちらのマッチラベル。




ビバンダム君のような謎のキャラが、マッチ片手に一服しています。
ふと左手に目をやると、そこには体の半分くらいのサイズがあるマッチ箱が。
そのラベルには、まったく同じ図柄が描かれています。
さらに、その中のマッチラベルにも同じ図柄が (・・・以下、繰り返し)。
謎の無限ループに、不安感が煽られます。


ところで、これほどまでにマッチラベルが多種多様だと、
“マニア心にも火が付いて、コレクターになる人が多かったのでは?” と思ったら、
やはり大正から昭和にかけて、コレクターは一定数存在していたようでした。




コレクターの中には、自分でマッチラベルを作ってしまうツワモノもいたとのこと。
なお、そうして制作されたラベルは、「趣味票」 と呼ばれていたのだとか。
こちらは、宮田なる人物によって作られた趣味票です。




背景の色合いといい、
顔の描き方のタッチといい。
テイストが、完全に針すなお。




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芸術家!してる?してない?クイズ Part2

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日本一下世話なアートに関するクイズ。
それが、『芸術家!してる?してない?クイズ』 です。
前回は芸術家の逮捕歴をクイズにしましたが、
今回は、芸術家の離婚歴をクイズにしてみました。
芸術家といえば、自由奔放・・・なイメージ。
4度の離婚歴がある藤田嗣治を筆頭に、
結婚と離婚を繰り返しているようなイメージがあります。

そこで、本日は、2回以上離婚しているかどうかをクイズ形式で出題。
してるか?してないか?2択でお答えくださいませ。

Q1











正解は・・・・・






実は意外にも、ピカソは離婚歴がありません。
最初の妻オルガと離婚しようとしたものの、
資産の半分を渡さねばならないことがわかったため中止。
オルガとの別居状態は約20年ほど続き、1955年にオルガと死別。
晴れて、その数年後、ジャクリーヌ・ロックと再婚する。
愛人が多数存在していたのは、言うまでもない。


Q2











正解は・・・・・






ヨーロッパでの生活に嫌気がさし、
妻子を捨てて単身、南国タヒチへと移住したゴーギャン。
その後、二度と妻子と会うことはなかったそうですが、正式に離婚はしていなかったそう。
なお、タヒチでは、当時14歳だったパウラと、
さらに、その後移住したマルキーズ諸島では、当時14歳だったヴァエホと結婚。
離婚歴は無いにも関わらず、結婚歴は3回あります。


Q3











正解は・・・・・






結婚歴は4回。
結婚に至らずとも、多くの女性との交際が発覚しています。
その中には、ダリの妻・ガラや女性シュルレアリストとして知られるレオノール・フィニも。
わりと身近で済ませるタイプだったようです (?)。
ちなみに、3番目の妻は、世界的な美術コレクタ―のペギー・グッゲンハイム。
わずか2年でスピード離婚しています。


Q4











正解は・・・・・






メキシコ壁画運動の巨匠ディエゴ・リベラ。
2番目の妻との間に2人目の子供をもうけた頃に、
当時女生徒だった15歳のフリーダ・カーロと出会い、恋愛関係に。
リベラが42歳の時、20歳下のフリーダと結婚する。
のちに、リベラの浮気性とDVが理由で離婚。
しかし、その翌年には再婚する。
それも含めると、結婚歴は5回。


Q5











正解は・・・・・






イサム・ノグチやトロツキー、
両性愛者だったこともあり、ジョージア・オキーフとも関係があったといわれるほど、
数々の著名人と浮名を流してきたフリーダ・カーロですが。
意外にも離婚歴は、ディエゴ・リベラとの1度のみです。


Q6











正解は・・・・・






ジョン・レノンの妻という印象が強すぎますが。
実はその前に、作曲家でピアニストの一柳慧さんと、
アメリカの映像作家アンソニー・コックスと結婚しています。


Q7











正解は・・・・・






20世紀を代表するアメリカの抽象画家サム・フランシス。
その色彩豊かな作風と呼応するかのように、恋愛遍歴も色とりどり。
4度の離婚、5度の結婚を経験しています。
ちなみに、4番目の妻は、出光興産創業者・出光佐三の四女。
その間に産まれた子どもフランシス真悟さんは、現在抽象画家として活躍中です。


Q8











正解は・・・・・






“大正の火野正平” (?)こと、恋多き男・竹久夢二ですが、
離婚したのは、結婚して2年で離婚した岸たまき (夢二と結婚するときはバツ1) だけ。
離婚後も、同姓別居を繰り返す。
富山県の海岸で、夢二がたまきの腕を刺すという事件もあった。


Q9











正解は・・・・・






1920年、永野明代なる女性と結婚。
翌年、長男が生まれる。
その状態で1929年2月に中村修子なる女性と結婚披露宴を挙げる。
その翌月3月には、愛人の西崎盈子 (みつこ) とメスで頸動脈を切り、ガス自殺をはかり、救出される。
さらに、その年に、宇野千代と同棲を始める。
・・・と無茶苦茶な女性遍歴ながらも、離婚は永野明代との1回だけ。
彼女との離婚後、愛人だった西崎盈子と再婚。


Q10











正解は・・・・・






藤田嗣治のバツ4を上回る驚異のバツ5。
『美味しんぼ』 の美食俱楽部のモデルとなった高級料亭・星岡茶寮で、
魯山人が料理長を務めていた時のこと、従業員の一人である中島キヨに心を奪われそう。
そして、妻がいるにも関わらず、彼女の気を引くため、
他の従業員の倍以上の給料を渡したというエピソードも。
食にも女性にも好奇心旺盛な人物だったようです。



出題は以上となります。
皆様は、何問正解できたでしょうか?
クイズを制作するために、いろいろリサーチしましたが、
予想していたよりも、離婚歴の多い芸術家は存在していませんでした。
芸術家は、あまり離婚しないようです。
たとえ、離婚した過去があったとしても、
彼ら (彼女ら) の作品が素晴らしいことには、変わりありません。




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特別企画 奈良大和四寺のみほとけ

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東京国立博物館の本館11室での特別企画、
“奈良大和四寺のみほとけ” に行ってまいりました。




奈良を代表するお寺といえば、
法隆寺や東大寺、興福寺などが、パッと思い浮かびますが。
実は、それらのお寺と同じくらいに、
深い歴史を持つのが、奈良県北東部に位置する大和四寺。
具体的に挙げると、岡寺、室生寺、長谷寺、安倍文殊院の四寺です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


その奈良大和四寺に古くから伝わる貴重な仏像の数々が、うましうるわし上京中。
展示スペースは1フロア、出展数は15件と、小規模な展覧会ではありますが。
出展作品15件のうち、国宝が4件、重要文化財が9件と、実に質の高い内容となっていました。
何より、1日では到底巡り切れない奈良大和四寺を、サクッと堪能できてしまうまたとない機会。
星
仏像好き、お寺巡り好きなら、是非とも抑えておきたい展覧会です。


そんな少数精鋭の展覧会だけに、どの作品も目玉作品といったところですが、
とりわけ見逃せないのは、室生寺の 《十一面観音菩薩立像》 です。


国宝 《十一面観音菩薩立像》 平安時代・9~10世紀 奈良・室生寺蔵 撮影・三好和義


ふっくらぽっちゃりした頬。
思わずドキッとさせられる口元の紅。
独特すぎる水瓶の持ち方 (←?) などなど。
見どころはたくさんありますが、特に注目したいのは、その光背。





板に直接絵が描かれた珍しい板光背となっています。
平安時代に描かれた絵が、これほどまでに色鮮やかに残っているのは、極めてレアなケース。
絵画作品としても楽しめる作品となっています。
ちなみに、板光背の裏側はどうなっているのでしょう??
気になったので、背後を覗き込んでみました。




・・・・・・・見ないであげれば、よかったです。


それから、こちらも見逃せないのが、
岡寺の開祖とされる義淵僧正をモデルにしたとされる国宝の 《義淵僧正坐像》 です。


国宝 《義淵僧正坐像》 奈良時代・8世紀、奈良・岡寺蔵 画像提供・奈良国立博物館


胸元に浮かび上がるガリガリの肋骨。
変装メガネをかけているかのようなタレ目っぷり。
くりぃむしちゅーの上田晋也ばりのおでこの皴。
その誇張されすぎた見た目も大いに気になるところですが。
手元の謎のポーズも気になります。
ビリヤードのキューでも持っていたのでしょうか。


また、長谷寺からは、本尊の両サイドを固める2体の脇侍、
《雨宝童子立像》《難陀龍王立像》 が特別に出展されています。




普段は、厨子に入っているため、あまり姿が見えないとのこと。
長谷寺でもこんなにハッキリとは拝顔できないそうです。
ちなみに、頭に龍を乗せたインパクト抜群の右脇侍の 《難陀龍王立像》


重要文化財 舜慶作 《難陀龍王立像》 鎌倉時代・正和5年(1316) 奈良・長谷寺蔵


両手で大事に何かを抱えています。
おすそわけでしょうか?
その正体は、「ナンだ!?」 と疑問に思って調べてみたところ、
どうやら獣の形をした岩を載せた盤であるらしいことが判明しました。
何でまた、そんなよくわからないモノを持っているのでしょう。


安倍文殊院からは、残念ながら仏像は出展されていなかったですが、
その代わり、快慶作の 《文殊菩薩像》 の像内から発見された貴重な経巻、
国宝の文殊菩薩像像内納入品 《仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等》 が特別出展されていました。


国宝 《文殊菩薩像像内納入品『仏頂尊勝陀羅尼・文殊真言等』》 鎌倉時代・承久2年(1220)、奈良・安倍文殊院蔵 画像提供・奈良国立博物館


☝画面の右側にご注目。
同じ文字 (梵字?) がズラッと並んでいます。
実際の展示ではもう少し長く展示されていますので、さらにこの何倍も同じ文字が並んでいました。
計1000文字。
この時代にワープロがあったら、コピペで時短できたでしょうに (←?)。


最後に、個人的に一番印象に残った作品をご紹介。
岡寺が所蔵する重要文化財の 《釈迦涅槃像》 です。




涅槃というよりも、ただ寝ているようにしか見えません。
日曜午後のお父さん。
顔の下に添えた手やクロスした足元が絶妙にリアルでした。


 ┃会期:2019年6月18日(火)~9月23日(月)
 ┃会場:東京国立博物館 本館11室
 ┃
https://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1966

~読者の皆様へのプレゼント~
こちらの “奈良大和四寺のみほとけ” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、7月1日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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塩田千春展:魂がふるえる

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撮影:Sunhi Mang


ベルリンを拠点に、世界各国で精力的に活動を続けるアーティスト塩田千春さん。
その過去最大規模となる個展 “塩田千春展:魂がふるえる” が、いよいよ森美術館で開幕!
2019年大本命の現代アート展の呼び声が高いこの展覧会、早速、足を運んでまいりました。




今回の展覧会は、展示室に入る前から始まっていました。
エントランスへ向かって伸びるエレベーター、
その手前のスペースに設置されていたのは、新作の 《どこへ向かって》





天井から吊られている約100艘の舟が、遠く彼方へ、
もしくは、遠い未来へ向かって、まさに今、旅立とうとしているかのよう。
この幻想的で希望に満ちた光景を目にし、早くも魂がふるえました。
展示室に入る前から、この感動。
展示室ではどんな光景が待ち受けているのか、期待で心も打ち震えます。


さてさて、塩田千春さんと言えば、
大規模なインスタレーション作品というイメージが強いですが。
実は、繊細なオブジェのような立体作品やドローイング作品も手掛けています。
展覧会場の冒頭で紹介されていたのは、それらの作品でした。




“なるほど。今回はこういう作品も紹介していくのね” と思わせてからの・・・




ダイナミックなインスタレーション作品!!

カウンターパンチを浴びせられたかのように、
圧倒的な光景がガツンと目に飛び込んできました。
まさに赤い衝撃。
なお、この空間に張り巡らされている赤い糸の全長は、なんと280㎞とのこと。
280mだとしても、まぁまぁ驚きですが、
その1000倍の280㎞の赤い糸が空間を埋め尽くしているようです。





この 《不確かな旅》 という作品以外も、
燃えたグランドピアノと観客用の椅子が黒い糸で繋がり、空間を埋め尽くした 《静けさの中で》 や、




再開発が進むベルリンで廃棄された窓枠約300点を用いた 《内と外》 など、




没入型の大規模インスタレーション作品が続々登場。
どの作品も、舞台のセットを彷彿とさせるものがあり、
まるで自分が何かの登場人物の一人になったかのように感じられます。
作品の中、ステージに立つたびに、魂がふるえました。

ちなみに、今回の塩田千春劇場、
そのフィナーレを飾るのは、《集積―目的地を求めて》 という作品です。





天上から赤い糸で吊るされているのは、440個のスーツケース。
それらのスーツケースが、低いところから高いところへ。
まるで天国へと続く階段であるかのように配置されています。
一つ一つのスーツケースは、どれも使用済み (←?)。
フレッシュさを感じるというよりは、使い込まれているため、むしろ歴史の重みを感じます。
ところが、不思議と作品全体から感じられるのは、
「新たな旅立ち」 や 「新たな希望」 といった印象でした。
一つの生を終えたものが、新たに生まれ変わって別の生へ。
そんな死生観や哲学といったものも含まれたような、
空間的にも精神的にも大きなスケールを感じるインスタレーション作品でした。


・・・・・と、ここまで紹介した作品は、出展作品のほんの一部。
今回の展覧会には、新作18点を含む113点でが紹介されています。
どの作品からも、塩田さんが、その魂をふるわせ、
魂を削って制作したであろうことが伝わってきました。
とにかく一人でも多くの人に観て欲しい、体験して欲しい展覧会です。
星星星


さてさて、数多くの出展作品の中で、ある意味、個人的に一番印象に残っているのは、
アーティスト塩田千春の初期も初期、チコちゃんと同い年の5歳の頃に描かれたこちらの絵画。





蝶の配置。
ひまわりの描き方。
「しおたち春」 と 「春」 だけ漢字なところ。
絵の端々に非凡なものを感じます。
一流アーティストは、やはり生まれたときから一流アーティストなのですね。

ちなみに。
この絵のすぐ近くには、塩田さんのこれまでの展覧会歴が紹介されていました。




ズラリと羅列された華やかな経歴。
DHCの化粧品のCMを彷彿とさせるものがありました。




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台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-

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4LDKであろうが1Kであろうが、およそどの家にも存在している空間 「台所」。
そんな台所の歴史や文化を掘り下げた展覧会が、
現在、京橋にあるLIXILギャラリーで開催されています。
その名も、“台所見聞録-人と暮らしの万華鏡-”




会場でまず展示されていたのは、世界各国の台所の模型です。




“台所なんて、基本的にどこも同じじゃないの?” と思いきや、
約半世紀にわたって、世界の台所を調査してきた建築家の宮崎玲子氏の見解によると、
北緯40度を境に南北で、大きな違いがみられるのだそう。
例えば、北は水を使うことが少ないため、流しが主役にならないのですが、
逆に、南では洗う頻度が高いため、大量の水を使うことが前提の台所になっているのだそうです。
何より決定的な違いは、家の中での台所の位置。
ロシアのような寒い北の地域では・・・




部屋を暖める暖房の機能もかねて、家の中心に火を使う台所が配置されています。
反対に、暑い南の地域では、火元はなるべく部屋の中心から離れたところに配置されがち。
例として紹介されていたネパールの家の場合・・・




台所は、屋上階である4階に配置されていました。
「台所=1階」 と当たり前のように思っていましたが、
気候や風土が違えば、台所に対する考え方も大きく違うのですね。

なお、展示されている1/10縮尺の再現模型はすべて、
台所調査を行った際の記録や資料をもとに、宮崎玲子氏本人が制作した私物です。




プロの建築家による建築模型なので、建築に関しては申し分ないのですが。
人形に関しては、本業ではない分 (?)、独特の味わいがありました。




そこはかとなく漂う 『メトロポリタン美術館』 感。
大貫妙子さんの歌声に合わせて、今にも踊り出しそうな雰囲気を醸し出していました。




ちなみに、文化的にも模型的にも、
一番印象に残ったのは、北極圏 (イヌイットの雪の家) の模型です。




家中を見渡せど、台所らしき空間はありません。
実は、自然そのものが冷蔵庫であるような北極圏では、外で調理をするとのこと。
台所的なスペースは家の中にはないのだそうです。
ということで、模型の裏側に回ってみたところ、
何やら親子が巨大マグロのようなものを捌いています。





・・・・・と思ったら、アザラシでした。
ちーん。


世界の台所事情に続いて紹介されていたのは、日本における明治以降の台所の変遷。
今でこそ立って調理するのが当たり前ですが、
実は明治の中頃までは、膝を床について調理するのがポピュラーだったそうです。




まな板は床の上に直置き。
食材が入ったお皿も直置きです。
これでは、不衛生である上に、
膝をつく→調理する→立ちあがって作業する→再び膝をつく・・・と非効率だったそう。




明治30年代に入ってようやく、
今のような立って調理するスタイルが推奨されるようになったそうです。
ちなみに、それ以降、台所の利便性が追求され、昭和時代には人間工学的アプローチも導入。
日本の平均的な女性の身長を元に台所が作られるようになったのだとか。




その頃に誕生し、公団のキッチンに採用されたことで、
爆発的に日本の一般家庭に浸透したとされるのが、こちらのステンレス深絞り流し。




それまでの金属製の流しは、トタンやアルミ、ブリキ製しかなかったそう。
折り曲げや溶接が難しく、槽の深さが5㎝に満たない流しも、ざらだったのだとか。
その頃の人は、食べ終わった皿をどこに置いていたのでしょう??
いかにステンレス “深” 絞り流しが、画期的なキッチンだったのかがよくわかります。
なお、ステンレス製の流しが登場するまでは、
セメントに砂や花崗岩などを加えた人造石を、砥石やグラインダー等で研ぎ表面を仕上げた・・・




いわゆる 「人研ぎ流し」 が主流だったそうです。
昔は、こんな小学校の足洗い場みたいなところで、調理をしていたのですね。


さてさて、展覧会のラストを飾るのは、
一流建築家が、その名建築において手掛けた台所の事例です。




前川國男や菊竹清訓といった日本の建築界の巨匠から、
フランク・ロイド・ライトやル・コルビュジエといった世界的建築家まで。
数多くの事例が写真とともに紹介されていました。




個人的に印象に残ったのは、東京オリンピック開催の年に、
神宮前に誕生した高級マンション 「ビラ・ビアンカ」 の台所です。




会場全体を通じて、台所の文化や歴史を辿ってきたわけですが。
「あれっ?台所ってなんだっけ?」 と、
それまでインプットしたすべてを吹き飛ばしてしまうようなインパクトがありました。
宇宙食とか出てきそうです。


知ってるようで意外と知らない台所。
掘り下げ方次第、調理次第では、
お国柄や文化が見えてくるのですね。
星




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第39回 中央区銀座でゴヤ

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ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール…と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??

気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴く!!



ベラスケスとともにスペイン最大の画家と謳われるゴヤ。
その名が付いたバーが、銀座にあるらしい。
そんなまことしやかな情報を頼りに、銀座の数寄屋橋通りへとやってきました。




Google マップは、このあたりを指し示しているのですが、それらしいお店は見つからず。。。
しばらく近辺をうろついていると、何やら抜け道みたいなものを発見!




その抜け道を抜けると、そこには・・・




裏路地がありました。
そして、看板に 「GOYA」 の文字があるのを確認。
どうやらお目当てのお店に辿り着けたようです。




ビルに入り、階段をのぼると、そこには 「GOYA」 のサインがありました。




扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは・・・




《スペイン王子フランシスコ・デ・パウラ・アントニオの肖像》
宮廷画家ゴヤが描いた肖像画の一つです。
《裸のマハ》《マドリード、1808年5月3日》 などと比べると、そこまでメジャーではないゴヤ作品。

“それをあえて入り口に飾っているだなんて。
というか、そもそも店名をゴヤにするなんて・・・よっぽどゴヤ好きのオーナーに違いない!”

と確信した矢先、カウンター席へと案内されました。
すると、そこにはバーのカウンターでは、あまり見かけないものが!

「えっ!《我が子を食らうサトゥルヌス》 の食べかけ?!」




・・・・・と思ったら、生ハム (ハモン・セラーノ) の原木でした。




ゴヤ=スペイン=ハモン・セラーノ。
なるほど。繋がるものはあります。

さてさて、1杯目は、ジン・トニックをオーダー。




すると、角柱の氷が1本入った見た目にも美しいジン・トニックが運ばれてきました。
もちろん見た目だけでなく、味もすっきりと美しかったです。
ジントニックウォーターを混ぜたもの、ではなく、
もとからこういう飲み物であったかのような一体感のある味でした。

そんなジン・トニックをゆっくり味わっていると、
バーテンダーさんから、「うちの店は、どうやって知ったのですか?」 との質問が。
素直に、「芸術家の名前が付いたお店を訪れるのがゴニョゴニョゴニョ・・・」 と伝えると、

「実は、10年くらい前に、馴染みの古書店の方が、ゴヤの版画集をプレゼントしてくれまして。
 それで、昨年このお店をオープンさせて頂いた時に、
 その版画集にちなんで、『ゴヤ』 という名前にしたのです」

と、店名の由来を教えてくれました。
なお、その版画集は、『闘牛技(La Tauromaquia)』。
1~33、A~Gの全40図があり、お店では、
その日に合わせて、版画をかけ替えているのだそう。
ちなみに、僕が訪れたのは、6月24日。




壁にかかっていたのは、24番目に当たる、
「同じセバーリョス、マドリード闘牛場で牡牛にまたがり、別の牡牛をかわしながら短槍を打つ」 でした。
もちろんプリントではなく、本物の版画。
そんな貴重な版画を、ポンとプレゼントしてもらえるだなんて。
と、軽く疑問に思っていると、バーテンダーさんの口から、
「シェリー・カクテル・コンペティションで優勝した時のお祝いでして」 との答えが飛び出しました。

えっ、チャンピオン?!

そんなスゴいバーテンダーさんのお店だとはつゆ知らず、
ただ、“ゴヤという名前だから” というバカみたいな理由で訪れてしまったことを反省。
ほろ酔い気分は、血の気が引くように一瞬にして醒めてしまいました。
とは言え、せっかくなので、シェリーを使ったカクテルをオーダーしてみることに。
すると、チャンピオンは、シェリーのカクテルではポピュラーなバンブーを作ってくださいました。




シェリーと聞いたところで、「♪いつになれば俺は這い上がれるだろう~」 と、
尾崎豊の歌声しか思いつかないほどに、そもそもシェリーというお酒に馴染みのない僕。
確か甘いお酒だったような、という曖昧な情報を頼りに一口飲んでみました。

「ん?甘くない!」

シェリーには甘口だけでなく、辛口もあるのだそう。
そんなシェリーで作ったカクテルは、
辛口の日本酒や紹興酒に近いスパッとした味わい。
まさに、竹を割ったような味でした。


この日、最後にオーダーしたのは、お店で一番人気という生姜を使ったカクテル。
生姜のモスコミュールです。




高知県出身のバーテンダーさんのこだわりの一杯で、
高知県産のフレッシュな生姜がアクセントにくわえられていました。
一般的なモスコミュールと違って、ジンジャーエールのベタッとした感じは一切なし。
ピリッとした刺激が、実に心地よい一杯でした。

3杯とも、すべて美味しかったです。
ごちそうさまでした。


仕事柄、銀座はよく訪れていますが、こんなに素敵なバーがあったなんて!
この出逢いは、ある意味で事件。
銀座、2019年6月24日。


<お店情報>
バー ゴヤ
住所:東京都中央区銀座6丁目4-16花椿ビル2階B2号
定休日:日曜・祝日
営業時間:16:00〜24:00
 



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食の器

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現在、日本民藝館で開催されているのは・・・




“食の器” という展覧会。
日本民藝館コレクションの中から、
タイトルずばり 「食の器」 に着目した展覧会です。
江戸時代、晴 (ハレ) の場で使われた器や、



(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


茶の湯や懐石で使われた簡素な茶器などが紹介されています。




今回の展示のメインとなっていたのは、
日本民藝館を設立した柳宗悦が実際に食卓で使っていた食器一式。




柳の妻や息子たち曰く、自宅 (現・日本民藝館西館) で使っていた食器が、
いつのまにやら、向かいの日本民藝館の陳列ケースに飾られていることが多々あったのだとか。
ある時は、美術品。また、ある時は、柳さん家の食器。
それほどまでに、ここに飾られている食器は普段使いされていたようです。




僕のような庶民は、濱田庄司や河井寛次郎、バーナード・リーチの作と聞くと、





一流の美術品なのだからと、つい身構えて鑑賞してしまいがちですが。
よくよく考えたら、もともとは食の器として制作されたもの。
日常使いしてナンボなわけです。
であるならば、「あのお皿にカントリーマアムやハッピーターンを乗せようかな」 とか、
「スーパーで買ってきたお総菜も、あのお皿に開けたら、それなりに見えるかな?」 とか、
自分の生活に置き換えて鑑賞するのもアリなのかも。
そう思えた瞬間から、実に気軽な感覚で鑑賞することが出来ました。


また、会場でディスプレイされた食の器の数々を目にして、




食を盛り付ける、お茶を飲む、といった用途だけでなく、
食の器が部屋を飾り付けるインテリアのアイテムにも成り得ることを実感。
使い終わった食器は、食器棚や収納スペースにしまっていますが、
これからは積極的に、お気に入りの食器を部屋に飾ってみようと思います。
星


さてさて、“食の器” の開催に合わせて、
各展示室でも食に関する併設展が開催されていました。
個人的に一番お気に入りだったのは、諸国の土瓶を集めた第1室。




かつて自分の人生の中で、これほどまでに土瓶に囲まれたことがあったでしょうか。
右を見ても、土瓶。左を見ても、土瓶。
間違いなく初体験でした。
なお、こちらの部屋には土瓶以外にも、急須や銚子といった注器も紹介されています。
その中には、《大片口》 なるものも。




“大” にもほどがあるデカさ。
鬼か和田アキ子用の片口です。
それから、こんな変わり種の注器も展示されていました。




注ぎ口が、4口。
四方どこからでも注げるのだそうです。
・・・・・って、便利なのか?


また、和菓子好きの身としては、
菓子型や菓子箱を特集した第4室も興味深かったです。




この部屋で特に印象的だったのが、家紋の菓子型。




「家紋をお菓子にするって、どういう発想なん?」 と一瞬疑問に思ったのですが。
よく考えたら、自分も子ども時代に、
人の名前をモチーフにしたお菓子を好きでよく食べていました。




江戸時代も昭和時代も、人が考えることは変わらないのですね。


ちなみに。
併設展では、日本の食の器だけでなく、
イギリスのスリップウェアや朝鮮の膳など、諸外国の食の器も紹介されています。
その中で思わず二度見してしまったのが、18世紀フランスの中皿。




その小憎たらしい表情もさることながら、
顔と胴体の接続部分 (?) の曖昧さが妙に気になりました。
彼女の首とデコルテは、一体どうなっているのでしょう??




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スミソニアン協会フリーア美術館の北斎展

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現在、すみだ北斎美術館で開催されているのは、
「綴プロジェクト」-高精細複製画で綴るー スミソニアン協会フリーア美術館の北斎展” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


ワシントンD.C.にあるフリーア美術館。
質の高い日本美術コレクションで、知られる美術館です。
その中でも特に世界屈指との呼び声が高いのが、北斎の肉筆画コレクション。
それらの名品が、ついに日本へ!


・・・・・・・・だったら、いいのですが。
設立者であるフリーアさんの遺言により、コレクションは門外不出。
館外に貸し出すことは一切禁止されています。
北斎の肉筆画コレクションの実物は、現地に行かねば観ることは出来ません。
が、しかし、実物とはいきませんが、フリーア美術館の全面協力のもと、
京都文化協会とキヤノン株式会社が推進する 「綴プロジェクト」 によって、
このたび、北斎の肉筆画コレクションの中から13点の複製画が制作されました。
今回の展覧会では、そんな出来立てホヤホヤの複製画と、
すみだ北斎美術館が所蔵する約130点 (←こっちは本物!) の関連作品が併せて展示されています。

「なぁんだ、レプリカなのかぁ」 とガッカリした方もいらっしゃるかもしれませんが。
いやいや、ただの複製画ではありません。
高精細複製画。
作品によっては、本プロジェクトのために開発された絹本に出力されたものも。
担当学芸員さん曰く、ガラスケースに入った状態では、
実物とまったく見分けがつかないレベルとのことでした。

というわけで、百聞は一見に如かず。
本物の肉筆画と高精細複製画を見分けられるのか?
ブログの前の皆様も一緒にお考え下さい。







一方は、すみだ北斎美術館が所蔵する肉筆画。
そして、もう一方は、綴プロジェクトで制作された高精細複製画です。
果たして、本物の肉筆画はどちらでしょうか?




正解は・・・・・







は、高精細複製画です。

確かに、高精細複製画は再現度が高く、
展示ケースのギリギリまで近づいてみても、実物との差が判別できないレベルでした。
こちらの 《琵琶に白蛇図》 にいたっては・・・


葛飾北斎 《琵琶に白蛇図》 (通期) フリーア美術館蔵
Original: Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, D.C.: Gift of Charles Lang Freer, F1904.134
※展示は高精細複製画となります。



色彩を再現するのは当然のこと、
顔料が盛り上がった鱗の質感まで、完全再現されていました。




江戸時代にこれほどまでに独創的でビビッドな絵を描いた北斎も、もちろん素晴らしいのですが。
その絵を、ここまで完璧に再現できる現代の技術も素晴らしかったです。
そういう意味では、普通の肉筆画 (?) よりも、Wで感動できた気がします。


また、ただ完全再現できて良かったね、というだけでは決してなく。
展覧会では、高精細複製画だからこそ実現できる仕組みを積極的に取り入れていました。
例えば、実際の肉筆画は、保存の関係上、ガラスケースに入れる必要があります。
しかし、高精細複製画ならば、そのまま展示することが可能であるため、
畳の上に設置し、作品が描かれた当時のスタイルで鑑賞できるコーナーが設けられていました。




また例えば、古歌に詠まれた6か所の玉川を描いた 《玉川六景図》


葛飾北斎 《玉川六景図》 (通期) フリーア美術館蔵
Original: Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, D.C.:Gift of Charles Lang Freer, F1904.204-205
※展示は高精細複製画となります。



現在、フリーア美術館に所蔵されている屏風の仕立てでは、
上のように右隻には人物が、左隻には風景が、それぞれ描かれていますが。
どうやら、もともとは人物と風景を一対として構成されていた可能性が高かったとのこと。




そこで今回、高精細複製画を制作するにあたって、
北斎が描いた当初の姿であろう形で再現されていました。





レプリカでお茶を濁した展覧会では決してなく、
レプリカだからこそ実現できることが満載の展覧会。
日本の伝統文化と日本の最先端技術が融合した展覧会でした。
星


ちなみに。
今回制作された高精細複製画の中で、
特に印象的だったのは、やはり 《蟹尽し図》 でしょうか。


葛飾北斎 《蟹尽し図》 (通期) フリーア美術館蔵
Original: Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, D.C.: Gift of Charles Lang Freer, F1902.254
※展示は高精細複製画となります。



画面にビッシリと描かれたカニ、カニ、カニ (と、一部カブトガニやヤシガニ)。
その数は、実に106匹。
インパクト抜群の1枚です。
何より、蟹が食べたくなること必至です。

それから、もう1点印象的だったのが、《波濤図》
'The Great Wave' こと 《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 と対比させるように展示されていました。




《波濤図》 を描いた時、北斎は88歳。
《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 を発表してか16年が経過しています。


葛飾北斎 《波濤図》 (通期) フリーア美術館蔵
Original: Freer Gallery of Art, Smithsonian Institution, Washington, D.C.: Gift of Charles Lang Freer, F1905.276
※展示は高精細複製画となります。



波の鉤爪感 (?) は、より進化。
ゴジラの手のようになっていました。
《波濤図》 と見比べてしまうと、《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 の波なんて可愛いもの。


葛飾北斎 《冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏》 (通期)
作品を替えて通期で展示 すみだ北斎美術館蔵



公園の水飲み場みたいな感じ。
のほほんとしています。
対して、《波濤図》 の波は、確実に意思を持っています。
そして、おそらく何かを実際に掴むことができるはず。
ジョジョの新手のスタンドか?!




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書物に見る海外交流の歴史 ~本が開いた異国の扉~

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現在、静嘉堂文庫美術館で開催されているのは、
“書物に見る海外交流の歴史 ~本が開いた異国の扉~” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


島国、ニッポン。
言うまでもなく、四方を海に囲まれている国ながらも、
意外にも古くから、“海外交流” は絶えず続けられてきました。
そのため、日本は世界から大きく孤立することはなかったのです。
現代の感覚からしてみれば、何とでもなりそうな気もしますが。
確かに、冷静に考えてみると、テレビもインターネットもなかった時代に、
文化の面で、世界から大きく差を付けられなかったのは、奇跡的なことのように思います。
その奇跡の立役者となったのが、書物。
海外の文化や最新知識を記録した書物があったからこそ、
日本は手に取るように海外の情勢やトレンドを知ることが出来たのです。
普段あまり意識することはないですが、
書物はメディアであるということに、改めて気づかされる展覧会です。
星


さてさて、出展されている書物は、約60点。
その中には、教科書でもお馴染みの 『解体新書』 や、




新井白石によって書かれた西洋の研究書 『西洋紀聞』、




あの吉田兼好が 『徒然草』 の中で好もしい書物と絶賛している 『南華真経注疏』 など、


重要文化財 晋・郭象注 唐・成玄英疏 『南華真経注疏』 南宋時代(13世紀)  静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】


日本の文化に大きな影響を与えた貴重な書物が数多く含まれています。
個人的にテンションがあがったのは、展覧会の冒頭に展示されていた 『国志(三国志)』。




もし、この本が日本にもたらされていなかったら、
横山光輝の 『三国志』 もコーエーテクモゲームスの 『三国志』 シリーズも無かったのかも。
漢字ばかりで何が書いてあるのかはよくわかりませんでしたが、食い入るように見てしまいました。

ちなみに、書物の展覧会ではありますが、
作者や時代などに関連して、絵画や陶磁器なども出展されています。




文字ばかりの退屈な展覧会では決してないので、ご安心を。
もちろん書物自体にも、絵は登場。
テキストが理解できずとも、眺めているだけでも十分に楽しめます。




中でも見逃せないのが、司馬江漢によって記された 『日本創製銅版新鐫 天球全図』 。


司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「天球図(部分)」 江戸時代・寛政8年(1796)頃  静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】


宇宙の世界や顕微鏡で見た世界など、当時の最新科学が紹介されています。




こちらは、「ヲルレレイ」 なるものを描いた図。


司馬江漢 『日本創製銅版新鐫 天球全図』のうち「ヲルレレイ図」 江戸時代・寛政8年(1796)頃  静嘉堂文庫蔵 【全期間展示】


パッと見は、喫茶店に置かれていそうなマシンですが、
ヲルレレイとは、おみくじ用の機器ではなく、天体を表した機器です。
中心の赤い丸は太陽、その周囲に恒星や星座、赤道や黄道などの軌道が表示されています。
なお、当時これは、「西洋暦学の大賢、奈端」 が制作したものと認識されていたとのこと。
奈端と書いて、ネウトン。
ネウトン・・・ネゥトン・・・ニュゥトン・・・そう、あのニュートンです。
江戸時代の日本人も、ニュートンを知っていたのですね。


今回出展されていた中で、最も目を惹かれたのは、
『通小町(光悦謡本第一種)』 と鴨長明の随筆 『方丈記』 です。




こちらの書物はいずれも、京都・嵯峨の豪商であった角倉家が、
本阿弥光悦や俵屋宗達らの協力を得て出版された豪華本で、一般的には嵯峨本と呼ばれています。
表紙や挿絵、装丁など、隅々まで贅が凝らされており、
雲母刷の用紙が使用されたページは、今なおキラキラと輝いていました。




と、紙そのものの美しさに目がいってしまいましたが、
光悦が書いたとされる文字も、流れるような美しさがあります。
しかし、何より驚かされたのは、これらの文字が手書きではないということ。
なんと活字なのだそう。
ちょうどこの頃、海外から活版印刷術が伝わったことに刺激を受けて出版されたという嵯峨本。
しかし、流れるような崩し字を活字にするのは容易ではなく、
崩し字2~4文字のワンセットで活字を作り、それらを組み合わせて製版していたのだとか。
一説には、約2100個の活字が作られていたそうです。
だったら、もう直接書いちゃった方が早いのでは??
気の遠くなるような作業を想像して、思わず当時の出版人の熱意に頭が下がりました。
『方丈記』 は、日本人の無常観 (※) を表した作品と言われていますが、
これらの嵯峨本は、この先も長いこと、ちゃんと残っていって欲しいものです。
(※世の全てのものは、常に移り変わり、いつまでも同じものは無いという考え方)


最後に、個人的に一番印象に残った一冊をご紹介。
江戸時代の蘭学者・大槻玄沢による 『六物新志』 です。
六物とは、サフランやナツメグ、エブリコ(=きのこの一種) など6種類の薬物のこと。
その6種類の中には、なぜか人魚も含まれていたようです。




地域ごとの人魚。
そして、オスとメスの違いも描き分けられています。
さらに、うっすら透けて見えるのは、次のページに描かれた人魚の姿。
人魚だけで、どれだけ引っ張るつもりなのか。
この部分だけ見たら、医学書ではなく、月刊ムー。




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第百七十六話 国宝ハンター、恐れる!

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前回までのあらすじ~




国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪
重文はいらない♪
国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪
1119件は多い♪
国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪国宝ハントしたい♪
巡るの地獄♪

前回、奈良県でまさかの空振りを喰らったショックで、壊れかけの国宝ハンター。
気持ちも新たに今回向かった先は・・・





長野県松本市へとやってきました。
松本市のシンボルである国宝・松本城は、すでに2013年にハンティング済。
松本城は脇目で見るくらいに留め、
松本市のもう一つのシンボルともいうべき建造物へと向かいました。
それは、旧開智学校。





日本で最も古い小学校のうちの一つです。
洋風とも和風ともいえない 「擬洋風建築」 の校舎は、明治9年に建設されたもの。
文明開化を代表する建造物として、令和初の国宝に指定されました。
ちなみに、明治以降の国宝としては、《旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)》
《旧富岡製糸場》 に続いて、《旧開智学校校舎》 (ジャンル:建造物) が3例目。
国宝の学校建築としては、《旧閑谷学校》 に次ぐ、2例目です。

何と言っても特徴的なのは、その正面のデザイン。




学校感は、ほぼありません。
竜宮城を模した地方の温泉旅館のような印象を受けます。
ふと、上を見上げると、そこには 『開智学校』 と書かれた額がありました。




その額の両サイドには、なぜか天使の姿が。
いや、よく見ると、翼が茶色です。
天使なんかじゃない・・・のかも。虫?
あと、右側のヤツは、そこはかとなくウッチャンに似ていました。




と、外観を堪能した後は、いよいよ内部へ。






基本的には、外部も内部も竣工当時の姿のまま残っているのだそう。
ひとたび校舎内に足を踏み入れた瞬間、
まるで明治期にタイムスリップしたような気持ちになりました。

こちらは、かつて教室として使われていた部屋。




机も教壇もピアノも、当時のものが置かれています。
「当時の机が残っているということは・・・?」 と思い、探してみると、やっぱりありました。




彫りキズ。
さすがに、『BOØWY』 や 『夜露死苦』 といったフレーズでは無かったですが。
机に堂々と、旧字で 『靑』 と彫られていました。
この机の持ち主は、一体何を伝えようとしていたというのか。
非常に気になるところです。


ちなみに。
気になるといえば、開智学校の生徒心得も。




基本的には、今にも通じるような常識的な心得が書かれていたのですが。




中に一つだけ、何とも気になる心得がありました。




「瓦や石や鉄砲の玉のようなものを投げてはいけません。」

鉄砲の玉のようなもの?!
投げる投げないの問題でなく、
小学生が、そんな物騒なものを所持している時点でアウトなのでは??

松本、恐ろしい子!


今現在の国宝ハンティング数 1010/1120 (1119改め)




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