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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!
 お子様とご一緒の参加も大歓迎です[お子様の参加費は基本無料])
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


8/31(土) 史上最強の銀座ギャラリーツアー!! ~2019夏~

「銀座のギャラリーを巡ってみたい!」


・・・・・でも。

“たくさんありすぎて、どこに行けばいいのかな?”
“敷居が高そうだし・・・(´・ω・`)”
“無理やり買わされたら、どうしよう・・・(´□`。)”


と、不安いっぱいな皆様、お待たせいたしました!
こちらは、アートテラーとして自信を持って、
『これぞ、銀座のギャラリー巡りの決定版!』 とお届けするツアーです。

今回のツアーでは、普段から仲良くさせて頂いているギャラリーから、
銀座に行ったら絶対に訪れておきたい老舗ギャラリーに、 有名ブランドのギャラリーなど、
時間の許す限り、たくさんのギャラリーをご紹介いたします。

さまざまなジャンルのアートに出逢えるのは、もちろんのこと。
キャラの濃いギャラリストさんにも、続々登場いたします。
まだまだ暑さが残るでしょうから、
ギャラリーやカフェで涼を取りながら、銀ブラいたしましょう。

時間:13時~17時
定員:10名
参加費:1000円

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/1(日) 今こそ代官山アートツアー

今回のアートツアーの舞台は、『代官山』。
都内屈指のアートと文化の街です。
しかし、意外にも、これまでアートツアーで訪れたことはありませんでした。
(建築ツアーでは何度か訪れていますが)

史上初となる代官山のアートツアーでは、
代官山で抑えておきたいギャラリーやアートスポットを紹介するのはもちろんのこと。
知る人ぞ知る重要文化財建築や古墳といった隠れスポットにもご案内いたします!

ちなみに、ツアーのメインとなるのは、
いよいよ8月21日よりスタートする “Fumiyart 2019 デジタルとアナログで創造する 藤井フミヤ展”
あの藤井フミヤさんの16年ぶりとなる大規模な個展です。
ミュージシャンのフミヤさんが、その片手間に制作したアート作品と思っていたら大間違い!
どの作品も、”天はフミヤさんに何物を与えたんだ?!” と驚かされるほどのクオリティ。
純粋に現代美術展として観ておくべきレベルの展覧会です。
特に今展で初公開される絵筆やペンを駆使したアナログ作品は、必見!
「現代アーティスト・藤井フミヤ」 の真骨頂が発揮されています。

当日は、カフェ休憩等を挟みながら、代官山を散策いたします。
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

時間:13時~17時
定員:10名
参加費:1000円(鑑賞料や施設入場料を含む)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/7(土) 五味文彦とアートテラーとに~がサンドルフィの作品を語る!

9月5日より、千葉県にある “写実の殿堂” ことホキ美術館にて、
“ハンガリーの写実画家 サンドルフィ展 -魂と肉体のリアリズム” がスタートします。




こちらは、ここ近年世界的にも人気が高まるハンガリーの超写実画家、
イシュトヴァーン・サンドルフィ (1948~2007) の日本初となる展覧会。
出展作のすべてが日本初公開という実に貴重な展覧会です。
その関連イベントとして、人気写実画家の五味文彦さんと、
サンドルフィの魅力を語り合うトーク企画が開催されることとなりました。
予測不能?アドリブ満載?の1時間。
どうぞお楽しみに!

時間:15時~16時
定員:先着40名様
参加費:2300円(入館料+ショップ・カフェ8%引き券)

ご参加希望の方は、ホキ美術館のHPよりお願いいたします↓
https://www.hoki-museum.jp/event/index.html#event20190907


9/14(土) 虎ノ門 “隠れ家系” 美術館巡り

知る人ぞ知る “隠れ家系” アートエリア。
それは、虎ノ門です。

徒歩数分の圏内に、小さいながらも素敵な3つの美術館が存在しています。
今回お届けするのは、それらの美術館を巡るツアーです。
カフェ休憩を挟みつつ、のんびり巡りましょう。

まず訪れるのは、泉屋博古館分館。
住友家が蒐集した美術品を保存、展示する美術館です。
こちらでは、国宝や重要文化財を含む日本美術の名品が数多く出展される、
“住友財団修復助成30年記念「文化財よ、永遠に」” という展覧会を鑑賞いたします。
ちなみに、泉屋博古館分館は2020年1月より約2年、改修工事のため休館の予定。
是非、この機会に訪れましょう。

続いて訪れるのは、大倉集古館
ホテルオークラの創業者である大倉喜七郎が設立した日本初の私立美術館です。
2014年4月以来、長く休館していましたが、
いよいよ今年9月12日よりリニューアルオープンいたします!
新しく生まれ変わった大倉集古館をどうぞお楽しみに♪

最後に訪れるのは、都内屈指の隠れ家系美術館、菊池寛実記念 智美術館です。
こちらでは、現在、”生誕100年 藤本能道 生命を描いた陶芸家” が開催中!
やきもの好きな方はもちろん、
やきものに興味がない人にも観て頂きたい、オススメの展覧会です。

学芸員さんの特別ガイドもある内容盛りだくさんのアートツアー!
皆さまのご参加を心よりお待ちしています。

時間:13時~18時
定員:10名
参加費:2800円 (3巻の鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/16(月・祝) ダリトーーク

福岡県筑後市にある九州芸文館にて、
現在、“奇才 ダリの版画展” が絶賛開催中です。
その関連イベントの一つとして、『スペシャルトーク!「ダリトーーク」』 が行われます。

「ダリは芸人だった?シュルレアリスム絵画は大喜利のようなもの?
 奇抜で難解なイメージがあるダリやシュルレアリスムの魅力を、
 わたくしアートテラー・とに~が芸人ならではの視点でわかりやすく、オモシロく紹介いたします。
 美術ってよくわからないゾという方も大歓迎!
 ダリがもっと身近に感じられるトークライブです。」


時間:13時半~15時
定員:80名(要申込・応募多数の場合は抽選)
参加費:1000円(本展招待券つき)

ご参加希望の方は、九州芸文館のHPよりお願いいたします↓
http://www.kyushu-geibun.jp/main/4554.html


9/22(日) そうだ 江戸、行こう。【大山詣り編】

“浮世絵に描かれた街並みは、今、どのような光景になっているのでしょうか?”

浮世絵を手掛かりに、街をぶらぶら歩きながら、
江戸時代にタイムスリップする・・・気持ちになれるツアーです。
講師の太田記念美術館の渡邉晃学芸員とともに、
浮世絵に描かれた場所に実際に赴き、現在の光景と見比べてみましょう!

さてさて、今回のテーマは、『大山詣り』 です。
神奈川県伊勢原市にある霊山・大山。
江戸の町から2、3日の距離にあり、気軽に参拝できることから、
江戸の庶民や歌舞役者たちに、絶好の行楽地として愛されました。
ちなみに、江戸時代のピーク時には、年間20万の人々が来山したのだそう。
それゆえに、大山詣りを描いた浮世絵も、実にたくさん存在しているのだとか。
今回のツアーでは、それらの浮世絵を頼りに、
江戸随一の観光スポット・大山を、たっぷりと散策いたします!
令和元年の大山詣り。
どうぞご期待くださいませ♪

時間:13時~17時半 (集合は伊勢原駅となります)
定員:12名
参加費:2000円
(注:おかげさまで、“そうだ 江戸、行こう。” 企画は特に人気が集中しております。
 そこで、“そうだ 江戸、行こう。” に初参加の方、
 もしくは今年5月以降に、“そうだ 江戸、行こう。” 以外のアートツアーにご参加頂いた方のみの受付とさせて頂いております。
 何卒ご了承くださいませm(__)m)


ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


9/23(月・祝) コートールド美術館展へ行こう!

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです!

さてさて、今回みんなで訪れるのは、
この秋、東京都美術館で開催される “コートールド美術館展 魅惑の印象派” です。

コートールド美術館??
その名前にピンとこない方が大半だとは思いますが、
ゴッホの 《花咲く桃の木々》、ルノワールの 《桟敷席》、セザンヌの 《カード遊びをする人々》
そして、マネの代表作中の代表作 《フォリー=ベルジェールのバー》 などなど、
一度は目にしたことがある名画を多く所蔵しているロンドンの美術館です。
今展では、上に挙げた名画を含む選りすぐりの約60点が出展されています!

コートールド美術館って知らないから、パスでいいや。
・・・・・なんて言って、見逃してしまうと、のちのち絶対に後悔する展覧会ですよ。

展覧会を鑑賞したあとは、近くのカフェでまったりいたしましょう♪
図録を持参しますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなた様も気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

時間:13時~16時半
定員:12名
参加費:1500円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

Film:47 『永遠の門 ゴッホの見た未来』

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■永遠の門 ゴッホの見た未来

  監督:ジュリアン・シュナーベル
  出演:ウィレム・デフォー、ルパート・フレンド、オスカー・アイザック
  2018年/イギリス・フランス・アメリカ/111分

画家としてパリで全く評価されないゴッホは、
出会ったばかりの画家ゴーギャンの助言に従い南仏のアルルにやってくるが、
地元の人々との間にはトラブルが生じるなど孤独な日々が続く。
やがて弟テオの手引きもあり、待ち望んでいたゴーギャンがアルルを訪れ、
ゴッホはゴーギャンと共同生活をしながら創作活動にのめりこんでいく。
しかし、その日々も長くは続かず……。
作品が世に理解されずとも筆を握り続けた不器用な生き方を通して、
多くの名画を残した天才画家が人生に何を見つめていたのかを描き出していく。
(「映画.com」より)


「ティム・ロスが主人公を務めた 『ゴッホ』 や、
 カーク・ダグラスがゴッホを演じた 『炎の人ゴッホ』 、
 全編油彩画で制作されたアニメーション映画 『ゴッホ 最期の手紙』 など、
 ゴッホの生涯を取り上げた映画は数多くありますが、本作は最新版。
 自らもアメリカ新表現主義の画家でもあり、
『バスキア』 や 『潜水服は蝶の夢を見る』 で知られるジュリアン・シュナーベルの新作映画です。
 なお、日本での一般公開は、11月8日から。
 一足先に試写会で観させて頂きました。

 まず何と言っても驚かされるのが、ゴッホ役のキャスティングです。
 ジュリアン・シュナーベルがゴッホ役として白羽の矢を立てたのは、
 『プラトーン』 や 『スパイダーマン』 の悪役でお馴染みの名優ウィレム・デフォー。
 御年64歳。
 春風亭小朝や松山千春と同い年です。
 最初はミケランジェロにしか見えなかったものの、
 ウィレム・デフォーの演技力の高さゆえ、途中からはゴッホに見えてきました。
 ・・・が、さすがに37歳のゴッホには見えず、
 どうひいき目に見ても、50代のゴッホにしか見えませんでした。。。
 顔はともかくも、手足の皴に関しては、もはや完全におじいちゃん。
 舞台であれば、そこまで違和感はなかったのでしょうが、
 映像作品となると、いくらなんでもゴッホ役には無理があるような。

 ちなみに、劇中では、ゴッホが走るシーンが何度も登場します。
 特にあまり意味はないのに、幾度となくゴッホが走っていました。
 まるで昭和のアニメのオープニングのように。
 30代のゴッホが走っていると思えば、何も気にならないのですが、
 実際は60代のウィレム・デフォーが走っていると思うと、心配で仕方がありませんでした。


 さてさて、今回の映画で特徴的だったのは、
 ゴッホが見ていたであろう視線や目線を再現していること。
 つまり、ゴッホの目を通した 〈世界〉 を追体験できるというわけです。
 実際に映画を観るまでは、
 ゴッホはどんな〈世界〉 を見ていたのか、と非常に楽しみだったのですが。
 いざ、実際の仕上がりを見てみると、
 「・・・・・いや、こういうことじゃないでしょ」 と苦笑せざるを得ませんでした。
 ネタバレになるので、多くは語りませんが、
 ゴッホ目線のシーンになるたびに、「ハズキルーペ買えよ!」 とツッコミたくなりました。

 そんなゴッホの目線のシーンも、なかなかの難解さでしたが。
 他にも意図的に手ブレさせたり、急に場面がブツ切りになったり
 俳優の顔のアップが多かったり、シーンとBGMのピアノの音が合っていなかったり。
 全体を通して、難解な演出が目立ちました。
 1回観ただけでは、監督の言わんとすることも半分も理解できていなかった気がします。
 劇中で、ゴッホが自分が画家になったのは、
 「(自分を理解してくれない) 今の人々ではなく、未来の人々のためである」 と述べていましたが。
 もしかしたら、この映画も、未来の人々のための映画なのかもしれません。

 
 個人的には、ゴッホとゴーギャンの友情にはグッときました。
 たいていは、自己中キャラとして描かれるゴーギャンですが、
 この映画では、友情と美術に熱いナイスガイとして描かれています。
 珍しく、ゴーギャンの好感度があがる映画でした。
 スター スター ほし ほし ほし (星2つ)」


~映画に登場する名作~

《アルルの女(ジヌー夫人)》

加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL

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現在、原美術館で開催されているのは、
“加藤泉―LIKE A ROLLING SNOWBALL” という展覧会。
国内外で活躍する現代アーティスト加藤泉さんの、
意外にも、東京の美術館では初となる大規模な個展です。




胎児のような、虫のような、はたまた、どこかの国の民族のお面のような、
一目見たなら忘れられない個性的な生命体をモチーフとした作品で知られる加藤泉さん。
今回の展覧会でも、そんな加藤さんが生み出した生命体の数々が紹介されています。




その数、実に69点。
当初は30点の予定だったそうですが、
増殖に増殖を重ね、倍以上の作品が出展されるに至ったそうです。
星
ちなみに、出展されているのはすべて新作。
生まれたてホヤホヤです。

それらの中には、壁に掛けられているモノや、
天井から吊るさげられているモノもいましたが。




中には、床のコーナーに置かれているモノや、




窓の一部に押し込められているモノ、




庭にある木の隙間からひょっこりはんしているモノもいました。




これら加藤さんの生み出すモノたちは、
基本的に無表情なのに、不思議と生命力が感じられます。
パッと見は、ちょっと気持ち悪いのですが (※個人の感想です)
じーっと眺めているうちに愛着が湧き、気がつけば、すっかり彼らに感情移入をしていました。

今回の出展作品の中で最も感情移入をしてしまったのが、サンゴ製のこの子。




何も掛けないで寝ると、風邪引くよ。
ちゃんとタオルケット掛けなさい。
・・・・・と、お母さんみたいなことを思ってしまいました。

それから、展示室ですみっコぐらししていた (?) この子にも感情移入。




夏バテ・・・なのでしょうか?
とりあえず起き上がる気はなさそうです。
こういう体制で扇風機にあたっている小学生に見えます。
もしくは、南米のボブスレー選手にも見えました。


なお、展示室ごとに展示スタイルは、ガラッと変わっています。
どの展示室も見ごたえがありましたが、個人的にオススメなのは、ギャラリー3。




床には、大量の生命体が寝転んでいます。
その中央ですくっと立つアバターのような生命体。
彼の姿が目に飛び込んできた瞬間、
「もしや、神?!」 という考えが頭をよぎりました。
原始宗教のようなものを彷彿とさせます。
狭いながらカオスが充満した密度の高い空間でした。


それと、もう一つオススメなのが、ギャラリー5。


(注:こちらの展示室は撮影不可。記事に使用している写真は、特別に許可を得て撮影したものです)


こちらは、博物館をイメージしたという空間で、
加藤さんの作品にしては珍しく、ガラスケースに収められています。
随分とオシャレな展示ケースだなァと思ったら、家具屋さんにオーダーした特注品とのこと。
ジャストフィットな展示ケースにすっぽりくるまれて、
心なしか、他の作品たちよりも、気持ち良さげな印象を受けました。


正直なところ、加藤さんの作品は、
パッと見、どれも同じように思えます (笑)
しかし、不思議なほどに、マンネリ感はありません。
むしろ、どんどん他の作品も見たくなる、謎の中毒性を持っています。

ちなみに、原美術館の姉妹館であるハラ ミュージアム アークでも、
現在、同じタイトルで、加藤泉さんの大規模な展覧会が開催されています。
そちらは、新作展ではなく、これまでの約25年のアーティスト活動を振り返る回顧展。
未発表を含む約110点が出展されているのだそうです。
そちらも行かねば。




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見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展

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ヨーロッパ中部に位置し、あの国民的チョコの語源にもなっている、
オーストリアとイタリアにまたがるアルプス山脈東部の地域・チロル地方。
そんなチロル地方の山間にある村の農家に生まれ、今なお農業をしながら、
現代美術家としても活躍する 「21世紀のミレー」(?) ロイス・ワインバーガー、
その日本初となる個展が、現在、ワタリウム美術館にて開催されています。
タイトルは、 “見える自然/見えない自然 ロイス・ワインバーガー展”
会期は、10月20日までです。

ロイス・ワインバーガーの名を一躍有名にしたのは、
ドイツの都市カッセルで5年に1度開催される現代美術展ドクメンタで発表したこちらの作品。
《植物を越えるものは植物と一体である》 です。




こちらは、カッセル中央駅の線路に、
本来散布されるべき除草剤をあえて散布せず、
別の地域に生育する植物の種を撒き、庭を造ってしまったという作品とのこと。
実は、植物は移民のメタファー。移民ならぬ移植物です。
とはいえ、移民問題という政治的なテーマが根底にありながらも、
ユーモラスで大らかな雰囲気が作品全体を覆っており、思わずクスッとさせられるものがあります。
やはりアートが政治をテーマにするのであれば、
このワインバーガーのように、人を不快にさせないものでないと!
どこぞのトリエンナーレのディレクターさんに教えてあげたくなりました。

他にも、都市の中の土地の一角を檻で囲い、放置することで、
荒地植物の庭が作られていくというプロジェクトを展開してみたり、




ワタリウム美術館の向かいにある土地の土をそのまま運び入れ、
展覧会の会期終了まで水を遣りながら、展示室内で小さな庭園を育ててみたり、




ワインバーガーはこれまで 「自然とアート」 をテーマに、
見た人が自然と頬が緩むような作品を数多く制作してきました。
ちなみに、こちらが、ワインバーガーその人。




「シュレックじゃねーかよ!」 と条件発射的にツッコんでしまいそうになりました。
緑をよく作品のモチーフにしているため、
ついには自分が緑になってしまったようです (笑)
星


さてさて、今展では、そんなグリーンマンな彼の初期作から最新作まで、
絵画やドローイング、映像やオブジェなど、120点ほどが紹介されています。
サボテンに目玉を付けた作品や、




石から羽が生えている作品をはじめ、




シンプルながら、インパクトある作品が多々ありましたが、
個人的にもっとも印象に残っているのは、展示室の隅っこで見かけたこちらの作品です。




ボルダリングのホールドかと思いきや、
その正体は緑色にペイントしたキノコとのこと。
タイトルは、《侵食》
キノコの色が変わるだけで、こんなにも “侵食” 感、エイリアン感がアップするのですね。
キノコの生命力、恐るべしです。

また、キノコといえば、こんな作品も。




煙のように胞子を撒き散らすキノコの様子を捉えた一枚です。
そして、その隣に展示されていた写真には・・・・・・




胞子をモロに喰らうワインバーガーの様子が映し出されていました。
むせび、悶えるワインバーガー。
やはり、キノコの生命力、恐るべしです。


ちなみに、自然をテーマにした作品を多く制作している彼ですが、
アーティスト活動を始めた頃には、こんなテイストの作品も制作していた模様。




宗教をテーマにした神聖な作品なのでしょうか。
ところが、作品に近づいてみると、十字架は描かれたものではなく、
何やらシールのようなものがたくさん貼られて構成されていることに気がつきます。
実は、その正体は・・・・・




スーパーマーケットの割引スタンプなのだとか。
作品のタイトルは、《おお主よ、割引してください》 なのだそう。
主に頼む前に、店員に頼めよ。




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京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─

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3年に一度開催される国際博物館会議。通称、ICOM。
世界各地から約3000人 (!) のミュージアム関係者が一堂に会す大々的なイベントです。
そんなICOMの第25回大会が、いよいよ9月1日よりスタートします。
開催地は、京都。念願の日本初開催です。
それを記念して、現在、京都国立博物館では、
ICOM京都大会開催記念 特別企画 京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─” が開催されています。




こちらは、京都国立博物館に収蔵された寄託品、
6200件以上の中から、選りすぐりの名品の数々を展示するものです。
平常展示と同じ観覧料520円でありながら、内容は超豪華!
特別展よりもスペシャルな企画となっています。
なんと出品作品の中には、教科書でお馴染みの国宝 《伝源頼朝像》 や、




狩野永徳による国宝 《花鳥図襖》




一昨年に開催された大回顧展で話題となった海北友松の 《雲龍図》 (重要文化財) を筆頭に、




国宝36件、重要文化財60件が含まれていました。
2017年の秋に京博で “国宝展” が開催された際には、
1~2時間待ちの行列が連日のように発生していましたが。
こちらの特別企画に関しては、企画タイトルに 「国宝」 の文字が無いからでしょう。
行列に並ぶことなく、スムーズに鑑賞することができます。

日本国宝界のスーパースターである 《風神雷神図屏風》 の前には・・・




さすがに人だかりが発生していましたが。
そうは言っても、たかだか10人前後でした。
取り巻き (?) があまりに少ないので、一瞬、そっくりさんなのかと疑ってしまったほど。
そういう意味でも、内容、環境ともに、
この夏、もっとも贅沢な日本美術展といえましょう。
星星
ICOMさまさまです。


さてさて、今回出展されていた作品の中で特に印象に残ったものを、いくつかご紹介。
まずは、衝撃的なビジュアルの 《宝誌和尚立像》 から。





顔が縦に避け、その中から宮川大輔みたいな顔が 「ブリーン!」 と登場しています。
モデルとなっているのは、宝誌和尚。
実在した中国の僧侶です。
ある時、皇帝が絵師に和尚の肖像を描くよう命じたのだそう。
すると、和尚の顔は 「パッカーン!」 と割れたのだとか
しかも、中から現れた菩薩の姿は、どんどんと変化するではないですか。
そのため、結局、絵師は顔を描くことができなかったそうな。

・・・・・・・って、そんな状況で絵を描いてる場合かっ!!


彫刻といえば、こちらの 《地蔵菩薩立像》 も地味にインパクトがありました。




めちゃくちゃ前傾姿勢。
マイケル・ジャクソンばりの前傾姿勢です。
とにかく圧がスゴい。
「お祈りするの?しないの?どっちなの?」
詰め寄られている気分になりました。


絵画の中で印象的だったのは、重要文化財の 《俊芿律師像 自賛》 です。




とっても偉いお坊さんなのでしょうが。
目だけ見ると、わりと危なめ。
ちょっとイッちゃってます。
『Y氏の隣人』 の登場人物みたいな目です。

それと、同じく重要文化財の 《真済僧正像》 も印象的でした。




長い年月が経ってしまったからなのでしょう。
真済僧正のお顔が真っ黒に。
もはや外国の方にしか見えません。
サックス、めっちゃ上手そうです。


他にも、パウル・クレー感が高い尾形光琳の 《色絵氷裂文角皿》 や、




あのアメリカの大富豪ジョン・ロックフェラー2世が来日した際に気に入り、
「愛する京都へ寄贈したい」 と代金相当額を支払ったという 《束熨斗文様振袖》 などなど、




紹介したい作品は、まだまだ沢山ありますが、キリがないので、このあたりで。
最後に紹介したいのは、狩野派随一のパンクな絵師・狩野山雪による 《雪汀水禽図屏風》 です。
図録などで何度も目にしている作品でしたが、実物を観るのは、なんだかんだで今回が初。




初めて実物を目にして何よりも驚かされたのは、その波の表現です。




フラットなのかと思いきや、波の一筋一筋が立体的に表現されていました。
おそらく細い棒で擦ったら、ギロと同じ要領でガリガリと音が鳴るはず。
こんなクレイジーな表現を画面全体に施していただたんて。
じーっと見つめていたら、狂気の波に飲み込まれてしまいそうになりました。
ちなみに、左隻はもっとクレイジー。





波の表現にくわえて、鳥の表現もエラいことになっています。
隊列を成して飛ぶ大量の鳥たち。
エンドレス・ロート製薬。






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第百七十七話 国宝ハンター、距離を置く!

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前回までのあらすじ~

年々増え続ける日本の国宝の数。
前回また増えて、総数は1120件となりました。
あまりの多さに文化庁も管理しきれないのでしょうか。
今現在、2件の国宝が行方不明となっています (←これは本当の話)。
果たして、国宝ハンターはまだ見ぬ国宝たちに会いに行くことができるのか。

国宝達は不安よな。

とに~ 動きます。



先々月は、九州国立博物館へ。
“室町将軍 戦乱と美の足利十五代” を鑑賞するべく訪問しましたが。




実は、もう一つ大事な目的がありました。
それは、6月4日から7月15日にかけて、
文化交流展示室にて開催されていた “新収品展 Part2”。
地味な企画展ではありますが、実は、九博の収蔵品に加わったばかりの国宝、
《刀〈無銘則房/〉》 (ジャンル:工芸品) が初披露されていたのです。




《刀〈無銘則房/〉》 は、つい先日までは、個人蔵の国宝でした。
東京に住む誰かということはわかっていたものの、それ以上は調べようがありません。
ハンティングできる可能性が、著しく低い国宝のうちの一つでした。
しかし、九博のおかげで、《刀〈無銘則房/〉》 と対面することができたのです。
心から感謝。
この場を借りて、お礼申し上げます。
ついでに言えば、個人蔵の国宝はまだまだあるので、これからも購入して頂けましたら幸いです!

また、“室町将軍展” にも未見の国宝が1件出品されていました。
それは、《太刀〈銘康次/〉》 (ジャンル:工芸品)。




織田信長から将軍の座を追われた室町幕府15代将軍足利義昭が、
その力を借りようと、薩摩国の島津義久に贈ったと伝えられている刀です。
所蔵しているのは、岐阜県高山市にある光ミュージアム。
まだ光ミュージアムを訪れたことはないですが、
マヤ文明のピラミッドをモチーフにしたという外観は、かなりのインパクトがあります。
ちなみに、母体は、新興宗教系とのこと。
・・・・・なんか納得です。

さてさて、九博では無事に2件の国宝の刀を目にすることが出来たわけですが。
国宝ハンターながらも、国宝の刀よりも、その後、文化交流展示室で目にした刀、
《銘 九州肥後同田貫上野介》 のほうに、思わず目が釘付けとなってしまいました。




国宝にも重要文化財にも指定されていないただの刀 (?) なのですが・・・




キャプションの一部にご注目ください!




とんでもないビッグネームからの寄贈品でした。
王さんがこの刀を振り回すときは、やはり1本足だったのでしょうか?


さてさて、先日は滋賀県へ。
MIHO MUSEUMへと行ってきました。




こちらも、光ミュージアムと同様、新興宗教系のミュージアム。
朝一で訪れたのですが、信者さんと思われる人たちが総出で草むしりをしていました。
その光景は、どこか 『トリック』 を彷彿とさせるものがあります。。。




その脇を何も見なかったような顔でススーッと通り、
MIHO MUSEUM名物 (?) の謎の銀色のトンネルを抜けて・・・




無骨なワイヤーが特徴的な謎の巨大な橋を渡り・・・




ほぼ無音の謎の乗り物 (もしかしたら未来の乗り物?) とすれ違い・・・




桃源郷をモチーフにしたという美術館の建物に到着しました。




ちなみに、美術館の中からは周囲の森が一望できます。
その中でひときわ目立っているのが、謎の建造物。




あちらは、美術館の分館とかではなく、教団本部の建物とのこと。
きっと、あの建物の中に、
ビッグマザー的な人物がいらっしゃるのでしょうね。。。


と、それはさておき。
MIHO MUSEUMで開催されていたのは、“紫香楽宮と甲賀の神仏” という展覧会。




聖武天皇によって信楽に造営されるも、
短命のうちに終わった紫香楽宮 (しがらきのみや) にスポットを当てた展覧会です。
こちらでは、常明寺の所蔵する 《大般若経》 (ジャンル:書跡・典籍)をハンティング。
ゲットするやいなや、そそくさとMIHO MUSEUMを後にしました。

そして、その足で京都に渡り、京都国立博物館へ。




こちらでは、開催中の特別企画 “京博寄託の名宝 ─美を守り、美を伝える─” を鑑賞しました。
36件もの国宝が大盤振る舞いされていましたが、そのうち35件はハンティング済。
我ながら、一体どれだけの国宝を観ているというのか。
未見だったのは、知恩院から寄託されている 《菩薩処胎経》 (ジャンル:書跡・典籍) です。
知恩院の公式HPにある説明によれば、
“釈迦の入涅槃の前後を題材とし、母胎内に於いて10ヶ月間説法をするという経典です” とのこと。
母胎内?そこからどうやって説教を??
・・・・・ちょっと何言ってるかよくわかりませんが、
“世界最古の伝世写経といわれています” とあるので、大変貴重なものなのでしょう。
ちなみに、読めないながらも、経典に目を通してみたところ、こんな記述を発見しました。

「上上上中上下中上中中中下下上下中下下上」

何かの隠しコマンドでしょうか・・・・・??


今現在の国宝ハンティング数 1014/1120 (1119改め)




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長く生きる。”DNA”を繋ぐ50脚の椅子

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2019年4月にオープンした無印良品 銀座店。




あの無印良品の “世界最大の旗艦店” であり、
日本初の無印良品のホテル 「MUJI HOTEL GINZA」 や、
無印良品のレストラン 「MUJI Diner」 があることでも話題の施設です。
さて、その6階にあるのが、ATELIER MUJI GINZA
ギャラリーやライブラリー、サロンなどを複合したデザイン文化の発信基地です。

そんなATELIER MUJI GINZAのGallery1では、
現在、“長く生きる。”DNA”を繋ぐ50脚の椅子” という展覧会が開催中。
無印良品らしい実にシンプルな展示スペースに、
50脚のいわゆる名作椅子がズラリとディスプレイされていました。




その50脚の中には、マルセル・ブロイヤーの 《クラブチェアB3》 や、




アルヴァ・アアルトの 《アームチェア パイミオ》




ヴェルナー・パントンの 《パントン・チェア》 といった、




椅子好きにはたまらないレジェンド椅子が数多く含まれています。
実は隠れ椅子好きな僕。
この夢のような光景に思わず大興奮してしまいました!
しかも、実際に座っていい椅子も用意されています。




なんと素晴らしい展覧会なのでしょう!
これほどまでに椅子好きにとって理想的な展覧会を、
今日の今日までノーチェック (=無印) だったことが悔やまれました。
星


さてさて、こちらの展覧会は、
ただ名作椅子を並べただけの内容ではありません。
詳しくは、こちらの冊子に記載されているのですが。




160年前に発表されたとある名作椅子から、現代における名作椅子まで。
その系譜を辿ることが出来る展覧会となっています。
起点となるのが、こちらの 《No.14》 (写真左)




曲木技術の発明者として知られるミヒャエル・トーネットの傑作です。
制作されたのは、1859年。今年で、なんと160年目!
しかし、まったくデザインが古びていません。
なお、その隣に展示されていたのは、曲木の限界に挑んだという一脚。
脚のうちの1本が、ぐにゃりと結ばれています。
二度見必至。ウソみたいな椅子でした。

さてさて、そんな 《No.14》 のさらなる派生形が、こちら。




その名も、《No.14 1/2》 です。
特徴的なのは、その脚の部分。




なぜ、このような形をしているのかといえば、
和式の部屋に置く際に、畳を傷つけないようにとのこと。なるほど。
《No.14》は、和室文化の人にも愛されていたのですね。


続いて、革新的な椅子として紹介されていたのは、
オランダの建築家マルト・スタムによって作られた 《S33》 でした。
4本脚ではなく、座面の片側だけで支える椅子 (=カンティレバーチェア) です。




そのスタムが発表したカンティレバーチェアを、
近代建築の三大巨匠の一人ミース・ファン・デル・ローエが目を付け、より洗練させました。




カンティレバーチェアといえば、ミースのイメージが強かったですが。
彼が発明したわけではなかったのですね。
新たなスタイルが生まれたら、すぐに誰かがアップデートする。
椅子のデザインにおける椅子取りゲームは、なかなかシビアなものがあります。


また、今回紹介されていた数々の椅子の中で、
特に印象的だったのは、カスティリニオーニ兄弟が手がけた 《メッツアドロ》 です。




こちらは、なんと既成のトラクターの座面を利用したもの。
いうなれば、レディメイド的な発想で生み出されたプロダクトです。
オブジェとしてはユニークですが、座り心地にはそこまで期待できなさそう。
トラクターを日頃使用している農家の方は、間違いなく普段使いしたくない椅子でしょう。

それから、独創的な造形を得意とする建築家フランク・ゲーリー、
彼が制作した椅子 《クロスチェック・チェア》 が、建築に負けず劣らず独創的でした。




リボン状のホワイトメープルのベニヤを編んで、椅子の構造を成立させているのだとか。
なお、ビスは一切使われていないそうです。
何がどうなって、どうなっているのか・・・??
ちょっとした手品を見せられているような。
実に不思議な椅子でした。


ちなみに。
全50脚の椅子の中には、もちろん (?) 無印良品の椅子もありました。




160年の歴史が辿ってきた先に、無印良品がある。
そう考えると、無印良品が超一流ブランドのように思えてきました。




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親と子のギャラリー 日本のよろい!

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この夏、東京国立博物館では、ファミリー向け企画として、
“親と子のギャラリー 日本のよろい!” が開催されています。




こちらは、タイトルずばり 「日本のよろい」 をテーマにした展示です。
武士の武器である刀剣をテーマにした展覧会は、たびたび開催されています。
しかし、それに比べて、武士の防具である鎧にフォーカスした展覧会は、ほぼ開催されていません。
よくよく考えてみたら、「日本のよろい」 に関して、ほぼ何も知らない気がしてきました。。。
その予感は展示の冒頭から的中することとなります。




まず、一口に鎧と言っても、
大鎧、胴丸、腹巻、当世具足の4種類があるとのこと (←知りませんでした!)。
写真に写っているのは、《金小札紅糸中白威腹巻》 という腹巻。
鎌倉時代に登場したそうで、歩いて戦う武士が着る鎧なのだそうです (←知りませんでした!)。
なお、重さは10~15㎏ほど。
刀から身を守るには、それくらいの防御力が必要なのですね。

ちなみに。
今回の展示は、子どもにもわかりやすい工夫が随所に。
キャプションも、子ども仕様となっています。




《金小札紅糸中白威腹巻》 のことを、
「金・紅・白のデラックスなよろい」 と表記していたのが、なんとも微笑ましかったです。


ところで、これらの鎧はどのように作られているのでしょうか?
現代だったら、型を取って金属を流し込めば、それっぽいものが作れそうな気がしますが。
鎧は、小札 (こざね) と呼ばれる牛皮ないしは鉄製の小さなパーツを組み合わせて作るのだそう。
1つの鎧に2000~3000枚の小札が使われることもあるそうです。




まず小札を組み合わせ、札板なるものを作り、




それを紐で上下に繋ぎ合わせていくことで、鎧の基本部分が完成します。




そこに、首を守る喉輪やら肩を守る大袖やらをジョイントし、




最後に金物と呼ばれる諸々のパーツを取り付けていくのだそう。





鎧を作るのが、こんなにも手間暇がかかるものだったとは。
しかも、手間暇がかかるからといって、
「小札、2、3個無くてもよくね?」 とか、「ここ紐止めなくてもいっか」 とか、
命を守るものゆえに、適当に作っていいわけがありません。
鎧職人の頑張りに、兜を脱ぐ思いです。
ただただ鎧職人へのリスペクトが芽生える展覧会でした。
星


さてさて、展示室には、腹巻の他に、
安土桃山時代に登場した当世具足も展示されています。




当世具足の 「当世」 とは 「今風」 の意。
「具足」 は 「具 (そな) わり足りる」 という意、
つまり、トータルコーディネートということです。
籠手や手甲、臑当なども加わり、まさに全身装備状態です。
ちなみに、背中には旗を立てるための部品も付いているのだとか。
鎌倉時代の武士もビックリでしょう。

そんな当世具足の装備の中で、一番気に目を惹いたのが、半首 (はっぷり)
顔を守るパーツです。
当世具足に組み込まれている時は、さして気にならなかったのですが。
こうして、単体で展示されると・・・




どことなくマーベル・コミック感がありました。
戦国時代の武士が、こんなマスクを顔に付けていただなんて。
なお、こちらの半首は・・・




どことなくジョジョ感。
新手のスタンドのようです。


さて、“日本のよろい!” の会場は1フロアのみのため、あっと言う間に観終わってしまいますが。
本館の他のフロアにも鎧が展示されているので、そちらと併せて楽しむのがベターです。





中でも印象的だったのが、青梅にある武蔵御岳神社に伝わる国宝の赤糸威鎧の模造。
模造とはいえ、平安時代に制作された現品が忠実に再現されています。




実は、かつて武蔵御岳神社で、実物を目にしているのですが、
やはり色が褪せてしまっているため、そこまで大きな感動は湧きおこらず。
「へ~」 くらいにしか感じませんでした。
当時の姿は、こんなにも美しかったのですね!
あまりに美しいため、斬り付けてはならないような。
そんな精神的な防御力も兼ね備えている気がします。
ちなみに、ググっと近づいて見てみると、柄の獅子が思いがけずユルかわでした。




いしいひさいちを彷彿とさせるタッチです。




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「ちひろさんの子どもたち」 谷川俊太郎×トラフ建築設計事務所

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昨年2018年は、いわさきちひろ生誕100年の節目の年。
それを記念して、東京と安曇野、両方のちひろ美術館では1年を通じて、
「Life」をテーマに7人 (組) の作家とコラボする展覧会シリーズ “Life展” が開催されていました。
東京で開催された全部で4つの “Life展” は、コンプリートしましたが。
さすがに、都内に住んでいる身としては、
安曇野での “Life展” は、そのすべてに足を運ぶことが出来ませんでした。

「あぁ、安曇野での “Life展” も面白そうだったのになァ」

そう悔やんでいる方は、きっと僕だけでないはず。
そんな皆さまに耳寄りなお知らせです。
現在、ちひろ美術館・東京で開催されているのは、
“「ちひろさんの子どもたち」 谷川俊太郎×トラフ建築設計事務所” という展覧会。
安曇野での “Life展” で、ちひろさんとコラボした詩人の谷川俊太郎さんと、
鈴野浩一さんと禿真哉さんによる建築ユニット、トラフ建築設計事務所とが、
ちひろ美術館・東京にて、ちひろさんと再びコラボを果たした展覧会です。


まず最初の展示室で展開されていたのは、ちひろさんと谷川さんのコラボ。


(注:展覧会は一部を除いて撮影不可。記事に使用している写真は、特別に許可を得て撮影したものです)


ちひろさんが子どもを描いた絵の脇に、
谷川さんが子どもに向けて書いた詩や、子どもの目線で書いた詩が添えられています。
それぞれは独立して制作されているはずなのですが、不思議と共鳴し合っていました。
まるで、ちひろさんの絵が伝えようとしていることを、谷川さんが言語化しているような。
まるで、谷川さんが誌で伝えようとしていることを、ちひろさんがビジュアル化しているような。
絵と詩。もともと1つの作品であったかのような印象すら受けました。

ちなみに、ここまでフィーリングが合う2人。
ちひろさんが存命の時にも、実際にコラボしたことがあったそうです。
それは、1973年5月から翌年4月にかけて、
京都新聞をはじめとする地方新聞に掲載された全12編からなる 「みち」 という詩。




当初は、ちひろさんが12編すべてを担当する予定だったそうですが、
体調を崩してしまったため、やむなく第7回からは別の画家と交代することに。
きっと 「みち」 半ばでの降板だったのでしょう。




第6回の絵は、ちひろさんの手によるものとは思えないほど、
切なく寂しく、どこかシュールなスタイルとなっていました。
あの人は二度と戻ってくることはないだろう。
そんなことを予感させる一枚です。


一方、トラフ建築設計事務所とのコラボと言いますと。
トラフ建築設計事務所といえば、やはり 《空気の器》
誰でも一度はミュージアムショップで目にしたことがあるであろう、
あのアイテムが館内のいたるところに、プカプカと浮かんでいました。





また、トラフ建築設計事務所は、
ちひろさんの絵には、帽子をかぶった子どもが多く登場することに着目。




そこから着想し、大きな麦わら帽子の形をした 「子どものへや」 を設計しました。




なお、「子どものへや」 とはありますが、大人が入るのもOK。




さらに、机の上にあるワークシートを、大人がチャレンジするのもOKです。
童心に帰って、お楽しみくださいませ。




ちなみに、展示室の一角では、谷川の新作詩でも発表されていました。
その名も、「ぼうしさん」 です。
こちらは、トラフ建築設計事務所が選んだちひろさんの作品から生まれた詩。
つまり、3者によるコラボ作品です。




3人のコラボレーションというと、
たいていは誰か一人が、その輪をかき乱すものですが。
ちひろさん×谷川さん×トラフのコラボは、上手いことバランスが取れていました。
おそらく、3者ともが誰も傷つけない優しいアーテイストだからなのでしょう。
それぞれが、それぞれの魅力を引き立て合っていました。

とにもかくにも、3者の “優しさ” が際立っていた展覧会。
いい意味で刺激は少なく、ほっこりと気分がほぐれる展覧会でした。
こんなにも優しい気持ちになれる展覧会は、そうはありません。
バファリンの半分は優しさでできているそうですが、
この展覧会にいたっては、全部が優しさでできています。




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小早川秋聲―無限のひろがりと寂けさと―

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ここ近年、展覧会等で作品が展示される機会が増え、
日本美術ファンの間での人気が急上昇中の画家・渡辺省亭。
彼がブレイクするそのきっかけとなったのが、
2年前に開催された “SEITEI~渡辺省亭 蘇る!孤高の神絵師” でした。

そんな省亭ブームの火付け役である加島美術が、
この秋、満を持して開催するのが、“小早川秋聲―無限のひろがりと寂けさと―” という展覧会。




知る人ぞ知る鳥取県ゆかりの日本画家・小早川秋聲 (しゅうせい) の関東圏では初となる回顧展です。
この展覧会を機に、小早川秋聲の知名度が全国区になるのは、ほぼ濃厚。
日本美術ファンならば、是非ともチェックしておきたいところです。
星星


まずは簡単にプロフィールの紹介から。
小早川秋聲 (1885~1974) は、大正から昭和中期にかけて活動した日本画家。
鳥取県にあるお寺の住職の長男として生まれました。
しかし、幼き頃より、「おやつはいらないから紙をくれ」 とねだるほどに、絵が好きだったそう。
結果、画家の道へと進むこととなりました。
さて、70年にも及ぶ彼の画業の中で、
もっとも特筆すべき点は、戦争画を数多く制作していること。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


実は、小早川秋聲は、日本画家として唯一、
従軍画家として中国や東南アジアなどの戦地に赴いた人物なのです。
そんな彼の代表作として知られているのが、《國之楯》




陸軍からの依頼で制作された作品ながらも、
厭戦感を引き起こす可能性があるとの理由で、
完成後に受取拒否されてしまったたというエピソードを持つ異色の戦争画です。
当初は、横たわる日本兵の遺体の頭部には金色の円光が、
背後には桜の花びらが描かれていたそうですが、のちに、秋聲自身が黒く塗りつぶしたのだとか。
(よく見ると、うっすらその痕跡は残っていましたが)

何度か画集や美術系のテレビ番組で、この作品を目にしていたことはありますが、
秋聲の作品が関東初公開される今展のおかげで、初めて実物と対面することができました。
目にした瞬間、死というものを強烈に意識させられ、思わず胸がつぶれてしまいそうに。
これまでにも遺体が描かれた絵画は、ダヴィッドの 《マラーの死》 や、
同じく従軍画家であった藤田嗣治の《アッツ島玉砕》 をはじめ、いろいろと目にしていますが。
それらに描かれている遺体は、あくまで一つの物体のようにしか感じられませんでした。
しかし、《國之楯》 に描かれている遺体からは、
遺体であるにも関わらず、実に “生々しい” 印象を受けました。
きっとつい先ほどまで、彼の心臓は動いていたのでしょう。
きっとつい先ほどまで、彼が呼吸するたびに胸が上下していたのでしょう。

月並みな感想ではありますが、《國之楯》 と向き合うと、
戦争がいかに悲惨で、いかに愚かなものなのかを、強く実感させられます。
すべての人々、特にあの国会議員に観て頂きたい一枚です。


さてさて、従軍画家として戦争画も多く残している秋聲ですが、
四条派の流れを汲む日本画家として、京都画壇の画家らしい品格漂う作品も数多く残しています。




その中でも特に印象的だったのは、《細雨䔥ゝ》 という一枚です。




薄暗い夜の情景にポツンと一匹の蛍。
《國之楯》 とはまた違ったテイストで、寂けさを感じる作品でした。
この絵の前に立った瞬間、心にスーッと秋の風が吹いたような (←おそらく気のせい)。
森山直太朗の 「♪夏の~終~わり~」 という歌声が聞こえてきたような (←絶対に気のせい)。


また、若き頃から、経済的に恵まれていたという秋聲。
フランスやイタリア、ドイツ、イギリス、オランダ、
はては、インドにエジプトと、当時の人としては珍しく、頻繁に海外へ旅立っていたそうです。
そんなナオト・インティライミばりに、
ワールドトラベラーな秋聲ならではの作品も紹介されていました。




ちなみに、今回の出展作の中で最も大きなのが、《薫風》 という作品です。




実は、こちらは二曲一双の作品。
写真に写っているのは、その右隻に当たります。
加島美術のスペースの関係上、両方を同時に展示することは叶わなかったそう。
9月9日から始まる後期で、左隻と入れ替わるそうです。
コンプリートするには、前後期ともに訪れなくてはなりません。

会期は2週間と短め。
“わー・・・行きそびれてしまった・・・”
そんな寂しい想いをしませぬように。




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特別編 中野区東中野でルーブル

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ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール…と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??

気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴く!!



通常は、美術界の巨匠と同じ名前のお店を訪れる 『あなたの街の巨匠たち』 ですが、
今回は、その特別編として、あの “美の殿堂” と同じ名前を持つお店を訪れてきました。
果たして、やはり内部には、たくさんの美があるのでしょうか。


やってきたのは、JR東中野駅。
その北口から徒歩1分ほどのところにお目当てのお店はあります。




その名も、ルーブル。




フランスの本家ルーブル美術館には、
絵画や彫刻、工芸品、古代エジプト美術など、全部で8つの部門がありますが。
東中野のルーブルも負けてはいません。
洋菓子、パン、喫茶の3部門 (?) があるようです。

ちなみに、店の表には、レトロなディスプレイケースが。




アイスクリームやパイアラモードの食品サンプルにいたっては・・・・・・・





もはや食品にも見えないという。。。
レトロを通り越して、古美術品感さえ漂っていました。
さすがルーブル。

では、いよいよ店内へ。
ショーケースの中には、ケーキがズラリと並んでいます。




見た目も古き良き昭和テイストなら、お値段も昭和価格!
なんだかんだで、こういうシンプルなショートケーキが一番美味しいんでしょうね。

そして、ケーキの向かい側には、パンが並べられています。





それらの自家製パンに交じって・・・




なぜか市販のパンも販売されていました。
『ダ・ヴィンチ・コード』 に匹敵するくらいの謎です。


さらに店の奥へと進むと、そこには喫茶スペースがありました。
思ってた以上に、ゆったりとしたスペース。
席も30席ほどあるようです。




ルーブル美術館は、とにかく広いと聞きますが。
東中野のルーブルも、意外と広かったです。

ちなみに。
テーブル板はキラキラと光る貝模様。




床はオバチャンが着てそうなブラウスの柄を思わせるオリエンタル模様。




天井を見上げれば、これまで一度も目にしたことがない照明器具。




それらが美的かどうかは、さておきまして、
内装の隅々まで、こだわりがあるのは確実なようです。
なお、美の殿堂と同じ名前なだけに、
やはり店内の壁には、絵が数点ほど飾ってありました。
それは、ルノワールであったり。




ルノワールを師に持つ梅原龍三郎であったり。




フランスのルーブル美術館でお馴染みの名画、
《モナ・リザ》《民衆を導く自由の女神》 は飾らない。
そんなところに、東中野のルーブルの矜持を見た気がしました。


さて、そろそろ何か頼みましょう。
卓上のメニュー表を何気なく手に取ると、
表にも裏にもメニューがビッチリと描かれていました。




これだけあると、一体何を頼めばよいのやら。。。

いろいろと悩んだ挙句、注文したのは、
店の表のディスプレイケースを見た時から気になっていた謎のメニュー・・・




セレナーデ。
音楽のセレナーデは知っていますが、食べ物のセレナーデって・・・??
食品サンプルもないので、ビジュアルがまったく想像つきません。
何が出てくるのか不安はいっぱいですが、
おそるおそる、「セレナーデ、1つください!」 とオーダーしてみました。
こんな謎のフレーズを口にするのは、今回が人生初にして、おそらく最後でしょう。

5分ほど待っていると、いよいよセレナーデが運ばれてきました。
こちらが、そのセレナーデです。




・・・・・・・・・・・・・・・。

何がどう、セレナーデなのか。
セレナーデという軽やかな名前とは裏腹に、ヘビーなビジュアルです。
正面からのビジュアルもインパクトがありますが、
反対側のビジュアルは、それに輪をかけてインパクトがありました。




パフェグラスから溢れたストロベリーアイスが、まるで断崖絶壁のよう。
一体どういう盛り付け方なのでしょう。。。

ふとが付けば、店内にいた他のお客さんが、
「あいつ、正気か?」という目でこっちを見ています。
そんな羞恥と闘いながら、まずはバニラアイスを一口。




「あ、甘い・・・」

甘い物は好きなのですが、量は食べられない僕。
一つのカップアイスを、3日に分けてチマチマ食べるような男です。
正直、食べきれる自信が全くありません。

しかし、もし残してしまったら、
インスタ映えする (?) 写真を撮るためだけに注文したヤツと思われてしまうかもしれません。
そして、甲子園の近くの名物食堂が、カツ丼大をやめてしまったように、
東中野のルーブルのメニューから、セレナーデが消えてしまうかもしれません。

それは何が何でも避けねば!

心を無にして、バニラアイスを口に運び続けました。




明治エッセルスーパーカップ1個分以上は完食。
しかし、まだまだ、ストロベリーアイスの壁が残っています。
しかも、ホイップクリームのおかげで、甘みは倍増。
かなりの強敵です。
しかし、途中でフルーツを挟み、リフレッシュさせながら、どうにかこうにか攻略しました。




あとはパフェグラスの中身のみ。
たいていのパフェは、容器の中にはコーンフレーク的なものが入っています。
それならイケるだろうと思いきや・・・・・




パフェグラスの中にも、
ぎっしりバニラアイスとストロベリーアイスが詰まっていました。

何なんだよ、セレナーデって (泣)!!

最後の力を振り絞って、アイスを食べ進めました。
そして、なんとか完食。




国宝ハンターだとか、お茶漬け生活だとか、ダイエット企画だとか、
これまで、このブログで過酷なチャレンジに、いろいろと挑んできましたが。
精神的には、セレナーデ完食が断トツでキツかったです。


ルーブル美術館を訪れた人は、
そのあまりの美術品の多さに、お腹いっぱいになるのだそう。
フランスまで行かずとも、東中野のルーブルでも、十分お腹いっぱいになれました。


<お店情報>
ルーブル
住所:東京都中野区東中野4-1-8 上原ビル1F
定休日:木曜
営業時間:9:00〜22:00
 



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生誕250年記念 歌川豊国 ―写楽を超えた男

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この秋、太田記念美術館では、歌川派にちなんだ展覧会を3回連続で特集する・・・




『秋の歌川派フェスタ 豊国から国芳、芳年へ』 が開催されています。
3つの展覧会すべてのチケットを集めると、
なんとオリジナルグッズがプレゼントされるのだそう。
何が貰えるのか、今から楽しみですね。

そんな 『秋の歌川派フェスタ』 の第一弾を飾るのが、
9月3日よりスタートした “生誕250年記念 歌川豊国 ―写楽を超えた男” という展覧会。
今年で生誕250周年を迎える歌川豊国 (1769~1825) を主役に据えた展覧会です。
常に第一線で活躍し、かつ、多くの弟子を育成した歌川豊国。
歌川派を “浮世絵界の最大派閥” へと盛り立てた立役者でありながらも、
これまでは 「写楽と同時代に役者絵を描いていた人」 や 「あの国芳や国貞の師匠」 など、
バーターのような扱いで紹介されることが多かった、ちょっと可哀想な浮世絵師です。
しかし、今回は満を持しての歌川豊国の大回顧展。
太田記念美術館が所蔵する豊国作品を中心に、
日本各地の博物館美術館所蔵のものや貴重な個人蔵の豊国作品が約140点も集結しています。
星星


ちなみに、こちらが豊国本人↓


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


アゴは、ややいかつめですが、目元は、意外と涼しげ。
『下町ロケット』 の吉川晃司に、どことなく似ている気がします。
なお、豊国は41歳の時に、10代の年下妻と結婚したとのこと。
なるほど。そんな顔をしています。


さてさて、豊国といえば、やはり役者絵。
約10か月で人気が失速してしまった写楽とは対照的に、
豊国は役者絵のジャンルで人気を博し、トップランナーとして君臨し続けました。




そんな豊国の役者の数々を眺めていて、
今回改めて実感させられたのが、役者の表情の豊かさ。





中には、表情豊かというレベルを通り越して、
もはや顔芸の域にまで達している作品もちらほら。
こちらの 《七代目片岡仁左衛門の伊予の太郎秀純》 なんて・・・




ただのワッキーです (←?)。

ちなみに。
豊国の顔芸がもっとも発揮されているのが、
身振絵 (介科絵) と呼ばれる戯画の一ジャンルです。




描かれているのは、動物モノマネをする人物。
写真左の男は、完全に猫になり切っています。
コスチュームや仕草は、まだイイとしても・・・・・・・




その顔やめろwww
「なんちゅう顔しとんねん!」
思わず関西弁でツッコみたくなる一枚でした。


さてさて、今回の歌川豊国展では、
彼の役者絵だけでなく、版本挿絵や、




肉筆画などにもスポットが当てられています。




中でも、役者絵と同じくらいにスポットが当てられていたのが、美人画。




同時代の美人画の名手・喜多川歌麿の影に隠れがちですが。
実は、豊国は美人画のジャンルでも人気を博していたのだそう。
艷やかな女性を描いた歌麿とは違い、
健康的でナチュラルな印象の女性を多く描いたようです。




とは言え、初期の頃は、あまり美人画が得意ではなかった模様。
初期の作である 《愛宕山夏景色》 に関しては・・・





登場人物が、ほぼ同じ顔でした。
しかも、眼鏡を外した阿佐ヶ谷姉妹の片方みたいな顔をしています。
美人・・・なのか??




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没後90年記念 岸田劉生展

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ペール北山に不染鉄に、吉村芳生に、
最近では、ルート・ブリュックやメスキータと、
東京ステーションギャラリーはこれまで、知る人ぞ知る芸術家にスポットを当ててきました。
そんな東京ステーションギャラリーが、この秋、開催するのは・・・




“没後90年記念 岸田劉生展” という展覧会。
こちらは、言わずと知れた日本近代洋画界の巨匠・岸田劉生、
その没後90周年を記念して開催されるもので、北は北海道から南は九州まで、
日本各地より劉生の名品約150点が集結する展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


その中には、劉生の代名詞ともいうべき、娘の麗子を描いた肖像画や、


《麗子肖像(麗子五歳之像)》 1918年10月8日 東京国立近代美術館


重要文化財に指定された風景画の傑作 《道路と土手と塀(切通之写生)》 も含まれています。


重要文化財 《道路と土手と塀(切通之写生)》 1915年11月5日 東京国立近代美術館


良くも悪くも、東京ステーションギャラリー “らしさ” はなく、
いわゆるオーソドックスな、いわゆる王道の岸田劉生の回顧展でした。
「東京ステーションギャラリーが、王道の展覧会をやるわけない」 と、
勝手に思い込んでいただけに、勝手にちょっと裏切られた気がしてしまいましたが (笑)
展覧会としては、普通に・・・いや、普通以上に見ごたえがありました。
間違いなく、岸田劉生の展覧会の決定版です!
星星


さてさて、作品が放つ迫真性にももちろん惹きつけられましたが、
それ以上に惹きつけられたのは、展覧会の随所で紹介されている劉生のエピソードでした。
なんと人間味溢れる人だったのでしょう。
若い頃はゴッホやセザンヌにかぶれていたり、貧乏で妻に苦労を強いたり、
肖像画のモデルを友人たちに強いすぎて、「首狩り劉生」 呼ばわりされたり。
数々のイタい・・・もとい、人間臭いエピソードが紹介されていました。
ちなみに、34歳になった頃からは、茶屋遊びにハマり、生活と創作を疎かにしたとのこと。
「茶屋遊び」 と表記すると風流な感じはしますが、
現代風に言い換えるなら、キャバクラ通いのようなもの。
芸術家なので、生活に難があるのはまだしも (←?)、創作活動にまで支障をきたすとは。。。
もし、今も生きていたら、確実に 『しくじり先生』 の候補です。

また、親バカゆえ (?) に、麗子を何枚も描いている劉生ですが、




若き日には、自画像を何枚も何枚も描いていました。
しかし、そのほとんどが同じ表情、同じ向き、同じポーズ、同じ服。




バリエーションが無いにもほどがあります。
このショットによほど自信があったのでしょうか?
はたまた、「何をやってもキ●タク」 状態なのでしょうか?
こちらの展示壁にいたっては、右から岸田劉生、岸田劉生・・・




ひとつ飛ばして岸田劉生、な状態となっていました。




ほぼほぼ変化は感じられませんが。
強いていうなら、最後に登場した劉生には、
タモさんばりに、「髪切った?」 とだけ言ってやりたいです。
多少こざっぱりしていました。


さてさて、今回出展されていた作品の中で、他にも印象的だったものをご紹介。
まずは、修復作業が完了し、発表当時に近い色や状態を取り戻したばかりのこちらの作品です。


《壺の上に林檎が載って在る》 1916年11月3日 東京国立近代美術館


その名も、《壺の上に林檎が載って在る》
それ以上でもそれ以下でもない、そのまんまのタイトルです。
とりあえず、「なぜ載せたし?!」 と問いかけたくはなります。

また、《入澤達吉氏肖像》 (写真右) も印象的な一枚でした。




右手に似合わない花を持たされているこちらの人物は、
日本内科学会会長、東京帝国大学医学部部長を歴任した実はエラい医学博士なのだそう。
しかし、この人物に対し、劉生は、
「熱心にモデルしないから、思ふ様にかけない」 と愚痴をこぼしているのだとか。
確かに、よく見ると、右目がとんでもないことになっていました。
左目は二重なのに、右目は五重!
医学的にどうなんだ?!

それから、やはり外せないのが、麗子像の数々。
中でも一番印象に残っているのは、《麗子八歳洋装之図》 です。




和装のイメージが強い麗子ですが、
この作品では、AKB48みたいな衣装を着ていました。
表情は完全に無。
塩対応です。


ちなみに。
ちょっと不気味な印象を受ける麗子ですが、
お土産コーナーにでは、しりあがり寿さんの手によって、可愛いキャラに大変身。




ボーっとしていたら、あのキャラと見間違えてしまいそうな麗子グッズが多数販売されています。
こちらも要チェックですね。




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椅子の神様 宮本茂紀の仕事

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サッカーの神様、ロックの神様、ロマンスの神様、トイレの神様…etc
世の中には、さまざまな神様が存在しています。
ちなみに、僕は大学生時代にレンタルビデオのGEOでバイトをしていたのですが、
返却されたビデオを棚に戻すのが得意だったため、「返却の神様」 というあだ名がついていました。
・・・・・・って、それはどうでもいいですね。

本日紹介するのは、「椅子の神様」 にスポットを当てた展覧会、
京橋のLIXILギャラリーで開催中の “椅子の神様 宮本茂紀の仕事” です。




15歳で椅子張り職人に弟子入りし、
82歳を迎えた今もなお現役の椅子張り職人として第一線で活動を続ける宮本茂紀さん。
過去には、迎賓館や鹿鳴館に残された椅子の修復も行っているほどの人物です。
鹿鳴館で使用され、現在は、明治村で展示されている、
こちらの 《竹塗蒔絵小椅子》 も、宮本さんが修復したものなのだそう。




一見すると、竹製のように思えますが・・・・・




実は、なんと木製。
わざわざ木に節を作って竹のように見せ、
なおかつ、その上に漆を塗り、蒔絵が施されているそうです。
さすが鹿鳴館仕様!
実にゴージャスな椅子です。
ところが、この椅子が発見された時、蒔絵部分はペンキで覆われていたのだとか。
おそらく、その犯人 (?) は、華族会館 (旧鹿鳴館) を接収したGHQであろうとのこと。
何はともあれ、明治時代から現代まで、
椅子を知り尽くした宮本さんだからこそ、もとの姿に戻せたのだそうです。

そんな椅子に精通した宮本さんのスゴさが、さらにわかるのがこちらの展示。




3脚ともほぼ同じように見えますが、
実は左から明治、昭和、平成と、時代ごとのクッションの構造を再現したものです。




なお、会場では実際に座って、
3つの椅子の座り心地を比べられるようになっています。
見た目はほぼ一緒ですが、座り心地はまったくの別物でした。
やはり馬の毛を詰めた明治の椅子よりも、
ウレタンフォームが使われている平成の椅子のほうが座りやすかったです。
ただ、高級感という意味では、明治の椅子に軍配。
同じ形でも、内部の構造でこうも変わるのですね。
星


さてさて、椅子張り職人である宮本さんには、もう一つの顔があります。
それは、日本初の家具モデラーとしての顔。
家具モデラーとは、メーカーやデザイナー、建築家が、
椅子を制作する際に、彼らと職人との間を繋ぎ、製品化を支えるお仕事です。

こちらは、日本を代表するグラフィックデザイナー・佐藤卓さんがデザインした 《SPRING》




見るからに座り心地の良さそうなこちらのソファ。
その中身は、このようになっています。




素材の選定やコイルの配置、コイルの巻数などを考えるのが宮本さんのお仕事。
まさに、陰に隠れた仕事です。
ちなみに、「日本が世界に誇る木組みの技術を最大限に活かしたい」 という、
佐藤さんのリクエストに応えて、木部の接合には一つも釘が使われていないのだとか。
見えない部分のこだわりがハンパではありません。


さらに、こちらは、新国立競技場を作るはずだった建築家、
ザハ・ハディドが札幌市にかつてあったレストランのために試作した椅子 《FLUTTY CHAIR》




「北海道→ジンギスカン→羊」 という連想なのかはわかりませんが。
羊毛が用いられた独創的な椅子です。
ザハのデザインを忠実に再現すると、背面の金属部分で、怪我をする恐れがあったのだそう。
そこで、“椅子の神様” 宮本さんは、




エッジは残しつつも、上から見ると丸く滑らかにして安全性を確保したのだとか。
「神は細部に宿る」 とは、まさにこのことです。


他にも、プロダクトデザイナー梅田正徳さんの桔梗をモチーフにした 《月苑》 や、




つい先日、藤井フミヤ展の会場近くで目にしたばかりのベンチをはじめ、




数多くの椅子に携わっている宮本さん。
「えっ、あの椅子も?えっ、この椅子にも関わっていたの?!」 と驚きの連発。
どうやら、“椅子の神様は遍在する” ようです。


また、修復や開発に携わるだけでなく、自身でも設計する宮本さん。




こちらの 《Mychair》 も宮本さん自らが手掛けた椅子です。




自分の体型に合うサイズを4種から、
木部の樹種を5種から、カバーの布地を10種から選べる椅子なのだとか。
会場に展示されていた 《Mychair》 は、座ることが可能です。
早速、座ってみることに。

「マジ神!」

めちゃめちゃ座り心地が良かったです。
なお、お値段を調べてみたら、Sサイズで、27万4000円~とのこと。
イイ椅子は、やはりお値段もイイですね。


ちなみに。
展覧会のラストには、宮本さんの詳細な年表がパネルで紹介されていました。




その中に、思わず二度見してしまった記述が!




80歳の記念に上空4000メートルからスカイダイビング。

さすが椅子の神様。
肝がすわってます。




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漫才「昔話によく似た話」

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こんばんは。
アートテラーのとに~です。
そして、元吉本興業所属のお笑いコンビ、ツインツインのツッコミの大山敦士です。
2016年に、ツインツインは一応復活したのですが。
僕は僕で、相方のヤス (安田) は社長業と、お互い本業で忙しく、
コンビとしての活動は、思うように出来ていないというのが実情です。
新ネタもいくつか作ってあるのですが、それらも全く発表できておりません。

さてさて、本日は、そんな新ネタのうちの1つに、
アートが少し関係するものがあるので、せっかくなので、ここで披露してみようと思います。
4分ネタなので、ややボリュームがありますが、
お時間に余裕のある時に、お目通し頂ければ幸いです。

それでは、ツインツインの新ネタです。どーぞ。




2人「はいどーもこんにちは。ツインツインです」
安田 (以下、安) 「不思議な話していい?」
大山 (以下、大) 「いきなり何?」
安 「俺、昔、ABCマートでバイトしてたじゃん」
大 「あぁ、してたね」
安 「ある日、コンバースのスニーカーを誤発注しちゃってさ。
  店長にキレられて、その在庫分を路上で売ってこいって言われたことがあったんだよね」
大 「うわー、今だったら、ブラックバイトとか叩かれそうだね。で、売れたの?」
安 「いや、全然。それで、売れ残ったコンバースを持って、
  バイト先に帰ってる途中にさ、道の横にお地蔵さまが並んでたのね」
大 「うん」
安 「その日、雪が降ってて。6体並んだお地蔵さんが、あまりにも寒そうだったからさ・・・」
大 「ちょっとちょっと待って!それって、『笠地蔵』 の話じゃない?」
安 「『笠地蔵』?何それ?」
大 「いや、あの昔話の。教科書とかにも載ってるじゃん」
安 「ごめん。知らないなぁ。だって、俺、帰国子女だから」
大 「あー、そう言えば、小学生の時はメキシコにいたんだっけ。
  そっかそっか、じゃあ、まぁ 『笠地蔵』 知らないか」
安 「話、続けていい?」
大 「あ、どうぞどうぞ」
安 「でね、お地蔵さんが寒そうだったから、持ってたコンバースを履かせてあげたんだよね」
大 「履けるもんなの?!」
安 「ピッタリ履けたよ。
  それで、順々に履かせていったんだけど、最後の1体分のコンバースがちょうど無くてさ」
大 「『笠地蔵』 と展開が一緒じゃん!」
安 「しょうがないから、最後の1体には俺が履いてたリーボックを履かせてあげたんだよね」
大 「まんま 『笠地蔵』 だよ!」
安 「それでさ、その夜に不思議なことがあってね。なんか急に玄関の外が騒がしくなったんだよ」
大 「さっきのお地蔵様がお礼に来たんだよ」
安 「『何だろう?』 と思ってドアを開けたらさ、そこには何と大量の餅があったわけ!」
大 「だろうね!」
安 「でも、そんなにお餅って食べないじゃん?」
大 「えっ?」
安 「てか、誰が持ってきたのかわからない餅なんて食べる気しないじゃん?」
大 「はっ?」
安 「だから、生ゴミの日に全部まとめて捨てたよね」
大 「これ、そういう話だったの?めでたしめでたし、みたいな話じゃないんだ」
安 「いや、めでたくないっしょ。謎の餅を大量廃棄したって話だよ」
大 「『笠地蔵』 だと、ハッピーエンドだったんだけどなぁ」
安 「さっきから何なの?『笠地蔵』、『笠地蔵』 って」
大 「あ、ごめんね。『笠地蔵』 知らなかったんだよね」
安 「あとさ、不思議な話といえばね」
大 「うんうん」
安 「俺が独身だった時の話なんだけど、道歩いてたら、罠にかかった鶴がいてね」
大 「『鶴の恩返し』 じゃん!」
安 「何それ?」
大 「昔話の!」
安 「知らないよ。帰国子女だから」
大 「『鶴の恩返し』 も知らないのかよ」
安 「続けていい?」
大 「まぁ、どうぞ」
安 「とにかく俺はその罠にかかった鶴を助けてあげたわけ」
大 「いや、普通に驚けよ!道に鶴がいるんだから!
  しかも、罠にかかってるだから!何で自然に受け入れられるんだよ」
安 「そしたら、またその夜にさ」
大 「どうせ女の人が来たんだろ?」
安 「おっ、正解!勘が良いなぁ。
  そうそう、チャイムが鳴って玄関開けたら、女の子が立ってたの」
大 「さっきお前が助けた鶴が、女の子に姿を変えて来たんだよ」
安 「そんなわけないじゃん(笑)。鶴が人間に姿を変えるって・・・頭、大丈夫??」
大 「まぁ、冷静に考えたら、そんなわけないか。昔話に引っ張られ過ぎたわ」
安 「で、その鶴田さんって女の子がね」
大 「鶴じゃん!」
安 「その鶴田鶴子さんがね」
大 「ヒント出まくりじゃん!やっぱ鶴だよ!!」
安 「「一晩泊めてください」 っていうのよ」
大 「展開的には、そうなるよね」
安 「でもさ、知らない女の子がいきなり家に来てね。
  しかも、「泊めてください」 って、めちゃくちゃ図々しいじゃん」
大 「確かに」
安 「ちょっと引いちゃったんだけど。
  顔とかスタイルを見たら、まぁギリギリイケる感じだったので、泊めることにしたんだよね」
大 「結局、泊めたんだ。下心丸出しだなぁ」
安 「で、家にあげたら、その女、何て言ってきたと思う?」
大 「何だろ?」
安 「「この部屋を貸してください」 って言って、勝手に部屋に入っちゃったの。マジで図々しくね?」
大 「まぁ、そこだけ切り取ると、確かにね・・・。でも、ほら恩返しに来たんだから」
安 「恩返し?何それ?
  あ、それで、部屋に入ったあと、何て言ったと思う?」
大 「さぁ?」
安 「「機織り機って、どこにありますか?」 って」
大 「そうだよね。それが無いとね」
安 「てかさ、機織り機なんかあるわけないじゃん」
大 「・・・だな。うん」
安 「そしたら、「じゃあ、手編みします」 的なこと言ってたけどね。何のことかよくわかんなかったけど。
  で、最終的に言われたのが、「この部屋は絶対に覗かないでください」 って。
  何様だよ!俺ん家だろ!って話だよ」
大 「で、どうしたの?開けなかったの?」
安 「いや、冷静になって考えてね」
大 「うん」
安 「女の子が一人暮らしの男の家に泊まりに来たってことは、
  まぁ、ある程度、その気があったから来てると思うんだよね」
大 「は?」
安 「だから、部屋を覗かないっていうのは、
  逆に、女の子のプライドを傷つけちゃうんじゃないかなぁ、と思って」
大 「ええっ?まさか・・・」
安 「覗いたよ」
大 「覗くなよ!」
安 「そしたらさ、ビックリしたんだけど・・・」
大 「うん」
安 「部屋の中に鶴がいたんだよ!」
大 「だろうね!!」
安 「とりあえず、窓から逃がしてあげたよね」
大 「覗かなかったら、布とか貰えたのに。昔話知っとけよ」
安 「あっ、それでね。鶴にビックリしすぎて、すっかり忘れてたんだけど。
  あの女、いつの間にかいなくなってたわけ」
大 「今逃げた鶴が、その女だったんだよ!」
安 「慌てて財布とか無くなってないか確認したんだけど、ひとまず盗まれたものは無かったわ」
大 「そうだろ」
安 「知らない人を自分ん家にあげるってのは、怖いよね」
大 「何だよ、その話の終わり方?さっきから、話の着地点が昔話とズレてんだよ」
安 「だから、さっきから昔話、昔話って何なん?」
大 「『鶴の恩返し』 も知らなかったんだっけ」
安 「あと、不思議な話といえば・・・」
大 「まだあんの?」
安 「昔、オノ・ヨーコと付き合ってた時の話なんだけど」
大 「えっ、そうなの?!その時点で、十分不思議だけど!」
安 「2人でドライブしててね。で、その途中に湖が見えてきてね」
大 「うん」
安 「で、車停めて、なんとなく2人でその湖を見に行ったんだよ」
大 「うんうん」
安 「そしたら、そのうち、オノ・ヨーコがジョンの話ばっかしはじめて。ムッとしちゃってさ」
大 「まぁ、元カレの話されるとね」
安 「それがきっかけで口論になって。
  で、つい手が出ちゃってさ、湖のほうに突き飛ばしちゃったんだよね」
大 「オノ・ヨーコを?それはヤバいだろ」
安 「俺もすぐ冷静になって、助けに行こうと思って。
  そしたら、その瞬間、湖から女神みたいなのが出てきてね」
大 「は?!」
安 「「今、この湖にオノ・ヨーコを落としたのは貴方ですか?」 とか聞いてくるわけ」
大 「これ、あれだよね。『金の斧』 の話だよね」
安 「何それ?」
大 「昔話の!てか、イソップ童話だかグリム童話だか!」
安 「知らない。帰国子女だから」
大 「今回は関係ねーよ!海外の昔話だから」
安 「『金の斧』 はわかんないんだけど、話続けていい?」
大 「てか、女神が出てきたことを、何で自然に受け入れてんだよ!
  湖から女神が出てきたって、異常な事態だろ!」
安 「「落したのは貴方ですか?」 って聞かれたから、「はい」 って答えたの。
  そしたら、その女神が今度は、
  「貴方が落したのは、この金のオノ・ヨーコですか?それとも、銀のオノ・ヨーコですか?」
  って質問してきてね」
大 「金のオノ・ヨーコ、って何なんだよ!」
安 「迷わず、金のオノ・ヨーコを選んだよね」
大 「選んじゃうなよ!そこは、普通のオノ・ヨーコを選べよ!
  ・・・・・いや、普通のオノ・ヨーコってのも、よくわかんないけど」
安 「そしたら、「この嘘つき者!」 って女神がキレて、
  そのまま金のオノ・ヨーコと銀のオノ・ヨーコを連れて湖に戻って行っちゃったんだよね」
大 「だから、昔話ちゃんと知っとけよ。
  そしたら、普通のオノ・ヨーコだけじゃなくて、正直者のご褒美として、
  金のオノ・ヨーコと銀のオノ・ヨーコもお前のものになったのに・・・ん?それはそれで困るか」
安 「まぁ、何はともあれ、それ以来、オノ・ヨーコと逢ってなくてさ。大人の失恋だったよね」
大 「これ失恋話だったの?なんだよ、その着地点!全然、頭に入ってこなかったわ。
  てかさ、じゃあ、俺も不思議な話、一つあるんだけど、していい?」
安 「いいよ」
大 「この前、街歩いてたら、黒猫が目の前に現れてね、明らかにおいでおいでしてるのよ」
安 「うん」
大 「それに付いて行こうとしたら・・・」
安 「えっ、ちょっと待って待って!」
大 「何?」
安 「それってさ、まんま 『サボテン太郎』 じゃん!」
大 「何だよ、それ?!」
安 「メキシコの昔話」
大 「そんな昔話、知らねーよ!!いい加減にしろ!」
2人「どーもありがとうございました」




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ハンガリーの写実画家 サンドルフィ展

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(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


日本が世界に誇る “写実の殿堂” ホキ美術館。
今日も、素敵な写実絵画の数々が展示されています。
その静謐で美しい世界に、きっと心が洗われることでしょう。



・・・・・・・・・・ギャラリー3を除いては。

現在、ホキ美術館のギャラリー3では、
“ハンガリーの写実画家 サンドルフィ展-魂と肉体のリアリズム” が開催中。





ギャラリー3に足を踏み入れた瞬間、
まるでホキ美術館から別の美術館にワープしてしまったかのような感覚がありました。
それくらいに、他のギャラリーとは明らかに雰囲気が違います。
その異様な空気に、立ちすくむ人や足早に去る人が続出。
良くも悪くも、ホキ美術館の展覧会史上に大きな爪痕を残す展覧会です。


こちらは、スペインにある写実絵画専門美術館、
ヨーロッパ近代美術館 (通称MEAM)とのコラボ企画として開催されたもので、
MEAMコレクションから厳選されたイシュトヴァーン・サンドルフィ作品が展示されています。
サンドルフィの展覧会が日本で開催されるのは、今回が初。
もちろん出展されている20点すべてが初来日作品です。


まずは、彼の簡単なプロフィールの紹介から。
イシュトヴァーン・サンドルフィ (1948~2007) は、ハンガリーに生まれ、パリで活動した写実画家です。
幼い頃に、ハンガリー動乱に遭遇。
サンドルフィ一家は祖国を離れ、パリへと移住します。
そうした経験から強い孤独を感じ、学校では1人でペンをとり、絵を描いてたのだそうです。
それが長じて、画才がめきめきと開花。
20代半ばには、パリ市立近代美術館で大規模な展覧会を開催。
以降、ニューヨーク、ローマ、ミュンヘンなど世界各国で作品が紹介されるように。
2006年には祖国ハンガリーで展覧会を開催するも、
惜しくも、その翌年の末に、急性の病気によってパリで亡くなります。享年59歳でした。

後半生はモデルを雇って描くようになったそうですが。
サンドルフィの画業で特に評価されているのは、
自分自身をモチーフにした70年代80年代の作品群とのこと。
今回出展されているのは、まさにその時期のサンドルフィ作品です。

サンドルフィが作品のテーマにしているのは、孤独。




うつろな表情を浮かべるサンドルフィ本人×2が、
画面のこちらに向かって、孤独を訴えかけているかのようです。
もしくは、孤独にしておいてくれと、こちらを拒絶しているのかもしれません。
どちらにせよ、画面から強いメッセージが発せられているのが、ひしひしと伝わってきます。

こちらの 《偵察兵》 という作品にいたっては、5人すべてがサンドルフィとのこと。




目には、なぜか大量の綿棒が張り付いています。
あまりにもシュールな状況。
もはや何かしらの悪夢を見ているかのような感覚に陥ります。




シチュエーションが独特すぎて、
そちらばかりに気を取られてしまいますが。
よくよく落ち着いて観てみると、色遣いやライティングも独特です。
iPhoneで撮って編集した写真みたいな色遣いやライティング。
40~50年も前に、こんな色調を生み出していただなんて。
実に恐ろしい才能です。

ちなみに、リアルすぎる描写であるため、
エアブラシで描いていると思われがちですが、エアブラシは一切使われていないとのこと。
その証拠に、近づいて観てみると・・・・・・・




絵筆の細かい毛が画面に残っているのがわかります。
絵筆の跡が一切わからないくらいに、
細かい絵筆でチマチマチマと仕上げるのが、サンドルフィのスタイル。
これまた恐ろしい才能です。

なお、矛盾しているようですが、
彼の作品にはたびたび、絵筆の跡が登場します。




が、これはあくまで “絵筆の跡” を描いたもの。
影に見えるのも、影ではなく、影を描いたものです。
当然、実際の画面はフラットになっています。
スゴい技術力であることは重々承知していますが。
・・・・・いや、でも、何がしたいの??





正直なところ、はじめはなかなか受け入れられなかったのですが。
我慢して (?) 見ているうちに、だんだんと馴染んできました。
というか、よくよく考えたら、この画風、誰かに通じるような・・・。
孤独。自画像。唯一無二の世界観。

あっ、鴨居玲だ!!

ハンガリーの鴨居玲。
そう考えたら、個人的にはストンと落ちるものがありました。
ハマる人には大ハマり、ハマらない人にはとことんハマらない。
ホームランか三振タイプの画家です。
しかし、この日本初のサンドルフィ展が、
もしかしたら、日本最後のサンドルフィ展という可能性も。
観ておくに越したことはありません!
星星


ちなみに。
サンドルフィは、妻や子供など家族をモチーフにした作品も多く制作しています。




その中でも特にインパクトが強かったのが、
《絵画を点検するドニーズとグラツィエラ》 という一枚。




『Choo Choo TRAIN』 状態で、こっちみんな!




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大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア―

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現在、山種美術館で開催されているのは、
【山種美術館 広尾開館10周年記念特別展】大観・春草・玉堂・龍子―日本画のパイオニア―” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


近代日本画界のパイオニアともいうべき4人の画家、
横山大観、菱田春草、川合玉堂、川端龍子の作品が一堂に会す展覧会です。





横山大観の初期の傑作 《喜撰山》 や、


横山大観 《喜撰山》 1919(大正8)年 紙本・彩色 山種美術館


まるでドローンで撮影したかのような構図が斬新な川合玉堂 《早乙女》 をはじめ、


川合玉堂 《早乙女》 1945(昭和20)年 絹本・彩色 山種美術館


山種美術館が所蔵する名品の数々が惜しげもなく公開中。
さすが、山種美術館が広尾の地に移転してから10周年を記念するに相応しい展覧会です。

ところで、大観、春草、玉堂、龍子それぞれの個展や、
彼ら4人を含むグループ展は、これまで山種美術館でも他館でも何度も開催されていますが。
この4人のメンバーの競演は、おそらく今回が初めてではないでしょうか。
意外な組み合わせな気がしましたが、それぞれの個性が絶妙にマッチしており、
個展形式で観る時よりも、むしろ4人が揃ったほうが、華やかさがアップしている印象を受けました。
いうなれば、近代日本画の 「花の4人組」。
F4といったところです。
星星


ちなみに、春草よりも長生きした大観、玉堂、龍子の3人は、
晩年近くに、実際にユニット (?) を組んだこともあるのだそう。
それは、山種美術館の創立者・山﨑種二の希望によって企画された松竹梅展でのこと。





松・竹・梅をテーマに、3人が分担して作品を制作。
毎年、それぞれ画題の担当を変えながら、3年連続で開催されたのだそうです。
松や梅と比べると、竹はテーマとしてあまりバリエーションがないような気も。。。
巨匠の3人が、どういうやり取りをして画題を決めたのか。
思わず想像 (妄想?) してしまいました。
大観 「俺、竹描こうかな!」
龍子 「いや、俺が竹描くよ!」
玉堂 「じゃあ、俺が!」
大観&龍子 「どうぞどうぞ」
・・・・・・・たぶん、いや、絶対違うと思いますけど。


さてさて、今回の4人のメンバー中で、個人的に推しメンなのは、川端龍子です。
今展のポスターにも使われている 《鳴門》 も、


川端龍子 《鳴門》 1929(昭和4)年 絹本・彩色 山種美術館蔵


琳派を意識した大作 《八ツ橋》 も、


川端龍子 《八ツ橋》 1945(昭和 20)年 絹本金地・彩色 山種美術館蔵


ダイナミックで最高です!
絵の前に立つと、作品から発せられるパワーに圧倒されました。
日本美術というよりも、まるで体験型アートのよう。
どの作品もインパクトがありましたが、特にインパクトがあったのが、こちらの一枚。


川端龍子 《華曲》 1928(昭和3)年 絹本・彩色 山種美術館蔵


右側に描かれているのは、ラフレシアくらいのサイズがありそうな巨大な牡丹。
そして、左側には、姿かたちといい、蝶に必死な生態といい、
「本当に本当に本当に本当にライオンか?」 と目を疑ってしまう個性的な獅子が描かれています。
なお、タイトルは、《華曲》 とのこと。
絵の雰囲気とは、あまり合っていないような。。。

実は、《華曲》 以外の作品でも、龍子独特のネーミングセンスが発揮されていました。
日光東照宮の大猷院を描いているのに・・・・・


川端龍子 《月光》 1933(昭和8)年 絹本・彩色 山種美術館蔵


タイトルはなぜか日光でなく、《月光》 だったり。
南洋の島を旅行した際に現地の女性を描いた作品には・・・・・・


川端龍子 《羽衣》 1935(昭和10)年 絹本・彩色 山種美術館蔵


《羽衣》 というタイトルが付けられていたり。
どの辺りが、どう羽衣なのか・・・??
題名のクセがすごいです。

ちなみに。
そんな龍子が飼っていた犬の名前は・・・・・・




クマとのこと。
斜め上をいくネーミングセンスでした。


そういえば、この春、今一部の女性の間で大人気のゲーム&アニメ 『明治東亰恋伽』 に、
春草と大観がメインキャラで登場することから、山種美術館ではコラボ企画が行われていました。
春草がフォーカスされた今展でも、もちろんコラボ企画が行われています。
前回は特製缶バッジが販売されているだけでしたが。




今回は、グッズの種類がだいぶ増えていました (笑)
ゲームやアニメとも積極的にコラボする。
そんな山種美術館は、ある意味で、日本画美術館界のパイオニアです。


┃会期:2019年8 月31日(土)~10月27日(日)
 ┃会場:山種美術館
 ┃
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2019/pioneer.html

~読者の皆様へのプレゼント~
こちらの “日本画のパイオニア展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、9月18日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶

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現在、サントリー美術館で開催されているのは、
“黄瀬戸・瀬戸黒・志野・織部 -美濃の茶陶” という展覧会です。




「やきものの展覧会って、なんか地味そう・・・」

と、敬遠している人もいらっしゃるかもしれませんが。
「しびれるぜ、桃山。」 というキャッチコピーからも、なんとなく予感できるように。
意外とパンクでロックな展覧会です。


会場には、日本全国から美濃焼の名品が大集結!
美濃焼を代表する黄瀬戸、瀬戸黒、志野、織部、
それぞれの名物が一堂に会す贅沢な内容となっています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


ところで、“美濃” 焼なのに、何で、黄 “瀬戸”、“瀬戸” 黒というのでしょう??
実は、長い間、美濃焼は愛知県の瀬戸で焼かれたと考えられていたのだそうです。
美濃焼が岐阜県の美濃地方で焼かれたと判明したのは、なんと昭和5年のこと。
人間国宝にも認定された陶芸家・荒川豊蔵が、
岐阜県の古窯跡から志野茶碗の陶片を発掘し、美濃焼の本当の産地が判明したのだそうです。
この大発見がきっかけとなり、空前の美濃焼ブームが起こったのだとか。
益田孝 (鈍翁) や根津嘉一郎、原三溪ら、
当時の数寄者たちは、こぞって美濃焼の名品を蒐集したそうです。
今展のラストでは、そんな彼ら近代数寄者たちが所有していた名品が一挙大公開されています。




美濃焼のスターが勢ぞろい。
しびれるほどのラインナップでした。
まさに、美濃焼界のフジロックフェスです。
星星


さてさて、黄瀬戸も瀬戸黒も志野も良かったですが。
個人的には、大名茶人・古田織部の好みを反映したとされる織部にハートを撃ち抜かれました。


《織部四方蓋物》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


《織部洲浜形手鉢》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


一言で言えば、アヴァンギャルド。
黄瀬戸も瀬戸黒も志野も、全体的に落ち着いた雰囲気を醸し出していましたが、
織部に関しては、器の内側から、パッションが滲み・・・いや、ダダ洩れしていました。
形も色も模様もフリーダムで、どことなく即興的な印象を受けますが、
しばらく眺めていると、それらが絶妙に調和していることに気づかされます。
絵画に例えるなら、バスキアの絵画に近いものがありました。
そういえば、バスキアも、近年多くのコレクターにこぞって蒐集されていますよね。
織部とバスキア。
どこか通ずるところがあるのかもしれません。

そうそう。織部といえば、こんな作品も。


《織部南蛮人燭台》 桃山時代 17世紀 サントリー美術館


南蛮人をモチーフにした珍しいタイプの燭台です。
頭の上にロウソクを置くための皿がありましたが、
「ワタシタチ、ソンナコトシナイヨ!」 と、
この燭台を目にした南蛮の人々の怒りに火をつけてしまわないか、若干心配になりました。
なお、よくよく見てみると・・・




眉毛が繋がっていました。
しかも、立派なカモメ眉。
桃山時代の両さんです。


また、織部というと、緑と赤のカラフルなイメージでしたが、
織部黒、もしくは、黒織部といったモノトーンのタイプのものもあったそう。
その中で特に印象的だったのは、《黒織部花文茶碗》 です。


画面左) 《黒織部花文茶碗》 桃山時代 17世紀 個人蔵   画面右) 《織部暦文沓茶碗》 桃山時代 17世紀 個人蔵


黒いボディに映える大胆なシンボル。
どことなく、バンドTシャツを思わせるものがあります。
もしくは、ロックのリストバンド。
黒織部が裏原宿で売っていたとしても、案外、違和感はなさそうです。


ちなみに。
今回の展覧会には、美濃焼ブームの火付け役・荒川豊蔵と、


画面左) 荒川豊蔵 《志野茶碗》 昭和28年(1953) 五島美術館   
画面右) 荒川豊蔵 《志野練上手茶碗 銘 霜朝》 昭和24年(1949) 東京国立近代美術館



志野を生涯のテーマとし、美濃焼の再現に力を尽くした加藤唐九郎、


画面左) 加藤唐九郎 《黄瀬戸茶碗》 昭和57年(1982) 唐九郎陶芸記念館   
画面右) 加藤唐九郎 《茜志野茶碗》 昭和60年(1985) 唐九郎陶芸記念館



2人の名品の数々も紹介されています。
彼らの作品は、桃山時代の名品にも全く負けていませんでした。
しびれるぜ、昭和も。




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名画IPPONグランプリ 第16問&第17問

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ippon



出張授業などでお世話になった小学生たちに、
名画に関する大喜利に挑んでもらい、その中から厳選されたオモシロ回答だけを紹介していく企画。
それが、名画IPPONグランプリです。

早速、お題となる絵をご紹介いたしましょう。




こちらは、《春》《ヴィーナスの誕生》 で知られるルネサンスの画家、
サンドロ・ボッティチェリによる 《パラスとケンタウロス》 という一枚です。
半身半獣のケンタウロスの髪の毛を鷲掴みにするパラス (=知恵と理性の女神)。
そのブチ切れっぷりを、どのように笑いに転換するかがポイントとなりそうです。




まずは、こんな回答から。




・・・・・なんというか、回答してくれた子の両親の力関係が垣間見える回答です。
おそらく、こんなやり取りが日常茶飯事なのでしょう。
完全なる鬼嫁です。

続いても、夫婦間のやり取りを思わせる回答。
しかし、そのお怒り具合は、先ほどの比ではありません。




女神の怒りを買うと、上半身が馬に帰られてしまうのですね!
それでは、もはやただの馬です。
ただ、浮気をやめさせたかったら、
むしろ、下半身のほうを野生でなくしたほうが良いのでは??


これまで紹介した2つの回答は、ケンタウロスに非がありましたが。
こちらに関しては、まったくケンタウロスは悪くありません。




それはそうなんですが・・・。
単純にパラスの虫の居所が悪かったのでしょう。
単なるとばっちりです。

最後は、ちょっと謎な回答をご紹介。




馬でもない。人間でもない。
なので、逆に、ライオン。
いや、どこかどう “逆に” なのでしょう。
逆に聞きたいです。


2問目に参りましょう。
お題となる絵画は、こちら!




オランダの画家ホントホルストによる一枚。
《ワイングラスを持った幸福なバイオリン弾き》 です。
大喜利のお題としては、意外と難易度は高いと思います。
ネガティブなものは、笑いに変えやすいですが、
ポジティブなものは、笑いに結び付けづらいのです。
さらに、人物がワイングラスを見つめているため、そこに触れないわけにはいかず。
自由度の少ないお題となっています。




子どもたちは、どんな回答を考えてくれたのでしょうか。
まずは、こちらの回答から。




数あるビールの中から、キリン一番搾りをセレクトしたところにセンスを感じます。
これが 「スーパードライ最高!」 や 「モルツ最高!」 だったら、そこまでしっくりきません。
確かに、キリン一番搾り顔。


ビールやワインなど、お酒が入っていると考えた子が多かった中で、
一人だけ、まったく違うものがグラスに入っていると考えた子がいました。
その子の回答がこちら。




イカれてんのか!

シャボン玉液は飲んではいけません。
よい子のみんなは絶対にマネしないでね。


シャボン玉液を美味しそうと感じる。
それもなかなか病んでいる回答ですが、さらに病んでいる回答がこちら。




「ボールは友達」 と言った有名な漫画のキャラはいますが。
グラスが友達というのは、相当キてます。
とりあえず、しばらく休暇でも取りましょうか。

ただ、グラスを友達だと思っているよりも、
さらに次なるステージに進んでしまっている回答もありました。




何がどうなって、友達の関係から恋人の関係へと発展したのでしょう・・・??
そして、何がどうなって、プロポーズを決心するまでに至ったのでしょう・・・??
早くアルコールが抜けることを願うのみです。


最後は、個人的には妙に共感してしまった回答を。




わかりますわかります (笑)
丸亀製麺でうどんを食べた後に、
グイッと飲み干すお水は、なんだか美味しいんですよね。


・・・・・・・・・以上、名画IPPONグランプリでした。




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涼風展

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今回ご紹介するのは、ブログでは初登場となる山崎美術館。
小江戸・川越の人気観光エリア “蔵造りの町並み” の一角に位置する美術館です。




開館したのは、1982年。
川越藩の御用を代々勤めた創業230年以上の老舗和菓子屋 「龜屋」 、
その当主である山崎家に伝わる美術品や工芸品を展示公開しています。
外観からは、そんな印象は受けませんでしたが、入り口を抜けるとそこには・・・


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております)


路地裏のような空間が広がっていました。
さらに、 “蔵造りの町並み” だけに、その路地に面するように、いくつか蔵が建っています。




実は、こちらはもともとは、龜屋の工場だった場所。
これらの蔵には、かつて砂糖やお米などがしまわれていたのだそうです。
山崎美術館として生まれ変わった今は、展示スペースとして使用され、
実際に使われていた菓子器やのれんなど、和菓子屋らしい品々が公開されています。




中でも印象的だったのは、こちらの掛け軸。




当時、東京最大の和菓子屋で修行をしたという六代目が、
そこで学んだ和菓子を記録した絵を、軸装したものなのだとか。




ポップな色合い、かつ、それぞれ正方形に収まる構図。
おしゃれなインスタグラマーのトップ画面のようでした。


さて、山崎美術館で楽しめるのは、和菓子関連の品々だけではありません。
山崎家に伝わる美術コレクションの数々も、
年7回ペースで展示替えされながら、公開されています。
その中核をなすのは、なんといっても橋本雅邦の作品群。




川越藩のお抱え絵師だった橋本養邦を親に持ち、
明治期の日本画壇の最長老であった人物、橋本雅邦です。
プレイヤーとしてはもちろんのこと、
ティーチャーとしての才能を持ち合わせていたという橋本雅邦。
今、『めいこい(=明治東亰恋伽)』 で人気急上昇中の2人、
あの菱田春草と横山大観も、東京美術学校で教鞭を取っていた際の教え子なのだそう。
会場では、春草と大観の2人と一緒に映っている写真も公開されていました。




なお、9月4日よりスタートした “涼風展” では、
そんな橋本雅邦コレクションのうちの5点が出展中。




くわえて、雅邦と同時代の絵師・菊池容斎の作品群も出展されています。




さらに、川越を代表する名家であった山崎家の本宅や別邸に、
秩父宮や朝香宮といった殿下が宿泊した際、その記念に下賜された品の数々も展示されていました。
当初は、銀製の花瓶や壺が下賜されていましたが。



時代が経ると、銀製ではあるものの、記念品のサイズは小ぶりに・・・。




殿下の皆さまも、若干ケチられ・・・もとい、
締めるところは締めるようになったのかもしれませんね。


さてさて、展示品もさることながら、
個人的に気になったのは、展示品に添えられた題名や作者の解説文の字の巧さ。




もしかして、山崎美術館の職員の中に、字が巧い人がいるのかしらん。
と思いきや、なんでも美術館が懇意にしている川越の書家の方にお願いしているのだそう。
そう言う意味では、キャプションそのものもアート作品の一つでした。
ちなみに、その書家さんは現在ご高齢のため、
細かい文字を書くのが苦手になってしまったとのこと。
キャプションを巧く書く自信がある我こそはという方、2代目に立候補されてみてはいかがでしょうか?


展示を一通り見終わった後は、
これぞ “ザ・休憩スペース” 的なスペースで一休み。




こちらでは、お茶のサービスが受けられます。
しかも、龜屋のお菓子付きです。




すべて込々で入館料は500円。
甘ーーーい!
川越観光の際には、是非とも足を運びたい美術館です。
星


最後に。
川越観光がてらに山崎美術館に訪れてみたくなった埼玉県民の皆さま、耳寄りな情報です。
来たる10月6日に、埼玉県が主催する建築ツアー 「庭園と茶室のあるレトロ建築」 が開催されます。
アートテラー・とに~のガイドのもと、山崎美術館はもちろん、
この秋重要文化財に指定見込みの山崎家の旧別邸や埼玉が誇る遠山記念館を訪れるツアーです。
ちなみに、各館では、館長や副館長、学芸員さんらが登場!
その掛け合いを、どうぞお楽しみ♪
普段非公開の場所にも入れる特別なツアーです。
募集は9月17日まで。
埼玉県民限定のツアーであるため、他県民の皆様はあしからず。
気になる方は、是非こちらをクリックしてくださいませ↓
“建築ツアー「庭園と茶室のあるレトロ建築」 ”




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