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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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集合の魂たち

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草間彌生さんのファンの聖地、
草間彌生美術館が、この秋、いよいよ開館3年目に突入しました!

通算5回目となる展覧会として開幕したのは、”集合の魂たち”
草間芸術の中でもっとも重要なキーワードである、
『集合』 あるいは 『集積』 をフォーカスした展覧会です。


これまでの展覧会のほとんどは、2階から展示がスタートしていましたが。
今回の展覧会では、早くも1階から草間ワールドが展開されています。
エントランス部分を埋め尽くしているのは、
草間さんのアイコンともいうべき水玉が集合したバルーン作品。




そのビジュアルもインパクトがありましたが、
それ以上にインパクトがあったのが、作品のタイトルです。
その名も、《水玉強迫》
『夜露死苦』 とか 『仏恥義理』 とか、
世の中にはいろんな四字熟語がありますが (←?)。
字面のインパクトは、『水玉強迫』 のほうが圧倒的に強烈でした。


さて、続く2階のギャラリーでは、
さまざまなタイプの 『集合』『集積』 作品が紹介されています。




例えば、こちらの平面作品。




離れた位置から見た限りでは、抽象画のようにも思えますが、
近づいてみると、何やらシールが大量に貼られているのに気が付かされます。





その正体は、航空便に貼るエアメールステッカー。
貼って貼って貼りまくって、キャンバスを埋め尽くす。
もはや執念のようなものすら感じる作品でした。

さらに、このギャラリーでは・・・




『YAYOI KUSAMA』 の文字が大集合した 《文字の集積》 や、
1ドル札っぽいもの (『ONE ROLLAR』 と書かれています) が集まった 《無題》 も紹介されていました。
1つ1つのパーツは取るに足らないもの (?) ですが、
それらが集まることで、大きなパワーのようなものが生まれる。
まるで、スイミーのようなアート作品です。


なお、3階のギャラリーでは、これまでと同様に、
草間さんにとって最大の絵画シリーズである 《わが永遠の魂》 が紹介されています。
今展では、現時点で620点を超えるというシリーズの作品の中から、
特にモチーフが集合、集積したものが厳選して紹介されているとのこと。





それらの作品の中で、個人的に一番印象に残ったのは、
《いまわしい戦争のあとでは幸福で心が一杯になるばかり》 という一枚です。




しばらくジーっと見つめていると、
作品の周囲を囲むつけまつげみたいなものに、心を撫でられたような感覚に。
妙にゾワゾワさせられるものがある作品です。
また、画面の全体を占めるカラフルな部分は、
どこかアサヒペンの看板を連想させるものがあります。




ちなみに、3階ギャラリーには、《わが永遠の魂》 のモチーフが、
そのまま絵の中から飛び出したような立体作品も併せて展示されていました。




草間さんの立体作品としては、そこまで大きなサイズではないのですが。
思わずこちらが後ずさってしまうほどに、生命力に溢れています。
あまりにも生命力がありすぎるため、
目に飛び込んできた瞬間、こんな風に感じられました↓




草間芸術の根幹ともいうべき、
『集合』『集積』 を存分に味わえる展覧会です。
草間ファンなら、この秋、草間彌生美術館に集合すべし!
星


最後に、最新グッズ情報を。
グッズコーナーでは、この秋より加わった新商品・・・




オリジナルの缶に入った上野風月堂のゴーフルが販売されていました。
もちろん、集積された状態で。




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ご即位記念特別展「正倉院の世界 ―皇室がまもり伝えた美―」

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秋の奈良の風物詩ともいわれる正倉院展。
毎年、奈良国立博物館で2~3週間ほど開催され、
1日の入場者数が1万人を超える超人気コンテンツです。

東京住まいの身としては、やはり叶うことなら、
東京の美術館や博物館でも正倉院展を開催して欲しいもの。
調べてみると、1981年に東京国立博物館で正倉院展が開催されていました。
その際はあまりにも人気が高く、入場を待つ人の行列が、
東京国立博物館の敷地の外まで伸び、外周を1周したとかしないとか。
そのため、伝説の展覧会として語り継がれているのだそうです。


さてさて、令和元年の今年、天皇陛下の御即位を記念して、
38年ぶりに東京国立博物館にて正倉院宝物がまとまった形で展示されることになりました!


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


“正倉院の世界 ―皇室がまもり伝えた美―”と銘打った、
今回の展覧会では、世界最古の四弦琵琶といわれる 《螺鈿紫檀五絃琵琶》 や、


《螺鈿紫檀五絃琵琶》 唐時代・8世紀 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


琥珀やトルコ石などの装飾が施された 《平螺鈿背八角鏡》 をはじめ、


《平螺鈿背八角鏡》 唐時代・8世紀 正倉院宝物 (注:展示は11/6~11/24)


正倉院が1260年の長きにわたって守り伝えてきた、
約9000点の正倉院宝物の中から選りすぐられた約40件が紹介されています。


《鳥毛帖成文書屛風》 (手前) 唐時代・8世紀 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


しかも、今展では、正倉院宝物に加えて、
普段はトーハク内の法隆寺宝物館で公開されている法隆寺献納宝物も併せて展示されています。


《樹下鳳凰双羊文白綾》 (左) 唐時代・8世紀 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


主に聖武天皇の遺品で8世紀美術を代表する正倉院宝物と、
法隆寺から当時の皇室に献納された7世紀美術を代表する法隆寺献納宝物。
我が国を代表する2大古代美術コレクションが夢の共演を果たした超貴重な機会です。
新たな伝説を産み出すであろうこと間違いなし!
並んででも行くべし、な展覧会です。
星星


さてさて、今回出展されている数々の宝物の中で、
特に注目したいのが、会場の冒頭で展示されている 《国家珍宝帳》 です。


《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》 (部分) 奈良時代・天平勝宝8歳(756) 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


聖武天皇の崩御後、光明皇后は天皇遺愛の品を中心とする宝物を東大寺の大仏に捧げました。
《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》 とは、その宝物600数十点を網羅したリスト。
全長約15メートルにも及ぶ 《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》 が、
今展ではなんと、展覧会史上おそらく初となる一挙公開されています!


《東大寺献物帳(国家珍宝帳)》 奈良時代・天平勝宝8歳(756) 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


今展に出展されている宝物も、リストの中に確認することができます。
パネルも併せて展示されているので、
「おー、この後、この宝物が登場するのか!」 とワクワクさせられること請け合い。
まさに、プロローグを飾るにふさわしい宝物です。


また、歴史好きであれば、《黄熟香》 も是非観ておきたい宝物。


《黄熟香(蘭奢待)》 東南アジア 正倉院宝物 通期展示


パッと見は、生ハムの原木のようですが。
こちらは、原木ではなくて、香木。
「蘭奢待」 の名でも知られる天下の香木です。
左の方に1枚、真ん中あたりに2枚、付箋のようなものが貼ってあります。
よく見ると、そこには、足利義政、織田信長の名前が書いてありました。
それは時の権力者が、蘭奢待を切り取らせた際の記録なのだそう。
あの織田信長ですら、わずかしか切り取らせていないだなんて。
いかに 「蘭奢待」 が貴重な香木であるのかを実感させられました。

ちなみに、個人的には、香木と関連して展示されていた 《白石火舎》 がお気に入り。


《白石火舎》  唐または奈良時代 正倉院宝物 (注:展示は10/14~11/4)


大理石製の炉を支える獅子たちが、実にキュートでした。
一生懸命背伸びをしているような姿が、なんともイジらしかったです。


さてさて、正倉院の宝物ももちろん見ごたえがありましたが。
今展のために1分の1サイズで再現された正倉院そのものも、かなり見ごたえがありました。




奈良県を訪れても、こんなに近くで見ることは出来ません。
それだけに、この再現模型を通じて、
正倉院がどれほど大きな建造物なのかを、まざまざと実感させられました。
蔵というよりも、巨大な倉庫。
学生時代に物流倉庫でアルバイトをした経験がありますが、それを思い出しました。

なお、こちらは扉の再現です。




大きさや素材だけでなく、
特殊な扉の封の仕方までもが再現されています。




ちなみに、この鍵はかつて実際に正倉院で使われていたのだそう。
この鍵が長い間、正倉院の宝物を守ってきたのですね。
責任の重さが感じられる鍵でした。




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ネクタイの話

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アートテラー・とに~にとって、もっとも重要なアイテム。
それは、ネクタイです。

アートテラーとして初めて舞台に立つ数日前のこと。
衣装をどうしようかと悩んでいると、
大学時代からの腐れ縁の友人から、「スーツでいいんじゃね?」 と提案が。
「いや、でも、スーツだと真面目すぎるような・・・」
「じゃあ、ネクタイで遊べばいいじゃん」
なるほど。善は急げとばかりに、二人で買いに行きました。
その時、購入したのが、このネクタイ。




結ぶのではなく、リングで止めるタイプのネクタイです。
当時は物珍しかったこともあって、
わりと高い頻度で、このネクタイに触れてもらう機会がありました。
このネクタイによって話しかけてもらったことも、しばし。
最近はすっかり引き出しに眠っていますが、
アートテラーのデビューから数年の苦楽をともにした相棒です。

続く2代目の相棒は、こちらのタイプのネクタイ。




一見すると、普通のネクタイなのですが、
ちょっとズラすと、少し不思議なビジュアルとなります。




その名も、3本タイ。
気づく人は気づく、気づかない人は気づかない。
そんな遊び心が気に入って、数バージョン持っています。


と、しばらくは、ドラマの 『相棒』 同様に、
何年かに一度、相棒 (=ネクタイ) を変えていたのですが。
数年前から、ニッポン放送の八木亜希子さんの番組に、
不定期に生出演させて頂くようになってから、スタンスが一転しました。

初出演時。
挨拶をしたところ、いきなり3本タイに食いつく八木さん。
アートの解説をするはずが、なぜかネクタイの解説をする羽目に。
そして、その後、なんとかアートの話を終えると、
八木さんから、「次回も変わったネクタイを期待していますねー」 と一言。
以来、毎回、新たなネクタイで出演するのがデフォルトとなりました。
ネクタイをイジるくだりが、定番となっているため、
たまに、アートテラー・とに~として出演しているのか、
新しいネクタイの付き添いとして出演しているのか、わからなくなるほど。
『自分の首を絞める』 とは、まさにこのことです。


というわけで、出演のたびに増えるネクタイ。
中には1度しか使用しなかったものもあるので、本日はまとめて紹介したいと思います。

まずは3代目として、ヘビロテしたパッチワークのネクタイ。




凝ったデザインで気に入っているのですが、
離れてみると、U字工事に見えてしまうのが玉に瑕。
最近あまり使ってなくて、ごめんねごめんね〜。


3代目の代わりに台頭してきたのが、こちらのパッチワークネクタイです。




思わず一目惚れして購入。
現在のプロフィール写真も、このネクタイで撮りました。


ちょっとテンションを上げたい時に使っているのが、こちらのネクタイ。




板チョコの銀紙をモチーフにしたという、銀ピカなネクタイです。
パーティーピーポーと勘違いされたくないので、移動中は外しています (笑)


クリムトをテーマにした回に出演する際に、
クリムトっぽいネクタイを探し、購入したのがこのネクタイ。




クリムトっぽいといえば、クリムトっぽいですが。
美川憲一っぽいといえば、美川憲一っぽいです。


変わったネクタイなんて、そうそう世の中にありません。
たまには、蝶ネクタイで出演する時も。




木製の蝶ネクタイ。
しかも、ダリ風の髭のネクタイです。


さらには、ループタイで出演した際もありました。




スチームパンク風のループタイ。
教頭先生でもないのに (←勝手なイメージ)、
ループタイを着用する日が来ようとは、夢にも思わなかったです。


最後に、この秋手に入れたばかりの最新ネクタイをご紹介。




フリップネタで今でもお世話になっているマルマンのスケッチブック柄のネクタイです。
黄色と深緑の切り替えしのデザインが完璧に再現されています。
しかも、少しズラすと・・・




留め具がデザインされた小剣が見えるという遊び心も。
つい先日、トークショーの際に、このネクタイを着用していたのですが。
終了後、僕の元にやってきたお客様から、
「そのネクタイ素敵ですね!トーク中、ずっとそのネクタイが気になってました!」
と、お声がけ頂きました。

・・・・・・・・。

トーク中ずっと気になってしまうってのは、さすがにどうなんだろう??
ともあれ、これからもネクタイとともに活動を続けてまいります。
ネクタイともども応援よろしくお願いいたします。




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ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華

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八王子にある東京富士美術館で開催中の展覧会、
”ルネ・ユイグのまなざし フランス絵画の精華” に行ってきました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


こちらは、ルーヴル美術館絵画部長としてナチスから名画を守ったことでも知られ、
東京富士美術館の初代名誉館長でもあった、世界的な美術史家ルネ・ユイグに捧ぐ展覧会。
フランス絵画はフランス絵画でも、印象派やエコールド・パリの作家の作品ではなく、
フランス絵画が最も華やかだった17世紀から19世紀半ばを代表する画家らの名品を紹介するものです。

展覧会には、ルネ・ユイグがそのコレクション形成に尽力した、
東京富士美術館が所蔵するフランス絵画の名品の数々も出展されていましたが。




ヴェルサイユ宮殿美術館やオルセー美術館、大英博物館をはじめ、
フランスやイギリスを代表する20館以上の美術館が所蔵する名品も数多く出展されています。




その中には、日本初公開の作品も多数含まれていました。
あまりにも世界的な名品が一堂に会しているので、
”目の前に広がっている光景は、もしかしたら夢なのでは?”
”展示されているのは偽物なのでは?” (←もちろん本物です!) と疑ってしまったほど。
これだけ充実したフランス絵画の展覧会が、
日本で開催されているだなんて、まさに奇跡としか言いようがありません!

しかも、展覧会のメインビジュアルに使われている、
ルブランの 《ポリニャック公爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン》 を含む3点の名画に関しては・・・


エリザベト=ルイーズ・ヴィジェ・ルブラン 《ポリニャック公爵夫人、ガブリエル・ヨランド・クロード・マルチーヌ・ド・ポラストロン》
1782年、油彩、カンヴァス、92.2 cm×73.3cm
ヴェルサイユ宮殿美術館 Photo©RMN-Grand Palais(Château de Versailles)/Gérard Blot/distributed by AMF



なんと写真撮影が可能となっています!





それも併せて、奇跡的な展覧会といえるでしょう。
「八王子は遠いなァ・・・」 と躊躇している皆様、
本国フランスを訪れるのに比べたら、だいぶ近いですよ。
星星星


さてさて、今回出展されていた作品の中で、
特に印象的だったものを、いくつかご紹介いたしましょう。
まずは、ヴェルサイユ宮殿美術館の所蔵品で、今回日本初公開となる逸品。
アングルの 《オルレアン公、フェルディナン=フィリップ=ルイ》(風景を背景に) です。


ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングル 《オルレアン公、フェルディナン=フィリップ=ルイ》(風景を背景に)
1843年、油彩・カンヴァス、157×121.5cm、ヴェルサイユ宮殿美術館
Photo © Château de Versailles, Dist. RMN-Grand Palais / Christophe Fouin / distributed by AMF



一見すると、写実的な肖像画に思えますが、
よく見てみると、首と左腕が異様に長いことに気が付きます。
これは、アングルによるデフォルメなのだそう。
ちなみに、もっとよく見てみると、
上半身を囲むように、うっすらと長方形があることに気が付きました。
実は、こちらの作品、その長方形部分だけをアングルが描き、
残りの下半身や背景部分を、アングルの弟子たちが仕上げたのだそう。
分業していることが、いくらなんでもバレバレです。


続いて紹介したいのは、アンヌ=ルイ・ジロデ=トリオゾンによる肖像画 (画面左)。




描かれているのは、阿部寛・・・・・では当然なく、
作家でもあり、政治家でもあったフランソワ=ルネ・ド・シャトーブリアンです。
なんとも美味しそうな名前だなァと思ったら、
彼が料理人に命じて、牛ヒレ肉の中央部分のステーキを作らせたのだそう、
そして、美味しさにすっかり魅了されたシャトーブリアンは、そのステーキばかりを食べたのだとか。
それゆえ、牛肉の中でも最上級のその部位に、
シャトーブリアンという名前が付いたのだそうです (注:諸説あり)。
栄養足りてなさそうな顔して、実は、イイもの食べてるんですね。けっ。


そんなシャトーブリアン同様に (?)、
主に女性の方から反感を買いそうなのが、フランソワ・ブーシェです。




会場では、ブーシェのこんな言葉が紹介されていました。

「女は太っておらずに、
 ぽっちゃりとして優雅ですらりとしていなくてはならないが、
 そうかといって痩せていてもいけない」


注文多いな!!
ストライクゾーンが狭すぎです。
というか、結局ぽっちゃりとすらり、
どっちがタイプなのかよくわかりませんでした (笑)


最後に紹介したいのは、バロックを代表するフランスの画家ニコラ・プッサン。
作品があまりにも貴重であるため、日本で紹介される機会が極めて少ない画家です。
今回の展覧会には、ベルリン国立絵画館が所蔵する 《55歳の自画像》 と、
ニコラ・プッサン美術館所蔵の 《コリオラヌスに哀訴する妻と母》 の2点が来日しています。




どちらも日本初公開。
個人的には、《コリオラヌスに哀訴する妻と母》 のほうがお気に入り。


ニコラ・プッサン 《コリオラヌスに哀訴する妻と母》 1652-1653年頃、油彩・カンヴァス、112 × 199 cm、ニコラ・プッサン美術館
© Christophe Deronne



古代ローマの将軍、コリオラヌス。
彼は政争に敗れ、ローマから追放されます。
そんなコリオラヌスに声をかけたのが、隣国の部族ウォルキス族。
コリオラヌスは軍の指揮を執り、ともにローマと戦うことにしました。
今まさにローマに向かわんとするその時、
コリオラヌスの妻と母が現れ、「戦わないように!」 と必死で哀訴したのです。
それを受け入れ、剣を鞘に戻すコリオラヌス。
《コリオラヌスに哀訴する妻と母》には、そんな家族の絆が描かれています。
個人的に注目したのが、画面中央の赤ちゃん。
コリオラヌスの妻と母に負けないくらい、必死に哀訴していました。
この歳にしてすでに、今置かれている現状を把握しているだなんて。
天才か。




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小倉遊亀と院展の画家たち展

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現在、富山県水墨美術館では、
”小倉遊亀と院展の画家たち展 滋賀県立近代美術館所蔵作品による という展覧会が開催されています。
充実した近代日本画コレクションで知られる滋賀県立近代美術館。
その所蔵品の中から、菱田春草の 《落葉》 や、


菱田春草 《落葉》 明治42(1909)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、10/8~11/4)


速水御舟の 《洛北修学院村》


速水御舟 《洛北修学院村》 大正7(1918)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、9/13~10/6)


安田靫彦の 《飛鳥の春の額田王》 をはじめ、


安田靫彦 《飛鳥の春の額田王》 昭和39(1964)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、9/13~10/6)


横山大観、下村観山、小林古径、前田青邨・・・などなど、
院展の常連メンバーたちによる珠玉の名品の数々が出展されています。
展示室がそこまで広くないため、
出展数は50数点と、ややコンパクトな印象ですが。
量はもとより、質は申し分なし!
星星
芸術の秋、院展の秋をたっぷり満喫できる展覧会です。


さてさて、今回の展覧会で特にフィーチャーされているのが、
安田靫彦に入門し、女性初の日本美術院同人となった小倉遊亀 (おぐらゆき)
まさに亀のごとく、105歳まで長生きし、
その晩年までひたむきに絵を描き続けた人物です。
ちなみに、100歳を超えても、「まだまだ・・・若造ですから」 と称していたのだそう。
100歳でも若造なら、世の中には、ほぼ若造しか生きていないことになります。

と、それはさておき。
今回の展覧会では、姉と妹それぞれの性格を見事に描き分けた 《姉妹》 や、


小倉遊亀 《姉妹》 昭和45(1970)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、9/13~10/6)


マティスの絵画との関連も指摘される一枚で、越路吹雪をモデルにした 《憩う》 を筆頭に、


小倉遊亀 《憩う》 昭和35(1960)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、9/13~10/6)


小倉遊亀の初期から晩年までの代表作が勢ぞろい。
約75年にも及ぶ彼女の長い長い画家人生を追うことができます。

数ある出展作の中で個人的に印象に残っているのは、
養子である息子とその妻を描いた 《家族達》 という一枚です。


小倉遊亀 《家族達》 昭和33(1958)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、10/8~11/4)


描かれているのは、日常の何気ない一コマ。
「あなた。頂き物のメロン、切ったわよ」「うん」
「食べるの?」「うん」
「食べないの?」「うん」
「どっちなの?!」「あー、ごめんごめん。そこ置いといて」
というような、本当にたわいもない会話が繰り広げられているのでしょう。
それはともかくも、画像では全く伝わらないでしょうが。
人物がデフォルメして描かれているのに対して、
メロンは果肉の瑞々しさも皮の模様も、写実的に描写されています。
匂いまで漂ってきそうなほどのリアルさ。
メロンが食べたくなること請け合いの一枚です。


ところで、展覧会には、もちろん小倉遊亀の作品が多く出展されていましたが。
それに次いで、前後期合わせて18点も出展されていたのが冨田溪仙でした。
今展の準主役ともいっても過言ではありません。
新南画ともいわれるその独特な画風は、なんともほのぼのとした印象を受けます。


冨田溪仙 《風神雷神》 昭和9頃(1934ころ)年 滋賀県立美術館蔵  (注:展示は、9/13~10/6)


じーっと眺めていたら、常田富士男か市原悦子の語りが聞こえてくるかのよう。
おそらく、タイトル画面は、こんな感じでしょう↓




ちなみに、今回の展覧会に関連して、先日10月20日に、
富山県水墨美術館にて、『スペシャルトークイベント』 を行ってきました。




富山県水墨美術館でのトークイベントは、昨年の ”尾竹竹坡展” に続き、2回目
その際は、『しくじり先生』 のパロディをやりましたが、
今回は、『セブンルール』 のパロディをお届けしてまいりました。






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藤原隆洋 Somewhere

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今回は、最寄りのあいの風とやま鉄道線入善駅から、
徒歩で1時間ほどの距離にある美術館へ。
(町営バスは1日4本ありますが、タクシーを利用するのがベターです)
しかも、美術館の周りは・・・・・




見渡す限り、一面の田んぼが広がっていました。
なぜ、こんなところに美術館が??
まさに、ポツンと一軒家な美術館。




それが、下山芸術の森 発電所美術館です。
(「下山」 と書いて 「にざやま」 と読みます)




その名の通り、もともとは発電所だった建物を利用した美術館。
大正15年に建設されたレンガ造りの水力発電所をリノベーションした現代アート専門の美術館です。




発電所をリノベーションした美術館といえば、
世界的には廃墟となった旧火力発電所を改修したロンドンのテート・モダンが有名ですが。
あちらの開館は2000年、対して、こちらの下山芸術の森 発電所美術館の開館は1995年。
なんと5年も早く誕生していたのです。


ちなみに。
美術館の入り口の入口に聳えるゲート棟は・・・





スペインを代表する建築家エリアス・トーレスによるものなのだそう。
なお、ゲート棟の内部は展示スペースではなく、管理室とトイレとなっていました。


さてさて、そんな下山芸術の森 発電所美術館で、
現在開催されているのが、“藤原隆洋 Somewhere” という展覧会。
国内外の展覧会に多数参加し、活躍されている現代美術家、
藤原隆洋さんの新作インスタレーション2点をメインにした展覧会です。




藤原さん滝や霧など、自然や自然現象をモチーフに作品を制作するアーティスト。
といっても、自然から受けたインスピレーションを、
ただ、そっくりそのまま作品に反映させるのでは無く。
自然が織り成す美しさは、一体どのようなメカニズムで造り出されるのか?
そして、人は何に心動かされるのか?
それらを徹底的に考察し、要素を究極なまでに削ぎ落とした作品を制作しています。

こちらは、新作の 《In the Darkness》 というインスタレーション作品。




巨大なタービンや鉄骨のトラスなど発電所の面影が残るダイナミックな空間に、
まるで霧やオーロラ、はたまたダイヤモンドダストが発生しているかのようです。
もちろん、実際にそうした自然現象が発生しているわけではありません。
浮かび上がっているものの正体は、無数の糸。




白い糸と透明の糸が結び合わされているため、
照明が当たると、白い糸の部分だけがフワッと浮かんでいるような印象を受けるのです。

“それだけ”、と言ってしまえば、“それだけ” の作品なのですが。
自然現象を眺めていて飽きることがないように、
《In the Darkness》 は、まったく飽きることがなく、いつまでもボーッと眺めていられる作品でした。
その最大のポイントは、糸の細さにあり。
もし、この糸が太かったら、そうめん工場のような印象を受けたことでしょうし、
さらに、もっと太かったら、スターにしきのの衣装のような印象を受けたでしょう。
あの絶妙な細さだからこそ、繊細な自然現象のような印象が生まれていた気がします。
個人的には、無数の糸を通じた光が壁や床でゆらめく様子がお気に入り。




5分ほど鑑賞していたつもりだったのですが、気づけば30分以上経過。
たぶん気づかなかったら、まだまだボーッと眺めていたことでしょう。
正直なところ、この記事を書いている今も、《In the Darkness》 を観たいくらいです。
リアルタイムの様子をライブカメラで配信してくれたらいいのに。
星


ちなみに。
天井から吊された糸の数は、なんと1万本!
約1年間をかけて、この作品を制作したのだそうです。
その途方もない制作期間に、「・・・・・・・気が狂わないんですか??」 と尋ねてみたところ、

「狂いますよ (笑)」

と、藤原さんは即答。

「でも、気が狂うくらいのものを制作しないと、
人が感動するようなものは生まれませんから」


と仰っていたのが、実に感慨深かったです。

なお、もう一つのインスタレーション作品、
《Under the Surface》 もまた、いつまでも見上げていたくなる作品でした。
今回の新作は2点だけなので、こちらに関しては、観てのお楽しみということで。




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開運 岡本“福”太郎

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今年、開館20周年を迎えた岡本太郎美術館。
このたび、約半年間の改修工事期間を経て、
常設展示室がリニューアルオープンいたしました!
その新生第一弾を飾るのは、『開運』 をテーマとした展覧会。
タイトルはズバリ、“開運 岡本“福”太郎” です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


・・・・・・・・と言われてみたものの。
『開運』 がテーマの展覧会とは、具体的に、どういうものなのでしょう??




展示室には、普通に岡本太郎作品が並べられているだけでした。
強いて、開運感 (?) があったものを挙げるとするならば・・・・・




この絵馬くらいなもの。
うん。でも、まぁ、太郎さんの作品には、独特のパワーがあるので、
この展示室そのものが、パワースポット=開運スポットと言えるのかもしれませんね。


・・・・・って、申し訳ありません。
実は、内容を事前にちゃんと知っていながら、知らないフリをしておりました。
『開運』 とは、そういうことではありません。
こちらの展覧会は、なんとなんと、このブログでの1企画、
『美術界隈の人がよく来る占いの館』 でも大変お世話になっている高天麗舟氏が特別監修したもの。
(題字も高天麗舟氏が揮毫しています)
風水によって、その方角に、最適な色やテーマの作品が展示されているのです。
展示構成を風水に委ねた展覧会なんて、前代未聞。
日本初、もしくは中国以外では、おそらく世界初の試みの展覧会です。

例えば、東の方角にあたるこちらの展示空間。




東の象意の色は、「青」 や 「紺碧」、
そして、東のキーワードは、「若さ」 や 「出発」 なのだそう。
それゆえ、青色が象徴的な 《夜》 や、
タイトルに 「若い」 とある 《若い太陽の塔》 が設置されていました。
これらの作品が設置されているおかげで、
この空間には、仕事の発展や若返りなどの運が充満しているのだそうです。
何か新しい仕事を始めたい方、最近老けてきたなァとお悩みの方は、是非こちらの空間へ!
ちなみに、矢印の先にご注目くださいませ。




この場所に太郎さんのパネルが置かれているのにも、風水的には重要な意味があるとのこと。
高天先生曰く、「室内に突起部分がある場合、それを隠すと良い」 のだそうです。




鑑賞者のために、気が刺すのを防いでいる太郎さん。




その姿は、どこか誇らしげな印象がありました (笑)


さてさて、会場には他にも、高天先生の監修により、
貯蓄や人気、ダイエット、夫婦関係など、さまざまな開運スポットが誕生しています。




太郎さんの作品を楽しめて、
風水の知識も得られて、なおかつ運気もアップする。
一挙三得な展覧会です。
星星
まず何より、このアイディアを思いついた学芸員さんが素晴らしいのですが。
それと同じくらいに、風水的に必要な色やキーワード、
そのすべてに対応できている太郎さんも素晴らしいです。
改めて、太郎さんの作風が多岐にわたっていることを実感できる展覧会でした。


ちなみに。
企画展示室では、これまで20年間に川崎市岡本太郎美術館で開催された、
約60本の企画展を振り返る展覧会の “これまでの企画展みんな見せます!” の後期が開催中です。




会場内には、岡本太郎と関わりの深い作家の作品や、




岡本太郎現代芸術賞を受賞したアーティストの作品に交じって、




ウルトラマンやゴジラの姿も。




なんともカオスな空間となっていました。
そのすべてを飲み込んでしまうかのような岡本太郎の圧倒的な存在感。
さんまさんが “お笑い怪獣” なら、太郎さんは “アート怪獣” ですね。




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素晴らしきミュージアムショップの世界 商品番号127

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本日は、川崎市岡本太郎美術館の隠れた人気商品をご紹介いたします。
それは、TAROの夢最中 (1個 ¥160)。




川崎市岡本太郎美術館がオープンしたのを記念して、
多摩区にある和菓子店数店が共同で創作した最中なのだそうです。
ちなみに、太郎さんの 《夢》 という作品をイメージしているとのこと。
それだけに、もちろん普通の最中であるはずがありません。

包装紙の裏側してみると、そこには・・・・・




一般的な最中では見かけない文字が。




そう。ピリ辛唐がらし入り。
皮の部分に唐辛子が練りこまれているのだそうです。
きっと食べると、口の中で 「爆発だーーー!」 となるのでしょうか。

と思いきや、川崎市の中学2年生の子が書いたポップによれば・・・・・




『辛いのが苦手な方でも、おいしく食べれます!』 とのことです。
どちらかといえば、甘辛よりも激辛のほうが、この記事的には、おいしいのですが・・・(笑)

さてさて、お味は小倉とごまの2種類。




唐辛子入りの最中が、どんな味なのか全く想像がつきません。
まずは、小倉味から食べてみることにしました。




見た目では、唐辛子が入っているようには感じられません。
まぁ、赤いといえば、若干赤いような気もします。
正直なところ、太郎さんの作品くらい赤い最中の皮を想像していたのですが・・・。




それでは、実食。




・・・・・・・う~ん。
ピリ辛なのかなぁ??
バーモントカレーの甘口よりも辛くないような。
ぶっちゃけ、普通に美味しい最中という感じでした。


続いては、ごま味。




見た目はまったく一緒です。
“きっと味も、小倉味と一緒で普通なんだろうなぁ・・・” と思いつつも、一口。




「こっ、この味は!!!」

小倉味と違って、ごま味はちゃんと唐がらしが感じられました。
そして、ごまとピリ辛の風味が合わさることで、どことなく担々麺のような不思議な味わいに。
ちゃんと個性のある最中でした。
なるほど。この味こそが、太郎さんの夢だったのですね!

・・・・・・いや、たぶん違うでしょう。




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!
 お子様とご一緒の参加も大歓迎です[お子様の参加費は基本無料])
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


11/3(日) みんなで並ぼう正倉院展!

今年の芸術の秋の大本命展覧会の一つ、
“正倉院の世界―皇室がまもり伝えた美―”

毎年、奈良国立博物館で開催され、
1日1万人以上を動員する人気コンテンツ正倉院展が、30数年ぶりに東京にやってきます。

前回、トーハクで開催された際は、行列が美術館の外周を1周したそう。
その盛況ぶりは、もはや伝説と化しています。
今回もおそらく、それくらいの行列が発生する可能性が大です。

「観たい!でも、一人で並ぶのはなぁ・・・。」

そんな皆様のために、一緒に並ぼうという企画を開催いたします。
みんなで並べば、行列もまた楽しい想い出になるはず。

待ち時間を飽きずに過ごせるよう、図録を持参します。
どうぞ楽しい待ち時間をお過ごしくださいませ (笑)
また、当日の待ち時間にもよりますが、
鑑賞後、希望者でカフェで感想をおしゃべりする時間も設ける予定です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

時間:13時~17時
定員:12名
参加費:1600円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/4(月・祝) ゴッホ展へ行こう!

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです!

さてさて、今回みんなで訪れるのは、この秋大本命の展覧会、
上野の森美術館で開催される “ゴッホ展” です。

ゴッホの代表作の 《糸杉》 が7年ぶりの来日!
他にも、「ゴッホの静物画の中で最も美しい作品の一つ」 と称される 《薔薇》
さらに、《ジャガイモを食べる人々》 をはじめ、初期の傑作も多く来日しています。

展覧会を鑑賞したあとは、近くのカフェでまったりいたしましょう♪
図録を持参しますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなた様も気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

時間:13時~16時半
定員:12名
参加費:1600円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/9(土) このパブリックアートがすごい!2019

都内の各地には、無料で観れる美術作品、
いわゆるパブリックアートが数多く点在しています。
それらのパブリックアートの中から、
厳選に厳選を重ねた見逃せない作品を巡るツアーです

宮崎駿監督に影響を与えたという世界的アーティストの作品を筆頭に、
現代を代表する日本画家の作品や、国内外から注目を集める若手アーティストの作品、
さらには、圧倒的スケールの作品や、思わずクスッと笑える作品などなど、
都内のパブリックアートの名品を、時間の許す限り、ご案内いたします!
美術関連のガイドブックやサイトにも掲載されていない、
とっておきのパブリックアートもご紹介いたしますので、どうぞご期待くださいませ♪

時間:13時~17時
(赤坂駅をスタートし、霞ヶ関駅で解散となる予定です。都内の何駅かを巡ります)
定員:12名
参加費:1000円 (交通費は各自負担。東京メトロの一日乗車券がオススメです)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
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10/26(土) “カルティエ、時の結晶”ナイトツアー

国立新美術館で開催される “カルティエ、時の結晶”
この秋、個人的にもっとも注目している展覧会の一つです。

エルメスやショーメ、ヴァンクリーフ&アーペルなど、
これまでにも、ハイブランドの展覧会は開催されてきましたが。
今展が画期的なのは、会場構成を新素材研究所 (杉本博司+榊田倫之) が手掛けていること。
カルティエと新素材研究所による夢のコラボ。
一体どんな空間が誕生するのか、今からワクワクが止まりません!

今回は、普段のアートツアーとは違い、あえて夕方にスタート。
ナイトミュージアムで、“カルティエ、時の結晶” の世界を楽しみます。
みんなで展覧会をたっぷり堪能した後は、カフェで余韻に浸りましょう。

時間:17時半~20時半
定員:10名
参加費:1500円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
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11/10(日) そうだ 江戸、行こう。【大山詣り編】

“浮世絵に描かれた街並みは、今、どのような光景になっているのでしょうか?”

浮世絵を手掛かりに、街をぶらぶら歩きながら、
江戸時代にタイムスリップする・・・気持ちになれるツアーです。
講師の太田記念美術館の渡邉晃学芸員とともに、
浮世絵に描かれた場所に実際に赴き、現在の光景と見比べてみましょう!

さてさて、今回のテーマは、『大山詣り』 です。
神奈川県伊勢原市にある霊山・大山。
江戸の町から2、3日の距離にあり、気軽に参拝できることから、
江戸の庶民や歌舞役者たちに、絶好の行楽地として愛されました。
ちなみに、江戸時代のピーク時には、年間20万の人々が来山したのだそう。
それゆえに、大山詣りを描いた浮世絵も、実にたくさん存在しているのだとか。
今回のツアーでは、それらの浮世絵を頼りに、
江戸随一の観光スポット・大山を、たっぷりと散策いたします!
令和元年の大山詣り。
どうぞご期待くださいませ♪

時間:13時~17時半 (集合は伊勢原駅となります)
定員:12名
参加費:2000円
(注:おかげさまで、“そうだ 江戸、行こう。” 企画は特に人気が集中しております。
 そこで、“そうだ 江戸、行こう。” に初参加の方、
 もしくは今年5月以降に、“そうだ 江戸、行こう。” 以外のアートツアーにご参加頂いた方のみの受付とさせて頂いております。
 何卒ご了承くださいませm(__)m)


ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/16(土) みんなの大東京建築ツアー【築地の・・・今 編】

世界中の建築ファンが憧れる街・東京。

この街には、たくさんの名建築が存在しています。
そんな東京で生活をしていながら、建築に興味が無いなんて。
何ともったいないことでしょう!

「・・・・でも、“建築”って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするのが、みんなの大東京建築ツアー。
実際に東京の街をぶらぶらしながら名建築を巡り、
進行役の僕と講師の建築家が掛け合いをしながら、その魅力をたっぷりお伝えするツアーです。

世界最大級の魚市場を有し、83年にわたって、「日本の台所」 として親しまれてきた築地。
しかし、昨年、市場が豊洲に移転して以来、
すっかり足が遠のいている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、そんな築地をあえてフィーチャー!
築地の顔ともいうべき名建築から、
築地の新たな人気スポットや間もなく取り壊されそうな昭和の名建築などを巡ります。
さらに、せっかくなので、築地場外市場も訪れましょう♪
皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

時間:13時~17時半
定員:15名
参加費:1500円

ご参加希望の方は、みんなの大東京建築ツアーの公式HPからお願いいたします↓
https://arc-tour.org/


11/17(日) 「ハプス展はいいぞ」 の旅。

現在、国立西洋美術館にて、“ハプスブルク展” が絶賛開催中です。

約600年間にわたって世界最高峰の美術コレクションを築いたハプスブルク家。
そのコレクションの中から選りすぐられた名品の数々が来日した、この秋大本命の展覧会です。
ベラスケス、レンブラント、ブリューゲル (父) といった巨匠たちの名画に、
マリー・アントワネットやナポレオンの肖像画、西洋の甲冑など、貴重そうな奴は大体揃っています。
この展覧会を是非、みんなで観に行きましょう♪
展覧会をたっぷり堪能した後は、カフェに移動し、みんなでワイワイと感想を共有できればと。
美術マニアの集いではないので、小難しい感想は必要なし!
気軽にご参加くださいませ。

時間:13時~16時半
定員:12名
参加費:1600円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/23(土) アートでオシャレな街 “丸の内” 徹底解剖ツアー

上野に、六本木に、銀座に。
東京には、さまざまなアートなエリアがありますが。
その中でも特に押さえておきたいエリアが、丸の内です。

今回のアートツアーでは、そんな丸の内のアートな魅力を徹底解剖!
知的好奇心が刺激されるミュージアムやインスタ映えするパブリックアート、
レトロな名建築など、丸の内ならではのアートスポットを余すことなくご紹介いたします。

もちろん、そんなアートタウン “丸の内” の顔ともいうべき、三菱一号館美術館も訪問!
こちらでは、今年の芸術の秋大注目の展覧会 “印象派からその先へ―” を観賞いたします。
展覧会の見どころや裏話もお届けしますので、どうぞお楽しみに♪

時間:13時~17時半
定員:12名
参加費:1600円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


11/24(日) みんなの大東京建築ツアー【横須賀編】

世界中の建築ファンが憧れる街・東京。

この街には、たくさんの名建築が存在しています。
そんな東京で生活をしていながら、建築に興味が無いなんて。
何ともったいないことでしょう!

「・・・・でも、“建築”って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするのが、みんなの大東京建築ツアー。
実際に東京の街をぶらぶらしながら名建築を巡り、
進行役の僕と講師の建築家が掛け合いをしながら、その魅力をたっぷりお伝えするツアーです。

今回は、特別編。
東京から少し離れて、
『横須賀ストーリー』 や 『港のヨーコヨコハマヨコスカ』 でお馴染みの (?)、
横須賀を舞台としたツアーをお届けします。
講師の建築家・山本至氏にとって思い入れの深い街・横須賀。
三浦半島の豊かな自然や、海軍の歴史が残るその都市としての魅力を余すことなく紹介いたします!
さらに、横須賀を訪れる上で欠くことのできない名建築、横須賀美術館もついに訪問!
果たして、横須賀美術館をよく知る至氏が横須賀美術館についてどう語るのか?!
どうぞご期待くださいませ。

時間:13時~17時半
定員:15名
参加費:2500円 (美術館観賞料を含む)

ご参加希望の方は、みんなの大東京建築ツアーの公式HPからお願いいたします↓
https://arc-tour.org/


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

しかくのなかのリアリティ

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現在、横浜市民ギャラリーあざみ野では、
毎年秋に行われる現代アートのシリーズ展 “あざみ野コンテンポラリー”、
その第10弾として、”しかくのなかのリアリティ” が開催されています。




高速道路のあるダイナミックな風景を得意とし、
近年では静物のある室内風景も手がける横野明日香さんや、




絵具が平面上で生成する、反応しあうことを重視し、
制作途中にあえて作品から離れたり、消したり、塗り潰したりする松本奈央子さんなど、




絵画を表現手段としているアーティスト5人によるグループ展です。
5者5様、それぞれ個性がまったく異なりますが、
「しかく(視覚)」 にダイレクトに訴えかけてくるような、
「しかく(四角)」 い作品を制作しているという点では共通していました。
5人とも、これからますます活躍が期待されるアーティスト。
あまり大々的に告知されていないため、
他の展覧会の 「しかく(死角)」 となっている感はありますが、
現代アート好きなら押さえておきたい展覧会です。
星


今回出展されていた5人の中で、
個人的にもっとも心を惹かれたのは、加茂昂さんです。




2011年の東日本大震災以降、自分が絵を描くことで、
社会に対して何ができるかを考えるようになったという加茂さん。
本展では、そんな彼が福島を何度も取材し、制作した作品が壁一面に展示されています。




モチーフがモチーフだけ、こういう感想を抱くことが正しいのかわかりませんが。
率直な第一印象は、ただ純粋に 「美しい!」 でした。
これまで、東日本大震災をテーマにした作品はいくつも目にしてきましたが、
それらの多くは、東京電力に対する怒りや、放射能に対する恐れが、その根源にあったような。
しかし、加茂さんの作品からは、怒りや恐れといった負の感情が感じられません。





むしろ、穏やかで優しい空気が画面に充満しています。
どこか祈りにも似た温かな眼差しが感じられる作品でした。


また、もう一人印象的だったのが、山岡敏明さん。
彼は自身が生み出した想像上の物体 (生命体?) を、
「GUTIC(グチック)」 と名付け、それを偏執的に描き続けているアーティストです。




壁一面に並んだ巨大なGUTIC。
石のようでもあり、樹木のようでもあり、キノコのようでもあり。
山岡さんの想像の産物であるため、
間違いなく初めて目にするものなのですが、
以前どこかで見たことがあるような、妙なリアリティ、妙な存在感がありました。


ちなみに、今展には、この夏、ポーラ ミュージアム アネックスで個展も開催され、
国内外から高い評価を得ている注目の若手アーティスト・水野里奈さんも参加しています。




中東の細密画、伊藤若冲や曾我蕭白の水墨画といった要素を取り入れ、
「見ても見きることの出来ない絵画」 を目指し、制作を続けているアーティストです。
確かに、どの作品も不思議と見飽きることはありません。
ボーッと眺め続けていると、その空間に、
おばちゃんというか、ほぼほぼおばあちゃんの2人組がやってきました。
どうやらお二人も、水野さんの作品が気に入った様子。
「この絵、素敵だわ~」 「まぁ、本当ね~。欲しいわ~」 などと会話を繰り広げています。
心の中で、”ほぼほぼおばあちゃん、なんて思ってしまってすいません!” と謝る僕。
きっとお二人は、感性が若いのでしょうね。
そう思って、お二人に目を向けると・・・・・




二人とも、まさに水野さんの絵のような柄の洋服を着ていました。
そりゃ惹かれるわけだ。




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ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史

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現在、国立西洋美術館で開催されているのは、
“ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史” という展覧会。



(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


数世紀という長きにわたってヨーロッパの中心に君臨した名門ハプスブルク家が、
その財とネットワークを武器に収集した世界屈指のコレクションを紹介する展覧会です。

出展数は、100点。
それらの中には、ティツィアーノやヴェロネーゼらヴェネツィア派の名品の数々、


ティツィアーノ・ヴェチェッリオ 《ベネデット・ヴァルキの肖像》 1540年頃 油彩/カンヴァス
ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum, Wien



稀代のコレクターとして名高い神聖ローマ皇帝ルドルフ2世のコレクションや、


ヨーゼフ・ハインツ(父) 《神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の肖像》 1592年頃 油彩/銅板 ウィーン美術史美術館
Kunsthistorisches Museum, Wien




さらには、ヤン・ブリューゲル (父) による風景画、
マリー・アントワネットの肖像画といった作品も含まれています。
ここ近年、上野や渋谷、六本木の美術館で開催され、
話題となった展覧会の数々が、一堂に会したかのようでした。
さまざまな展覧会をギュッと凝縮させ、
美味しいところだけを摘まめるようにした展覧会。
料理に例えるなら、さしずめ贅沢な会席料理といったところでしょうか。
星星星


ちなみに。
出展作品の中には、昨年、国立西洋美術館で開催された “プラド美術館展” にて、
日本史上最多となる7点が来日したことで大きな話題となったベラスケスの作品もあります。
それも、4点!
7点には及ばないものの、
4点も来日するなんて、ただ事ではありません!
しかも、その4点の中には・・・


ディエゴ・ベラスケス 《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》 1659年 油彩/カンヴァス
ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum, Wien



ベラスケス晩年の傑作 《青いドレスの王女マルガリータ・テレサ》 が含まれています。
こちらは、あの 《ラス・メニーナス》 にも描かれている王女マルガリータ・テレサの肖像画。
《ラス・メニーナス》 から3年後、8歳時の姿が描かれています。
近くで見ると、サササッとした大胆な筆致が見えるのですが、
離れたところでは、王女の髪の毛や、レースや青いシルクの質感が、本物のそれにしか見えません。
ベラスケスの魔術的ともいえる画力が冴え渡った逸品です。

また、個人的には、ベラスケス初期の作品である 《宿屋のふたりの男と少女》 もオススメ。


ディエゴ・ベラスケス 《宿屋のふたりの男と少女》 1618-19年頃 油彩/カンヴァス
ブダペスト国立西洋美術館 Szépművészeti Múzeum/ Museum of FineArts, Budapest



画面右の男性の手元にご注目ください。
親指を立てています。
向かいの老人の発言に対してなのか。
はたまた、少女の癖のあるワインの注ぎ方に対してなのか。
何に対してなのかは不明ですが、「いいね!」 をしていることは確か。
500年前にも、このポーズはあったのですねグッド!


さてさて、展覧会には他にも、個人的オススメ作品があります。
まずは、デューラーの 《ヨハネス・クレーベルガーの肖像》


アルブレヒト・デューラー 《ヨハネス・クレーベルガーの肖像》 1526年 油彩/板
ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum, Wien



描かれているのは、江頭2:50・・・ではなく、
ヨハネス・クレーベルガーという商人。
当時の人々から成金と揶揄されるわ、
かつての雇用主の未亡人に執拗に迫り、評判を落とすわ。
それはそれは好感度の低い人物だったそうです。
そんなイメージを払拭すべく、デューラーに依頼し、
古代の貨幣風に、裸体の胸像を模した自分の姿を描かせたのだとか。
いや、上半身裸になったせいで、エガちゃん感がより増してますよ。
好感度を下げてどうする。


続いては、《角杯(グリフィンの鉤爪)》


《角杯(グリフィンの鉤爪)》 北ドイツ? 15世紀前半 角、鍍金された銀
ウィーン美術史美術館 Kunsthistorisches Museum, Wien



動物の角で作られた杯から鳥の足が生えている。
なんとも奇妙極まりない代物です。
しかし、そのあまりにもシュールな姿は、
見れば見るほど、ジワジワと癖になってきます。
ところで、ふと疑問に思ったのですが。
洗浄機やグラス用スポンジが無いこの時代、
こういう角杯の先端部分はどのように洗っていたのでしょうね??


最後に紹介したいのは、西洋の甲冑です。




これまで数多くの展覧会を目にしてきましたが、
西洋の甲冑を数点まとめて観たのは、今回が初めて。
日本の甲冑とも当然いろいろと違って、興味深かったです。
特に印象的だったのは、画面右の甲冑。




《ヴェルテンブルク公ウルリッヒ (1487‐1550) の実戦および槍試合用溝付き甲冑》 です。
顔の部分は、なぜか困り顔。
「僕、戦いたくないよー」 とでも言わんばかりの表情をしています。
相手に戦意を喪失させる狙いがあるのかもしれません。




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江之浦測候所

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構想10年。建設10年。
現代美術家の杉本博司さんが、長い年月を費やして、
ついに2017年秋にオープンさせた話題の複合文化施設・江之浦測候所に行ってきました。




場所は、小田原市江之浦。
JR東海道線の中で最も乗降客数が少ないといわれる無人駅、根府川駅の山の上。
かつて蜜柑畑だったという1万坪を超える広大な敷地の中に、江之浦測候所はあります。

ちなみに。
入館料は、3300円と、なかなか強気の設定。
(インターネットから事前に購入した場合。当日券は、3850円)
日時指定の予約・入れ替え制となっています。


ところで。
江之浦測候所とは、一体どんな施設なのでしょう。
美術館でもなく、ギャラリーでもなく、測候所。
来場者全員に配られるパンフレットには、杉本さんの言葉が記載されています。

「悠久の昔、古代人が意識を持ってまずした事は、
 天空のうちにある自身の場を確認する作業であった。
 そしてそれがアートの起源でもあった。
 新たなる命が再生される冬至、重要な折り返し点の夏至、通過点である春分と秋分。
 天空を測候する事にもう一度立ち戻ってみる、
 そこにこそかすかな未来へと通ずる糸口が開いているように私は思う。」



・・・・・・・ちょっと何言ってるか分からないでしょうから、
具体的に、敷地内にある建物や施設などを紹介してまいりましょう。
まず、江之浦測候所のシンボルともいうべき建物が、こちらのギャラリー棟です。




海抜100メートルの位置に建つ全長100メートルのギャラリー。
その名も、夏至光遥拝100メートルギャラリーです。




入って左手に見えるのは、長~いガラス面。
よく見ると、1本も柱がありません。
なんとすべてのガラス板が自立しているのです。
一方、右手に見えるのは、長~い大谷石の壁。
この壁には杉本さんの 《海景》 シリーズが飾られています。
そして、この長~い通路を抜けると、その先には展望スペースがありました。




こちらからは、相模湾のリアル海景を臨むことができます。
なお、この建築は、夏至の日に太陽が登る方向に合わせて建てられているとのこと。
つまり、夏至の日、日の出の時刻に訪れたなら、
ちょうどこの建物をご来光が一直線に差し込む様子を測候できるというわけです。

さて、夏至があれば、冬至を測候する施設もあります。
それが、こちらの冬至光遥拝隧道。




全長7070メートルに及ぶ鋼鉄製の隧道 (トンネル) です。
冬至の朝、水平線から太陽が顔を覗かせると、
陽の光がトンネルの奥まで差し込んでくるのだとか。

ちなみに。
冬至光遥拝隧道の上にあるのが、
先ほど紹介した夏至光遥拝100メートルギャラリー。




夏と冬で、こんなにも太陽の昇る位置が変わるのですね。
改めて、天空の動きのダイナミックさを実感させられました。


さてさて、江之浦測候所の敷地内には他にも、
冬至光遥拝隧道と平行に作られた光学硝子舞台や、




千利休の作とされる国宝の茶室 「待庵」 を本歌取りした茶室 「雨聴天」、




頂点が春分秋分の正午の太陽の方向を指している三角塚などなど、




見どころ (アトラクション?) がいっぱいあります。
ある意味、テーマパークのよう。
ディ○ニーランドのパーク全体に隠れミッキーがいるように、
杉本さんの理念が詰まった ”博司ーランド” (←?)の敷地にも隠れアートが多数存在しています。
例えば、あまり目立たないところに、さらっと置かれているこちらの古信楽の井戸枠。




何を隠そう、あの北大路魯山人の旧蔵品です。
その後、日本を代表する批評家・小林秀雄が、
この井戸枠を手に入れ、自宅の庭に据えて楽しんでいたのだそう。

また、例えば、待合室のテーブルの片側を支えている謎の物体。




こちらは、高野山の末寺、大観寺にあった石製の水鉢なのだとか。
なお、天板に使われているのは、樹齢千年を超える屋久杉だそうです。
この他、敷地内には白鳳時代の瓦や鎌倉時代の鉄宝塔など、貴重な古美術品が数多く点在。
すべて観て巡るためには、時間と体力に余裕を持って訪れてくださいませ。


ちなみに。
昨年秋より、江之浦測候所の観賞エリアが拡大。
夏至光遥拝100メートルギャラリーのある明月門エリアに次いで、竹林エリアがオープンしました。
こちらは文字通り、竹林とみかん畑に囲まれた緑豊かなエリア。
竹林と数理模型をモチーフにした杉本作品、
竹林と古美術品の取り合わせを楽しむことが出来ます。




竹林エリアの目玉となるのは、みかん畑の道具小屋を整備して作られた化石窟 (かせっくつ)




建物の中では、みかん栽培のための道具とともに、
杉本さんご自慢の化石コレクションが展示されています。
もちろん、化石はすべて本物です。




美術館のようで美術館でない。
ギャラリーのようでギャラリーでない。
それは何かと尋ねたら、”測候所” としか言いようのない施設でした。
一つ確実にいえるのは、世界広しといえど、
このような施設は、きっとここにしかないということ。
そして、もう一つ確実にいえるのは、杉本さんにしか生み出せない施設であるということ。
今から遠い未来、何千年後の人が、もし、偶然にこの場所を見つけたとしたなら。
そして、もし、夏至や冬至、春分秋分の太陽の方向にあわせて、
さまざまな施設が配置されているという事実に気づいたとしたなら。
きっと、「江之浦に、スゴい高度な文明があったに違いない!」 と騒ぎ出すことでしょう。




敷地的にも時空的にも壮大なスケールの江之浦測候所。
思わず、そんな想像 (妄想?) が頭をよぎりました。
星星




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第百七十八話 国宝ハンター、痺れる!

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前回までのあらすじ~

毎日でも国宝をハントしたい。
 そんな国宝ハンター・とに~は、日々、
 国宝全制覇というミッションを楽しく、クールで、セクシーに取り組んでいる。
 しかし、企画開始から、早8年。まだゴールには達していません。
 果たして、あと何年後に、その目標を実現させることができるのか。
 10年後?20年後?はたまた、30年後??
 その質問に彼は、こう答えたという。
 「私の中で30年後を考えたときに、
 『30年後の自分は何歳かな』と企画開始直後から考えていました。
 だからこそ、私は健康でいられれば、30年後の約束を守れるかどうか・・・」



今回は、滋賀県の三井寺駅にやってきました。




この駅のほど近くにあるのが、三井寺 (みいでら)
正式名称は、園城寺 (おんじょうじ) です。
天台寺門宗の総本山で、日本三大不動の1つ 「黄不動」 が鎮座していることでも知られています。
ちなみに、黄不動と同じくらいに有名なのが、
『近江八景』 のひとつに数えられる “三井の晩鐘” 。
その音色の美しさは、日本随一とも言われています。




残念ながら、“三井の晩鐘” は国宝でもなければ、
重要文化財でもなく、県指定文化財止まりですが (←?)。
入山料を支払った際に、受付のオバちゃんが、

「ウチの文化財は見ごたえあるわよ。正倉院に匹敵するわよ」

と、謎の対抗意識を燃やしていただけあって、三井寺は国宝を数多く有しています。

1件目は、こちらの 《園城寺金堂》 (ジャンル:建造物)。




現在の金堂は、豊臣秀吉の正室・北政所、
通称 ”ねね” (または ”おね” とも) によって再建されたもの。
僕が訪れた日は、ちょうど特別開帳の期間中で、
堂内で、国宝の黄不動尊を立体化させた像 (重要文化財) が公開されていました。


2件目は、文化財収蔵庫で特別公開中の・・・・・




《紙本墨画五部心観(完本)》 (ジャンル:絵画)。
こちらは、インドから伝来した世界最古の金剛曼荼羅です。




描かれている仏様や法具、印相からそれぞれ、
微妙な感じでパワーが発せられていたのが印象的でした (笑)




そうそう、微妙といえば!
文化財収蔵庫の目の前に園城寺の別所寺院があったのですが・・・・・




その名が、なんと微妙寺でした。
名前だけで判断するのはなんですが、
なんとなくご利益がなさそうな気がします。


3件目は、学問所として創立されたという 《勧学院客殿》 (ジャンル:建造物)。




《勧学院客殿》 は一般公開されていませんが。
「一部でも観られれば、ハンティングしたと見なす」 というマイルールにより・・・・・




まぁ、一応、ハンティングしたということで。
「ズルい!」 などのクレームは受け付けません。あしからず。


ちなみに。
この要領で、同じく一般公開されていない 《光浄院客殿》 もゲットするつもりでしたが。




残念ながら、あいにくの工事中。。。
これは、さすがの僕でも (?)、 ”目にした” とは言い難く。
なくなく、ハンティングならず、というジャッジをくだしました。


ということで、気を取り直しての4件目は・・・




唐院大師堂に安置されている 《木造智証大師坐像(御廟安置)》 (ジャンル:彫刻) です。
こちらは、空海の甥で、三井寺の祖師である智証大師円珍を模した肖像彫刻。
頭頂部がコーンヘッドのように尖り、
眼は半目を開けているという異様なスタイルで表現されています。
毎年10月29日、智証大師の命日にのみ開扉されていますが、
今年2019年は特別に、10月29日から一週間開扉されているのだそうです。
さらに、《木造智証大師坐像(御廟安置)》 の左の厨子には、
その元となった国宝 《木造智証大師坐像(御骨大師)》 が安置されているのだとか (非公開!)。




また、普段は、向かって右の厨子に、
先ほど金堂で目にしたばかりの黄不動尊像が安置されているのだそう。
その他、《木造智証大師坐像(御廟安置)》 に関するエトセトラを、
鑑賞者が僕一人だったばかりに、お坊さんからマンツーマンでレクチャーされることに・・・。
慣れない正座で、完全に足が痺れてしまいましたが、お坊さんの話が終わる気配は無し。
途中から、智証大師に負けず劣らず半目になりました。


この日最後にゲットした国宝は、《園城寺新羅善神堂》 (ジャンル:建造物) 。
こちらは、智証大師が唐から日本へ帰国する際、
船中に現れたという新羅明神、その像である 《木造新羅明神坐像》 を安置するお堂です。
三井寺が所有する建造物なので、当然、三井寺の境内にあるのかと思いきや、
歩いて15分以上ほどの距離に、《園城寺新羅善神堂》 はひっそりと佇んでいました。





ちなみに、安置されている 《木造新羅明神坐像》 も国宝に指定されていますが。
秘仏であるために公開される機会は、ほとんど無いのだそう。
なんとも謎多き神様です。

とりあえず、一つだけ判明したのは・・・




新羅明神は牛乳を飲むらしいということ。
カルシウムはしっかり採っているようです。


今現在の国宝ハンティング数 1019/1120




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大津絵 -ヨーロッパの視点から-

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三井寺 (園城寺) の北隣に位置する大津市歴史博物館に行ってきました。




こちらは、旧東海道の大津宿や天智天皇の大津宮、
そして、浮世絵の題材でお馴染みの 「近江八景」 に関する資料が充実したミュージアムです。
そんな大津市歴史博物館が特にプッシュしているのが、大津絵。
大津絵とは、江戸から明治期にかけて、
主に大津宿で販売されていた素朴でユーモラスなタッチの民芸品です。




大津絵は、当時の旅人にとって、土産物として大人気だったそうですが。
実は、浮世絵の影に隠れてしまい、あまり紹介されていませんが、
いわゆるジャポニズムのブームの際に、大津絵も注目を浴びていたのだそう。
近年、特にヨーロッパで大津絵の再評価が高まっており、
今年4月から6月にかけて、フランスにあるパリ日本文化会館では、
欧米初となる大規模な大津絵展 “OTSU-E:Peintures populaires du Japon” が開催されたそうです。


そのフランスでの展覧会を記念して、
現在、大津絵のメッカ、大津市歴史博物館では、“大津絵 -ヨーロッパの視点から-” が開催中。




大津絵とヨーロッパ。
その意外な関係にスポットを当てた展覧会です。




展覧会の会場で何といっても特徴的だったのは、そのキャプション。
メインとなるのは、フランス語表記でした。
日本語訳は、その下にちょこんと添えられています。
まるでフランスでの展覧会を、そのまま日本に直輸入したかのよう!

・・・・・と思いきや、展示されている大津絵は、
そのほとんどが、実際に、フランスでの展覧会に出展されたものなのだそう。
いうなれば、里帰り展。ないしは、里帰り展です。
しかも、出展作の中には、ピカソが旧蔵していたものと同じモチーフの大津絵や、




あのミロがあまりにも気に入って、
2ショット写真を撮影したという大津絵の実物など、




貴重な大津絵が多数含まれていました。
世界的な展覧会が、地方の一ミュージアムで、
こんなにも、サラッと開催されているだなんて!
日本の文化度の高さを強く実感させられます。


さてさて、ピカソやミロもその魅力にハマったという大津絵。
今改めて、パリで展覧会が開催されるくらいですから、
きっと現代のパリっ子たちにも、ウケはいいのでしょう!
会場のパネルに、パリ日本文化会館で開催された大津絵展、
“OTSU-E:Peintures populaires du Japon” の入場者数が記載されていました。
今年4月24日から6月15日まで。
その会期中53日間の入場者数は、実に約7500人だったそうです。

・・・・・・・・・えっ??

ということは、1日平均141.5人。
それは、あまり人気が無いのでは。。。

まぁ、それはそれとしまして。
大津絵をモチーフにした立体物を紹介していたり。




大津絵からインスパイアされた日本の絵師たちの作品を紹介していたり。




大津絵そのものは素朴でゆるいテイストですが、
展覧会自体は、きちんと隅々まで作り込まれている印象を受けました。
さらに、展覧会オリジナルの大津絵グッズも気合が入っており、Tシャツはほぼ完売。
オリジナル缶バッジに関しては、頑張りすぎて・・・・・




何十種類も作成してしまったとのこと。
ディスプレイされていない缶バッジがいくつもありました (笑)
小規模ながら、見ごたえのある展覧会です。
星


ただ一つ気になったのが、キャプションの解説文。
全体的には、ユーモラスな語り口で、微笑ましいのですが。
時々、「ん??」 となるものが入り混じっていました。
例えば、こちらの 《鷹匠》 という大津絵。





キャプションには、こんな一文が添えられていました。

 本作も、もはや20世紀ギャグマンガの主人公である。
 彼は何を見てしまったのか、目玉は飛び出し、口も鼻も伸びている。
 「ワオー!ラッキー!」というセリフが聞こえそうだ。
 鷹もツッコミ役の相方にしか見えない。
 前衛大津絵マンガである。



いや、どこがだよ (笑)!

「ワオー!ラッキー!」 ってセリフが、しっくりきませんし。
鷹も全然相方に見えないですし。
正直、お笑いなめんなよ、と言いたいです (笑)


ちなみに、もっともしっくりこなかったのは、
歌川国芳による 《流行逢都絵希代稀物》 に添えられたキャッチコピー。




こちらは、当時の人気歌舞伎役者たちがそれぞれ、
大津絵のポピュラーなモチーフに模して描かれているという国芳らしい一枚です。
大津絵の人気キャラが勢ぞろい。
そこに注目して導き出されたキャッチコピーが、こちら↓




『大津絵軍団が勢揃い!ドラえもんもびっくり!』

なぜに、ドラえもん??
こういう場合、例えとしては、
アベンジャーズとかキディランドのがしっくりくると思いますよ。




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印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション展

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松方コレクションに、大原美術館コレクションに、
石橋財団美術館コレクションに、ポーラ美術館コレクションに。
日本には、世界にも誇れる西洋美術コレクションがいくつかあります。

そのうちの一つが、吉野石膏コレクション。
「タイガーボード」 で知られる吉野石膏株式会社と、
吉野石膏美術振興財団が所有する美術コレクションです。
とりわけ西洋美術のコレクションの質の高さは、国内でも有数!
ルノワール、モネ、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、マネ、コロー、アンリ・ルソー・・・etc
印象派の作家を中心に、印象派の先駆的な存在の巨匠から、
ポスト印象派やエコール・ド・パリの作家まで、近代西洋美術の重要人物はほぼ網羅。
まさに、近代西洋美術のおいしいとこ取りなコレクションなのです。


しかし、そんな吉野石膏コレクションを公開するための専門の美術館は無く。。。
その作品の多くは山形美術館に寄託されており、
一部が山形美術館で常設展示されているに過ぎませんでした。
しかし、今年2019年、ついに吉野石膏コレクションの全貌が明らかに!
現在、三菱一号館美術館で開催中の展覧会、
”印象派からその先へ ― 世界に誇る吉野石膏コレクション展” にて、
初めて本格的に、まとまった形で吉野石膏コレクションが紹介されています。




出展作品は、72点。
選りすぐりに選りすぐられた名品ばかりが紹介されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


その質の高さにも、もちろん驚かされましたが。
同じくらいに驚かされたのが、
吉野石膏コレクションと三菱一号館美術館の展示室との親和性!





「もともとここに展示されてたんじゃね?」
「てか、三菱一号館美術館コレクションなんじゃね?」
と思ってしまうくらいに、相性が抜群でした。


ちなみに、ポスターやチラシから、
印象派を全面に推した展覧会なのだろうと思い込んでいたのですが。
展覧会のラストで待ち受けていたのは、
意外にも、初期から晩年までのシャガール作品群でした。
実は、吉野石膏のシャガールコレクションは、
質、量ともに国内トップクラスを誇るのだそう。
今展では、その中から厳選された10点のシャガールの油彩画が、
”シャガールみたいな青い夜” の壁の色の展示室に飾られています。


(注:シャガールの作品は大人の事情により、掲載することができないため、『秘密のケンミンSHOW』 スタイルを採用しています)


印象派ファンはもちろん、シャガールファンにもオススメ。
こんな充実した西洋美術コレクションが、日本にあっただなんて!
コートールド美術館展も、オランジュリー美術館展もいいけど、吉野石膏コレクション展もね。
星星


そうそう。我ながら、どうでもいいことなのですが、
吉野石膏コレクションに関して、一つだけどうしても気になってしまったことが。
それは、ルノワールの 《庭で犬を膝にのせて読書する少女》 であるとか、


ピエール=オーギュスト・ルノワール 《庭で犬を膝にのせて読書する少女》 
1874年 油彩/カンヴァス 吉野石膏コレクション



マティスの 《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》 であるとか、


アンリ・マティス 《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》
1924年 油彩/カンヴァス 吉野石膏コレクション



無駄に長いタイトルのものが、ちらほら含まれていたこと。
《庭で犬を膝にのせて読書する少女》 は、《庭で読書する女》 で十分ですし、
《緑と白のストライプのブラウスを着た読書する若い女》 も、《読書する若い女》 で良いような。
他にも、コローの 《牧場の休息地、農婦と三頭の雌牛》 や、
クールベの 《ジョーの肖像、美しいアイルランド女性》
セザンヌの 《マルセイユ湾、レスタック近郊のサンタンリ村を望む》 などもありました。
どの作品もタイトルが無駄に長い!
あえて、そういうタイトルのものを選んでいるのでしょうか。


最後に、個人的に妙に印象に残った作品をご紹介いたしましょう。
メアリー・カサットによる 《マリー=ルイーズ・デュラン=リュエルの肖像》 です。




ヘアスタイルが、どこか古き良きアメリカ風。
『奥様は魔女』 とか、その手のドラマに登場していそうな感じです。
何よりも気になるのは、犬の抱き方。
抱いているというか、凄腕の殺し屋が、
首をへし折って殺す時みたいな態勢になっています。
可愛い顔して恐ろしい少女です (←?)。




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凹凸に降る

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現在、ミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションでは、
冬の企画展として、“凹凸に降る” という展覧会が開催されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


こちらは、『凸凹 (おうとつ)』 をキーワードに、
浜口陽三のメゾチント作品と、現代作家の作品を合わせて紹介する展覧会です。
星星


参加している現代作家は、全部で3名。
まず1人目は、国内外に活躍の場を広げる彫刻家の中谷ミチコさん。
中谷さんといえば、こちらのような壁に掛けるレリーフ作品でお馴染みです。




一見すると、普通のレリーフ作品のようですが、
近づいて見てみると、少し・・・いや、かなり不思議なことに気づかされます。





レリーフなので、立体は立体なのですが、
浮かび上がっているのではなく、沈み下がっている (?) のです。
中谷さんが手がけるレリーフ作品の制作方法は、実に独創的。
まずはじめに粘土で半立体像を作ります。
そして、それを石膏で型取りします。
ブロンズ彫刻の場合、その完成した石膏型にブロンズを流し込むわけですが。
(当然、最終的には、石膏型は無くなります)
中谷さんのレリーフ作品は、石膏型に透明、もしくは着色した樹脂を流し込みます。
そして、表面をフラットに仕上げて、作品は完成。
凸だった粘土製の半立体像が、凹のレリーフ作品に。
唯一無二の作風です。




樹脂で固められた彼女の作品を鑑賞していると、
まるで水面を覗き込んでいるかのような錯覚に陥ります。
もし、フッと息をしたなら、波紋が立ってしまうのでは?
作品からは、そんな繊細な印象を受けます。
今展では、そんな中谷さんの新作だけでなく、浜口陽三作品とのコラボや、




近年手がけているボックス型の作品も楽しむことができました。




さてさて、2人目の参加作家は、滝澤徹也さん。
美術家でもあり和紙職人でもある異色の人物です。
その作風は実に多岐にわたっていました。
例えば、《蜘蛛の巣-ジョウログモ-》 という作品。




こちらは、和紙を作る過程で出た灰汁を使ったインクを、
本物の蜘蛛の巣に塗り、それを自作の和紙で写し取ったという作品です。
まさか、虫を捕らえるつもりが、
巣ごとごっそり滝澤なる人間に取られてしまうとは。
この巣を作ったジョロウグモは、想像だにしていなかったことでしょう。

また例えば、こんな作品も。




ノーヒントでは、何が何だかよくわからないでしょうが。
左側に飾られているのは、それぞれ滝沢さんがガンジス川に入って制作した作品です。
上は、ガンジス川に和紙を入れ、その流れを写し取ろうとしたもの。
下は、ガンジス川の水で制作した和紙なのだそうです。
なお、右側に飾られている3点の作品は、フィヨルドで制作されたのだそう。
海岸で見つけた廃油のようなものを岸壁に塗りつけ、
その岩肌を和紙でガシガシと写し取ったものなのだとか。
どの作品も、制作スタイルがワイルド。
『クレイジージャーニー』 が終わってなかったら、いつか番組で取り上げられていたことでしょう。
そんな滝沢さんのワイルドな作風にも心を打たれましたが、同じくらいに、
ガンジス川やフィヨルドの大自然にも負けない和紙の強さにも心を打たれました。


3人目の参加作家は、小野耕石さん。
2015年にVOCA賞を受賞し、ここ近年は個展も数多く開催。
まさに、人気・実力ともにトップクラスの現代アーティストです。
小野さんといえば、手描きでドットの版を作り、
それをシルクスクリーンで数十~百回と摺り重ねる作品で知られています。





しかし、今展の主役は、そのスタイルの作品ではありません。
1階の展示室の中央に飾られていたのは、今から約15年前、
小野さんがミュゼ浜口陽三・ヤマサコレクションで美術館デビューを果たした際の作品。




その名も、《この本が知的要素のみで成り立った今それは美と芸の学術として成立しただ純粋に絵を描くことを失ったものである。》 です。
(↑B'zの 『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』 よりも長い!)

フィルムにまずインクを塗り、乾いたらペリペリと剥がします。
(海苔の作り方に近いものがあるような)
その作業をひたすら繰り返し、何百、何千ものインクを重ねたのが、こちらの作品です。




形は広辞苑をモチーフにしているとのこと。
当然、実際の広辞苑は紙とインクで出来ています。
しかし、こちらの 《この本が~》 は、すべてがインク。
インクの塊です。
つまり、広辞苑における知識の部分100%というわけなのです。


さて、《この本が~》 が発表されてから約15年、
地下1階の展示室では、小野さんによる最新作がお披露目されていました。




その名も、《絵を描く事を失ってなお表現が固定観念からの通過を語るかぎり 
版と支持体からの自立を経ても重力からの恩恵と制限から解放されることはない》
です。
版を重ねること、なんと7206枚!
重さは、約80キロ!
完成までに2年かかったという超大作です。
《絵を描く事を~》 も、《この本が~》 と同じく本をモチーフにしているそうですが。
形は、より抽象的になっていました。
そして、黒一色だった 《この本が~》 と違い、色の層が重ねられているのも特徴的です。

物体としては、インクの塊でしかないのですが。
まるでモノリスのような、偉い人の墓石のような、
もしくは、とても大切なことが刻み込まれた石碑のような、絶対的な存在感がありました。

今やアメリカでは売り上げの3分の1近くを電子書籍が占めているのだそう。
そう遠くない未来、インクで刷るという行為は無くなってしまうかもしれません。
そんな現状に対し、《絵を描く事を~》 は、「インク舐めんな!」 と主張しているかのようでした。
《絵を描く事を~》 は、まず間違いなく現時点での小野さんの最高傑作です。
観るべし!




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新・無料で観れる 美術百選 《node hotel(京都府京都市)》

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京都市の中心部、四条烏丸エリアに、
今年7月26日にオープンしたばかりのnode hotel(ノード ホテル)。




「アートコレクターの住まい」 をコンセプトにしたホテルです。
全25室ある客室には、こだわりのオーセンティックな家具と、
実際にアートコレクターが世界中で収集した作品が飾られているのだとか。


・・・・・・・それらの作品も、是非、目にしたいところですが。
客室に関しては、もちろん宿泊費が発生します。
「無料で」 がコンセプトのこの企画的には、今回は諦めることに。
とはいえ、無料で楽しめる1階のオープンスペースにも、たくさんアート作品が飾られていました。

例えば、こちらの壁の左に飾られているのは、加藤泉さんの作品です。




現在、原美術館とハラ ミュージアム アークで、
自身初となる大々的な個展が開催中の加藤泉さん。
そんな彼の “らしさ” が詰まったドローイング作品です。


また例えば、こちらに飾られている巨大な絵画作品は、井田幸昌さんによるもの。




井田幸昌さんは現在20代という若さで、
すでに国内外問わず活躍しているアーティストです。
あのZOZOの創業者・前澤さんも、井田さんに注目しているのだそう。
ということは、ひょっとしたらひょっとすると、
2023年に井田さんは前澤さんと一緒に月に行くのかもしれませんね。


さてさて、node hotel1階のオープンスペースの奥は、カフェ&バーとなっています。
こちらは、宿泊客以外も利用可能です。
その壁には、杉本博司さんの 《海景》 シリーズや、




アラーキーさんの大型写真作品が飾られていました。




ちなみに、縛られているモデルは、そう、あの “世界の歌姫” 。
レディ・ガガです。
こんなガガ様の姿を見せつけられた日にはもう・・・・・。
バーなのに、酔える気がしません。
ポーカーフェイスでいられる自信がありません。


と、そんなアートがいっぱいのnode hotelで、
是非、観ておきたい、いや、嫌でも目に飛び込んでくるのが、こちらのペインティング作品です。




新・無料で観れる 美術百選 092  五木田智央 《無題》


作者は、五木田智央さん。
近年、国内外で高い評価を得ている日本人アーティストの一人です。
一度見たら忘れられないほどインパクトがある ‘顔のない巨大な肖像画’ でお馴染みの五木田さん。
すっちーみたいなヘアスタイルの女性も、やはり顔が塗り潰されています。

ちなみに、こちらの五木田さんの作品が飾ってあるのは、フロントの背後の壁。
チェックイン、チェックアウトの際に、画面の女性に威圧されること請け合いです。




ところで、この写真を撮影した時のこと。




何も言わずとも、フロントの人が察して、サッと屈んでくれました。
アートも一流。サービスも一流のホテルです。


<無料で観れる美術 データ>

node hotel

住所:京都市中京区四条西洞院上ル蟷螂山町461
アクセス:○阪急京都線 「烏丸」 駅より徒歩約6分
     ○京都市営地下鉄烏丸線 「四条」 駅より徒歩約6分




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流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美

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この秋、京都国立博物館で開催されているのは、
“流転100年 佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美” という展覧会。
鎌倉時代の絵巻物 《佐竹本三十六歌仙絵》 を中心に、
和歌にまつわる美術や書の名品を紹介する展覧会です。




展覧会の目玉はもちろん、《佐竹本三十六歌仙絵》
小野小町や大伴家持ら、いわゆる三十六歌仙を描いた、
「三十六歌仙絵」 の中で最高峰と称される名品中の名品です。
旧秋田藩主・佐竹侯爵家に伝わったことから、《佐竹本三十六歌仙絵》 と呼ばれています。
そんな 《佐竹本三十六歌仙絵》 ですが、
1917年に、佐竹家からとある実業家へと売却されることとなりました。
ところが、すぐさまその実業家が経営難に。
再び、《佐竹本三十六歌仙絵》 は売りに出されます。
しかし、あまりにも高額であったため、購入できる日本人はいません・・・。

このままでは、外国人コレクターに購入され、海外に流出してしまう!!

そのピンチを救ったのが、近代の代表的な茶人の一人で、
実業家でもあった益田孝 (号・鈍翁) を中心とする財界人や古美術商でした。
日本の文化を救うアベンチャー的な彼らは、
あるとんでもないアイディアを思い付きました。

  そうだ 分断、しよう。

もともとは2巻だった 《佐竹本三十六歌仙絵》
それを、一歌仙ずつバラバラに分割し、
37人がそれぞれ1枚ずつ購入することにしたのです。
(「住吉大明神」 も含まれるので、正式には計37枚に分割)


重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 信明》 鎌倉時代 13世紀 泉屋博古館蔵 通期展示

重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 小大君》 鎌倉時代 13世紀 大和文華館蔵
(注:展示期間は11/6~11/24)



さてさて、当然ですが、三十六歌仙の中には、
人気がある歌仙もいれば、人気がない歌仙もいます。
ビックリマンシールやプロ野球カードのように。
そこで、公平を期すために採用された方法が・・・・・


(籤取花入とくじ。「絵巻切断」の当日、実際に使用されたくじ。花入はくじを入れていた筒を仕立て直したもの)


そう、くじ引きです。
お目当ての歌仙を見事手に入れた人もいれば、
全然欲しくない歌仙を購入せざるを得なかった人もいます。
ちなみに、言い出しっぺの益田孝は、
不人気だった僧侶の絵を引き当ててしまったのだそう。
それにより、一気に不機嫌になる益田。
結果、一番人気の 「斎宮女御」 を当てた人物が、
空気を読んで、益田孝の僧侶の絵と交換する羽目になったのだとか (笑)
(このエピソードには諸説あり)


・・・・・とこのように、《佐竹本三十六歌仙絵》 が分断されたのは、1919年のこと。
今からちょうど100年前の出来事です。
今展では、あの日以来バラバラになった 《佐竹本三十六歌仙絵》 が、100年ぶりに大集結しています!



(注:会場は撮影禁止です。記事に使用している画像は、主催者より特別に提供して頂いたものです)


全37点のうち、実に31点が一堂に会していました。
これを奇跡と言わずとして、なんと言う!
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 そのものには、そこまでピンと来ませんでしたが。
100年ぶりに再集合を果たしたその光景には、確かに震えるものがありました。
星星星


また、展覧会には、平安時代に書かれたという 「ちはやふる」 の歌や、


重要文化財 《寸松庵色紙「ちはやふる」》 平安時代 11世紀、京都国立博物館蔵、通期展示


「佐竹本」 と双璧をなす鎌倉の歌仙絵の名品で、
経緯は不明ながら、やはり断簡の 《上畳本三十六歌仙絵》 など、




見逃せない作品が多数出展されています。
正直なところ、《佐竹本三十六歌仙絵》 だけでも十分にお腹いっぱい。
それに加えて、あれも食べ。これも食べ。
おばあちゃん家に来たのかと思いました (←?)。


さて、話を 《佐竹本三十六歌仙絵》 に戻しますと、
女性歌仙や僧侶以外は、ほとんど同じような恰好なので、そこまで変わり映えはしないのですが。
表具は、所有者がそれぞれで仕立てているため、一つとして同じものは無し。
そのセンスを見比べてみるのもまた一興です。
中でも、特にセンスを感じたのは、益田孝の弟、英作による表具。


重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則》 鎌倉時代 13世紀 文化庁蔵 通期展示


絵画オン絵画。
中世の絵画をそのまま表具にしてしまうという斬新なセンスでした。
むしろ、彼に全部の表具を頼めばよかったのに。


ちなみに。
個人的に気になって仕方がなかったのは、
男性歌仙の装束の背中からビローンと伸びるアレ。


重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 源 公忠》 鎌倉時代 13世紀 京都・相国寺蔵 通期展示


重要文化財 《佐竹本三十六歌仙絵 大中臣頼基》  鎌倉時代 13世紀 遠山記念館蔵
(注:展示は10/29~11/24)



なぜに、そんなにも伸ばすのか。
万が一にも踏まれたら、よろけてしまうことは必至なのに。
特にインパクトがあったのは、《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 に描かれたアレ。


《上畳本三十六歌仙絵 藤原仲文》 鎌倉時代 13世紀 通期展示


ビエネッタの上の部分みたいになっていました。


 ┃会期:2019年10月12日(土)〜2019年11月24日(日)
 ┃会場:京都国立博物館
 ┃
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目 非常にはっきりとわからない

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宇都宮の空に、どこにでもいるようなおじさんの顔を浮かべてみたり。
何の変哲もないコインランドリーが、とんでもなく不思議な世界へと繋がっていたり。
資生堂ギャラリーのホワイトキューブの展示室を、ホテルそっくりな空間に変えてしまったり。


《たよりない現実、この世界の在りか》 制作:2014年 制作場所:東京/資生堂ギャラリー 撮影:加藤健


僕らが当たり前と思っている 「日常」 に、
ハッとした気づきを与え、目を見開かせてくれる現代芸術活動チーム。
それが、目【mé】
現代アーティストの荒神明香 (こうじんはるか) さん、ディレクターの南川憲二さん、
インストーラーの増井宏文さんの3人からなる旧ドリカム体制のアートユニットです。
国内外の芸術祭や展覧会に引っ張りだこの目【mé】
その待望となる初の大々的な個展が、いよいよ千葉市美術館で開幕いたしました!




展覧会タイトルは、“目【mé】 非常にはっきりと わからない”
どんな内容の展覧会なのか。
どんな作品が出展されるのか。
事前に情報が一切発表されないという異例の展覧会。
千葉市美術館の公式HPを観ても、どんな展覧会なのか全く想像がつきません。
まさに、“非常にはっきりとわからない” 展覧会です (笑)
ちなみに、公式HP上には、展覧会の告知動画もアップされていましたが・・・・・。




この動画を見たところでも、やはり非常にはっきりとわかりません!

ということで、早速、展覧会の初日に、千葉市美術館を訪れてきました。




現在、千葉市美術館は、2020年7月を目途に、絶賛リニューアル工事中!
中央区役所が移転した跡のスペースが、
千葉市美術館の新たな展示スペースになるとのことで、あちこちで工事が行われています。
それらの工事スペースを縫うように、目【mé】 の展覧会は開催されていました。
普段は、建物の7、8階が展覧会場ですが、今回は、早くも1階からスタート。




入館料を払うと、受付の人から、「AUDIENCE」 と書かれた黄色いシールを渡されました。
このシールを左肩に付けてほしいとのこと。
言われた通りに、「AUDIENCE」 シールを貼りました。




1階部分に関しては、写真撮影が可能となっています。




初日だったから、準備が間に合っていない。
・・・・・というわけではなく、この状態がアート作品。
とは言え、一体どういう狙いがあるのか、
この時点では、非常にはっきりとわかりません。

そして、メイン会場となる7階、8階へ。
普段、千葉市美術館は、8階から7階へ、という導線ですが。
今回はどちらから観ても良いとのこと。
いつもの導線が染みついているので、まずは8階を訪れます。
エレベーターが開くとそこに広がっていたのは・・・・・・・・・・






と、残念ながら、展覧会に関しては、
これ以上は何も言えませんし、何も語れません。
というのも、この展覧会に関して、ネタバレ禁止が徹底されているのです。




1年をかけて準備してきて、目【mé】 の本人たちも、
ネタバレしないよう細心の注意を払ってきたとのこと。
それを聞いてしまったら、僕も言うわけにはいきません!
展覧会が終了するまで、口【kúchi】を噤みたいと思います。

あぁ、でも、7階8階で体験したことを言いたい!!

言いたいのに、言えない。
郷ひろみ状態です (←?)。




ヒントもダメとのこと。
「だったら、記事にするなよ!」 とお叱りを受けそうですが。
一人でも多くの人に、この展覧会を観てほしいので、今回はあえて記事にしています。
とりあえず、一つ言えることは、
“こんな大掛かりな仕掛けの展覧会を、実現させてしまうだなんて!” ということ。
7階8階の展示室を使って、とんでもないことが行われています。
目【mé】 のメンバーはもちろん、スタッフさんがエラい。
そして、開催した千葉市美術館もエラい。
きっと数年後数十年後に、語り継がれているであろう展覧会です。
星星


さてさて、これから訪れようという方に、僕から一つアドバイスを。
実は、最初に7階8階両方の展示室を30分ほど鑑賞した際は、

「ん?!あっ!そういうことか!」

とは思ったものの、これまで観た目【mé】 の他の作品ほどの衝撃はありませんでした。
「ふんふん。なるほどね~」 くらい。

しかし、彼らが、そんな単純なだけの作品を作るはずがないと思い、
お昼ご飯を近くのお店で食べた後に美術館に戻り、再び7階8階を訪れたのです。
(今展のチケットはパスポート制。会期中、何度でも入場できます)
すると、先ほど訪れた時とは違って・・・(←あっ、これもギリギリ、ネタバレになりそうですね)。
つまり何を言いたいかというと、
30分ほどの滞在では、目【mé】 の仕掛けに気づかない可能性が大ということ。
少なくとも、それ以上の時間滞在するか、
時間を置いて、何度か訪れたほうがいいでしょう。


ちなみに。
一般のお客さんが感想を発信するのは、構わないそうです。
ドラマ 『あなたの番です』 の放送後に、
視聴者がSNS上で散りばめられた謎を考察するのが流行ったように。
“目 非常にはっきりとわからない” を観た鑑賞者が、
「仕掛けに気づいたぞ!」 や 「目【mé】 の狙いはこうに違いない!」 など、
展覧会に仕掛けられた謎を考察して、SNSで発信していくことでしょう。

訪れた人は間違いなく、誰かと感想をシェアしたくなるはず。
もし良かったら、この記事のコメント欄を、そういう場としてご活用くださいませ。




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開館記念 福美コレクション展

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今年10月1日。
渡月橋や竹林の道でお馴染みの京都屈指の観光地・嵐山に、
「100年続く美術館」 をコンセプトにした福田美術館がオープンしました。


美術館前庭(水盤)


オーナーは、福田吉孝さん。
なんと、あのアイフルの社長です。
「嵐山に美術館はあるんか?」 と気になってしまったので、早速、足を運んでまいりました。





現在、開催されているのは、“開館記念 福美コレクション展” という展覧会。
福田美術館のコレクションの中から、
選りすぐりの約80点を前後期に分けて紹介する展覧会です。




さてさて、選りすぐりとは言っても・・・・・。
日本には、すでにたくさんの美術館があります。
そして、それらの美術館で、あらかた超一級の日本画の名品を目にしてきました。
正直なところ、今さら驚くほどの日本画なんてないだろう・・・と、高を括っていたのですが。

それは大きな間違いでした!

伊藤若冲の鶏が大集合した屛風はあるわ。




『ザ・大観』 とでもいうべき富士山をモチーフにした横山大観の絵はあるわ。




過去に目にしてきたどの御舟作品よりも大きな御舟の大作はあるわ。




ちなみに、後期の出展となりますが、
約80年前に公開されたきり行方不明となっていた木島櫻谷の作品はあるわ。


木島櫻谷 《駅路之春》 1913年 屏風 6曲1双 絹本着色金銀泥 各170×375


他にも、いちいち挙げていたら、キリがないほどに、
尾形光琳や円山応挙、葛飾北斎、竹内栖鳳、竹久夢二といった、
超一級流画家の超一級品ばかりが、会場を埋め尽くしていました。
まさか一美術館の日本美術コレクションが、これほどのクオリティだったとは!
岡田美術館が開館して以来の衝撃を受けました。
星星


なんでも、福田さんは15年前より、
「創業の地である京都に恩返しがしたい!」 と、美術館建設を構想していたのだそう。
その一心で、“たとえ美術に詳しくない方が見ても、感動を与えられるような” 美術品を収集。
現時点で、約1500点もの美術コレクションを形成しているそうです。


ちなみに、出展されていた作品の中で、
個人的には特にお気に入りなのは、竹内栖鳳による虎の作品。




野生の虎の獰猛さと、ネコ科の動物である愛らしさ。
その両方が兼ね備わっていました。
なお、隣に飾られているライオンの作品も同じく栖鳳によるもの。
今にも飛び掛かってくるかのような、その迫力に思わず足が竦んでしまいました。
松島トモ子の気持ちが味わえる作品です (←?)。

また、菱田春草の 《梅下白猫》 もお気に入りの一枚。




春草といえば、黒い猫のイメージがありましたが。
白い猫も描いていたのですね。
目つきはそこまで可愛らしくなかったですが、
ちょこんとしたポーズと、フサフサした毛並みは、なんともキュート。
いつまでも眺めてられる一枚でした。

そうそう、猫と言えば。
後期には、速水御舟による猫の作品、《春眠》 が出展されるそうです。


速水御舟 《春眠》 1921~1925年 軸装 絹本着色 140.7×51


なんという可愛らしさ!
この愛らしい姿を見ていたら、
是非、実物に会いたくなってきてしまいました!
後期にも行くべきなのでしょうか。
どうする?福田美術館。




↑もはや脳内はこんな感じです。


ちなみに。
コレクションがもちろん魅力的な福田美術館ですが、
ポーラ美術館を設計した安田幸一氏による美術館の建物や、




オリジナルグッズが充実したミュージアムショップも魅力的でした。




さらに魅力的なのが、ミュージアムカフェ。
あの人気のベーカリーカフェ 『パンとエスプレッソと』 が手掛けたミュージアムカフェです。
その名も、『パンとエスプレッソと福田美術館』。




ここのカフェからは、なんと渡月橋を一望することが出来ます。




あまりにもロケーションが素敵なので、
インスタ映えしそうな写真が簡単に撮れてしまいますよ。




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