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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画

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丹下健三、岡本太郎、柳宗理、亀倉雄策、瀧口修造・・・etc
創立メンバーに、錚々たる顔ぶれが揃う日本デザインコミッティー。
1955年の設立以来、日本のデザイン界に大きく貢献してきたデザイン組織です。
今もなお活動を続けており、2019年現在26名のデザイナーや評論家らが参加しています。

そんな日本デザインコミッティーのメンバー全員の原画、
すなわち、スケッチや図面といった “めったに見られない” モノを見せる展覧会が、
現在、六本木の21_21 DESIGN SIGHTで開催されています。
その名も、“㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画” です。




さてさて、展覧会の入口でまず紹介されていたのは、
これまで日本デザインコミッティーが開催してきた展覧会のポスターやDMの数々。




こんなにも沢山の展覧会を開催していたとは!
日本のデザイン界に大きな影響を与えていながらも、
日本デザインコミッティーの活動は、一般的には “めったに顧みられていない” ようです。

続く部屋では、21_21 DESIGN SIGHTでの展覧会では、
わりとポピュラーな3つの壁面を使ってのプロジェクション。
今回は、原研哉さんや山中俊治さんら現役メンバー4人の、
“めったに見られない” であろうアトリエでの様子が映像で紹介されていました。




そして、展覧会のメインとなるのは、
日本デザインコミッティーのメンバー26人 (略して、JDC26?) の原画の紹介。




「ロッテ キシリトールガム」 や 「明治 おいしい牛乳」 のデザインで知られる佐藤卓さんや、




HAKUHODO DESIGNの代表取締役社長で、
「サントリー 伊右衛門」 のブランディングを手がけた永井一史さんをはじめ、




現在、日本の第一線で活躍するトップクリエイターたちの原画が紹介されています。
何より印象的だったのは、トップクリエイターとはいえ、
いきなりパッと正解が導き出されているわけではないということ。





アイデアをいくつも出し、スケッチを何枚も描き、
模型を何個も作って、初めて素晴らしいデザインが生まれているのですね。
トップクリエイターほど、人よりも手を動かしているようです。


さてさて、展覧会でもっとも印象に残っているのは、
個人的に大ファンのアーティスト鈴木康弘さんの展示ケース。




かねてより、鈴木さんの発想力には驚かされてきましたが、
今回の展覧会でその秘密の一端が垣間見えたような気がしました。
なんでも、鈴木さんは大学卒業以来、
思いついたことをノートに書いているのだとか。




その数、なんと約300冊!
興味深かったのは、日付や順番を特に決めていないこと。
たまたま開いたページに書き込むようにしているのだそうです。
なるほど。あえてランダムにしておいた方が、
いろんな時代の自分のアイデアがミックスされて、さらに新しい発想が生まれそうです。
早速、自分もやってみようと思います。


それから、『non-no』 や 『MORE』のタイトルデザイン、
『スコッティ』 や 『ウーノ』 パッケージデザインで知られる松永真さんも印象深かったです。




特に興味深かったのが、こちら↓




どこかで見たことような気はするけど、何だったっけ・・・・・と思ったら。




ベネッセのロゴでした。
普段何気なく目にしているデザイン。
それらは、すべて0から1になったもの。
その過程 (=頭の中) を覗ける、
確かに “めったに見られない” 展覧会でした。
星


ちなみに、タイトルにも “デザイナー達” とあるので、
デザイナーをメインにした展覧会なのだろうと思っていたのですが。
東京、安曇野、両館のちひろ美術館の設計で知られる内藤廣さんや、




山梨県にある中村キース・へリング美術館を設計した北河原温さんなど、




建築家の “頭の中” も紹介されていました。
中でも特に “頭の中” がグチャグチャしていたのは、こちらの方です↓




僕も典型的なO型なので、小学生時代には、
引き出しの奥にプリントがビッシリと詰まっていましたが、
それ以上に、展示ケース内に、メモ書きがビッシリと詰まっています。
メモ書きの主は、隈研吾さん。




↑こちらの近未来のゴキブリホイホイみたいなのは、
来年春に開業予定の高輪ゲートウェイ駅のスタディ模型とのことでした。


さてさて、人様の頭を、
それも、日本トップクラスのクリエイターの頭を覗くのは、かなりの重労働。
もし疲れたら、無理せずこちらで休んでくださいませ。
日本デザインコミッティーの新旧メンバーがデザインした椅子の数々です。





座っていいとも。



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新・無料で観れる 美術百選 《○○○本社ビル(愛知県名古屋市)》

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日本でもっとも古い民放局、中部日本放送 (CBC)。




その本社ビルの壁面の一部に、
ひときわ目を惹く大理石のモザイク壁画があります。
タイトルは、《芸術と平和》





作者は、この人。




『Tamiji』 こと、北川民次 (1894~1989) です。
19歳で渡米し、ニューヨークで8年ほど美術を学んだ後、キューバへと渡りました。
しかし、そのキューバで日本人に全財産を持ち逃げされ、
汚れたキャンバスと絵の具箱だけを持ち、海を渡ってメキシコへ。
水があったのでしょうか、以後、15年ほどメキシコに滞在しています。
メキシコで壁画運動に深い共感を覚え民次は、
帰国後、ずっと壁画の制作を夢見ていたとのこと。
《芸術と平和》 は、その夢が実現した記念すべき作品なのです。

ちなみに。
北川民次の絵には、バッタがたびたび登場します。
日本の絵画では、あまりバッタが描かることはないですが、
メキシコの絵画では、わりとポピュラーなモチーフなのだとか。
というのも、メキシコにおいてバッタは古代から神の使いなのそうです。
《芸術と平和》 にも、もちろんバッタは登場していました。




さてさて、CBCビルから歩いて10分ほど、
とある会社の本社ビルにも、北川民次の壁画があります。




こちらが、その壁画。
縦3m×横15mの巨大な作品です。




もちろんバッタもちゃんと描かれています。




1962年にビルが落成したとともに、この壁画も完成したのだとか。




さて、ここでクエスチョンです。

『問題』
 明治32年に名古屋で創業した、
 北川民次の壁画が本社の1階にあるこの会社名は何でしょうか?





ヒントは、ズバリこの壁画の中にあります。





輪になって遊ぶ子どもたち。
どんな歌が聞こえてくるのでしょう?
また、依頼主で創業者での蟹江一太郎からは、
「トマトはなるべく赤く」 という注文があったそうです。
確かに、トマトの瑞々しさが際立っていますよね。

正解は、日本で初めてトマトソースとトマトジュースを販売し、
世界で初めて、ガラス瓶ではなく合成樹脂製チューブに入れたトマトケチャップを販売したあの会社。
そう、カゴメです。




ちなみに、壁画のタイトルは・・・・・

新・無料で観れる 美術百選 094  北川民次 《TOMATO》


余計なモノを足さない。
無添加なタイトルです。


<無料で観れる美術 データ>

カゴメ本社ビル

住所:愛知県名古屋市中区錦3-14-15
アクセス:○地下鉄東山線「栄駅」より徒歩約4分
     ○名鉄瀬戸線「栄町駅」より徒歩約6分




この美術室を盛り上げるワンクリックも、無料で出来てしまいます↓
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第百八十話 国宝ハンター、繰り返す!

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前回までのあらすじ~

お待たせしました。
お待たせしすぎたかもしれません。
昭和最後の国宝ハンター、とに~でございます。
日本全国にある1120件の国宝を見て回る。
そんな無謀な挑戦に挑み続けて、早9年。
ついにゴールまで、残り100件を切ったのでございます。
ナイスですね~。



今回は、山口県岩国市へとやってきました。
岩国市と言えば、そう、錦帯橋。
東京の日本橋、長崎県の眼鏡橋に並んで、日本三名橋に数えられています。




なお、日本橋と眼鏡橋は重要文化財に指定されていますが、
錦帯橋に関しては、国宝にも重要文化財にも指定されていません。
が、通行料は取られます。

そんな錦帯橋を渡った先にあるのが、吉川史料館。




岩国藩の藩主、吉川家に伝来した歴史資料や美術工芸品などを収蔵する史料館です。
ちなみに、現在の形の錦帯橋を架橋したのが、吉川家3代目領主の吉川広嘉。
岩国市にとって、実に重要な一族といえましょう。
現在こちらでは、“武家のたしなみ展ー文芸を中心に。” という展覧会が開催中。




10月1日から11月30日までの期間限定で、
国宝の 《太刀〈銘為次(狐ヶ崎)〉》 (ジャンル:工芸品)が展示されていました。




ちなみに、『狐ヶ崎』 という号は、
1200年に駿河国で発生した 「梶原景時の変」 に由来します。
「梶原景時の変」 の際、吉川家2代目の吉川友兼は、
この刀で梶原景時の三男・梶原景茂を見事討ち取りました。
その場所こそが、狐ヶ崎。
なお、深い傷を負った友兼は、景茂を討ち取った翌日に戦死してしまいます。
自分の命と引き換えに、一族が繁栄する功績を残した友兼。
その地名を忘れない、“リメンバーパール・狐ヶ崎” というわけです。


お次は、吉川史料館のすぐ近くにある岩国美術館へ。
こちらは、岩国市が運営する公立美術館ではなく、
岩国の実業家・柏原氏のコレクションを展示紹介する美術館です。




現在、こちらでは・・・・・




《刀〈金象嵌銘天正十三十二月日江本阿弥磨上之花押/所持稲葉勘右衛門尉(名物稲葉江)〉》 (ジャンル:工芸品)が展示中です。
越中の名刀として諸大名が欲しがったという郷義弘の刀。
しかし、作刀の時に、ほとんど銘を刻まなかったため、
「郷とお化けは見た事が無い」 と言われるほど激レアな刀とされていました。
そんな郷義弘の刀の中でも、激レアなこちらの名物稲葉江。
長らく、東京のとある方の個人所蔵だったので、一般公開される機会はありませんでしたが、
このたび、岩国美術館が購入し、“激レア刀さんを連れてきた。” ため、一般公開されることに。
柏原さん様々です。


さてさて、岩国市を後にし、嚴島神社へ!
2016年以来、3年ぶりの訪問です。
久しぶりに訪問した嚴島神社は・・・・・・




アイコンともいうべき大鳥居が工事中で、残念なことになっていました。
しかも、干潮時に訪れてしまったため、、、




海に浮かんでいる感が全くなし!


これでは、ただの普通の神社です。




とはいえ、今回の目的は、嚴島神社の建造物にはあらず。
特別公開中の 《黒韋威胴丸〈兜、大袖付/〉》 (ジャンル:工芸品) をハントしに来たのです。
神社内は以前たっぷり観たので、今回はサーッと巡り、
神社の入場料とセットで購入した宝物館へと足を運びました。




・・・・・・・・・・・が、しかし。
探せども探せども、《黒韋威胴丸〈兜、大袖付/〉》 はありません。
不安に思って受付の人に尋ねてみると、こんな回答が。

「あぁ、それは宝物収蔵庫のほうでやってるヤツね。別料金かかるけど。」

・・・・・あれっ?
このやり取り、前にも一度したことがあるような??

とりあえず案内された宝物収蔵庫に行ってみることに。




!!!!!!

疑心から確信に変わりました。

“あちゃー。この一連、3年前に訪れた時にも、やってるわ。。。”

あまりにも全く同じことを繰り返しているので、
一瞬、タイムリープしたのかと錯覚してしまったほどです。
成長しろよ、自分!


今現在の国宝ハンティング数 1024/1120




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厳島に遊ぶ -描かれた魅惑の聖地-

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日本人だけでなく、外国人観光客も多い嚴島神社。
何といっても最もインスタ映えするのは、やはり海に浮かぶ真っ赤な大鳥居でしょう。
(僕が訪れたときは、残念ながら工事中でしたが・・・)




さて、その写真を撮ろうとすると、
必ずといってイイほど映り込んでしまうのが、対岸にある白い怪しげな建物です。





この建物の正体は、美術館。
「平等大慧会」 なる宗教法人の設立者、
梅本禮暉譽 (れいきよ) が収集した美術コレクションを展示公開する美術館です。
昭和56年に開館した当初は、王舍城美術寶物館という怪しさ満点の名称でしたが。
平成17年の全面リニューアルオープン時に、
海の見える杜美術館というジブリ感のある (?) 名前に変わったそうです。

さて、先日、そんな海の見える杜美術館を初めて訪問してみることに。
嚴島神社から観ても、だいぶ怪しげでしたが、
近付いてみると、怪しさはその比ではありませんでした!




金色の仏像が3体も乗ってるわ。




妙なウサギはいるわ。




「天の橋」 なるものはあるわ。




若干・・・いや、だいぶ引き返したくなりましたが、
最寄り駅である宮島口駅から、わざわざタクシーで来たので、入館してみることに。
ちなみに、宮島口駅からは徒歩だと約1時間ほどかかります。
他にバスなどの交通手段はないため、タクシーを利用するより仕方ありません。
さて、そのタクシーの領収書を受付で見せると・・・・・




とんでもないことが起こったのです。

入場料が無料になりました!

海の見える杜美術館には、「タクシー来館特典」 というものがあり、
どういう仕組みなのかイマイチよくわからないのですが、タクシーで来館した場合、
タクシー1台につき1名の入館が無料になるのです。
静嘉堂文庫美術館や豊田市美術館など、
タクシーの利用で割引になる美術館はいくつかありますが。
無料になるのは、日本全国広しといえど、おそらく海の見える杜美術館だけ。
なんて太っ腹な美術館なのでしょう!
怪しげな美術館と思い込んでいて、ゴメンナサイ (←現金なヤツ!)。


ちなみに。
館内は一部を除いて、写真撮影が可能です!
瀬戸内海を望む窓のある空間に、
選りすぐりの香水瓶の数々が展示された香水瓶展示室も、




日本屈指の竹内栖鳳コレクションを年4回のテーマ展示で紹介する竹内栖鳳展示室も、




写真撮影が可能となっています。
もちろん、企画展示室もOK!
なお、現在、企画展示室では、
“厳島に遊ぶ -描かれた魅惑の聖地-” という展覧会が開催されています。




今も昔も観光地として人気の厳島。
江戸時代以降には、多くの絵師によって、
名所としての厳島が描かれたのだそうです。
会場では、厳島をモチーフにした屏風絵から、




厳島をモチーフにした浮世絵、




江戸時代のガイドブック的なものまで、




さまざまなバリエーションの厳島が紹介されていました。
全体的に印象的だったのは、
嚴島神社の近辺で宴会をしている人が多かったこと。




世界遺産の近くでのこんな暴挙は、
今なら間違いなく許されないでしょうが。
昔は、かなり大らかだったのですね。

また、大らかといえば、鹿に対する扱いも。
僕が嚴島神社を訪れた際は、入り口から入ろうとしていた鹿を、
受け付けのおばちゃんが、必死の形相で 「シッシッ!」 と追い返していましたが。




かつては、本殿の中にも普通に鹿が歩いていたようです。
そして、鹿が本殿にいることを普通に受け入れていたようです。


なお、今回の作品の中で印象的だったのは、
17世紀江戸時代に描かれたというこちらの 《厳島図屏風》




デフォルメなのか、単に建物を描くのが苦手なのか。
よく見ると、ところどころがヘンテコな厳島図でした。
五重塔、小さすぎ。




大鳥居、建付け悪すぎ。




ちなみに、企画展でさまざまな厳島を楽しんだ後は、
海の見える杜美術館の “海の見える” たる由縁、うみもりテラスへ。




こちらでは、本物の厳島を眺めながらドリンクを味わうことが出来ます。




しかも、ドリンクは無料!




ドリンクバーのボタンを押そうと思ったら、
スタッフさんが僕の代わりに押してくれました。
至れり尽くせり。
星星




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箱根ナイトミュージアム

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彫刻の森美術館で、2018年2019年と開催された “箱根ナイトミュージアム”
「光のアーティスト」 こと高橋匡太さんが、
全面プロデュースを担当した参加型のライトアップイベントです。
例年大好評であったため、今年2019年も開催が決定しました!
しかも、ライトアップのエリアが拡大されたパワーアップver.とのこと。

「これは行くしかない!」 というわけで、
イベント初日の11月29日に、早速、箱根にある彫刻の森美術館を訪れてきました。




入り口を抜けると、まず目に飛び込んできたのは、たくさんの提灯。




実は、これらも高橋匡太さんによるアート作品です。
一見すると、普通の提灯のようですが、
内部には蝋燭ではなく、無線で色をコントロールするLEDが入っていました。
出会う彫刻や風景のライトアップの色に合わせて、提灯の光が変化するのだとか。
「見た目はアナログ。中身はハイテク。」 な作品なのです。




そんなLED提灯を一つ持って、いざ園内を散策。




彫刻作品がそれぞれライトアップされており、
昼間の姿とはまたガラっと違う表情を見せていました。
イルミネーションにはそこまで興味のない僕ですが、
このライトアップの光景には、思わずテンションがアップ。
インスタ女子ばりに、何枚も写真を撮ってしまいました。

ちなみに、気づけば、手持ちのLED提灯も色が変化しています。




さらに、何枚も写真を撮ってしまいました (笑)


高橋匡太 《Glow with Night Garden Project in Hakone》  岡本太郎 《樹人》
Photo: Mito Murakami



これまでに何度も彫刻の森美術館を訪れているので、
野外に設置された彫刻作品たちとは、すっかり顔なじみのようなもの。
良くも悪くも、新鮮味を感じることは少なかったのですが、
この日に限っては、デジャヴュの反対の現象 “ジャメヴュ” を感じっぱなしでした。
ライティングされた彫刻作品は、どれも新たな魅力が引き出されています。




これはすべて、高橋さんが一つ一つの作品に対してリスペクトがあるがゆえ。
どのようにライティングすれば、その作品の魅力がもっとも際立つかが考え抜かれていました。
ただ、色とりどりの光でライトアップすれば、インスタ映えして女性が喜ぶ。
日本橋界隈で行われているような、なんちゃってアートイベントとは全くの別物です。


さてさて、今年の “箱根ナイトミュージアム” の目玉は何といっても、
彫刻の森美術館屈指の人気作品 《幸せをよぶシンフォニー彫刻》 のライトアップでしょう!
《幸せをよぶシンフォニー彫刻》 は、
フランスのステンドグラスの巨匠ガブリエル・ロアールが制作した高さ18mのガラスの塔。
日中は、こんな姿をしています。





外観は、単なる地味なグレーの塔ですが、
その内部では、光と色のシャワーをめいっぱい浴びることができます。
そんな 《幸せをよぶシンフォニー彫刻》 がライトアップされた姿が、こちら。




塔自体が光を発し、外から観て楽しむ作品に様変わり。
まるで巨大なランタンのようでした。




なお、ライティングは絶えず変化。
赤くなったり、緑になったり、青になったり。
時おり、『アタック25』 を彷彿とさせる瞬間もあります。
さて、気になるのは、その内部。
夜間は、階段は上がれないようになっていましたが、踊り場までは入ることができました。




日中とは違って、内部が地味。
外が内で。内が外で。
逆転現象が起こっていました。


ちなみに。
こちらの 《幸せをよぶシンフォニー彫刻》 に関しては、
ダムタイプのメンバーでもある山中透さんの音楽とコラボしています。
光と音楽とのハーモニーも是非お楽しみくださいませ。




夜の世界に、彫刻が光り輝き、音楽が鳴り響く。
まさに絵に描いたようにロマンティックな光景が広がるイベントでした。
星星星
3つ星ではありますが、お一人様にはあまりオススメできません。
周囲のカップルやファミリー、友達連れが楽しげなのが、羨ましく感じられることでしょう (笑)
誰かを誘って行くのがベターです。
それと、防寒対策はしっかりと!




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岸田劉生展 ―写実から、写意へ―

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先日は、ひろしま美術館に行ってきました。




漢字ではなく、ひらがなの “ひろしま”。
似たような名前の広島県立美術館は、公立の美術館ですが、
ひろしま美術館は、創業100周年を迎えた広島銀行がそれを記念して設立した私立美術館です。
ちなみに、ひろしま美術館の創立に尽力したのは、
のちに頭取にまで上り詰めるも、当時はまだ一介の銀行員でしかなかった井藤勲雄。
自身も被爆者でもあった彼が、広島市民を勇気づけるべく、
「広島に美術館を」 を合言葉に設立したのが、ひろしま美術館なのです。


そんなひろしま美術館を真上から見ると、ご覧の通り↓




美術館の中央にある丸いドーム型の本館は原爆ドームを、
本館を取り巻く回廊部分は厳島神社の回廊を、それぞれイメージしているのだとか。
なるほど。広島の2大世界遺産が同時に味わえる美術館建築なのですね。


さて、まずは本館に入ってみましょう。




建物の中央にいたのは、
「ペンパイナッポーアッポーペン」 的なポーズを取る一人の女性。
近代ヨーロッパを代表する彫刻家マイヨールの 《ヴィーナス》 という作品です。




その彼女を囲むように、全部で4つの展示室がありました。
それぞれの部屋に展示されていたのは、
国内外で高い評価を得るフランス近代美術コレクション。




ミレー、ロダン、ルノワール、セザンヌ、シャガール、ピカソ…etc
西洋美術のオールスターが勢ぞろい。
赤ヘル打線に引けを取らないくらいの最強打線です。
しかも、本館の内部は全面的に写真撮影OK!
なんて素敵な美術館なのでしょう。
広島県民ではないですが、思わず広島銀行に口座を開設したくなりました (←?)。


セーヌ河を描いたモネの連作のうちの一つ、《セーヌ河の朝》 も、




ルドンのパステル画 《ペガサス、岩上の馬》 も印象的でしたが。




やはり何といっても一番印象に残ったのは、
ひろしま美術館コレクションのマスターピースともいうべき作品、
ゴッホが亡くなる2週間前以内に描かれたとされる 《ドービニーの庭》 でしょう。




木々や草原だけでなく、空や建物まで、
全体的に緑色のトーンでまとめられているのが、印象深かったです。
しかし、よく見ると、一か所だけ不自然に茶色くなっている箇所が。




ここは一体??
実は、この絵と全く同じ構図の作品が、
スイスのバーゼル市立美術館にもあります。


フィンセント・ファン・ゴッホ 《ドービニーの庭》 1890年 バーゼル市立美術館蔵


2つの 《ドービニーの庭》 を見比べてみましょう。
バーゼル市立美術館ver.のほうには、その箇所に黒猫が描かれていますね。
ひろしま美術館ver.のほうにも、もともとは黒猫が描かれていたのだそうです。
しかし、ゴッホの死後、その黒猫は、
彼の友人でもあった画家シェフネッケルによって塗り潰されてしまったのだとか。

・・・・・・・・・・シェフネッケルめ、余計なこと、しやがって!

というわけで、絵から消えてしまった黒猫ですが、
ひろしま美術館の公式HPを隅々まで眺めてみると、出会えるかもしれませんよ。


ちなみに、現在、ひろしま美術館では特別展として、
“岸田劉生展 ―写実から、写意へ―” が開催されています。




こちらは、麗子像でお馴染みの洋画家・岸田劉生に焦点を当てた展覧会です。
先日まで東京ステーションギャラリーにて、
大々的な岸田劉生展が開催されていましたが、それとは別物の展覧会。
ひろしま美術館と深い関わりのある笠間日動美術館の所蔵品を中心に、
絵画や版画、装丁画など約170点の作品で、初期から晩年までの画風の変遷をたどるものです。
若い頃は、デューラーやヤン・ファン・エイクの影響を受け、写実的な絵を描いていた劉生ですが。


岸田劉生 《支那服を着た妹照子像》 1921年 ひろしま美術館蔵


晩年に近づくにつれ、対象をリアルに描写する “写実” 的な作風から、
対象の本質を “写意” 的に表現する東洋的・日本的なスタイルへとシフト。


岸田劉生 《りんご》 笠間日動美術館


後半生の作品群は、麗子像を描いていた時の面影は全くありませんでした。
こんなにもガラッと画風が変わっていたのですね。
面影がないといえば、劉生自身も。
若い頃は、それなりにシュッとしていた劉生ですが・・・・・


岸田劉生 《自画像》 1913年 笠間日動美術館蔵 (注:展示期間は、12月8日~2020年1月13日)


後半生は、完全にメタボ体型になっていました。


岸田劉生 《画人無為》 1926年 笠間日動美術館


体型が緩んだから、作風が緩んだのか。
はたまた、作風が緩んだから、体型が緩んだのか。
なんとも気になるところです。

なお、同じ広島県内にあるウッドワン美術館が所蔵する、
《毛糸肩掛せる麗子肖像》 も、11月9日~12月8日の期間限定で出展されています。


岸田劉生 《毛糸肩掛せる麗子肖像》 1920年 ウッドワン美術館蔵 (注:展示期間は、11月9日~12月8日)


よく見ると、右手の中指に指輪を嵌めていました。
それも、なかなか高価そうな。
さすがの貫禄。麗子プロ。
芦田愛菜よりも大人びていました。
星星


そうそう、余談ですが。
ひろしま美術館のミュージアムショップでは、
僕の 『ようこそ! 西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』 が何冊も販売されていました。
なんて素敵な美術館なのでしょう。
やはり広島銀行に口座を開設すべきでしょうね。




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第百八十一話 国宝ハンター、向上する!

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前回までのあらすじ~

文化庁が推薦した国宝1120件。
そのすべてを目にするべく、
毎月のように、「国宝を見る会」 を主催している国宝ハンター・とに~。
ちなみに、これまで目にした国宝の数は、1024件です。
(↑リストをシュレッダーにかけていなかったため、正確なデータが残っていました)



広島2日目 (広島死闘篇)。
まずは、アストラムラインなる聞きなれぬ路線に乗って、不動院前駅へ。




そこから歩いてわずか2分ほどの距離に、お目当ての安国寺不動院はあります。




こちらは、戦国時代、毛利氏の外交僧である安国寺恵瓊によって復興されたお寺。
国宝に指定されているのは、こちらの 《不動院金堂》 (ジャンル:建造物) です。




もとは、山口市の凌雲寺にあったものだそうですが、
天正年間に、安国寺恵瓊によって移築されたとのこと。
山口市から広島市へ。
まるで、ハンターチャンスのごとく (?)、国宝が移動することもあるのですね。

ちなみに、《不動院金堂》 は、広島市内に現存する唯一の国宝。
爆心地からわずか約4kmの地に位置しながらも、
奇跡的に原爆による大きな被害を受けなかった建造物です。
それを考えると、“尊み” を感じずにはいられませんでした。


続いては、瀬戸内海に浮かぶ生口島へ。
広島本土から生口島へは、三原港と瀬戸田港を結ぶフェリーで向かいます。




瀬戸田港から歩くこと、約10分。
この階段を登った先に、目指すお寺はあります。




その名は、向上寺。




なんともポジティブなネーミングセンスのお寺です。
ちなみに、門を超えたその先にあったのは・・・・・




くぐれない鳥居

何のために設置されているのか、謎です。
いや、でも、もしかしたら、
この無理難題を乗り越えることこそが向上なのかも。

「諦めんなよ、お前!!
 どうしてそこでやめるんだ、そこで!!
 もう少し頑張って、くぐってみろよ!」


そんな松岡修造の叱咤激励が聞こえてきたような気がしたので、
一応、鳥居をくぐってみましたが、すぐに目の前に岩が立ち塞がりました。
・・・・・・ですよね。


さて、もちろんこの鳥居は国宝ではありません。
国宝に指定されているのは、さらに階段を登った先にある・・・・・




《向上寺三重塔》 (ジャンル:建造物) です。





建立は室町時代初期。
朱色に塗られた塔と、全体に施された美しい彫刻が見事な建造物です。




“実に絵になる国宝だなァ” と思っていたら、
どうやらここ生口島出身のあの国民的日本画家が、何度も絵のモチーフにしているとのこと。




その日本画家とは、そう、平山郁夫です。
向上寺のすぐ近くには、平山郁夫美術館もありました。


ちなみに、余談も余談ですが。
瀬戸田港の待合室には、人形が多数置かれていました。
それも、ビジーフォーのモノマネで見かけそうなタイプの。




歓迎の意を込めて、島民の方たちが作ったそうですが、
正直なところ、若干・・・いや、かなり気味が悪かったです (笑)
むしろ、逆効果では??


今現在の国宝ハンティング数 1026/1120




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舘鼻則孝「It's always the others who die」

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現在、ポーラ ミュージアム アネックスで開催されているのは、
“舘鼻則孝「It's always the others who die」” という展覧会です。




花魁の履く下駄から着想を得たヒールレスシューズが、
あのレディー・ガガの目に留まり、ガガ様が愛用したことで、
一躍世界から注目を集めた ”シンデレラボーイ” 舘鼻則孝さん。
あれから約10年に及ぶ芸術活動の、現段階での集大成ともいうべき展覧会です。




出展作は、20点。
オール新作です。
出展されていた2足のヒールレスシューズも、もちろん最新作。
1足は、牛革に紋様がデザインされたヒールレスシューズ、




もう1足は、クリスタルガラスがコーティングされたヒールレスシューズです。




なお、クリスタルの数は、約15000粒 (!)。
それも、職人が精緻な手仕事で1粒1粒全面にあしらっているのだそうです。
また、職人による手仕事といえば、初公開作となる 《Arrows》 という作品も。





鏡に突き刺さった225本の矢。
木組みのブナの木に、ウレタン塗装を施したものです。
これらの矢はすべて、職人が手仕事によって丁寧に仕上げられています。

ちなみに、近年、「生と死」 をテーマに作品を制作している舘鼻さん。
こちらの 《Arrows》 も、やはり 「生と死」 をテーマにした作品です。
なんでも、『古事記』 や 『日本書紀』 に登場する神様、
天若日子 (アメノワカヒコ) の還矢 (かえしや) の物語に着想を得た作品とのこと。
還矢のエピソードをざっくりとまとめると、こんな感じです。

 葦原中国を平定するに当たり、
 天照大御神と高御産巣日神 (タカミムスビ)は、天若日子を派遣しました。
 しかし、天若日子は大国主神の娘と結婚。
 8年経っても、葦原中国を平定せず、高天原に戻ろうともしませんでした。
 そこで天照大御神と高御産巣日神は雉を派遣し、天若日子に戻ってこない理由を尋ねさせます。
 その雉の鳴き声を聞いた天若日子の妻は、「こいつの声、不吉だから殺しといて」 と一言。
 天若日子は、妻に従って、弓矢で雉を殺しました。
 さて、雉を射貫いた矢は、グングン飛んで高天原へ。
 その矢を手にした高御産巣日神は、
 「もし天若日子に悪い心があるなら、この矢に当たれ」 と祈り、矢を投げ返しました。
 すると、その矢が就寝中の天若日子の胸に刺さり、彼は死んでしまったそうな。


そのエピソードを知った上で、《Arrows》 を見ると、思わずゾワッ。




文字通り、心に突き刺さる作品でした。


ちなみに。
会場には、矢以外にも、突き刺さっているものがあります。
それは、稲妻。




これらもやはり日本の伝統の技が光る作品。
それぞれ金箔とプラチナ泊で仕上げられていました。




作品はスタイリッシュで、インパクトもありますが。
伝統の技術がその根底にあるがゆえに、
決して、アバンギャルドで奇を衒った印象はなく、
会場全体は、わびさびが感じられ、まるで枯山水の庭園のような雰囲気さえありました。
星


ちなみに。
ポーラ ミュージアム アネックスの展示スペースとは別に、
ポーラ銀座ビル1階のウィンドウにも、多数のベビーヒールレスシューズが。




舘鼻さんが、“ヒールレスシューズの一発屋” みたいにならないことを願います。




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浜松市楽器博物館

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鰻とバイク、そして、楽器の街・浜松。
そんな浜松市には、日本初にして、日本で唯一の公立の楽器博物館があります。
その名も、浜松市楽器博物館




今年で開館25年目。
日本はもちろん、世界各国の楽器約3300点を所蔵し、
そのうちの約1500点を2階分のスペースを使って常設展示しています。

館内に入ってまず目に飛び込んできたのが、こちら↓




ディズニーのパレードに登場するフロートなのかと思いきや、
こちらは、サイン・ワインというミャンマーの伝統的な楽器なのだそう。
確かに、覗いてみると、中には多数の太鼓が設置されていました。




このサイン・ワインも、十分にインパクトがありましたが、
アジアの楽器コーナーには、他にもインパクト抜群な大がかりな楽器がズラリ。




この一角だけ、ミュージアムというよりも、ゲーセンのよう。
一瞬、ラウンドワンやアドアーズにいるのかと錯覚してしまいました。
中でも、特にインパクトがあったアジアの楽器は、世界最大の竹琴ジュゴック。




このサイズながら、2人で演奏するのだとか。
『東京フレンドパーク』 のアトラクションか!


このフロアには、アジアの楽器コーナー以外に、
三味線や琴など日本の伝統的な楽器を集めたコーナー、




2010年に開設されたという電子楽器展示コーナーなどがあります。




さらに、その奥には実際に音を出して楽しむことが出来る体験ルームも!




たくさんの楽器を目にして、
演奏家魂がウズウズしてしまった方は、是非このルームで発散してくださいませ。


また、ヤマハやカワイといった世界的楽器メーカーのある浜松らしく、
明治時代のオルガンやピアノなど、貴重な初期の国産洋楽器を紹介するコーナーもありました。




個人的に印象深かったのは、ろうそく立て付きのピアノ。




左右に1本ずつ。
暗い中、八つ墓村スタイル (←?) で、
ろうそくを灯しながら、演奏していたのでしょうか。
想像すると、ちょっと怖いものがありました。


さて、1階の展示フロアを十分に満喫した後は、地下の展示フロアへ。




こちらでは、アフリカやアメリカ、オセアニア、ヨーロッパの楽器が一挙大公開されています。





特に圧巻なのは、ピアノやチェンバロといった鍵盤楽器のコレクション。




その歴史的価値もさることながら、
美術品としての価値も十分に高い鍵盤楽器が、ごろごろと展示されています。




なお、それらのコレクションの中には、ヴァージナルもありました。




なるほど、これが本物のヴァージナルか!

思わずテンションが上がってしまいました。
というのも、実は、ヴァージナルといえば、
来年、国立西洋美術館で開催される “ロンドン・ナショナル・ギャラリー展” で、
フェルメールの 《ヴァージナルの前に座る女》 が初来日を果たします。




しかし、実物のヴァージナルを見る機会なんて、そうそうないので、
“なんとなく、オルガンみたいな感じなんだろうなァ” と想像するしかありませんでした。
美術品に描かれた楽器の実物を目にすることが出来る。
そういう意味では、美術が好きな人にもオススメのミュージアムといえましょう。
アートテラー的には、太鼓判。
星星


ちなみに、ルーヴル美術館のコレクションの中で、
最大サイズの作品として知られるヴェロネーゼの 《カナの婚礼》





そのセンターの男性が演奏している不思議な楽器は、
トランペット・マリーンというそうで、その実物も展示されていました。




弦楽器なのに、トランペットのような音がするから、トランペット・マリーンとのこと。
ヘッドホンを使って音色を聞くことが出来たので、
聞いてみたところ、確かにトランペットのような音でした。
だったら、トランペットで演奏すればいいじゃん!


他にもまだまだ紹介したい楽器はありますが、





キリが無いので、最後に1つだけ。




こちらは、ペルーのチャランゴという楽器。
アルマジロの甲羅をそのまま使った、ビジュアルにパンチがある楽器です。
この甲羅の部分を、ギロのように擦って音を鳴らす楽器なのかと思ったら。
どうやらこの裏側に弦が張ってあり、マンドリンに近い楽器なのだそうです。
こんな楽器になるために、アルマジロは甲羅を進化させたわけではなかろうに。




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―奇跡の写実絵画―スーパーリアルワールド展

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あの徳川家康が若き日を過ごした浜松城。
歴代城主の多くが後に江戸幕府の重役に出世したことから 『出世城』 とも呼ばれるお城です。




そのすぐ近くにある浜松市美術館で、現在、開催されているのは、
“―奇跡の写実絵画―スーパーリアルワールド展” という展覧会。





こちらは、ともに 「リアル」 な描写に定評があり、
浜松の出世頭ともいうべき、2大アーティストを紹介する展覧会です。
まず1階の展示室で紹介されていたのは、
ホキ美術館関連のイベントでも、たびたびお世話になっている石黒賢一郎さん。
細密描写では右に出る者はいないと写実絵画界のトップランナーの1人です。
会場には、初期の頃に描いていた風景画や、


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


スペイン留学時代の作品、




さらに、十八番ともいうべきアニメをモチーフにした作品など、


© Go Nagai/Dynamic Production


50点を超える石黒さんの作品が展示されていました。
出展作はリアルに描かれた絵画だけかと思いきや・・・・・


© Go Nagai/Dynamic Production


ジェットパイルダーやロケットパンチといった、
1分の1でリアルに制作された立体作品もありました!(出展:『マジンガーZ』)
フォルムもリアルなら、汚れやサビ具合もリアル。
もちろん、それらの塗装もすべて石黒さんが手がけたのだとか。
リアルに対する執念が、ハンパではありません。

ちなみに。
こちらが、その石黒さんご本人↓




なぜ、ロボットになっているのか。
その説明をするのは、まことに面倒くさいので (笑)
理由がどうしても気になる方は、以下の過去記事をお読みくださいませ↓
https://ameblo.jp/artony/entry-12332541188.html


ちなみに、出展作の中には、ホキ美術館でお馴染みの作品もありました。




実は、10月の豪雨による水害で、地下2階が浸水してしまったホキ美術館。
電気設備や収蔵庫などに深刻な被害があったため、現在は休館を余儀なくされています。
再開の目処は、いまだ立っていません。。。
また、建物だけでなく、収蔵庫にあったコレクション約100点も被災してしまったそうです。
そんな悲しすぎるニュースにショックを受けていただけに、
浜松市美術館に出張中だった石黒さんの作品と再会できて嬉しい限り!
タイミングよく水害を免れたという意味でも、“奇跡の” 写実絵画です。


続く2階の展示室で紹介されていたのは、斎藤雅緒さん。
エアブラシを用いたスーパーリアルイラストレーションの第一人者です。




お恥ずかしながら、その名を存じ上げなかったのですが。
読売新聞の回収袋であるとか、




マクドナルドの広告であるとか、




今回の展覧会を通じて、実はさまざまなところで、
斎藤さんのイラストを目にしていたことを知りました。
何よりも驚かされたのは・・・・・




伊藤園のお仕事。
「お~いお茶」 も 「1日分の野菜」 も 「大納言しるこ」 も全部、斎藤さんだぞ。
知らず知らず、毎日のように斎藤さんの絵を目にしていたのですね。
会場にはそれらのパッケージの貴重な原画の数々も展示されていました。




まさか、「お~いお茶」 の原画が観られる日が来ようとは!
正直なところ、フェルメールや若冲の絵に出会ったのに近いくらいの感動がありました (笑)

ちなみに、斎藤さんが伊藤園のパッケージを手がけていたことにも、かなり驚きましたが、
それ以上に驚かされたのは、斎藤さんはシティボーイズの斉木しげるさんの実の兄だという事実。
斉木しげるさんに、こんなスゴいお兄さんがいらっしゃったのですね。


さて、石黒さんも斎藤さんも、どちらもリアルにこだわるアーティストでしたが。
両者の作品を比べてみると、実はスタイルは似て非なるものであることに気づかされます。
目の前の3次元をリアルに描くために、
時に毛穴や産毛までも精密に忠実に写し取る石黒さん。
対して、斎藤さんのイラストの目標は、
商品や対象物の魅力を最大限に伝えることにあります。




それだけに、半分にカットされたグレープフルーツのイラストのように、
よく考えたらあり得ないシュルレアリスムっぽいテイストの作品もありました。
リアルのようでリアルでない。
フェイクドキュメンタリーのような作風です。


東京から浜松まで、リアルに距離がありましたが。
行くだけの甲斐は十分にある展覧会でした!
リアルガチにオススメです。
星星




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第百八十二話 国宝ハンター、謎を追う!

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前回までのあらすじ~

国宝ハンターをする人が国宝ハンターなんだ。
ママはいつも言っていた。
「国宝ハンターの人生は、
ひと箱分のチョコレートみたいなものよ、何が起こるかわからないの」 って。
そんな国宝ハンター人生を送ること、早9年。
実に1024件の国宝との出会いがありました。
さて、今回はどんな出会いがあったのでしょう。



生口島から和がらし色 (?) の高速船に乗って・・・・・




尾道駅へとやってきました。




坂と猫が多い街とは聞いていましたが、
実は、備前焼で制作された足形も多い街でした。




それらの足形の中には、道三部作でお馴染みの大林宣彦監督をはじめ、
詩人の谷川俊太郎さん、作曲家の久石譲さん、前衛美術家の赤瀬川原平さんの足形もあります。




さらには、板東英二や、




西川ヘレン (注:西川きよしの足形は見つけられませんでした)




豆腐職人の皆川洋一さんなる方の足形も (←誰?!)。




選抜基準がかなり謎でした。。。

そうそう、謎と言えば、こんなイベントも。




「私はストーブだ!」 って、どういうこと??
謎だらけのイベントです。


って、ついつい街中にある謎を追ってしまいました (汗)
これでは国宝ハンターではなく、ミステリーハンターです。
当初の目的に戻って、国宝をハンティングしなくては!
ということで、やってきたのは、
尾道駅から歩いて約25分ほどの距離にあるお寺。




すぐ目の前には、車通りの激しい国道があり、
さらには、途中を線路がガッツリと横切っています。
そんな珍しい参道の先に、目的地の浄土寺はありました。
こちらの 《浄土寺本堂》 (ジャンル:建造物) と、




こちらの 《浄土寺多宝塔》 (ジャンル:建造物) が、それぞれ国宝に指定されています。




また、国宝としては珍しく、本堂とともに、
「建造物と一体をなしてその価値を形成している土地その他の物件」 として、
境内地全域が、国宝に指定されています。
つまりは、この辺一帯の砂や土も国宝の一部なのです。
(注:土地が国宝に指定されているのは、尾道の浄土寺と京都の清水寺だけ)




そんな国宝の砂や土を踏みしめながら、
境内を散策していると、ちょっと気になる絵馬を発見しました。




絵馬というよりも、絵鳩。
それも、首からサコッシュみたいなのを掛けています。

実は、浄土寺。
江戸時代、当時違法だったという伝書鳩を、
尾道の商人のために、こっそり裏門で飼っていたのだそうです。
すっかり時効になったとはいえ、
かつての法律違反を絵馬の形で堂々とカミングアウトするだなんて。
なかなかの根性の持ち主です。


ちなみに、僕が訪れた時は、1匹も鳩がいませんでしたが。




普段は、境内にたくさんの鳩がひしめき合っているようです。
鳩よけもバッチリでした。




今現在の国宝ハンティング数 1028/1120




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ミナ ペルホネン/皆川明 つづく

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現在、東京都現代美術館で開催されているのは、
“ミナ ペルホネン/皆川明 つづく” という展覧会。
ファッションブランド 「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」 と、
その設立者であるデザイナーの皆川明さんの多岐にわたる活動をフォーカスした展覧会です。




なお、“つづく” という意味深なタイトルは、
ブランドのコンセプト 『せめて100年つづけたい』 に由来しているのだそう。
前身である 「ミナ」 がスタートしたのは、1995年とのこと。
つまり、今年でちょうど25周年。
「ミナ ペルホネン」 は、少なくともあと75年はつづいていくのですね。
ちなみに、ブランド名の 「ミナ」 はフィンランド語で 「私」 という意味。
「ペホルネン」 だか 「ペルネホン」 だか 「ペネルホン」 だか、
ちゃんと覚えられない 「ペルホネン」 は 「ちょうちょ」 を意味する言葉なのだそうです。


さてさて、展覧会は、代表的なテキスタイル 『タンバリン』 を掘り下げるコーナーや、




映像作家の藤井光さんがミナの服を着て生活する人の日常を撮り下ろした映像作品コーナー、
皆川明さんが新聞連載のために書いた挿絵を紹介するコーナーなど、全8章で構成されていました。
中でも特に見どころなのが、「洋服の森」。




創立当初から最新の2020年春夏コレクションまで、
約25年分のミナ ペルホネンの洋服が一堂に会したコーナーです。




その数、なんと約400着。
圧巻も圧巻の光景です。
さて、年末の第九コンサートのように (?) 、
ズラリと並んだこれらの洋服は、特に時系列に沿って展示してはいないのだそう。
ということは、この中のどれかが25年前の服で、どれかが現在の服ということ。




25年も開きがあるのに、全然見分けが付きません。
つまり、流行には左右されていない、
それだけ普遍的なデザインであるということ。
25年前のデザインでも古びていないのであれば、
おそらく、25年後でも新鮮に感じられるデザインなのでしょう。
100年つづくブランドというのは、ダテではありませんでした。

ちなみに、個人的に印象に残ったのは、蝶と花がデザインされたこちらの服。




可愛らしいデザインだなァと思い、近づいてみると・・・




手書き風の花に混じって、漢字の 『花』 も。
そっちの 『花』 かい!
斬新でユニークなデザインに、思わずほっこりとしました。


また、皆川さんのものづくりの哲学や、
アイディアの 「種」 を紹介するコーナーも、展覧会の見どころの一つ。




会場は、良い意味でゴチャゴチャしており、
まるで、おもちゃ箱をひっくり返したかのようでした。




そんな会場でひときわ目立っていたのが、何やら不思議な形をした建物。




こちらは、現在、皆川さんが構想中だという、
“簡素で心地よい宿” シェルハウスのプロトタイプなのだそうです。
ファッションからスタートしたミナは、
将来的には、居住空間、建築にまで発展していくのですね。
さすが100年つづくブランド。
今後の展開が楽しみです。


ここ近年、カルティエやエルメス、ポール・スミスなど、
海外のブランドをテーマにした展覧会が多く開催され、人気を博していますが。
日本にも世界に誇れるブランドがあったと知ることができ、誇らしい気持ちになる展覧会でした。
星
君と好きなブランドが百年続きますように。




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DOKI土器!土偶に青銅器展 ―はにわもいっしょに古代のパレード―

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箱根にある 「東洋・日本美術の殿堂」 岡田美術館では、
現在、開館以来初となる 『古代』 をテーマにした特別展が開催されています。
その名も、“DOKI土器!土偶に青銅器展 ―はにわもいっしょに古代のパレード―”
・・・・・・・ダジャレです (笑)




歌麿や北斎、若冲らの絵画や、
中国や日本の陶磁器が充実している岡田美術館コレクション。
しかし、意外にも、そのコレクションには、
土偶や埴輪などの古代美術も含まれています。
これまでは、そのうちのごく一部が、
主に1階の展示室で紹介されるに過ぎませんでしたが。
今回は、4階の展示フロアをすべて使って、
岡田美術館が収蔵する古代美術コレクションをドーンと一挙大公開!



(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


出展作品の実に約半数が、初公開となっています。
そういう意味では、岡田美術館に何度も通っている人にも新鮮に感じられる展覧会です。

展覧会を通じて、何よりも実感したのは、
遥か昔から、人はアートをせずにはいられない生き物であったということ。
例えば、煮炊きをするために使われていたと考えられる縄文土器。



《深鉢形土器》 縄文時代前期 紀元前5000~紀元前3000年 岡田美術館蔵


表面に凹凸があったほうが、確かに熱伝導率は良いそうですが、
それにしても、ここまでアーティスティックに仕上げる必要はありません。
明らかに意図的に、全面にビッシリと装飾を施しているのが見て取れます。


また例えば、縄文人が祈りを込めて作っていたと考えられる土偶。


《土偶》 縄文時代晩期 紀元前2000~紀元前1000年 岡田美術館蔵


《土偶》 縄文時代後期 紀元前1000~紀元前400年 岡田美術館蔵


その素朴な味わいに、思わずほっこりとさせられますが。
よくよく細部に注目してみると、
正中線 (妊娠線) やおへその穴が表現されており、
意外と写実的に制作されているのが見て取れます。
決して、適当にユルく作っていたわけではなさそうです。

1万年以上前の人々も、表現活動をしていた。
アートを制作していた。
その事実に、ロマンを感じずにはいられません。
星星


さて、今回紹介されていた古代美術コレクションの中で、
個人的に印象に残ったものをいくつかご紹介いたしましょう。
まずは、《埴輪 盛装の男子》


《埴輪 盛装の男子》 古墳時代 5~6世紀 岡田美術館蔵


アゴがものすごく長く、かつ尖っている人物なのかと思いきや、
サンタクロースばりのアゴ髭を蓄えた男性を表しているのだそうです。
じゃあ、「男子じゃないじゃん!」 とツッコみたくなりましたが、
どうやら業界では、埴輪は 『男子』『女子』 と表現するのがポピュラーとのこと。
アラサーでも女子。アラフォーでも女子。
その文化は古墳時代まで遡るのですね (←?)。


続いては、《壺形土器》


《壺形土器》 縄文時代晩期 紀元前1000~紀元前400年 岡田美術館蔵


これまた全面にビッシリと装飾が施されています。
一見、フリーダムに紋様がデザインされているようですが、
よく見ると、ある一定のパターンを繰り返しているのがわかります。
図面もなければ、数字もない時代。
どうやって全体像を計算してデザインしていたのでしょうか??
ところで、見れば見るほど、何かに似ているような・・・・・あっ、ゴムゴムの実だ!!


ちなみに。
展覧会では、日本の古代美術だけでなく、
中国の古代美術作品も併せて紹介されていました。




同じような年代、同じような用途のモノでも、
両者を比較してみると、その文化度の差は歴然!
《深鉢形土器(火焔型土器)》 の造形力なんて、
相当のレベルの高さだと思っていましたが・・・・・。


《深鉢形土器(火焔型土器)》 縄文時代中期 紀元前3000~紀元前2000年 岡田美術館蔵


対する中国は、青銅器だもんなァ。
それも、表面の紋様も恐ろしいほどに精緻です。


《饕餮文方罍》 中国・殷(商)時代後期 紀元前14~紀元前11世紀 岡田美術館蔵


とはいえ、中国にだってユルい作品はありました。
それは、《灰釉双耳壺》 です。


《灰釉双耳壺》 漢時代 紀元前3~3世紀


パッと見は、そんなにユルくないですが、耳の部分にご注目。




さくらももこの漫画に登場しそうな変な顔がありました。
おそらく、コイツが 「インチキおじさん」 です。


 ┃会期:2019年10月5日(土)~ 2020年3月29日(日)
 ┃休館日:12月31日(火)、1月1日(水)
 ┃会場:岡田美術館
 ┃
https://www.okada-museum.com/

~読者の皆様へのプレゼント~
岡田美術館の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、12月18日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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尾道市立美術館コレクション展-新収蔵作品を中心に

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坂と猫の街・尾道。
街のいたる所に、タモさんが好きそうな坂があります。




そして、街のいたる所に、岩合さんが好きな猫がいます。




ちなみに、尾道の街並みを一望できる屈指のビューポイント、千光寺の近くには・・・




坂も猫も楽しめる 『猫の細道』 なるアートスポットがありました。




約200mほど続く細い路地のあちこちに、
この地で活動するアーティスト・園山春二さんが生み出した 《福猫石》 が設置されています。




撫でると何か良いことがあるのだとか。
先ほど本物の猫を撫でようとしたら、
「シャーッ!!」 と思いっきり威嚇されてしまったので、




《福猫石》 で我慢することにしました。




さてさて、そんな 『猫の細道』 から歩いて7分ほどの距離にあるのが、尾道市立美術館。




“絶対に美術館の中に入りたい猫” vs “絶対に美術館の中に入れない警備員”
そんな熱き “ほこ×たて” バトルが何度も繰り広げられたことで、ネットで話題となった美術館です。




中に入ろうとしていた茶トラの 「ゴッちゃん(本名:吾作)」 ですが、
里親さんが現れたため、現在は引退し (?) 、飼い猫として新たな人生を送っているのだそう。
しかし、造形作家の西岡良和さんによって作品化されたゴッちゃんは・・・・・




ちゃっかり美術館の中に入っていました。
念願の館内に入れて、ご満悦な表情を浮かべています。
また、ちゃっかりと言えば、尾道市立美術館のグッズコーナーには、
この猫と警備員さんのバトルをモチーフにしたポストカードやトートバッグをはじめ、
オリジナルのミュージアムグッズが多数販売されていました。
ちなみに、最新グッズは、Tシャツとのこと。




胸元では、ちゃんと猫と警備員さんの攻防が再現されていました。




そんな猫推し、猫まっしぐらの尾道市立美術館ですが。
建築の設計は、安藤忠雄さん。
館内には、自由に座っていい名作椅子の数々が設置されています。




さらに、尾道の景色を一望できるロビーも。




こういうセールスポイントも、もっと推していけばいいのに!


なお、現在は、“尾道市立美術館コレクション展-新収蔵作品を中心に” が開催中。
中川一政の 《尾道風景》 をはじめ、


中川一政 《尾道風景》 昭和36年(1961)


著名な画家によって描かれた尾道の風景画や、
小林和作や森谷南人子といった尾道にゆかりにある作家の作品の数々が紹介されています。


小林和作 《高原》 昭和33年(1958)(丹下コレクション)


森谷南人子 《桃花処々》 昭和15年(1940)


また、近年収蔵品にまとまった形で加わった奥山民枝さんの作品群も一挙公開中。
メゾチントの作品や太陽や月を描いた油彩画などとともに、
近年取り組んでいるという犬をモチーフにした油彩画の数々も展示されていました。


奥山民枝 《旅先からの便り》 平成23年(2011)


どの犬の絵ももれなく可愛かったです。
猫好きだけでなく、犬好きも取り込む尾道市立美術館。
なかなかの策士です。
星




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エントリーNo.0004 尾形兄弟(尾形光琳 尾形乾山)

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もしも、芸術家たちが漫才をしたら・・・

こんな感じのネタを披露するのかもしれません。
それでは、皆様、どうぞ芸術漫才をお楽しみください!




2人 「はいどーも、尾形兄弟です!よろしくお願いします」

光琳 「まぁ、僕らこうやってね、兄弟で芸術家をやらせてもらってます。
   この僕の隣にいるのがね、弟の乾山 [1] です。
   ほら、乾山も自己紹介しないと。『乾山ですよー』 って。『こんにちはー』 って」

乾山 「いや、わしのこと何歳やと思ってんねん!
   アンタの6コ下やぞ。自分の口で言えるわ」

光琳 「コイツは陶芸家をやってましてね。
   だからなんでしょうね。土を捏ねるだけでなく、すぐこうやって駄々も捏ねるんですよ」

乾山 「駄々って言うな!正当な指摘や」

光琳 「それから、僕の名前は、光琳 [2] と言いましてね。
   業界の人からは、『おがたのお兄さん』 って呼ばれています」

乾山 「誰が言うてんねん」

光琳 「僕は、主に絵画や “ま~きえっ” をやっています」

乾山 「蒔絵や!“ま~きのっ” みたく言うな」

光琳 「今でこそ、僕は日本美術界のスーパースターですけれども」

乾山 「自分で言うんかい」

光琳 「実は、最初から芸術家になりたかったわけじゃないんですよ」

乾山 「まぁ、でも、これはほんまの話ですわ」

光琳 「もともと僕らの実家は、超が付くほどのお金持ちでしてね」

乾山 「呉服商 [3] なんです」

光琳 「特に働く必要が無いんでね、ずっとニートみたいな生活をしてたんですけど。
   30歳くらいの時ですかね。親父が亡くなったんですよ。
   それをきっかけに働くようになった・・・と思うでしょ?
   遺産がたんまりとあったんでね。まだまだニートを続けてやりましたよ」

乾山 「典型的なダメ人間やな!」

光琳 「ところがね、そんなニート生活をずっと続けていたら、スゴいことに気がつきまして」

乾山 「何に気づいてん?」

光琳 「お金ってね、使ったら無くなるんですよ」

乾山 「当たり前やろ!30代まで知らんかったんかい」

光琳 「しかもね。お金が無くなっても、
   さらに、モノを買ったり、お酒飲んだりするとね。
   借金っていうのが増えるんですよ。皆さん、知ってました?」

乾山 「全員知ってるわ!てか、あん時、わしからもお金借りたよな」

光琳 「そうそう。(客席に向かって)コイツ、ひどいんですよ。
   しばらくしたら、『金返せ』 って言ってきまして」

乾山 「そりゃ言うやろ」

光琳 「その上、『返さないなら、仕事しろ』 って。鬼か、お前は!」

乾山 「どこがやねん!普通やないかい」

光琳 「それで、仕方ないんで、団扇に絵を描いて売ることにしたんですよ。内輪揉めだけに」

乾山 「しょーもな!」

光琳 「ともかく、そういうきっかけがあって、僕は芸術家になったわけです。
   そしたら、まぁ、才能が止まらない!次から次に、名品を生み出しちゃって!」

乾山 「だから、何で自分で言うねん」

光琳 「西本願寺の依頼で描いた燕子花の絵 [4] あるでしょ?あれ、今じゃ日本の国宝ですよ」

燕子花図・右


乾山 「はいはい」

光琳 「弘前藩の津軽家のために描いた梅の絵 [5] あるでしょ?あれも、国宝」

紅白梅図屏風


乾山 「わかったわかった」

光琳 「『伊勢物語』 を題材にした蒔絵の硯箱 [6] も・・・




乾山 「国宝なんやろ!いつまで自慢を続けんねん!」

光琳 「なんてったって、僕に影響を受けた芸術家はたくさんいますからね。
   酒井抱一でしょ。横山大観でしょ。クリムトでしょ。ウォーホルでしょ。
   あと、田中一光 [7] ね。もう、“どんだけ~” って感じですよね」

乾山 「そのIKKOやないわ!」

光琳 「それから、酒井抱一とか鈴木其一とか神坂雪佳とか、
   特に僕をリスペクトしてくれてる芸術家をまとめて、何て言うか知ってます?
   琳派 [8] ですよ。琳派。皆さんも聞いたことあるでしょ、琳派っていう言葉。
   あの琳派の 『琳』 は、実は、光琳の 『琳』 なんですよ」

乾山 「もうええって」

光琳 「美術館なんか行くと、琳派って言葉、いっぱい見かけますからね。
   本当、僕のおかげですよ」

乾山 「まだ続けんのかい」

光琳 「最近では、マッサージ屋なんかでも、よく見かけますよね」

乾山 「そのリンパちゃうわ!」

光琳 「あと、韓国料理屋でも、見かけるかなぁ」

乾山 「それ、キンパや!韓国風の海苔巻きやん。
   そのすぐ調子乗るところ、昔からほんま変わらんよな。もういっぺん、あの絵観てこい!」

光琳 「あの絵?宗達さんの風神雷神の絵 [9] ?」

風神雷神


乾山 「せやせや」

光琳 「いやぁ、前にもお前に言われて、観に行ったことあるのよ。
   あん時は、自分の才能ってまだまだだなぁって、だいぶ落ち込んだからね」

乾山 「たまには、謙虚になったらええやん」

光琳 「なんとかあの絵を超えたいと思って、僕も風神雷神の絵 [10] を描いてみたわけ」




乾山 「いや、そっくりやん!てか、まったく一緒やん!」

光琳 「うん。トレースしたからね」

乾山 「それはマズいやろ」

光琳 「そうかな?最近のデザイナーも、わりとやってると思うけど」

乾山 「んなことないわ!まぁ、ごく一部でそんなヤツもいるかもしれんけども」

光琳 「僕のようにトレースする人も、やっぱり琳派ってことになるんだろうね」

乾山 「なるわけないやろ!もうええわ!」

2人 「どうもありがとうございました」


[1] 尾形乾山(1663~1743)
京都生まれ。江戸時代中期の陶芸家。派手な性格の兄とは対照的に、内向的な性格だったそう。
晩年は、江戸に下り、入谷に住んだ。
ある時、乾山は江戸のウグイスの鳴き声は美しくないと嘆いたとある皇族の僧に命じられる。
そこで、京都より3500羽の美声のウグイスを取り寄せ、付近に放ったという。これが鶯谷の地名の由来である。

[2] 尾形光琳 (1658~1716)
元禄文化を代表する絵師。
性格も派手だが、女性関係も派手だったよう。
細井つねという女性に訴えられ、家と銀20枚で示談にしたという記録が残っている。

[3] 京都を代表する高級呉服商・雁金屋。
宮廷のファッションリーダーであった東福門院和子も御用達だった。
光琳の代で潰れる。

[4] 《燕子花図》 根津美術館所蔵。
五千円札のデザインに採用されていることでもお馴染み。

[5] 《紅白梅図》 MOA美術館所蔵。
向かって右側に描かれた紅梅が若者を、左側の白梅が老人を表しているという説もある。

[6] 《八橋蒔絵螺鈿硯箱》 東京国立博物館所蔵。
東京国立博物館のミュージアムショップでは、八橋蒔絵螺鈿硯箱缶入クッキーが販売されている。
クッキーは東京會館製。税込1080円。

[7] 田中一光 (1930~2002)
昭和期を代表するグラフィックデザイナー。
無印良品の概念の発案した一人で、亡くなるまでの20年余に渡りアートディレクターを務めた。

[8] 光琳派、尾形派、光悦派、宗達・光琳派など、
さまざまな名称が乱立していたが、昭和47年に東京国立博物館で開催された “琳派展” を機に、琳派に定着した。

[9] 俵屋宗達 《風神雷神図屏風》 仁和寺所蔵。
国宝。東京オリンピック・パラリンピックの500円記念硬貨にデザインが採用されたことでも話題。

[10] 尾形光琳 《風神雷神図屏風》 東京国立博物館所蔵。
重要文化財。酒井抱一は光琳をリスペクトするがあまり、その裏側に 《夏秋草図屏風》 を描いた。





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「琳派」の先駆者と文人陶芸家。

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こんなチラシだったり。




こんなチラシだったり。




はたまた、こんなチラシだったり。




展覧会ポスターのデザインが攻めている東京黎明アートルーム。
宗教法人 東京黎明教会が蒐集した美術品を展示するための美術館です。
そんな東京黎明アートルームで、
現在開催されているのは、“「琳派」の先駆者と文人陶芸家。” という展覧会。
『「琳派」の先駆者』 こと、俵屋宗達と、
『文人陶芸家』 こと、尾形乾山をフィーチャーした展覧会です。
ちなみに、今回の展覧会ポスターは、 こんな感じ↓




雑誌風??

宗達 (SOUTATSU) と乾山 (KENZAN) で、『SOUKEN』。
もしかしたら、『装苑』 と掛けているのかもしれません。

まず展覧会で紹介されていたのは、尾形乾山の作品群。




兄の光琳と比べると、知名度が一歩劣る乾山ですが、
その着想力は兄にも勝るとも劣らないものがあります。
例えば、こちらの 《色絵菊文向付 五客(十客のうち)》




確かに、今風のデザインでは無いですが、
18世紀江戸時代のデザインには、まったく見えません。
むしろ、昭和レトロ風。
昭和の鍋や麦茶入れが、こんな花柄だったような。

また、例えば、《銹絵染付白彩菊花文反鉢》




マリメッコ風。もしくは、ミナ ペルホネン風。
こちらもやはり、18世紀江戸時代のデザインには、まったく見えません。
もし時代劇で、この鉢が登場したら、
絶対に、スタッフのミスだと感じてしまうことでしょう。


なお、極めつけに、斬新なデザインだったのが、《色絵石垣文角皿 五枚》




まるで、パウル・クレーの絵画のよう!
カラフルでポップ。
愛でて楽しいお皿ではありますが、
どんな和食を乗せても、映える気はしません (笑)
お皿としての使い道は、彩り豊かではなさそうです。


続いて、展示室の奥へと進みます。
そこには、東京黎明アートルームの俵屋宗達コレクションが展示されていました。




とりわけ見逃せないのは、《西行法師行状絵詞 巻第三断簡》 という作品です。




琳派の創始者でありながら、出生年も不詳、没年も不詳、
前半生に関しては、ほぼ何もわかっていないという謎の絵師・宗達。
国宝の 《風神雷神図屏風》 を含め、その多くの作品の制作年も不明ですが、
この作品に関しては、烏丸光廣による奥書のおかげで、制作年が明らかになっています。
そういう意味で、とても貴重な作品なのだとか。
烏丸光廣、グッジョブです。


個人的にお気に入りなのは、《鷺飛翔図》




鷺のおとぼけ顔がたまらない作品です。
俵屋宗達ではなく、植田まさしが描いた作品なのかと思いました。
タイトルは、《鷺飛翔図》 となっていますが、
どう見ても飛翔できているような気がしません。
「ぴょーん!」 と両足ジャンプしただけなのでは?


さてさて、1階の展示室では、作品がそれぞれで展示されていましたが、
2階にある小さな展示室では、ちゃんとSOUKENコンビで共演を果たしていました。




直接の交流は無かった宗達と乾山。
時空を超えたコラボをお楽しみくださいませ。
星


なお、会場には、宗達と乾山以外の常設作品も展示されています。
それらの中で一番印象に残っているのは、
やはり何といっても、パキスタンの 《持蓮華菩薩立像》 です。




菩薩なのに、耳にはドラゴンのピアス。




菩薩なのに、首元にはケートスなる海獣のネックレス。




菩薩なのに、足下にはライオンがあしらわれたサンダル。




ファッションセンスが、完全にヤンキー。。。
ドン・キホーテに夜たむろってる輩に見えてきました。
持蓮華菩薩パイセン。


ちなみに。
次回の展覧会のポスターも、すでに完成しているようでした。




・・・・・バーモントカレー??




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没後30年 カイ・フランク

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神奈川県立近代美術館の葉山館に行ってきました。




葉山の一色海岸のほど近く位置し、
敷地内から富士山&オーシャンビューの絶景が楽しめる美術館です。




・・・・・・・と、海岸にあまりにも近いだけに、
おそらく日本のミュージアムで唯一ではないかと思われる注意書きがあります。




夏ならまだしも、冬にはそんな人、
さすがに一人もいないと思いますが (笑)
皆さま、水着での訪問はくれぐれもお控えくださいませ。


さて、そんな神奈川県立近代美術館 葉山館で、
現在開催されているのは、“没後30年 カイ・フランク” という展覧会。




こちらは、日本・フィンランド国交樹立100年を記念して開催されるもので、
フィンランドの巨匠デザイナーであるカイ・フランクの日本初となる企画展です。
幼い頃より日本に関心を抱き、3度の来日を果たしているカイ・フランク。
余計な装飾を取り払い、機能美を追求したプロダクトを数多く残し、
20世紀のデザイン界に多大なる影響を与えた伝説のデザイナーです。


《2744》 タンブラー 1953-67年/吹きガラス/ヌータヤルヴィ・ガラス製作所/タウノ&リーサ・タルナ・コレクション 
photo by ©Rauno Träskelin



《ピトポイタ(イージー・デイ)》 プレート 1978年-90年代初め(1977年)/メラニン樹脂/サルヴィス社/タウノ&リーサ・タルナ・コレクション 
photo by ©Rauno Träskelin



ちなみに、人呼んで、「フィンランド・デザインの良⼼」。
カイ・フランクの人柄が偲ばれる素敵な通り名ですが。
逆に、彼以外のフィンランドのデザイナーは、悪いヤツばかりなのでしょうか??


それはともかくとしまして。
出展されているのは、カイ・フランクが手がけた陶器やガラスの器など約300点。
展覧会では、それらの作品の幾何学的造形に注目し、
四角形、三角形、円錐、円、楕円形、円柱の6つに分類して紹介しています。
最初の展示室では、その6つの形が整列してお出迎え。


撮影:永禮賢  (注:この記事に使用している展示室内の画像は、特別に美術館より提供頂いたものです)


冷静に考えたら、ただ6つの雑貨が並んでいるだけなのですが、
不思議と、オーラや品格のようなものが感じられ、思わず居住まいを正してしまいました。


続く展示室では、テーブルウェアを中心としたカイのプロダクトを一挙に紹介。
(ちなみに、1番手前の展示台で紹介されていたのは、彼が影響を受けたフィンランドの工芸品です)


撮影:永禮賢


余計な解説 (?) を極力そぎ落とすべく、
形や年代ごとにグルーピングして展示されています。
横軸に移動すれば、同年代の作品の形状の違いが楽しめ、
縦軸に移動すれば、同じ形状でも年代でどのように変化していくのかがわかる。
シンプルかつ機能的。
実にカイ・フランク的な展示スタイルでした。


最後の展示室で紹介されていたのは、
アート・ピースと呼ばれる技巧を尽くしたガラス作品の数々。


《1500(KF500)クレムリン・ベル》 カラフェ 1957–68(1956)年/吹きガラス/ヌータヤルヴィ・ガラス製作所/タウノ&リーサ・タルナ・コレクション 
photo by ©Rauno Träskelin



プレート 1960年代半ば/カラー・リング・テクニック/ヌータヤルヴィ・ガラス製作所/タウノ&リーサ・タルナ・コレクション 
photo by ©Rauno Träskelin



代表作の 《クレムリン・ベル》 や独自の技術で色ガラスを何層にも重ねたプレートなどが、
近年国内外で注目を集めているデザイナーの熊野亘氏が手がけた展示空間に並べられています。


撮影:永禮賢


カイのアート・ピースとカリモク製の木の什器、
そして、大きな窓から見える葉山の一色海岸の雄大な眺め。
これ以上無いくらいに心地よい空間でした。
この展示空間を味わうために、葉山を訪れるカイはあります。


作品もシンプル。展覧会もシンプル。
それゆえに、サーッと眺めるだけなら、
数十分で見終わってしまうことでしょう。
しかし、単にシンプルなだけでなく、
考えに考え抜かれたデザインであるために、
むしろ見ようと思えば、いくらでも見ていられます。
飽きが来ない展覧会でした。
星星




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ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年

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現在、国立西洋美術館にて、
“ハプスブルク展 600年にわたる帝国コレクションの歴史” が絶賛開催中ですが。
国立新美術館では、“ブダペスト―ヨーロッパとハンガリーの美術400年” が開催されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


600年と400年。
「200年も少ないじゃん!」 という理由で行かないなんて、もったいない!
令和元年のラストを飾るに相応しい大型展覧会ですよ。

実は今年2019年は、日本とハンガリーの外交関係開設150周年の記念すべき年。
そんなメモリアルイヤーを祝し、“ハンガリー最大の美術館” ブダペスト国立西洋美術館と、
ハンガリー・ナショナル・ギャラリーの所蔵品が25年ぶりにまとまった形で来日しています。

それらの中には、クラーナハの作品もあれば、


ルカス・クラーナハ(父) 《不釣り合いなカップル 老人と若い女》 1522年 油彩/ブナ材
ブダペスト国立西洋美術館 © Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019



スペインで活躍したエル・グレコや、


エル・グレコ 《聖小ヤコブ(男性の頭部の習作)》 1600年頃 油彩/カンヴァス
ブダペスト国立西洋美術館 © Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019



日本人が大好きなモネの作品も。


クロード・モネ 《トゥルーヴィルの防波堤、干潮》 1870年 油彩/カンヴァス
ブダペスト国立西洋美術館 © Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019



“ブダペスト展” というタイトルからは想像が付かないくらいに、
幅広い年代、幅広いジャンルのヨーロッパ絵画が紹介されていました。
もちろん、ハンガリーの美術作品にもスポットが当てられています。





日本人にはあまり、いや、ほとんど馴染みのないハンガリー美術ですが。
欧米で唯一、日本と同じく 『姓-名』 の形式を用いているハンガリー。
そんな共通点があるからでしょうか、
どのハンガリーの作家の作品も本能的に、「いい絵だな」 と思えました。
もしかしたら、もっとも日本人の感性に合うヨーロッパ絵画なのかもしれません。
星星星


ちなみに、ハンガリーの作家の作品の中で、
特に目玉の作品は、シニェイ・メルシェ・パールの 《紫のドレスの婦人》


シニェイ・メルシェ・パール 《紫のドレスの婦人》 1874年 油彩/カンヴァス
ブダペスト、ハンガリー・ ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019



こちらは、「ハンガリーのモナリザ」 とも呼ばれる絵画で、
ハンガリー人なら誰もが知っているであろう国民的絵画です。
描かれているのは、シニェイ・メルシェの新婚の妻とのこと。
心地よい陽気。美しい妻。
豪華なドレスを買えるだけの経済力。
リア充にほどがある一枚です。
とても素敵な絵なのですが、人によっては僕のように、
「見ちゃいられないぜっ!」 という気持ちになることでしょう。


さてさて、今回出展されていた中で、
個人的に印象的だったものをいくつかご紹介。
まずは、同じくシニェイ・メルシェの作品から。




右側の 《気球》 も、約130年前の絵と考えると、独創的なモチーフで印象的でしたが。
やはり、ついつい目が引き寄せられてしまうのは、
原っぱの上で裸で寝そべる左側の絵の中の女性です (←男の悲しい性)。
ちなみに、タイトルは、《ヒバリ》 です。

いや、確かに1羽、飛んでるけども!

この絵のメインは絶対ヒバリじゃないし!
当時、夫婦やカップルがこの絵を観ている際に、
おそらく、こんなやり取りがあったのではなかろうか。
「あなた、女の人ばっかり見てたでしょ!」
「いや、見てない見てない!え~っと・・・そう・・・このヒバリを見てたんだよ」
「ふーん。ヒバリねー」
「本当本当!このヒバリ、いいよなぁ。躍動感があって。うん。ヒバリ、いいよ」
そんなやり取りが続出したことから、この絵は、《ヒバリ》 と呼ばれるようになったそうな。
(↑あくまで、僕の妄想です)


続いて紹介したいのは、フランツ・クサーヴァー・メッサーシュミットによる肖像彫刻です。
ここ最近、“ルーヴル美術館展”、“ウィーン・モダン展” と、
立て続けに国立新美術館に来日しているメッサーシュミットの 「性格表現の頭像」。
今回は、ブダペスト国立西洋美術館が所蔵する3点のうち2点が来日していました。
よりインパクトがあったのは、手前の 《子どもじみた泣き顔》 のほう。




完全なるザブングル。
完全なる 「悔しいです!!」。


画家個人の印象が強く残っているのは、
チョントヴァーリ・コストカ・ ティヴァダルです。


チョントヴァーリ・コストカ・ ティヴァダル 《アテネの新月の夜、馬車での散策》 1904年 油彩/カンヴァス
ブダペスト、ハンガリー・ ナショナル・ギャラリー © Museum of Fine Arts, Budapest - Hungarian National Gallery, 2019



もともとは薬剤師だったというチョントヴァーリ。
しかし、ある日、神から 「お前は世界で最も偉大な画家になる!」 とのお告げが!
そして、画家になることを決意したのだそうです。
残念ながら、生前は評価されなかったそうですが、
現在では、その独特なスタイルの風景画に、カルト的ファンが少なくないのだそう。
神の予言は、当たらずとも遠からず、といったところでしょうか。


最後に紹介したいのは、レオ・プッツの 《牧歌》 (写真左) です。




彼女のために、フルートを演奏する男性。
しかし、肝心の彼女は、演奏よりも水温が気になっているようです。
“うわー・・・コイツ聴いてねぇよ・・・”
“何かっていうと、いつもこの曲なのよね・・・あー、演奏早く終わらないかしら・・・”
なんとも気まずい時間が流れていました。
少なくとも、”牧歌” ではないです。




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芸術家(芸能人)!してる?してない?クイズ Part3

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学芸員や美術研究者、美術評論家など、芸術関係の仕事はたくさんありますが。
そのあがりは、おそらく館長職に就くことではなかろうか。
そこで、今回は芸術家および芸能人なのに、
館長になったことがあるかどうかをクイズ形式で出題。
してるか?してないか?2択でお答えくださいませ。

Q1











正解は・・・・・






終生、師であったギュスターヴ・モローを敬愛。
それゆえ、1903年に師の遺言により、モロー美術館の初代館長に就任した。
ちなみに、モロー美術館に住み込みで働くも、給料はかなり安かったそう・・・。


Q2











正解は・・・・・






ピカソは、パリに住んでいた時代に、スペインの共和党政府により、
プラド美術館の亡命名誉館長職なる謎の職に任命された経験があります。
《ゲルニカ》 は、その時代に描かれた傑作。


Q3











正解は・・・・・






享年97歳と長生きしたシャガール。
フランス政府からレジョン・ドヌール勲章を、
エルサレム市からは名誉市民の称号を得ていますが、館長職とは縁がなかったようです。


Q4











正解は・・・・・






日中友好協会会長や。文化財保護振興財団理事長、
さらには、東京藝術大学学長を2期務めるなど、名声を欲しいままにした平山郁夫。
もちろん (?)、東京国立博物館の館長にも就任しています。
それも、ただの館長ではなく、特任館長。


Q5











正解は・・・・・






1961年、作家で当時文化大臣だったアンドレ・マルローにより、
ローマにあるフランスの文化施設ヴィラ・メディチの館長に任命される。
ちなみに、現在でこそ文化施設ですが、ヴィラ・メディチはあのメディチ家の別荘。
ベラスケスの 《ヴィラ・メディチの庭園》 のモチーフにもなっている。


Q6











正解は・・・・・






2006年6月1日から2010年3月23日まで、
横浜にある横浜人形の家の館長を務めていた。
また、かつて伊豆高原にあったワイルドスミス絵本美術館の館長も務めている (現在は休業中)。
2015年からは、呉市海事歴史科学館大和ミュージアムの名誉館長にも就任。


Q7











正解は・・・・・






1995年より、ちひろ美術館・東京の2代目館長に就任。
さらに、2011年からは安曇野ちひろ美術館の2代目館長にも就任している。
それぞれの館長室は、やはり “徹子の部屋” と呼ばれているのでしょうか。


Q8











正解は・・・・・






大阪府立大型児童館、郡山市ふれあい科学館、ディスカバリーパーク焼津天文科学館。
さらに、北九州市漫画ミュージアムの名誉館長をそれぞれ務めています。
沖田十三艦長よりも激務?


Q9











正解は・・・・・






『20世紀少年』 や 『TRICK』 、『ケイゾク』 など、
数多くの作品で知られる演出家、映画監督の堤幸彦さん。
2017年にオープンしたあいち航空ミュージアムの名誉館長を務めています。


Q10











正解は・・・・・






国民栄誉賞を受賞した日立市出身の作曲家・吉田正。
その功績を伝えるため、出身地の茨城県日立市に建設された吉田正音楽記念館。
その2代目の名誉館長に就任したのが、吉田正音の代表曲 『いつでも夢を』 を歌った橋幸夫さんです。
ちなみに、そのミュージアムショップでは、
橋幸夫の幸飴いつでも梅をという名の梅干しが販売されている模様。


さて、出題は以上となります。
皆様は、何問正解できたでしょうか?
しかし、意外な人が館長職に就いているものですね。
アートテラーとして活動を続けていくために、
これからも、日本中の館長の情報は、まめにチェックしていきたいと思います (←?)




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第8回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の<今>

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今年も、菊池ビエンナーレの季節がやってきました。
年齢制限無し。サイズ制限無し。
2年に1度の現代陶芸の祭典、ガチンコバトルです。

第8回となる今回には、日本国内を中心に総数276点がエントリー!
入選作は過去最大となる52点でした。
その入選作全点が、今、菊池寛実記念 智美術館で開催中の展覧会、
“第8回菊池ビエンナーレ 現代陶芸の〈今〉” で一挙大公開されています。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


栄えあるグランプリ、つまり大賞に輝いたのは、
佐賀県有田町在住の中村清吾さんによる 《白磁鉢》 という作品です。




緊張感もありつつ、柔らかさもありつつ。
シンプルながらオリジナリティあるそのフォルムは、
カブトムシやクワガタムシなどの甲虫をイメージしているのだそう。
確かに、そう言われると、甲虫のように見えてきます。
それだけに、陶芸というよりも、バイオテクノロジーに近いものを感じました。


続く優秀賞に輝いたのは、こちらの作品。




一見すると、ロシア・アヴァンギャルドのタワーのようにも思えますが、
福岡の小石原焼の “若きホープ” 森山寛二郎さんの 《切り継ぎ―廻―》 という作品です。
「切り継ぎ」 とは、森山さんのオリジナルの技法。
ロクロで成形したモノを一旦切って開き、
それらを継いで組み合わせることで、これまでにない形を作り出しています。
“そんな面倒くさいことしないで、最初からこの形を作ればいいんじゃね??”
とも思いましたが、おそらくロクロで作らないと、この独特な弧は生まれないのでしょうね。


なお、奨励賞を受賞したのは、今回も前回と同じく3名。
伊藤公洋さんの 《志野彩文盤》




中里浩子さんの 《Flower Scapes》




高橋朋子さんの 《銀彩塞器 皓月》 が、それぞれ受賞しています。




さてさて、菊池ビエンナーレは、かれこれ第5回から拝見していますが。
今回の第8回でもっとも印象的だったのは、
常連組があまり参加していなかったということ。
まるで、和牛やミキ、カミナリが出ない今年のM−1のようです。

また、ベテランや中堅作家に混じって、1991年生まれの青木岳文さんや、




1991年生まれの川瀬理央さん、




1992年生まれの田中陽子さんなど、




フレッシュな若手作家が目立っていたのも印象的でした。
今、お笑い界は、“お笑い第7世代” が注目を集めていますが、
陶芸界にも、“陶芸第○世代” が台頭し始めているのかもしれません。

ちなみに、前回、20代で奨励賞を受賞した若手の注目株、釣光穂さん。
今年は惜しくも入賞を逃してしまいましたが、独自のアミモノ陶芸 (※) は今回も健在。
(※粘土をひも状に細く撚って、編み物をするように下から積み上げて制作する技法)




個人的には、前回の作品よりも、
仕上がりが綺麗に、かつ、色がよりポップになっていたように感じました。
第9回こそ、大賞か優秀賞を!
こうして気になる作家を見つけて応援できるのが、菊池ビエンナーレの醍醐味ですね。
星


今回の入選作の中で特に気になったのは、波部圭亮さんの 《平成器》




平成時代に最も作られた器=ペットボトルを、
陶で大量に制作したコンセプチュアルな作品です。
コカコーラだとかアクエリアスだとか、
特には具体的なモデルはないとのことでしたが。
(形的には、ブレンディ?)
あえて錆びさせているため、表面は緑色とゴールドに。
その取り合わせのせいで、ついついライフガードを思い浮かべてしまいました。


それからもう一つ気になったのが、大塚茂吉さんの 《ふりむく猫》 です。




もともとは、画家だったという大塚茂吉さん。
訪れたイタリアで、テラコッタに出会い、
陶芸による立体像を制作するようになったのだそうです。
特徴的なのは、その表面。




全体的にビッシリ無数に穴を開け、
その穴に象嵌の技法で白土を埋めているのだとか。
ニャンとも手間のかかる作品です。




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