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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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クラシックホテル展―開かれ進化する伝統とその先―

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先日は、天王洲アイルの建築倉庫ミュージアムに行ってきました。
数年前までは定点観測的に通っていたのですが、なんだかんだで約2年半ぶり。
久しぶりの再会を祝して、門を潜ろうと思ったら・・・・・

その門がありませんでした!えっ?あれ??

なんと、いつの間にやら、
入り口が以前の反対側に変わっていたようです。




入り口が変わったことに驚きつつ、
ミュージアムに一歩足を踏み入れたところ、さらなる驚きが!




オリジナルミュージアムグッズが、
いつの間にやら、めちゃめちゃ充実していました!
2017年1月6日付けの記事では、オリジナルトートバッグが誕生していたことに驚いていた僕。
そんな当時の僕に、この充実ぶりを教えてあげたいものです。


と、入り口やミュージアムグッズにも驚きましたが、
それ以上に驚かされたのは、展示のメインだった建築模型が、展示室になかったこと。
僕が知ってる建築倉庫ミュージアムは、
建築模型保管庫そのものを展示するというミュージアムでしたが。
なんでも2018年4月に、アートとしての建築模型の魅力をより広く発信すべく、
建築文化に焦点をあてた企画展を行うミュージアムにリニューアルしたのだそうです。
名前は一緒なのに、内容はガラリとリニューアル。
『ボキャブラ天国』 ばりのリニューアルです。

とはいえ、建築模型の数々は隣接する模型保管庫に展示されており、
時間限定ではあるものの、今でも来場者は見学することが出来るようです。
懐かしの建築模型にも無事に再会できて、ホッと一安心しました。


さて、かつて建築模型が展示されていた空間は、
リニューアル後、AとB、2つの展示室へと様変わり。
基本的に、それぞれで異なる展覧会を開催しているようです。
リニューアル後、入館料は一般3100円に値上がりしていますが、
この価格で、模型保管庫および、展示室A、Bの展覧会が鑑賞できるとのこと。
ざっくり1000円×3と考えれば、
他のミュージアムと比べて、特別に高いというわけではなさそうです。


さてさて、そんな建築倉庫ミュージアムの展示室Aでは、
現在、”クラシックホテル展―開かれ進化する伝統とその先―” が開催されています。




こちらは、富士屋ホテルや雲仙観光ホテルなど、
人生で1度は泊まってみたいクラシックホテルにスポットを当てた展覧会。
日本を代表する12のクラシックホテルの魅力を、
各ホテルに残る建築図面や貴重な資料を交えて紹介しています。




会場で紹介されているクラシックホテルの写真は、すべて撮り下ろし。
展覧会のために、各ホテルで新撮したそうで、その総数は1万枚 (!) を超えたのだとか。
その中から選びに選び抜かれた写真が紹介されているそうです。




また、会場内で展示されている家具は、
すべて、各クラシックホテルからお借りした本物。
しかも、展示品でありながら、椅子は実際に座ることが可能となっています。




こちらは、”関西の迎賓館” 奈良ホテルのロビーに設置されている将棋テーブル↓




椅子に座るのはもちろん、将棋を指すのも可能だそうです。
なお、今ここ建築倉庫ミュージアムに、この将棋テーブルがあるということは、
当たり前ですが、会期中、奈良ホテルのロビーには、この将棋テーブルが無いということ。
奈良ホテルでの将棋を楽しみにしていらした方は、
今なら、建築倉庫ミュージアムで楽しむことが出来ますよ。


ちなみに。
椅子に座った時の目線に、写真の位置が合わせてあったり、




改装作業中の富士屋ホテルから借りた天井画を天井に飾っていたり、




実は、会場内のいたるところには、
キュレーターさんのこだわりの演出が施されています。
そのさりげなさは、クラシックホテルのサービスの如し。
ホスピタリティが高い展覧会でした。
星星



そうそう、キュレーターさんのこだわりといえば、
会場入り口に設置されているクラシックホテル年表も必見。
今展のために制作されたオリジナルの年表です。





「富士屋ホテルの開業と西南戦争が、ほぼ同じ時期」 とか、
「金谷ホテルの開業の2年後に、日清戦争が終結した」 とか。
深い深いとは思っていましたが、こんなにもクラシックホテルの歴史が深かったとは。




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村井正誠 あそびのアトリエ

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現在、世田谷美術館で開催されているのは、
“村井正誠 あそびのアトリエ” という展覧会。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


日本における抽象絵画のパイオニアの一人で、
世田谷とはゆかりの深い洋画家・村井正誠 (1905~1999) をフィーチャーした展覧会です。


さてさて、洋画家の展覧会ではありますが、
冒頭では、あえて洋画ではなく、立体作品が紹介されていました。




これらの作品は、村井曰く、
彫刻作品ではなく、“クッツケルアート” 作品とのこと。
なんとも、あそび心のあるネーミングです。

続いて紹介されていたのも、立体作品。
アルミニウムで鋳造されたレリーフ作品です。




抽象的なレリーフかと思いきや、
タイトルは、どれも 《自画像》 となっていました。
『NO MORE 映画泥棒』 のカメラの人??
いえいえ、実際の村井正誠は、こんな感じのビジュアルです。


アトリエの村井正誠 1962年


あの 《自画像》 とは似ても似つきません。
(まぁ、でも、見ようによっては、面長な顔立ちが似て無いとも言い切れないような)

なお、3体の 《自画像》 の足元に飾ってあるのは、
村井のアトリエに遺されていたという、お気に入りの民芸品や古道具なのだとか。
ちなみに、そんな村井のアトリエは、生誕100年にあたる2005年に、
建築家の隈研吾氏によって、村井正誠記念美術館に生まれ変わっています。




小さいながらも居心地の良い、素敵な美術館なのですが、
開館しているのは、3月~5月、または9月~11月の日曜日のみ。
しかも、往復はがきによる予約が必要となっています。
日々の生活に 「あそび」 がある時に、是非、訪れてみてくださいませ。


閑話休題。
オブジェのコーナーを抜けた先で紹介されていたのは、
村井の渡仏時代、まだ抽象になる前の絵画作品の数々です。




初期は、こういった絵を描いていたのですね。
セザンヌのようなマティスのような、
いかにもフランスっぽい印象の油彩画でした。


《不詳(サン・マメの庭)》 1920年代後半


その後は、いよいよ村井の真骨頂とも言える抽象画が紹介されています。
”難解” や ”つまらない” など、苦手意識を持たれやすい抽象画ですが、
むしろ、そういう方にこそオススメしたいのが、村井正誠の抽象画です。


《女の顔》 1951年


今展では、抽象画に移行したてホヤホヤの作品から、
晩年に辿り着いた抽象画まで、ドドーンと一気に紹介されています。





ただ単純に、なんか楽しい。
たた単純に、なんか面白い。
ただ単純に、なんかのほほんとしている。
ただ単純に、なんかいい。
それが、村井正誠の抽象画。




理屈や難しいことは抜きにして、
いるだけで、なんか心が軽くなる。
そんな展覧会です。
星


ちなみに。
全体的に、ユーモラスな雰囲気なのですが、
会場の一角に、若干、テイストが違う作品群が飾られています。




こちらは、「黒の時代」 と呼ばれる頃の作品群。
あるコメディアンが、ジョーカーとなってしまったように。
”まさか、村井正誠も闇堕ちしてしまったのでは?” と、心配してしまいましたが。
どうやら、それまでの絵に登場していた黒い線が、
段々と太くなっていき、それが面となり、画面全体を覆ってしまったのだとか。
決して、心の闇を抱えて、黒く画面を塗り潰したわけではないようです。
安心しました。

なお、黒い絵の具はカビが生えやすく、
長持ちしないことが、のちに判明したとのこと。
黒の時代は、数年で終わりを迎えたようです (笑)
ムライさんは、愉快だな。


 ┃会期:2020年2月8日(土) 〜4月5日(日)
 ┃会場:世田谷美術館
 ┃
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00197

~読者の皆様へのプレゼント~
“村井正誠展” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、2月22日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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素晴らしきミュージアムショップの世界 商品番号128

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今回ご紹介する商品は、ミュージアムショップで見つけたわけではないのですが、
先日、ネットサーフィン中にたまたま見つけた、アートテラー的に気になる商品です。
気づいたときには、amazonで購入。
翌日には、この商品が届きました。




その名も、究極のNTO(なっとう)
あの北大路魯山人が愛した究極の納豆を再現できるアイテムなのだそうです。

魯山人は、その著書 『魯山人味道』 の中で、
「納豆の拵え方」 について、こんなことを述べているのだとか。

「...納豆を器に出して、それに何も加えないで、そのまま、二本の箸でよくねりまぜる。
 そうすると、納豆の糸が多くなる。
 蓮から出る糸のようなものがふえて来て、かたくて練りにくくなって来る。
 この糸を出せば出すほど納豆は美味くなるのであるから、
 不精をしないで、また手間を惜しまず、極力ねりかえすべきである。」


そんな魯山人の思想に基づき、
タカラトミーアーツが開発したのが、この究極のNTOなのです。




タカラトミーアーツが導き出した、
究極の納豆のためにかき混ぜるべき回数は、424回とのこと。
果たして、そこまで劇的に味が変わるのでしょうか?




Dang Dang 気になってきたので、
早速、究極の納豆を作ってみることにしました。

こちらが、漆塗りをイメージしたという究極のNTO。




下の透明な容器の中に、納豆を投入します。
なお、納豆は、おかめ納豆を選びました
定番中の定番のあの納豆の味が、どう変化するのか楽しみです。




蓋を閉めたら、メモリを 「開始」 にセット。




あとは、ひたすらハンドルを回します。




ちなみに、攪拌棒は倍速で回転するため、
ハンドルを1回まわすと、内部では2回かき混ぜられているのだとか。
混ぜる時間と労力を短縮できる優れものです。


・・・・・・・とはいえ。




わりと回したつもりでも、まだたったの30%。
究極には、そう簡単には辿り着けるものではないようです。

さらに回すこと、数分。
305回転したところで、「醤油」 という文字が見えてきました。




醤油??
すると、蓋がカパっと開きました。




どうやら、このタイミングで醤油 (たれ) を投入するのが、魯山人スタイルなのだそう。
付属のたれを入れて、残り119回かき混ぜます。




こうして、完成したのが、究極の納豆です。




では、いよいよ実食してみましょう。




比較のために、普通に箸でかき混ぜた納豆も用意してみました。
右が究極の納豆、左がいつも通りにかき混ぜた納豆です。
心なしか、究極の納豆のほうが、ビジュアル的に品があるような。
そこまで、ネバついていない印象があります。

まずは、一般的な納豆から。




・・・・・うん。
まぁ、この味です。
特にこれといった感想も思い浮かばないくらいに、慣れ親しんだ味でした。


続いて、究極の納豆を一口。




むっ!これは!!




・・・・・・・ほぼ同じ味じゃないか。
強いて言うなら、究極の納豆のほうが、
サラッとしていて口当たりが良かったです。
ただ、納豆そのものの味は、
当たり前ですが、普通に箸でかき混ぜたものと同じでした (笑)
あんなにハンドル回したのに。



ちなみに。
今、究極のNTOは、天袋の隅のほうで眠っております。
究極の衝動買いでした。




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田附勝 KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展

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今年も、『あざみ野フォト・アニュアル』 のシーズンがやってきました。
『あざみ野フォト・アニュアル』 とは、現代の写真表現を紹介するシリーズで、
いうなれば、横浜市民ギャラリーあざみ野での2月の風物詩ともいうべき展覧会です。
記念すべき第10回目となる今年の 『あざみ野フォト・アニュアル』
フィーチャーされているのは、写真家の田附勝さんです。

田附勝さんといえば、デコトラとそのドライバーたちを撮り続けた 『DECOTORA』 や、

DECOTORADECOTORA
Amazon




東北で暮らす人や動物、文化を映し、
第37回木村伊兵衛写真賞を受賞した 『東北』 といったシリーズで知られていますが。




“田附勝 KAKERA きこえてこなかった、私たちの声展” と題した今展では、
2012年より撮影を始めたという新シリーズ 『KAKERA』 が紹介されています。




展示室に入って、まず何よりも驚くのは、
会場が薄暗く、そして、ガランとしていること。




黒い壁が3つほど設置されており、
それぞれに、パネル化された写真が立てかけられています。




こちらが、その 『KAKERA』 シリーズ。





映っているのは、奈良文化財研究所 埋蔵文化センターであったり、
相馬市立博物館であったり、どうやら日本各地の博物館の収蔵庫の光景であるようです。
さらに、展示室を奥に進むと・・・・・




今度は、さらに大きな壁が現れました。
とりあえず、この壁に沿って、薄暗い展示室を進みます。
すると・・・・・




何やら明るいスペースが。
そのスペースから、光が漏れ出ています。
まるで蛾のように、その光に導かれると、
中では、不思議な写真が展示されていました。




縄文土器と新聞。
一見すると、シュルレアリスムのように、
あえて狙った組み合わせに思えるかもしれませんが、そうではありません。
これらの写真は、博物館の収蔵庫や発掘現場で保管されていた縄文土器のかけらを、
中敷きや梱包などとして使用されていた新聞とともに、保管状態そのままに撮影したものです。

例えば、これらの縄文土器のかけらは、
東電の原発トラブル隠しを報じた新聞とともに保存されていました。




また例えば、これらの縄文土器のかけらは、ケネディ大統領暗殺のニュース、
あるいは、山口百恵さんの顔が大きく映し出された新聞とともに保存されていました。




その当時、縄文土器のかけらを保存した人は、
間違いなく、何も意図していなかったことでしょう。
そこにたまたま、その新聞があったから、中敷きや梱包に使ったはず。
ただそれだけのことなのですが、
遙か遠い昔の人々の生活の一部を伝えてくれる縄文土器と、
ちょっと昔の歴史の出来事を伝えてくれる新聞が組み合わさると、
何かそこに意図や必然性のようなものが感じられるから不思議なものです。
もしかしたら、実は、縄文土器の縄目の紋様は、当時の文字であり、
それぞれの土器のかけらは、当時の何らかのニュースを表していたりして。
そんなことを妄想してしまうくらい、
想像力がいろいろとかき立てられる作品でした。
星


そして、想像力がかき立てられたことで、
ようやく頭が回転し、今さらながら、あることに気がつきました。
薄暗いところから明るいところへと至る、
この展示空間は、博物館の収蔵庫をイメージしていたのですね。


ちなみに。
展覧会のラストに展示されていたのは、こんな一枚でした。




どんな新聞記事なのかと思い、近づいてみたところ、
東スポ (東京スポーツ新聞) のエロ記事であることが判明。




なんちゅう記事で土器を保存してんだよ。




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FACE展 2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展

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日本初の高層階美術館として、1976年に開館した東郷青児美術館・・・改め、
安田火災東郷青児美術館・・・改め、損保ジャパン東郷青児美術館・・・改め、
東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館は、今年5月にSOMPO美術館に生まれ変わります!
そんなブリ並に改名するSOMPO美術館は、生まれ変わるタイミングで、
損保ジャパン日本興亜本社ビル敷地内に建築中の新たな建物にお引っ越し。




つまり、42階にある美術館スペースは、これで見納め。
42階の高さから一望するこの都心の眺めも、これで見納めとなります。




そんな現在の場所でのラストを飾るのが、
”FACE展 2020 損保ジャパン日本興亜美術賞展” という展覧会です。




年齢関係なし。所属関係なし。
未発表の平面作品であれば、基本的に何でもありのガチンコバトル的な公募コンクール。
それが、”FACE” です。
8回目となる今年は、全国各地津々浦々、
若手からベテランまで、幅広い年齢層の875名の新進作家たちがエントリー。
その中から入選した71点が会場で紹介されていました。
星


松浦清晴さんの 《身体記》 や、


優秀賞 松浦清晴 《身体記》 2019年 アクリル・キャンバス 162×130.3cm


齋藤詩織さんの 《女狩人のごちそう》 をはじめ、


優秀賞 齋藤詩織 《女狩人のごちそう》 2019年 油彩・キャンバス 162×194cm


優秀賞を受賞した作品は、4点ほどありましたが、
グランプリ受賞作は、なんと ”FACE” 8回目にして初の該当無し。
42階のフィナーレを飾る展覧会だとしても、そこは手心一切なし。
”FACE” がいかにガチンコなのかを、実感させられます。

ちなみに、優秀賞の作品の中で、
個人的に印象に残ったのは、大槻和浩さんの 《明日を見つめて》 です。


優秀賞 大槻和浩 《明日を見つめて》 2019年 アクリル・キャンバス 162×194cm


薄ボンヤリした画面の向こうから、こちらを見つめる謎の人物。
何かを訴えかけているようでもあり、
特に何も考えていないようでもあり。
向かい合えば向かい合うほど、この人物のことが気になってきます。
どうでもいいですが、しばらく見つめ返していたら、大鶴義丹さんに見えてきました。


また優秀賞以外で印象に残ったのが、
審査員特別賞受賞の木村不二雄さんの 《崖屋美術館》


審査員特別賞 木村不二雄 《崖屋美術館》 2019年 ろうけつ染(墨)・綿布 112×162cm (審査員 堀 元彰)


画面に近づいてみると、フェルメールにゴッホにピカソに、
古今東西の名画のモチーフが、所狭しと描かれているのが見て取れます。




そういった 『びじゅチューン』 的世界観を狙った絵画なのかと思いきや。
実は、絵画ではなく、ろうけつ染 (=染めない部分に鑞を塗って染料をはじく技法) で制作された染物とのこと。
染物でこれほどまでに細かい表現が出来るだなんて。
思わず二度見三度見してしまいました。

また、同じく審査員特別賞受賞の檜垣春帆さんの 《ライツ・ライト》 も印象的な一枚。


審査員特別賞 檜垣春帆 《ライツ・ライト》 2019年 油彩 ・ ペンキ・キャンバス 130×162cm (審査員 椿 玲子)


正直なところ、パッと見ただけでは、
何が描かれているのか、まったくわからなかったのですが。
しばらく向き合っていたところ、
一人の人物 (おそらく女性?) の立ち姿を、
少し上から俯瞰的に描いている絵であることが判明しました。
黒い部分は影を表現していたのですね。
ちょっとしたアハ体験でした。


なお、展覧会の会期中、
観覧者投票による 「オーディエンス賞」 の選出が行われるそうです。




「オーディエンス賞」 の栄光を勝ち取るのは1点のみ。
もちろん、優秀賞や審査員特別賞を受賞していない、
ノーマークの入選作が選ばれる可能性も大いにあります。
それを決めるのは、会場を訪れた皆さまです。

個人的オーディエンス賞は、任田教英さんの 《星天停止》 でしょうか。





任田さんは、子どもの頃に遊んだファミコンに着想を得て、
ドットをモチーフに作品を制作するアーティストなのだとか。
新しいのに、懐かしい。
不思議な味わいの作品でした。
ちなみに、ドットは一つ一つ手描きとのこと。
若冲の升目描きを彷彿とさせるものがあります。


それと、小久保拓実さんの 《岐路にて》 にも個人的オーディエンス賞を。




ウサギの着ぐるみの中の人に何があったのでしょう・・・?
だいぶ不穏な空気が漂っています。
「もうウサギなんかやってられっか!」 と、
衝動的にウサギの頭を外してしまったのかもしれません。
ウサギを続けるか否か。
まさに、岐路に立たされているのでしょう。


 ┃会期:2020年2月15日(土) 〜3月15日(日)
 ┃会場:東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館
 ┃
https://www.sjnk-museum.org/program/current/6138.html

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“FACE展 2020” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
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澄川喜一 そりとむくり

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現在、横浜美術館で開催されているのは、“澄川喜一 そりとむくり” という展覧会。
日本の抽象彫刻のパイオニアにして、'生きるレジェンド' 澄川喜一さんの大々的な回顧展です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


念のために伝えておきますと。
タイトルにある “そりとむくり” は、
『そりとむくり』 なる1つの単語ではありません。
『「反(そ)り」 と 「起(むく)り」 』 という2つの単語を合わせたもの。
どちらも、五重塔や日本刀、富士山の稜線など、
日本の伝統的な造形や自然に見られる美しさで、澄川さんが作品に取り入れている概念です。
「そり」 とは、下に向かってゆるやかに湾曲する線や面を指し、
「むくり」 とは、その反対で、上に向かってゆるやかに湾曲する線や面を指すのだとか。

なお、会場の入り口に飾ってあるのは、
山口県岩国市にある日本三名橋の一つ、錦帯橋の模型。
岩国市で青春時代を過ごしたという澄川さんは、
錦帯橋の構造美を見て、「そり」 と 「むくり」 の魅力に目覚めたのだそうです。

ちなみに。
もし、澄川喜一さんの名は聞いたことがないという人も、
彼が制作、デザインした作品は、一度は必ず目にしているはず。
メインとなる作品は木彫ですが、野外彫刻も多く手がけている澄川さん。
現在、日本国内にある彼の野外彫刻や記念碑は、120点を超えているそうです。




意外なところでは、東京アクアラインの人工島 「風の島」 や、
東京駅八重洲口の新たなランドマークである 「グランルーフ」 も澄川さんによるデザイン。




そして、最も有名なところでは・・・・・




東京スカイツリー®のデザインも監修しています。
まさに、日本一の大仕事です。


さてさて、今回の展覧会では、そんな澄川さんの貴重な初期の作品や、


《S君》 1959年 ブロンズ 33×22×27cm 作家蔵(島根県立石見美術館寄託) (c)Sumikawa Kiichi 撮影:村井修


平櫛田中賞を受賞した代表作 《そりのあるかたち-1》 から、


《そりのあるかたち-1》 1978年 欅 135×260×45cm 東京都現代美術館蔵 (c)Sumikawa Kiichi 撮影:村井修


近作・最新作まで、約100点もの作品が出展されています。
作品は、ほぼ時系列に沿って紹介されていました。




制作を続ければ続けるほど、作品はより抽象的な形へ。
見た目の印象も、どんどんとシンプルなものになっていきます。

正直なところ、近年の 《そりのあるかたち》 シリーズは、
あまりにもシンプル過ぎて、軽く手を抜いているのかなと思いましたが (←コラッ!)





しばらく見ていたところ、あることに気づかされました。
シルエットを見ただけでは、
ただただシンプルな造形のようにしか感じられません。
しかし、その表面を見てみると・・・・・




惚れ惚れするほど、木目が美しいのです。
なるほど。近年の 《そりのあるかたち》 は、
木目の美しさを最大限に活かすための 「そりのあるかたち」 だったのですね。




ちなみに、最新作の 《そりのあるかたち》 がこちら↓





やはり木目が美しい。
何かの波動のようにも見え、神々しさすら感じられました。


《そりのあるかたち》 の木目の美しさに開眼してからというもの・・・。
そこばかりに集中してしまいました。
木を見て彫刻を見ず。




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【告知】 現在募集中のアートツアー 【告知】

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現在募集中のアートツアーです。

アートに興味のない方でも楽しんで頂ける企画を心掛けております。
初参加の方も多いので、どうぞお気軽にご参加くださいませ♪
(男女比は、7:3くらいで女性が多いです。
 また、おひとりで参加される方が大半ですので、一人でもふらっと遊びにいらしてください!
 お子様とご一緒の参加も大歓迎です[お子様の参加費は基本無料])
定員になり次第、募集は〆切らせて頂きますので、よろしくお願いします。
参加希望の方は、お手数をおかけして恐縮ですが、
件名に希望するアートツアーを明記して、以下のメールフォームよりお申し込みくださいませ。
詳細をお知らせいたします。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
お知らせ先のメールアドレスが間違っている方が、ごくたまにいらっしゃいます。
こちらからの返信がない場合は、もう一度お送り頂けますと幸いです。


3/1(日) さよなら美術館の旅(泣)

3月。それは、別れの季節。

都内には、たくさんの美術館がありますが、
その中で3月をもって、お別れとなってしまう美術館があります。
そんな2つの美術館を巡る、ちょっぴり切ないアートツアーを企画したいと思います。

まず訪れるのは、東京国立近代美術館工芸館。
1977年に東京国立近代美術館の分館として、今の竹橋の地に開館しましたが、
今年2020年にに金沢へと移転し、夏に国立工芸館 (仮称) としてリニューアルオープンします。
現在開催中の “所蔵作品展 パッション20” が、竹橋でのファイナルの展覧会となります。
是非、みんなで見納めに行きましょう!

続いては、新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館へ。
高層ビルにある美術館の先駆者として、
長年、その先頭をひた走ってきた東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館。
しかし、5月からは、名を新たにSOMPO美術館と変え、
損保ジャパン日本興亜本社ビル敷地内に建設された新たな建物へと移転します。
つまり、現在開催中の ”FACE展2020” が高層ビルの42階でのファイナルの展覧会。
あの高層からの眺めをしっかりとその目に焼き付けましょう!

時間:13時~17時半
定員:10名
参加費:1000円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/7(土) 丸の内スペイン満喫アートツアー

現在、東京ステーションギャラリーでは、
“奇蹟の芸術都市バルセロナ” という展覧会が開催中!
ピカソやダリ、ミロ、ガウディ・・・etc
バルセロナに関わりの深い芸術家の作品を紹介する展覧会です。

さて、展覧会を鑑賞するだけでも、十分楽しめますが。
スペイン文化をより深く知るべく、
展覧会鑑賞前に、皆で丸の内にあるスペイン料理屋でランチを食べましょう!
(↑ただスペイン料理を食べたいだけw)
目と舌で味わうアートツアーです。

時間:12時~15時半
定員:10名
参加費:1200円 (展覧会鑑賞料を含みます。ランチ代は各自負担)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/8(日) こどもに戻る?アートツアー

今回お届けするのは、『童心に返る』 をコンセプトにしたアートツアーです。

まず訪れるのは、新宿区にある東京おもちゃ美術館
日本のおもちゃだけでなく、世界各国のおもちゃが大集合。
おもちゃに触れて、創って遊べる体験型のミュージアムです。
おもちゃで遊び、たっぷりと童心に返った後は、
四谷三丁目駅から丸ノ内線に乗って、東京駅へ!

「さぁ、こどもに戻ろう。」 というコピーで、
三菱一号館美術館にて絶賛開催中の展覧会 “画家が見たこども展” を鑑賞いたします。
ゴッホやルノワール、ドニ、ヴァロットンらが、
こどもをモチーフに描いた絵画が世界中から集結したスペシャルな展覧会です。
是非、みんなで鑑賞いたしましょう♪

時間:12時半~17時半
定員:12名
参加費:2600円 (2館の鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/20(金・祝) そうだ 江戸、行こう。×みんなの大東京建築ツアー合体スペシャル【深川編】
(おかげさまで定員に達しました。現在キャンセル待ちの方が10名ほどいらっしゃるため、受付は終了しております)

「浮世絵に描かれた街並みは、今、どのような光景になっているのでしょうか?」

太田記念美術館の渡邉晃学芸員を講師に迎え、
浮世絵を手掛かりに、街をぶらぶら歩く企画そうだ 江戸、行こう。と、

「建築って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするみんなの大東京建築ツアー
2つの人気ツアーがコラボするスペシャル企画の第三弾を、2年ぶりに開催します!

今回の舞台は、深川エリア。
門前仲町、清澄白河、森下など、
江戸文化の歴史が残る下町情緒たっぷりのエリアです。
しかし、この深川エリアは、東京都現代美術館のあるアートエリアとして、
また、ブルーボトルコーヒーをはじめ、多数のカフェがオープンするコーヒータウンとして、
ここ近年、お洒落な街としても注目を集めています。
そんな新旧の魅力が詰まった深川エリアを、
渡邉学芸員と建築家・山本至氏の2人が、それぞれガイドいたします。
予測不能のコラボツアー、どうぞお楽しみに!

時間:13時~17時
定員:12名
参加費:2500円
(”そうだ 江戸、行こう。” は、おかげさまで特に人気が集中しております。
初参加の方、もしくは過去4ヶ月以内に ”そうだ 江戸、行こう。” 以外のアートツアーorアートイベントへご参加頂いた方のみの受付となります)



ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/21(日) ロンドン・ナショナル・ギャラリー展へ行こう!

美術は、いろんな人と感想を共有することで、より楽しいものとなります。
一人で美術展を訪れても、もちろん楽しめますが、
みんなで同じ美術展を鑑賞すれば、もっともっと楽しくなるものです!

さてさて、今回みんなで訪れるのは、2020年の大本命展覧会。
国立西洋美術館で開催される “ロンドン・ナショナル・ギャラリー展” です。

こちらは、日本初、いや、世界初開催となる “ロンドン・ナショナル・ギャラリー展”。
フェルメールの 《ヴァージナルの前に座る若い女性》 を筆頭に、
ゴッホの 《ひまわり》、レンブラントの 《34歳の自画像》、モネの 《睡蓮の池》 などなど、
世界的な傑作がまとめて、初来日することでも話題の展覧会です。
見逃し厳禁!
是非、みんなで観に行きましょう。

展覧会を鑑賞したあとは、カフェでまったりいたしましょう♪
図録を持参しますので、展覧会の感想などを中心に楽しくワイワイ話せたらと思っております。
もちろん美術の知識は不要!
美術マニアの集いではないので、どなた様も気軽な気持ちで遊びにいらしてくださいませ。

時間:13時半~16時半
定員:10名
参加費:1600円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、ツアー名を書き添えて、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/


3/29(日) みんなの大東京建築ツアー【渋谷2020編】

世界中の建築ファンが憧れる街・東京。

この街には、たくさんの名建築が存在しています。
そんな東京で生活をしていながら、建築に興味が無いなんて。
何ともったいないことでしょう!

「・・・・でも、“建築”って何をどう観たらいいの?? 」

そんな皆様にお送りするのが、みんなの大東京建築ツアー
実際に東京の街をぶらぶらしながら名建築を巡り、
進行役の自分と講師の建築家が掛け合いをしながら、その魅力をたっぷりお伝えするツアーです。

いよいよ12年目を迎えた建築ツアー、
その1発目を飾るのは、渋谷を舞台とした建築ツアーです!
渋谷スクランブルスクエア、渋谷PARCO、東急プラザ渋谷・・・etc
“100年に1度” と言われる再開発が行われ、
相次いで複合商業ビルがオープンしている渋谷。
今回はその最新スポットの数々を、建築ツアー的な視点で巡ります。
変わり続ける街・渋谷。
その秘密に迫るツアーです。
2020年最初のツアー、皆さまのご参加をお待ちしております。

時間:13時~17時
定員:15名
参加費:1500円 (展覧会鑑賞料を含みます)

ご参加希望の方は、こちらの応募フォームからお願いいたします↓
https://arc-tour.org/mail.html


いずれのツアーも、皆様のご参加を心よりお待ちしております!!

新・無料で観れる 美術百選 《ホワイティうめだ (大阪府大阪市)》

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大阪府大阪市北区にある商業施設、ホワイティうめだ。
日本最大級の規模を誇る地下街です。
その一角に、このブログにもたびたび登場してくれたあのアーティストの作品が、
昨年12月より設置されたらしいとの情報を聞きつけ、早速、足を運んで参りました。




はやる気持ちを抑えつつ、地下街を捜索。




・・・・・・・・しかし。
探せども探せども、お目当ての場所に辿り着けません。。。




今、僕はどこにいるんだ (汗)?!

ホワイティうめだ。
別名、梅田ダンジョン。
遭難者続出と言われるその複雑な構造に、まんまと苦しめられました。

さまよい続けること、しばし。
ようやく、“梅田ダンジョンのセーブポイント” とも呼ばれる泉の広場に辿り着きました。




泉が無いのに、泉の広場。
昔は、この場所に噴水があったのだそうです。

と、それはさておき、お目当ての作品は、
こちらの泉の広場のほど近くにありました。




新・無料で観れる 美術百選 096 富田菜摘 《いのちの木》

作者は、富田菜摘さん。
普通ならゴミとして捨てられてしまう材料を使って、
可愛くてユーモラスな動物たちを生み出す今大注目の若手女性アーティストです。
2013年の佐藤美術館での個展で出会って以来、
アートツアーやアートイベントなどで、すっかりお世話になっております。

余談ですが。
2016年に富田さんが発表した異色作 《バルタン》

富田
(↑《バルタン》 の背後でスペシウム光線を放っているのは、富田さんご本人)

その鼻に使われているソムリエナイフと、
腰に巻かれているバックルが特徴的なベルトは・・・・・

ベストバルタン



実は、僕が富田さんに提供したものです。
特にベルトは大学時代に使い倒した思い出深い逸品。
あのベルトに、こんなセカンドライフが待っていただなんて。
新たな命を吹き込んでくれた富田さんに感謝です。


さてさて、今回の新作 《いのちの木》 も、
もちろん廃材を再利用し、制作されています。




それらの廃材を提供したのは、ホワイティうめだ。
そして、Osaka Metroとのこと。
確かに、よく見ると、随所に地下鉄ならではのアイテムがちりばめられていました。




アートファンはもちろん、
鉄道ファンにも観て頂きたい作品です。
気になった方は、ホワイティうめだへ出発進行!




<無料で観れる美術 データ>

ホワイティうめだ

住所:大阪府大阪市北区小松原町 梅田地下街
アクセス:○Osaka Metro谷町線 「東梅田駅」 直結
     ○Osaka Metro御堂筋線、阪神電車、阪急電鉄 「梅田駅」 直結
     ○JR 「大阪駅」 徒歩3分




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「Mの肖像」 作品の謎を解くのはMだ

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大阪の北加賀屋エリアにある住宅街の一角に・・・・・




2018年秋、突如として新たな美術館がオープンしました。




M@M (エム・アット・エム)
またの名を、モリムラ@ミュージアム。
こちらは、名画や有名人になりきるセルフポートレイト作品で知られる美術家、
森村泰昌さん自らが手がけた、森村泰昌さんの作品がいつでも見られるミュージアム。
いうなれば、森村泰昌の森村泰昌による森村泰昌 (とそのファン) のためのミュージアムです。

ちなみに、こちらの建物は、もともとは家具屋のビルだったとのこと。
家具屋のショールームとして使われていた2階を、
美術館スペースにリノベーションしたのだそうです。


・・・・・・・が、しかし。
入り口を入ってすぐ目に飛び込んでくる受付や、
ミュージアムショップ、休憩スペースには、なぜかお茶屋さんの箱が。




家具屋なの?お茶屋なの??

実は、森村さんの実家は、お茶屋さんなのだそうです。
これらの茶箱は、森村さんの実家で実際に使われていたものなのだとか。


さてさて、そんな森村さんのファミリーヒストリーがつまったM@Mで、
現在開催されているのは、“「Mの肖像」 作品の謎を解くのはMだ” という展覧会です。




M@Mには、展示室が2つ。
そのうちの大きな展示室のほうに展示されていたのは、森村さんの代表作の数々です。




それらの中には、マリリン・モンローに扮した森村さんに、




マン・レイに扮した森村さん、




三島由紀夫に扮した森村さんや、




《モナ・リザ》 に扮した森村さんなどがいました。




安定のカメレオンぶり。
これほどまでに多くの人に変身することができるのは、
森村泰昌さんか神無月、ダチョウ倶楽部の肥後リーダーくらいなものでしょう。
と、それはさておき。
マリリン・モンローやマン・レイ、三島由紀夫に 《モナ・リザ》 と、
森村さんが変身した人たちには、とある共通点があるようです。
それは、イニシャルが 『M』 であるということ。
そもそも、森村さん自身もイニシャルが 『M』 です。
とはいえ、森村さん曰く、あえて狙っていたわけではなかったとのこと。
知人に指摘されて、初めて気が付いたのだそうです。

というわけで、今回の展覧会では、
森村さんの作品における 『M』 にフォーカス。
会場には、『M』 な人が大集結しています (※性的な意味じゃなく)。
星

しかし、改めて観てみると、マリー・アントワネットに、




松本俊介に、




マルセル・デュシャンと、まぁ、『M』 な人の多いこと。




また、展示室だけでは紹介しきれなかったようで。
アーカイヴ資料などが並ぶライブラリースペースでも、
三宅一生さんや松岡正剛さんとのコラボ作品も紹介されていました。




ちなみに、展覧会の目玉となるのは、
小さいほうの展示室で紹介されていた 《サイコボーグ》 シリーズです。




《サイコボーグ》 シリーズが、まとめて公開されるのは、約25年ぶり。
アメリカを代表する2人のポップスターのイメージをリミックスした作品シリーズです。




そのポップスターとは、マイケル・ジャクソンとマドンナ。
やはり、どちらも 『M』 が付いています。


ちなみに。
《サイコボーグ》 シリーズのうちの1枚をじーっと観ていたら・・・・・





古舘伊知郎さんにも見えてきました。
・・・・・あっ、でもそれだと、『F』 ですね。




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生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和

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練馬区美術館で現在開催中の展覧会、
“生誕140年記念 背く画家 津田青楓とあゆむ明治・大正・昭和” に行ってきました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


こちらは、明治、大正、昭和と3つの時代を生きた画家、
津田青楓 (1880~1978) の没後初となる本格的な回顧展です。
正直なところ、この展覧会を通して、初めて津田青楓の名を知りました。
そんな僕が展覧会を観終えた直後の率直な感想は・・・・・

「何で今まで津田青楓の展覧会が開催されなかったんだ?!」

その一言に尽きます。
作品は面白い。
作風が何度も劇的に変化する。
そして、人生は波乱万丈。
こんなにもキャラが立っているのに、知られざる画家がまだ存在していただなんて!
掘り出し物を見つけたかのようで、テンションの上がる展覧会でした。
星星


まずは図案化としてキャリアをスタートさせる青楓。
アールヌーヴォーの影響を受けながらも、
他の誰ともかぶらない独自のセンスが光る図案を多数発表していきます。





明治期の作品とは思えないほどに、洒脱なデザイン。




むしろ令和の今でも十分通用するのではないだろうか。
そう思って、ふと会場の上に目をやると、
青楓の図案の一部を組み合わせたバナーが飾られていました。




まるでInstagramのホーム画面のよう。
もし、青楓の図案のアカウント (@seihu_zuan) を作ったら、フォロワーが集まるのでは?


さて、そのまま順調に図案家の道に進むのかと思いきや、日露戦争が勃発してしまいます。
当時まだ学生だった青楓は、兵士として召集され、
激戦地である二〇三高地で、凄惨な体験をすることなるのです。
命からがら帰還したのち、彼は図案家から洋画家へと転向することを決めます。
そして、フランスに渡り、本格的に洋画を学びました。




ちなみに、交流のあった高村光太郎の証言によれば、
青楓はフランスでホームシックにかかり、一週間も寝ていたとのこと。
他にも、高村光太郎は、青楓の愉快なエピソードを紹介しています。
青楓はイジられキャラ・・・いや、愛されキャラだったのかもしれませんね。

愛されキャラといえば、あの夏目漱石も青楓を愛した人物の一人。
青楓に油彩を学んだり、文展に落選した青楓に慰めの手紙を送ったり、
その生涯にわたって、漱石と青楓は深い交流を続けていたのだそうです。
なお、『明暗』 や 『彼岸過迄』 などの装丁も、青楓が手掛けています。




さてさて、洋画家に転向した青楓。
当初は、ゴーギャンのような、セザンヌのような、
不思議なテイストの洋画を次々と制作していました。




しかし、次第に、プロレタリヤ運動に近づいたことで、思想的作品を描くようになります。




その時代に描かれたのが、青楓の代表作にして異色作 《犠牲者》




どことなく、エゴン・シーレの絵画を彷彿とさせますが、
こちらは、『小林多喜二が、特効警察の拷問によって死亡した事件を題材にした作品です。
時代が時代だっただけに、さすがに青楓も当時この絵を発表することは無かったそう。
戦後になって、初めて発表されたそうです。

ちなみに、青楓はちょうどこの絵を制作している頃、
左翼運動に関わっていたため、官憲に逮捕されてしまいました。
逮捕から約1か月後には釈放されますが、
それを機にプロレタリヤ運動とは決別、さらに洋画とも決別することを決めます。
こうして、青楓は洋画家から日本画家へと三たび転向。





さらには、江戸時代の僧・良寛の書に目覚め、
日本画家と同時に、良寛研究家としても活動するようになりました。




こうして青楓は98歳という長く波乱万丈の生涯をあゆんだのです。

と、その生きざまは大変興味深かったのですが、
本音を言えば、やはり若き日に制作した図案が良かったです。
あの頃は、センスがキレッキレだったのに。




後半生の青楓が描いたウサギの絵を目にした時には、なんだか泣きたくなりました。




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上方界隈、絵師済々 Ⅰ

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大阪の “都心のオアシス” 中之島に、
2018年にオープンした中之島香雪美術館。
朝日新聞社の創業者である村山龍平 (号・香雪) が、
文化財保護のために収集した日本と東アジアの古美術コレクションを所蔵する美術館です。

そんな中之島香雪美術館で、現在開催されているのが、“上方界隈、絵師済々 Ⅰ” という展覧会。
18世紀から幕末までの上方画壇にスポットを当てた展覧会です。




展覧会は、前期と後期に分かれており、作品はすべて入れ替えとなります。
2月2日までの前期では、「京都:京都画壇の立役者たち」 と題し、
写生画を大流行させた円山応挙と、その弟子たちによる円山・四条派を中心に、
京都画壇で活躍した様々な絵師たちの作品を展示していたそうです。
2月4日からは、「大坂:独自の展開 大坂画壇」 がテーマの後期が開幕!
京都の絵師たちの影響を受けつつも、
独自の展開を見せた大阪画壇の絵師たちの作品が紹介されています。



・・・・・・・とは言ったものの。
大阪画壇の絵師と聞いて、パッとその名が思い浮かぶ人がほとんどいません。
というのも、これまで関東圏の美術館で、
大阪画壇を取り上げた展覧会は数えるほどしか開催されていないのです。
しかし実は、本場である大阪の美術館でも、
大阪画壇の展覧会は、これまであまり開催されていないのだとか。
そう、今展は、本場大阪の人にとっても貴重な展覧会なのだそうです。


大阪画壇で活躍した絵師の中で、
比較的その名が知られているのは、森狙仙でしょう。
もふもふとした毛並みを描かせたら、右に出るものは無し。
特に猿の絵を多く描いたことから、「猿描き狙仙」 とも呼ばれる絵師です。
今展では、猿の絵はもちろん、イノシシを描いた絵や、


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


子犬を描いた絵も紹介されていました。




毛並みの柔らかさだけでなく、
その温もりまでも伝わってくるようです。
気が付けば、無意識のうちに、その毛並みに手を伸ばしている自分がいました。
展示ケースがあって良かったです。

また、会場では、森狙仙の養子の養子、森一鳳の作品も紹介されていました。




こちらは、月に照らされる綿の花を描いた一枚。
動物の毛並みとはまた違うもふもふ感がありました。
ちなみに、キャプションの解説によれば、
森一鳳の 《藻刈図》(沼湖の藻を刈る舟を描いたもの) が大阪の人に人気だった、とのこと。
その理由は・・・・・・

 『「藻」 を 「刈る」 「一鳳」』 → 『もをかるいっぽう』 → 『儲かる一方』

ダジャレのクオリティは、ぼちぼちでんな。


森一族以外で目立っていたのは、林閬苑 (ろうえん)
応挙や若冲にも影響を与えたという中国の画家、
沈南蘋の影響をもろに受け、中国風絵画を多く描いた絵師です。




これほどの画才を持ちながら、40歳近くの若さで夭折しています。
一説には、当時の中国の文物を現地で学ぼうと、
渡航を願い出たものの許されず、それがもとで憤死したとも。
なかなかエキセントリックな人物です。
特に目を奪われたのは、《青緑山水図》 という一枚。




もはや肉眼で判別するのは不可能なほどに、
隅から隅まで、葉や岩肌などが、びっしりと細かく描き込まれています。
完全に超絶技巧の世界です。
なお、よく見ると、画面の中には数軒ほど家が描き込まれていました。
・・・・・・・・何でまた、こんな過酷なところに住んでいるのでしょう??
『ポツンと一軒家』 に登場する住人に通ずるものを感じました。


さて、林閬苑のようなコテコテの味わいの絵画が、
大阪人のハートをガッチリ掴んでいるのかと思いきや。




四条派の流れを汲む西山芳園の絵画のように、
あっさりとした上品な作風のものも人気があったそうです。
なるほど。この頃から、薄味文化があったのですね。

今回紹介されていた大阪画壇の絵師の中で、
個人的にもっとも印象に残ったのは、同じくあっさり系の上田耕冲です。




↑の 《四季花鳥図》 も実に素晴らしかったですが、
月明かりに照らされた蜘蛛の巣を描いた 《月に蜘蛛の巣図》 は、絶品!




蜘蛛の巣は原形をとどめておらず、
糸がぷらんと頼りなく垂れさがっているだけ。
なんとも言えない寂寥感が漂っていました。




『悲しい色やね』 がよく似合う一枚。




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再び、まったくやる気がございません

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なんだか世の中が大変なことになっていますね。
それに加えて、例年よりも早く、花粉も飛び交っているようです。
あぁ、外に出たくありません。
仕事もしたくない。
家事もしたくない。
遊びにも行きたくない。
コンビニに行くのも面倒なら、トイレに行くのすら面倒です。
もしかしたら、このブログの読者の皆様は、
記事を読むのすら、面倒に感じているかもしれません。


・・・・・・って、あれっ??
何年か前にも、これと同じことを書いたような??
いや、調べるのも面倒です。
(注:2018年8月26日付の 『まったくやる気がございません』 です)
とにもかくにも、今日は再び、
美術史に残る ‟やる気のない絵画” の数々を紹介してまいります。
ぐでぐでだらだら、ご覧くださいませ。


●ヘールトヘン・トット・シント・ヤンス 《荒野の洗礼者聖ヨハネ》




そろそろ仕事すっかなぁ。
でも、あそこのハローワークのおっさん、マジで説教してくるからなぁ。
どっちかというと、俺が説教する側なんだけどなぁ。
靴も履き忘れたし、今日はもう帰ろっかな。


●パトリック・アーラン・フレイザー 《怠惰》




旦那様も奥様もいないし、
たまには、この椅子に座ってもバレないわよね。
あぁ、いいわぁ。この革の感じ♪身体がすっぽり包まれるわぁ。
だいぶ部屋は散らかってるけど、まぁ、あとでまとめて掃除すれば・・・・・Zzz


●フレデリック・レイトン 《母と子(さくらんぼ)》




「ママ。サクランボ持ってきたよ」
「・・・・・ありがとねー。うん。美味しい美味しい」
「ねぇねぇ、遊ぼうよ」
「うーん。もう少ししたらね。あっ、ねぇねぇ、台所にしょっぱいもの無かった?せんべいとか?」
「それも持ってくるの?」
「うん。お願い。あ、ついでに麦茶も。あと、ついでにテレビのリモコンもー」


●アンリ・マティス 《テラスのオダリスク》




「ねぇ、今の演奏聴いてた?」
「聴いてたよー」
「ウソでしょ。寝てたじゃん」
「寝てないって」
「いや、絶対寝てたし」
「そんなことないって。目はつむってたかもだけど、ずっと起きてたよー」
「じゃあ、私が上半身裸になったの気づいた?」
「えっ?ウソ?いつ?何のために?」


●ジョン・オーピー 《道徳的な説教》




“・・・・・・・・・・・・・・・・。”
(あー、こいつの授業、マジだるいわ。
何言ってるか全然わからないんですけど。てか、そもそも声小っちぇから、何も聞こえないし)

「・・・・・え~。であるからして・・・・・」
(はぁ~。何で俺、こいつら相手に授業やってんだろう?)


●ルイージ・イ・モンテハーノ 《あくびをする人たち》




「今からコイツがあくびしまーす!」
「ふぁぁぁ~~~~~」
「そして、それが隣の彼にうつりまーす!」
「ふぁぁぁ~~~~~」
「こんな感じの動画をアップしてまーす。チャンネル登録よろしくね!」


●アーニョロ・ブロンズィーノ 《若い男の肖像》




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

※やる気が無いのを通り越して、どうやら彼はすべての感情を無くしてしまったようです。




明日もブログをお届けできるよう、頑張ります。
やる気がどこかに行ってしまいませんように。




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「コズミック・ガーデン」 サンドラ・シント展

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銀座のメゾンエルメス フォーラムで開催中の展覧会、
“「コズミック・ガーデン」 サンドラ・シント展” に行ってきました。
エレベーターの扉が開くと、まず目に飛び込んできたのが、こちらの注意書き。




一人で訪れているので、特に声を発する予定はないですが、
注意書きがあるので、いつも以上に静かに鑑賞しようと思います。


さてさて、今回の主役サンドラ・シントは、
ブラジルのサンパウロを拠点に制作を続けるアーティスト。
今展では、約2週間をかけ、6人のアーティストともに、
ガラスブロックの空間の壁全体に、白いペンでドローイングを施したのだそうです。

はじめに広がっていたのは、水色を基調とした空間。
こちらは、「朝」 をイメージしているのだとか。




確かに、午後14時過ぎに訪れたのですが、
まるで朝であるかのような爽やかな空気が漂っていました。
作品自体はもちろんのこと、そんな朝の雰囲気をより演出していたのが・・・・・




スピーカーから時おり流れてくる鳥のさえずり。
確かに、会場が静かでないと、この音を聞き逃してしまうかも。
それくらいに、さりげない演出。

おかげで、今、銀座にいることを忘れさせてくれました。
まさに、どこかしらのガーデンにいるかのような印象です。


さて、「朝」 の世界があれば、「夜」 の世界もあります。




「朝」 の世界が、青空のイメージなら、
「夜」 の世界は、高度がぐっと上がって、宇宙のイメージです。




また、「夜」 がテーマ名だけに、星や銀河だけでなく、
ドローイングの中には、シャンデリアも描かれています。




ちなみに、「夜」 の空間には、
彼女のドローイングをもとにしたカーペットが敷かれていました。




実は、彼女はかねてより、
カーペットを使ったインスタレーション作品を制作したかったのだそう。
しかし、自国のブラジルでは、なかなか実現ができなかったとのこと。
今回の展覧会で、その長年の願いが叶ったのだそうです。

また、カーペットだけでなく、クッションもシント仕様。
シントのドローイングが、クッションの全面にデザインされていました。




こちらの 「夜」 の空間は、
クッションに全身を預けて、身体全体で作品を味わうのがベター。
プラネタリウムとはまた違った宇宙の鑑賞体験を味わうことが出来ますよ。




ちなみに。
日中に訪れたため・・・・・




当たり前ですが、シントが描いた宇宙の対面には、
ガラス越しではあるものの、青空が広がっていました。
昼なのに夜。
夜なのに昼。
まるで、マグリットの世界に入り込んでしまったかのようです。


日中に訪れるのもイイですが、
夕暮れや夜に訪れるのもイイかもしれませんね。
何度も通いたくなる展覧会です。
星




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ピーター・ドイグ展

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注:新型コロナウイルス感染症予防対策により、3月15日まで臨時休館となっております。

この春、国立近代美術館で開催されているのは、“ピーター・ドイグ展”
世界で最も重要なアーティストのひとりとされるピーター・ドイグの大規模な個展です。




これまで、グループ展などで彼の作品が、
2、3点ほど日本で紹介される機会はありましたが。
まとめて紹介されるのは、今回が初めて。
日本だけでなく、世界的に見ても貴重な展覧会なのです。


ピーター・ドイグ(1959~)


出展されている油彩画の総数は、
初期作から最新作までを含む全32点。
そう聞いて、「少なっ!」 と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが。




そのほとんどが、ビッグサイズ!
3m超えの作品も少なくありません。
壁のほとんどが、彼の作品で埋め尽くされているかのような印象を受けます。
それゆえ、むしろ会場では、「多くね?」 となることでしょう。

ちなみに、印刷物やポスターでは、巨大な印象を受けないでしょうが、
実はポスターに使われている 《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 も・・・・・


《ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ》 2000-02年、油彩・キャンバス、196×296cm、シカゴ美術館蔵
©Peter Doig. The Art Institute of Chicago, Gift of Nancy Lauter McDougal and Alfred L. McDougal, 2003. 433. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



196cm×296cmという巨大な作品です。
色合いやイメージがロマンチックな雰囲気なので、
ポストカードサイズだと、なぜか思い込んでいました。
それだけに、実物が現れた瞬間、「でかっ!」 と二度見。
スタンダードプードルを初めて見た時くらい、ビックリしました。

また、出展作の中には、2015年のオークションで、
約2600万米ドル (日本円にして約30億円) で落札され話題となった 《のまれる》 もあります。


《のまれる》 1990年、油彩・キャンバス、197×241cm、ヤゲオ財団コレクション、台湾蔵
©Peter Doig. Yageo Foundation Collection, Taiwan. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



この 《のまれる》 を含め、他のいくつかの作品にも小舟が描かれていました。




実は、小舟のイメージソースとなったのは、
『13日の金曜日』 の中のワンシーンなのだとか。
子どもの頃、怖がりながらも、『金曜ロードショー』 で、
何度となく、『13日の金曜日』 を見たはずですが、あの映画に小舟のイメージは全くなく・・・。
やはり “世界で最も重要なアーティスト” は、
同じ映画を観ていても、僕らとは目の付け所が違うようです。

映画といえば、《ラペイルーズの壁》 という作品も。


《ラペイルーズの壁》 2004年、油彩・キャンバス、200×250.5cm、ニューヨーク近代美術館蔵
©Peter Doig. Museum of Modern Art, New York. Gift of Anna Marie and Robert F. Shapiro in honor of Kynaston McShine, 2004. All rights reserved, DACS & JASPAR 2020 C3120



こちらは、ドイグが2002年より活動の拠点を移したカリブ海の島国、
トリニダード・トバゴにある墓地の外壁沿いを歩く男性を描いた作品です。
ドイグ曰く、小津安二郎の映画 『東京物語』 のイメージを念頭に置いて描いた作品とのこと。
なるほど。確かに、小津安二郎的なローアングルから描かれていますね。


作品に描かれているモチーフ自体は、
どれもそこまで目新しいものではないのですが。
なぜか、ピーター・ドイグの手にかかると、
これまでに目にしたことがない新鮮さが感じられます。




しかも、新鮮でありながらも、
それと同時に、懐かしさを覚えます。
初めて目にするのに、初めてな気がしない。
まるで夢、ないしは白昼夢を見ているかのよう。
会場では終始ふわふわしっぱなしでした。
東京都美術館で開催中の “ハマスホイ展” も、じわじわとクセになるタイプの展覧会でしたが。
“ピーター・ドイグ展” もそれに通ずるものがあります。
星星
全体的に写真撮影OKなので、じわじわと話題になること間違いなしの展覧会です。


ちなみに。
いくつかの作品を観ていて、気が付いたのですが。




どうやら、ピーター・ドイグは、
いくつもの四角形が組み合わさっているのがお好きな様子。
ふと見上げれば、東京国立近代美術館の天井も、四角形が組み合わさっていました。
ピーター・ドイグの展覧会をするにもっとも適した美術館といえましょう。





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開館10周年記念 画家が見たこども展

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注:新型コロナウイルス感染症予防対策により、
三菱一号館美術館は、3月16日まで臨時休館となっております。
その後の予定は、3月10日以降に改めて美術館のWEBサイトにてお知らせするそうです。
事態が収束するまで、しばし待ちましょう!



今年4月6日。
三菱一号館美術館が、開館10周年を迎えるそうです。
それを記念して、現在、開催されているのが、
“開館10周年記念 画家が見たこども展” という展覧会。
ナビ派の画家たちが描いた 「こども」 の絵画にスポットを当てた展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


ここ近年、ナビ派が日本でも浸透してきた感はありますが、
何を隠そう、2017年に日本で初めて本格的にナビ派を紹介したのが、三菱一号館美術館。
そういう意味でも、開館10周年に相応しい展覧会といえましょう。


とは言え、「ナビ派ってナニ?」 という方も少なくないはず。
そこでまずは、ナビ派について、ざっくりとナビいたしましょう。

時は1888年。
若き画家ポール・セリュジエは、
憧れのゴーガンに会うためにポン=タヴェンを訪れました。
そこで、セリュジエは、ゴーガンから衝撃的なアドバイスを受けるのです。

 「セリュジエ君。この木々は何色に見えるかね?」
 「まぁ、常識的に考えたら、緑ですよね」
 「緑に見える?本当に??」
 「えっ?え~っと・・・(どうしよう?何か違うこと言わなきゃアセアセ)あっ、じゃあ、黄色??」
 「黄色だと?」
 「あー、やっぱり黄色じゃないような・・・
 「ならば、黄色で描きたまえ」
 「絵って、そんな適当・・・いや、自由に描いてイイんすか?!

かくして、すっかりゴーガン教 (?) の信者となったセリュジエは、
ボナールやヴュイヤール、ドニといった仲間たちを次々と勧誘していきます。
そして、ゴーガンをリスペクトする彼らは、
自らを預言者 (=ナビ) になぞらえ、ナビ派を名乗るように。
日常と神秘の両方を併せ持つ独自の芸術表現を模索していくのでした。
ちなみに、「ナビ」 という言葉はヘブライ語。
英語の 「ナビゲーション」「ナビゲーター」 とは関係ありません。
ついでに、「ナビスコ」 も調べてみましたが、
そちらは、ナショナル・ビスケット・カンパニー (National Biscuit Company) の略とのこと。
もっと関係ありませんでした (笑)


さてさて、今回の展覧会では、国内の美術館はもとより、
オルセー美術館やワシントン・ナショナル・ギャラリーを筆頭に、
世界各国の名だたる美術館から、ナビ派の画家がこどもを描いた名品が集結しています。




もちろん、それらの中には、
ここでの回顧展をきっかけに大ブレイクしたヴァロットンの作品も。


フェリックス・ヴァロットン 《公園、夕暮れ》 1895年 油彩/厚紙 三菱一号館美術館蔵




国内でヴァロットン先生の作品がまとめて観れるのは、三菱一号館美術館だけですよ。
さらに、ナビ派の画家だけでなく、ゴッホやルノワールといった、


フィンセント・ファン・ゴッホ 《マルセル・ルーランの肖像》
1888年 油彩/カンヴァス ファン・ゴッホ美術館蔵 Van Gogh Museum, Amsterdam (Vincent van Gogh Foundation)



西洋美術の巨匠たちが描いたこどもの絵も特別出品されています。
タイトルに、“こども” とはありますが、
決して、春休みのこどもだけをターゲットにした展覧会にあらず。
こどもはもちろん、大人も楽しめる展覧会です。
星星
改めまして、開館10周年おめでとうございます!


ちなみに。
今回出展されていた作品の中で、
特に印象に残ったものを、いくつかご紹介したいと思います。
まずは、モーリス・ドニの 《赤いエプロンドレスを着た子ども》 から。


モーリス・ドニ 《赤いエプロンドレスを着た子ども》 1897年 油彩/厚紙 個人蔵


出展作品の中でも、とりわけ愛くるしい一枚。
少女の表情はもちろん、エプロンドレスの柄も可愛いです。
点描のように描かれた筆致のせいか、
エプロンドレスの柄と背後に咲く花々が、なんとなく同化しているように感じられました。
ステルスタイプのドレスなのかもしれません。
余談ですが、少女の顔をずっと見つめていたら、
だんだんとマルちゃん (東洋水産) のマークに見えてきました。


続いては、エドゥアール・ヴュイヤールの 《乗り合い馬車》


エドゥアール・ヴュイヤール 《乗り合い馬車》 1895年頃 油彩/厚紙 ハマー美術館蔵
© Hammer Museum.Photo: Robert Wedemeyer



一瞬、何が描かれているのか、よくわからなかったのですが。
目を凝らすと、二人の女の子 (姉妹?) が、
お揃いの帽子とドレスを身に着け、仲良く窓の外を眺めている姿が見て取れました。
いつの時代も、こどもは車内から見える景色が好きなのですね。
ほっこりとさせられる一枚でした。


・・・・・と、こどもがモチーフなだけに、
可愛らしい絵画ばかりなのかと思いきや、中には、そうでもないものも。
そのうち、もっともインパクトがあったのが、
フランスの挿絵画家モーリス・ブーテ・ド・モンヴェルによる 《ブレのベルナールとロジェ》 です。



モーリス・ブーテ・ド・モンヴェル 《ブレのベルナールとロジェ》 1883年 油彩/カンヴァス オルセー美術館蔵
Photo © Musée d'Orsay, Dist. RMNーGrand Palais / Patrice Schmidt / distributed by AMF



描かれている2人は、モンヴェルの実のこどもたちなのだそう。
しかし、恐ろしいくらいに、心を開いていません。
完全なる無表情。
父親ではなく、血の繋がっていない全くの他人と向き合っているかのような印象を受けます。
しかも、なんだか背景が合成っぽいような。
どことなく、『紙兎ロペ』 感が漂っていました。





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上村松園・松篁・淳之三代展

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新型コロナウイルスの影響を受けて、
都内を中心に多くの美術館や博物館が臨時休館となっています。
それに伴い、この 【ここにしかない美術室】 も休室しようかとも考えたのですが。
むしろ、こういう時こそ、エンターテインメントは必要なはず!
あえて通常営業で、毎日楽しくアートの情報を発信していきたいと思います。
・・・・・・・・ネタが続けばいいのですが (笑)



さて、本日は、東京富士美術館を訪れてきました。
お目当ては、本日から開幕した “上村松園・松篁・淳之三代展”




女性として初めて文化勲章を受章した上村松園と、
その息子である上村松篁、さらに、その息子である上村淳之さん、
そんな親子三代の日本画家にスポットを当てた展覧会です。
ちなみに、会場の入り口を入ると、親子三代が仲良く映った写真がお出迎え。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


どこにでもいる普通のおばあちゃん、お父さん、孫に見えます。いい意味で。
絵を描いていない時は、普通の親子だったのでしょうね。いい意味で。


まず展覧会は、上村松園からスタート。
上村三代のにわたる作品を展示、保管する松伯美術館のコレクションを中心に、
初期から晩年まで、明治・大正・昭和にわたる松園の美人画の名品が数多く紹介されていました。




それらの中には、代表作の一つ 《花がたみ》 や、




日本の着物美人を描く松園には珍しい 《楊貴妃》 なども含まれています。




作品そのものが美しいのはもちろんのこと、
こだわり抜かれた表装の美しさも、上村松園の魅力。




どの表装も品があり、絵とマッチしていましたが、
特に印象的だったのが、《ほたる》 という作品の表装。
初夏の一場面を描いた作品に合わせたのでしょう。
珍しい団扇柄となっていました。




また、今回の展覧会では、松園による貴重な下絵や素描も紹介されています。




こういった積み重ねがあって、
あれらの美しい女性像が生まれていたのですね。
そのことを、改めて実感させられました。


さてさて。
想像していた以上に、松園作品が充実していたため、
すっかりお腹いっぱいになってしまいましたが、展覧会はまだまだ終わりではありません。
上村はつづくよどこまでも。
続いては、上村松篁の先品が紹介されています。




上村松園の息子として紹介されるため、
上村松園のバーターと思っている方もいらっしゃるかもしれませんが。
決して松園よりも腕が劣っているわけではありません。
むしろ、観察力や創意工夫は、母親を超えているのでは。
その実力で文化勲章を受章し、親子2代で受賞するという偉業を成し遂げています。

ちなみに、今展には、上村松篁の代表作 《万葉の春》 も特別に出展中。




こちらは、万葉集の世界をモチーフに描かれた作品で、
かつて奈良にあった近鉄ビルの壁画として制作されたものです。
その幅は、実に7m。
松篁の作品の中でも屈指の大作です。
松篁本人は、この絵に対して、
「ただ概念的に、既成の人物画の技法を知識として学んだ絵。」と謙遜していたそうですが。
その美しく気品溢れる女性描写は、母親にも引けを取っていませんでした。
松園のDNAは着実に受け継がれていたようです。


さて、展覧会のラストを飾るのは、上村淳之さん。




父の松篁も鳥の絵を多く描いていましたが、
それに輪をかけて、淳之さんは、鳥の絵を多く描いています。
唳禽荘 (れいきんそう) と名付けられたアトリエでは、
実際に鳥を飼っており、その世話をしながら鳥の絵を描いているとのこと。
多い時には、実に263種、約1600羽の鳥を飼っていたのだとか (←もはや鳥類園のレベル!)。
余談ですが、淳之さんは、昭和62年に、
日本で初めてナベヅルの人工孵化に成功しているそうです (←何者?)。

そんな鳥に精通した淳之さんだからこそ描ける鳥の世界。
1羽1羽にちゃんと個性がありました。




上村松園、上村松篁、そして、上村淳之さん。
親子でありながらも、それぞれ個性は違います。
でも、全くの他人かといえば、そうではなく、
親子であるがゆえに、やはりどこか通ずる部分も感じられました。
日本美術界が誇る親子三代。
その魅力をたっぷり堪能できる展覧会でした。
星星

個人的には、松園が描いた松篁、
松篁が描いた淳之さんの絵が観られたのも微笑ましかったです。




ちなみに。
今回の展覧会では、作品だけでなく、作家の言葉も多く紹介されていました。




その中には、松園さんのこんな言葉も。




今まさにコロナウイルスのせいで、
美術界は、雨があり風があり、沈むばかりに船が傾いています。
しかし、これを通り抜ければ、きっと強くなれるはず。
そう信じましょう。

東京富士美術館の休館は、3月2日から。
明日3月1日には、開館しています。




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特別編 千葉県船橋市本町でモナ・リザ

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ルノアールを筆頭に、モネ、ゴッホ、シャガール…と、
街を歩いていると、時に、美術界の巨匠たちと同じ名前のお店に出くわします。
果たして、それらのお店と巨匠との間に関係はあるのか??

気になるようで気にならない。
でも、気にしてしまったら、気になって仕方がない。
そんな疑問を解消すべく、アートテラーは今日も店へと赴く!!



通常は、美術界の巨匠と同じ名前のお店を訪れる 『あなたの街の巨匠たち』 ですが、
今回は、その特別編として、世界で最も有名な美術作品と同じ名前を持つお店を訪れてきました。
果たして、やはりお店の中には、あの絵が飾ってあるのでしょうか。


ふなっしーでお馴染みの千葉県船橋市。
その中心となる船橋駅から歩くこと数分。
路地が入り組んだ旧道沿いに、そのお店はありました。




モナリザ。
ルーブル美術館の至宝とされる、
レオナルド・ダ・ヴィンチの 《モナ・リザ》 と同じ名前を持つ喫茶店です。

赤煉瓦が特徴的な外観。
いかにもレトロな美術館の出現に、テンションが上がったのですが、
よくよく建物のサイドを見てみると、赤煉瓦なのは真っ正面だけでした。

・・・・・・・・・・・・・・(´、ゝ`) フッ

思わず微笑がこぼれます。


とはいえ、内部はばっちり、レトロな雰囲気が漂っていました。





床もレトロ。
椅子もレトロ。
ソファーにかけられたレース (?) もレトロ。
ついでに言えば、テーブルの上に置かれた砂糖壺もレトロです。




ちなみに。
僕が訪れた時は、先客は3名ほどだったのですが。
よほど知る人ぞ知る人気店なのでしょう。




4、5テーブルが予約席となっていました。
きっと、このあと大賑わいとなるのでしょう。
さすが 《モナ・リザ》、多くのお客さんが人だかりを作るようです。


さて、空いているうちに、何か注文してしまいましょう。
お店の前に、謎のトマト型のメニューがありましたが・・・・・




種類が多すぎて、なかなか決められなかったので、
店内のメニューを眺めながら、じっくりと考えることにしました。




『当店人気!』 のドライカレーと、
『ピカイチ』 のナポリタンは、どちらが美味しいのか?
『アツアツ炒飯』 と書いてある明太子ピラフは、結局、炒飯なのかピラフなのか?
明太子スパゲティに添えてある 『ゆでたてパスタに!!』 というフレーズは何を意味しているのか?

メニューを眺めれば眺めるほど、いろいろよくわからなくなってきましたが。
最終的には・・・・・




『当店人気メニュー』 の言葉を信じ、
生姜焼をオーダーすることにしました。
そして、注文してから数分も経たず、生姜焼が到来。




たぶん・・・・・いや、絶対に偶然でしょうが、
そのビジュアルは、《モナ・リザ》 の袖の部分に似てなくもありませんでした。
味噌汁の色味も、どことなく 《モナ・リザ》 を彷彿とさせるものがあります。




それでは、早速、《モナ・リザ》 の袖、もとい、生姜焼を一口。

「柔らかっ!!」

そして、何よりタレが旨い!
これは、ご飯が進みます。
『当店人気メニュー』 であるのも納得。
強いて言えば、あともう1切れ2切れは欲しかったです。
まぁ、でも、ルーヴル美術館で 《モナ・リザ》 を観た人は、
たいてい 「意外と小さい!」 という感想を抱くそうなので、
「意外と少ない!」 となるのが、モナリザらしさなのかもしれませんね。


ちなみに。
肝心の 《モナ・リザ》 ですが、もちろん店内に飾ってありました。




2つ・・・・・・・と見せかけて、実は3つ。




船橋のモナリザの 《モナ・リザ》 は、ルーヴル美術館の 《モナ・リザ》 よりも小さい。


<お店情報>
モナリザ
住所:千葉県船橋市本町2-11-32
定休日:基本なし
営業時間:8:00〜19:00
 



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小松崎邦雄展~麗しき日本の絵画を求めて~

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どんなに歩いても海が無く、
海だけならまだしも空港や名所、郷土愛も無いと、はなわにディスられている埼玉県。
しかし、そんな無い無い尽くしの埼玉県 (?) には、
あの金沢のと同じく、名前に 『21世紀』 が付く美術館があります。
その名は、サトエ記念21世紀美術館。
北埼玉地域初の本格的な美術館として、
2001年に埼玉県加須市にオープンした美術館です。

ちなみに、サトエ記念21世紀美術館の 『サトエ』 は、
スポーツ強豪校として知られる花咲徳栄高校や埼玉栄高校学校など、
多くの高校や大学を運営する学校法人・佐藤栄 (さとえ) 学園に由来しているとのこと。
佐藤栄学園の創立者で、彫刻家でもあった佐藤栄太郎が収集した、
1000点近くの作品が、美術館のコレクションの母体となっているそうです。


さて、こちらが、そのサトエ記念21世紀美術館。
門構えは、美術館というよりも、地方の大邸宅といった印象です。
とりあえず、中に入ってみましょう。




門をくぐると、まずはエミリオ・グレコの彫刻がお出迎え。




さすがは彫刻家が創設した美術館です。
入り口に入ってすぐのところに、世界的な彫刻家の作品が飾ってあるのですね。
そう思った次の瞬間、ふとその先に視線を向けると・・・・・・・




さらに、たくさんの彫刻作品が飾られていました!!

箱根にある彫刻の森美術館を筆頭に、
雄大な敷地にポツポツと彫刻作品が設置されている光景は、何度も目にしたことがありますが。
このような感じで野外にそれなりに密集した形で、
彫刻作品が設置されている光景は、初めて目にした気がします。
レアなシチュエーションに、思わずテンションがアップ!
写真も撮影し放題なので、いつもよりも多めに撮影してしまいました。




ちなみに、野外に設置されていた彫刻作品の中で、
個人的に一番印象に残ったのは、石黒光二さんのこちらの作品です。




一瞬、ダイソンの空気清浄機に、人がハマっているのかと思いました。
タイトルは、 《0空間》 とのこと。
なるほど。数字の0だったのですね。


さてさて、庭園だけでかなり満喫してしまい、すっかり失念していましたが、
よくよく考えたら、肝心の美術館の中に、まだ一歩も足を踏み入れていません。
それでは、いよいよ美術館の中に入ってみることにしましょう。




入り口を抜けてすぐのスペースにも、彫刻作品がズラリ。
しかも、ロダンやブールデル、萩原碌山など、
早々たる彫刻家の巨匠たちの作品が並べられていました。
また、少し進んだところには、常設展示室があります。
こちらでは、ヴラマンクや里見勝三、荻須高徳など、
フランスにゆかりの深い画家たちの作品が展示されていました。

また、隣企画展示室で開催されていたのは、
“小松崎邦雄展~麗しき日本の絵画を求めて~” という展覧会。



(注:庭園は写真撮影可能ですが、美術館の内部は写真撮影禁止です。
この記事に使用している展示室内の画像は、特別に美術館より提供頂いたものです)



NHK教育テレビの 『趣味講座・油絵入門』 の講師としても知られた画家で、
埼玉県にゆかりの深い小松崎邦雄 (1931~1992) の画業を振り返る展覧会です。
日本随一を誇るサトエ21世紀美術館の小松崎邦雄コレクションの中から、
学生時代から晩年まで、代表作やデッサンなど、選りすぐりの名品の数々が紹介されています。


初期は、どことなくピカソを彷彿とさせる絵を描いていた小松崎邦雄ですが、




次第に、牛をモチーフにした絵画を描くように。
それも、牛の結婚式や群衆と牛が列をなす光景など、
シュールなシチュエーションの絵画を描くようになります。




次第に、彼の興味は牛から、天使や人形へとシフト。
そして、晩年には舞妓さんをモチーフとした絵画を多く描くようになります。
最後の展示室では、そんな舞妓さんシリーズが一堂に会していました。




舞妓さんのオンのシーンを描いた絵画もあれば、
舞妓さんのオフのシーンを描いた絵画もあります。
実際の舞妓さん同様に、ぱっと見は同じ人に見えるのですが、
よく見れば、顔や体形など、一人ひとり丹念に描き分けられていました。
その性格や心情までもが伝わってくるよう。
ドガがバレリーナをモチーフにした絵画を多く描いていますが、
小松崎邦雄による舞妓の絵は、その現代版、京都版といったような印象を受けます。




特に印象的だったのは、画面の中央に展示されている 《稲穂のつどい》
真っ黒い背景に、黒い着物を着た舞妓が7人描かれています。
実に妖艶で、実にミステリアス。
現実の世界のようでもあり、白昼夢のようなシュールな世界のようでもあり。
なんとも蠱惑的な作品でした。

なお、その右隣に飾ってあったのは、舞妓の楽屋を描いた一枚。
まるでプライベートを覗き見してしまっているようで、
《稲穂のつどい》 とは別の意味で、ドキドキしてしまう作品です。
ちなみに、そんな舞妓さんの楽屋には、キティちゃんグッズがたくさんありました。
舞妓さんの意外な一面を知った気がします。
星星


最後に、余談ですが。
サトエ記念21世紀美術館の庭園には、
小川が流れており、そこにはたくさんの鯉が泳いでいます。
その鯉に関して、こんな注意書きが。




「・・・・・美術館指定の餌って何だろう?」

そう疑問に思っていたのですが、受付で理由が判明。
なんと、美術館指定の鯉の餌が販売されていたのです (1袋100円)。
せっかくなので、購入し、鯉に餌を与えてみることに。




かれこれたくさんの美術館を巡りましたが、
美術館で鯉の餌を買って、餌やりをしたのは初体験です。
ちなみに、そんな鯉の餌のパッケージは、美術館オリジナルとのこと。




描かれていた魚は、鯉ではない何かでした。




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隅田川に育まれた文化 浮世絵に見る名所と美人

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現在、たばこと塩の博物館では、
“隅田川に育まれた文化 浮世絵に見る名所と美人” が開催されています。




・・・・・・・と言っても。




本日、3月5日から16日までの臨時休館が決定したそうです (泣)。
明日は開館しているそうなので、
浮世絵を欲している方 (?) は、是非明日、駆け込まれてくださいませ。


さてさて、こちらは、たばこと塩の博物館があるエリアからも、
そう遠くはない位置を流れる隅田川にスポットを当てた浮世絵展。
会場では、歌川広重や、


歌川広重 《江戸名所 隅田川之月》


歌川国貞といった絵師たちが、


歌川国貞 《江戸八景ノ内 三廻》


隅田川やその周辺のスポットを描いた浮世絵の数々が紹介されていました。
改めて感じたのは、浅草や両国を筆頭に、
隅田川周辺が今以上に多くの人で賑わっていたこと。
今では東京の中心というと、丸の内や新宿、渋谷といった印象がありますが、
江戸時代は、隅田川周辺こそが中心的なエリア、流行の発信源だったようです。
中には、隅田川周辺の桜の名所を描いた作品も。


歌川国貞 《江戸八景ノ内 隅田つゝみの晴嵐》 (注:展示は3/24~4/12)


どうぞ桜が咲く頃までには、
この騒動が落ち着き、皆さまの心も明るく咲いていますように。
星


ちなみに、今回出展されていた作品の中で、
印象的だったものをいくつかまとめてご紹介いたしましょう。
まずは、歌川国芳の 《当盛春景色》




コウモリ柄やカメ柄など、斬新な着物に身を包んだ女性たちが描かれています。
中でも、特に斬新だったのが、セミ柄。




当時としても、斬新だったのでしょう。
思いっきり、ガン見されています。

また、隅田川に目を向けたところ、何やら怪しい黒い影を発見しました!




「もしや、ネッシー?!いや、隅田川だから、スッシー??

と思いきや、ウナギを捕まえた水鳥とのこと。
まったく紛らわしい水鳥です。


着物の柄といえば、同じく歌川国芳の 《江戸自慢程好仕入 しやうぶかは》 も印象的でした。




宇宙人や宇宙の生命体のように思えますが、
どうやら3頭並んだ馬をモチーフにしているそうです。




見れば見るほど、斬新なデザイン。
どことなくミナ ペルホネン感もあります。


さらに、斬新と言えば、国芳の 《縞揃女弁慶 松の鮨》 も。

<


子どもが母親にお寿司をねだっています。
よく見ると、その盛り付け方が実に斬新!




鯖の押し寿司の上に、玉子のお寿司を乗せ、
さらに、その上に、エビの寿司を乗せています。
寿司ピラミッド。
もしも、くら寿司で流れてきたら、子どもはきっと喜ぶに違いありません。


最後に、タイトルが印象的だった作品をご紹介。
渓斎英泉の 《婦嬨比多意》 です。




「何と読むのだろう?」 と思ったら、
正解は、『ふじびたい』 と読むとのこと。
確かに、描かれた女性は、きれいな富士額をしています。
富士額=婦嬨比多意・・・・・・・・・ヤンキーか!


なお、こちらの展覧会とは別に、
たばこと塩の博物館の3階にあるコレクションギャラリーでは、
昨年惜しまれつつこの世を去った和田誠さんが描いた 「地にはピース」 の原画が展示されています。




思わずクスッとしてしまう、ほのぼのとしたイラストの数々。




たばこが苦手な人、たばこが嫌いな人にもオススメです。
是非、これらのイラストで、心の一服を。




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PIECE OF PEACE「レゴ®ブロック」で作った世界遺産展 PART-4

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昨年11月にリニューアルオープンしたばかりの渋谷パルコに行ってきました。




旧・渋谷パルコにあったPARCO FACTORYは、
PARCO MUSEUM TOKYOと名前を少し変えてリスタート!
アートとカルチャーの情報発信の場として、
刺激的な展覧会を次々と発信していくそうです。




さて、そんなPARCO MUSEUM TOKYOで、現在開催されているのは、
“PIECE OF PEACE「レゴ®ブロック」で作った世界遺産展 PART-4” という展覧会。




2003年に開催されたPART1から早約17年、
これまで延べ約300万人もの人々が来場している超人気コンテンツで、
レゴ®モデルビルダーがレゴ®ブロックで再現した世界遺産モデルの作品を紹介する展覧会です。
正直なところ、「まぁ、レゴ®ブロックでしょ?おもちゃでしょ?」 と高を括っていたのですが・・・・・




どの作品もクオリティが、めちゃめちゃ高かったです!
おもちゃ呼ばわりして、大変申し訳ありません。
どれも立派なアート作品でした。

例えば、昨年火災が発生してしまったノートルダム大聖堂。




その細部の細部にいたるまで、レゴ®ブロックを使って完全再現されています。




いわゆる普通の建築模型で再現されているよりも、
パーツの制約があるレゴ®ブロックで再現されているほうが、より感動を覚えました。

さらに再限度が高かったのが、サグラダ・ファミリア。




25日をかけ、25000ピースを使って再現されたものですが、
何よりも驚くのは、現時点では作品はまだ完成していないということ。
そう。勘のイイ人ならピンと来たかもしれませんが、
実際のサグラダ・ファミリアの進捗状況に合わせて、制作が進められているのだそうです。


また、展覧会では、海外の世界遺産だけでなく、
日本各地の世界遺産の数々も紹介されていました。
清水寺に、




厳島神社に、




さらには、厳密には世界遺産でないですが、
ユネスコ無形文化遺産に登録された 「和食」 もレゴ®ブロックで再現されていました。




伊達巻や煮しめの再限度たるや!
レゴ®ブロックとわかっていながらも、
ちょっとだけ 「美味しそう♪」 と思ってしまいました。

それから、こちらの PARCO MUSEUM TOKYOでは、
アーティストとのコラボ作品も発表されています。
中でも印象的だったのは、ミニチュア写真家の田中達也さんとのコラボ作品。
田中さんは、朝ドラ 『ひよっこ』 のタイトルバックでも話題となったアーティストです。




レゴ®モデルビルダーが、レゴ®ブロックを組み合わせて作品を制作するのに対し、
田中さんは、レゴ®ブロックそのものを何かに見立てて、世界観を作り出しているのが印象的でした。




さてさて、実は、こちらの展覧会。
池袋パルコにあるPARCO MUSEUM・・・改め、
PARCO FACTORYでも、同時開催されているのです。




アーティストとのコラボが特徴的だった渋谷とは対照的に、
池袋はのほうは、レゴ®モデルビルダーの作品オンリー。
しかし、その分、作品数は1.5~2倍くらいありました。




どれも力作ゆえ、甲乙を付け難いのですが。
強いて挙げれば、大仙陵古墳や、




国宝の日光東照宮陽明門、




そして、今は臨時休館中の国立西洋美術館のレゴ®ブロック作品が印象的でした。




国外の建造物でいえば、アンコールも印象的。
圧倒的に美しかったです。




建造物として美しいものは、
レゴ®ブロックで再現しても美しい。
そんなことを実感させられる展覧会でした。
もし、多くのミュージアムが閉館していなかったら、
この展覧会は、スルーしていた可能性が高かったです。
今回の騒動が無かったら、レゴ®ブロックのアートの魅力に開眼しなかったかも。
星


ちなみに。
展覧会では、人工の建造物だけでなく、
自然が生んだ世界遺産もレゴ®ブロックで再現されていました。




こちらは、今回初出展となる最新作。
ハワイ火山国立公園、キラウエア火山をモチーフにした作品です。




照明の変化により、刻々と表情を変えていました。
海外に渡航しづらい今だからこそ、
レゴ®ブロックで海外旅行気分を味わってみてはいかがでしょうか。




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