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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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本売るオトコ

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※この記事は、2月24日に書かれたものです。




『東京のレトロ美術館』 が発売されて1か月あまり。
おかげさまで、たくさんの反響をいただいております。
お買い上げくださった皆様、本当にありがとうございます!

特に印象的だったのは美術館の関係者の方々から、
「久しぶりに他の美術館に行ってみたくなった!」 という感想が多く寄せられたこと。
そう思って頂けて、有難い限りです。
次いで美術館の関係者の方々からの感想で多かったのは、
「今度うちに来た時に、(本の中でやった)あのポーズをやってくださいね」 というもの。



・・・・・・・いやいや、やりませんよ!

あれは僕の持ちギャグもなんでもないので。
プライベートでは、美術館の前でジャンプはしません。絶対に。(※フリじゃないですよ!)


さてさて、本を出版したことで、もっとも多く寄せられる反響は、
やはり何といっても、「印税生活、羨ましいですね~♪」 でしょうか。
そう思われている方の夢を壊すようでなんですが、
よほどの売れっ子作家でない限り、印税で生活なんて出来るわけがありません!
過去2冊出して、それを如実に痛感しました。
5版くらい重版できれば、生活も潤うのでしょうが・・・・・。
ちなみに、過去2冊とも重版はかかっていません(笑)
白タキシードを着ても、国宝ハンターの襷を掛けても、そんなものなのです。
(↑いや、白タキシードや襷が原因なのかも??)


さて、この毎日書いているブログは、
アフィリエイトとは無縁なので、一銭の収入にもなりません。
また、基本的に毎週末開催しているアートツアーも、やはり収入とは無縁です。
これまでそんな感じでのほほんと過ごしてきましたが、
さすがに、このままではアートテラー活動が続けられない気がしてきました (汗)


というわけで、せめて本は売るための努力はしようと一念発起!
先日、担当編集者さんと営業担当者さんとともに、
『東京のレトロ美術館』 で取り上げた美術館のミュージアムショップを巡ってきました。
まずは、各館でそれぞれ違う特製のパネルを作成。
(各館で一言コメントが違います)




それらのパネルを設置してもらうとともに、
各ミュージアムショップにサイン本を納入してまいりました。





国立西洋美術館さん、三菱一号館美術館さん、
東京ステーションギャラリーさん、本当にありがとうございます。
ちなみに、サイン本を多く取り扱ってくれたのは、東京国立博物館さん。




その数、なんと20冊!
どうぞ、売れ残りませんように (>_<)

なお、東京都美術館さんにあるサイン本には、
美術館の方からの 「何か面白いことを書いてください」 との無茶ぶりにより、
サインと日付、それから一言コメントも書き添えてあります。
1冊1冊コメントが異なっているので、それもお楽しみに。




さらに、この日、ミュージアムショップだけでなく、
日本を代表する本屋・丸善の丸の内本店にも訪れました。




サイン本だけでなく、サイン色紙も設置して頂くことに。
まるで文豪になった気分です (笑)



ちなみに。
この販促活動の翌日、僕と編集者さん、
写真家の青山さん、デザイナーさんの4人で打ち上げがありました。
青山さんとお会いするのは、約1年半ぶり。
撮影の苦労話などで、大いに盛り上がりました。

「でも、撮影は本当に楽しかったですよね」 と青山さん。
「また続編もあれば、是非やらせてください」 とまで言ってくださいました。
そう思ってもらえたのは、本当に嬉しかったのですが、あの撮影の大変さを思い返すと。。。
不用意なことは言わないようにと、僕は口を閉ざしていたのですが、
青山さんのその発言を聞いた編集者さんが、すかさずこう言い放ったのです。

「実は、『〇〇美術館』 って企画を考えているんです」
〇〇の部分はまだ秘密です)



・・・・・・・はっ?!

『東京のレトロ美術館』 を遥かに凌駕するハードな企画でした。
実現するかどうかは、『東京のレトロ美術館』 の売れ行き次第。
売れて欲しいような、売れて欲しくないような。
なんとも複雑な心境になっています。




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蘇る日々 静かに時は流れ 小杉小二郎展

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日に日に、臨時休館に踏み切る美術館が増えている今日この頃。
皆さまは、いかがお過ごしでしょうか?

そんな中でも、普段と変わらず開館し、
一人でも多くの方に、美術と向き合う時間を提供しているのが、美術愛住館。
女性の洋画家として初の日本芸術会員となった、
池口史子 (ちかこ) さんの作品を中心に、近現代の優れた洋画を企画展示する美術館です。
ちなみに、読み方は、「あいじゅうかん」 ではなく、「あいずみかん」。
この美術館が位置する場所が、新宿区愛住町 (あいずみちょう) であることに由来しています。


さて、そんな美術愛住館で、現在開催されているのが、
“蘇る日々 静かに時は流れ 小杉小二郎展” という展覧会。




こちらは、池口さんのほぼ同期であり、
洋画家の小杉放庵を祖父に持つ画家・小杉小二郎 (1944~) さんの個展です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


祖父である小杉放庵は、人物画を多く残していますが、
孫の小二郎氏は、どうやらそこまで人物画には興味がない様子。
静物画を中心に制作を続けているようです。




どの静物画も、不思議と初めて目にした気がせず。
しかも、初めて目にするはずなのに、どこか懐かしい。
それが、小杉小二郎ワールドです。
長谷川潔や岡鹿之助、有元利夫をどことなく彷彿とさせるものの、
長谷川潔や岡鹿之助、有元利夫とは、やはりどこか違う独自の個性を持っています。

トランプや鉛筆など、たびたび描かれるモチーフもありますが、
フランスの蚤の市で見つけたというおもちゃや日本の民芸品など、
他の画家が描いた静物画には登場しないレアアイテムが登場するのが、小二郎流。




なんとなく、あくまで、なんとなくですが。
作品に漂ううら寂しいイメージも相まって、
『みんなのうた』 の一場面のような印象を受けました。




じーっと眺めていたら、何かしらの歌詞が浮かび上がってくるかもしれません。


(※写真はイメージです)


また、彼の静物画を眺めているうちに、
それらの多くに、とある共通点があることに気が付きました。
それは、ほとんどの静物画において・・・・・・




テーブルの上から何かが落ちそうになっているのです!

落ちそうで落ちない。
この絶妙なバランス感が、
作品にいい意味での緊張感を与えている気がします。
穏やかな空気が漂っている一方で、どこか不穏さもある。
アンビバレントな味わいのある静物画です。
星


ちなみに、長きにわたってフランスに在住していたという小二郎氏。
そんな彼が描いた風景画も出展されていました。




モンマルトルあたりの景色を描いたものかと思いきや。
タイトルは、《通天閣》 とのこと。
小二郎氏の手にかかると、大阪の景色がこんなにも穏やかな雰囲気になるのですね。
画面からは、一切、関西弁は聞こえてきません。
ヒョウ柄のファッションに身を包んだ女性も、
阪神タイガースのキャップを被った歯の無い男性も、
きっとこの絵の住人ではないのでしょう。


また、代名詞というべき静物画も良かったですが、
個人的には、パウル・クレーを思わせるこちらの作品に惹かれました。




ニワトリがいたり、富士山があったり、
乳母車や水玉模様のマネキンがあったり。
さまざまなモチーフが、ごちゃ混ぜに描かれています。
ごちゃ混ぜではあるものの、決して乱雑な印象はなく、
まるでおもちゃ箱を覗いているような、ワクワクした気分になる一枚でした。


体の健康を保つためには、手洗いうがい。
心の健康を保つためには、美術鑑賞が大事です。




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ZERO IS INFINITY 「ゼロ」と草間彌生

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注:草間彌生美術館は3月9日(月)~ 25日(水)まで臨時休館しています。


草間彌生さんの草間彌生さんによる草間彌生さん (とそのファン) のための美術館。
それが、草間彌生美術館です。

2017年10月に早稲田の地にオープンして以来、草間彌生美術館は、
さまざまな切り口で、草間彌生さんの作品を紹介する個展を開催してきましたが。
先日よりスタートしたのは、開館以来初となるグループ展。
その名も、“ZERO IS INFINITY 「ゼロ」と草間彌生” です。




「ゼロ」 とは、1958年にドイツのデュッセルドルフで結成され、
その後、国際的な広がりを見せるた前衛美術のアーティスト・ネットワーク。
戦後芸術をいったんリセット、つまりゼロにすることを理念に、
ハインツ・マックとオットー・ピーネの2人によって立ち上げられました。
特徴的なのは、作品が単色で単一モチーフの反復をさせることが多いこと。
さらに、それまで美術作品にはあまり使われていなかった素材、
例えば、ステンレスや鏡、電気といったものを用いたのも大きな特徴といえましょう。

草間さんは、「ゼロ」 のメンバーというわけではないですが、
1960年代に、ゼロに関連する展覧会に幾度となく参加していたそうです。
そんな草間さんと 「ゼロ」 の関係性にスポットを当てたのが、今回の展覧会。
「ゼロ」 のアーティストたちの作品と、


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


同時代の草間さんの作品が併せて紹介されています。




改めて、こうして両者を見比べてみると、
それぞれが影響を与え合っていたことを実感させられました。
草間さんの新たな一面が知れる貴重な展覧会です。
なお、今回出展されているゼロの作品の多くは、
日本で公開された機会がゼロ、つまり日本初公開とのこと!
そういう意味でも貴重な展覧会ですよ。
星


さてさて、初めて目にする 「ゼロ」 のアーティストの作品。
文字通り、知識ゼロの状態で目にしたため、どれも興味深かったのですが、
個人的に特に印象に残ったのは、ギュンター・ユッカーの 《LIGHT RELIEF》 でしょうか。




パッと見は、シンプルな作品なのですが、
近づいて観てみると、無数の釘が打ちつけられているのがわかります。




静かな狂気のようなものを感じる作品でした。
黙々とキャンバスに釘を打つアーティストの姿を想像すると、ちょっとゾッとします。

また、ヘンク・ペーテルスの 《モビール・フェザー 8-14》 も印象的な一点。




こちらは、釘ではなく、画面から無数の羽毛が飛び出していました。
実は、この羽1本1本が、動く仕掛けとなっているそうです。
今展では、20分に1回動くよう設定されているとのこと。
その時間を楽しみに待っていると、いよいよ羽毛が動き始めました。

・・・・・・・・・・・・・・・えっ (笑)?

なんか想像していた動きとは、全然違いましたが。
それはそれで面白かったです。


ちなみに。
開館以来、草間さんの 《わが永遠の魂》 シリーズが紹介されてきた3階展示室も・・・・・




今回は特別に、「ゼロ」 のメンバーの作品で埋め尽くされていました。
草間彌生美術館で草間さん以外の作品が展示されているのは、なかなかに新鮮な印象です。
なお、このフロアには、クリスチャン・メーゲルトの 《鏡の壁》 や、
《12枚の鏡のモビール》を筆頭に、鏡を使った作品が多くありました。




自分の姿がたくさん映りこむことになるので、
いつもよりちゃんとした格好 (?) で訪問されることをお勧めします。
ついでに、もう一つアドバイスするならば、
大量の電球が明滅を繰り返すオットー・ピーネの 《かんむり座》 とは、少し距離を置くのがベターです。




電球が光っている時、思っている以上に熱を発します。
ちょっとしたカーボンヒーターくらいの熱さ。
すっかりLED電球に慣れてしまっていましたが、そういえば、電球って熱かったですよね。
くれぐれもお手を触れませんように。


さてさて、今回の展覧会のタイミングに合わせて、
4階の草間さんのインスタレーション作品も一新していました。
最新作のタイトルは、《無限なる天国への憧れ》
六角形のミラールーム型の作品となっており、
一部に開けられた穴から中を覗き込むと、カラフルな電球が無限に広がっています。




例によって、いつまでも飽きることなく見ていられる作品。
それゆえ、切り上げるタイミングがなかなか難しかったです。
(注:譲り合って鑑賞しましょう!)




また、屋上に設置されていた作品も一新。
ステンレス製のカボチャ作品から、
《ナルシスの庭》 というインスタレーション作品へ。
無数のミラーボールが屋上を埋め尽くしていました。




1つ1つのミラーボールを見てみると、
その周囲のミラーボールが映り込んでいました。
まさに、増殖するミラーボール。
さらに、屋上の外に目を向けると・・・・・




大量のミラーボールが、ガラスに反射したため、
早稲田の街を覆いかぶさっているようにも見えました。
増殖が止まりません。
無限のミラーボール。


 ┃草間彌生美術館
 ┃開館日:木・金・土・日曜日および国民の祝日
 ┃日時指定の予約・定員制(各回90分)
 ┃毎月1日10:00(日本時間)に美術館webサイトにて翌々月分のチケット発売開始
 ┃www.yayoikusamamuseum.jp
 ┃※当日券はございません ※チケットは美術館web サイトのみで販売しています。





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塩谷亮 ー劉生の眼、私の眼

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茅場町駅のほど近くに佇むレトロビル、第二井上ビル。




その2階にあるのが、Gallery Suchi。
五味文彦さんや石黒賢一郎さん、小尾修さんをはじめ、
ホキ美術館でお馴染みの写実画家の方々とゆかりの深いギャラリーです。
約1年ほど休廊していましたが、昨日3月7日についに復活!
ということで、お祝いもかねて、早速足を運んできました。

リスタート1発目を飾るのは、
“塩谷亮 ー劉生の眼、私の眼” という展覧会。
ホキ美術館の作家の中でも特に人気が高く、
2017年に発売された初の大型画集が異例のヒットを記録した塩谷亮さんの待望の新作展です。

塩谷亮画集塩谷亮画集
4,180円
Amazon




展覧会のメインとなるのが、こちらの作品。




昨年完成したばかりの新作ではありますが、
“あれっ?どこかで見たような?” とデジャヴを感じた方も多くいらっしゃることでしょう。
そう、この絵のタイトルは、《M嬢像 (麗子微笑より)》
岸田劉生のあの 《麗子微笑》 をモチーフにした作品です。


(注:岸田劉生の 《麗子微笑》 は出展されていません)


実は、こちらの 《M嬢像 (麗子微笑より)》 は、
昨年の秋放送の 『日曜美術館』 「異端児、駆け抜ける!岸田劉生」 の回に、
塩谷さんが出演された際に制作されたもの。
塩谷さんが麗子風の衣装に身を包んだ同じ年頃の少女を実際に描き、
それと見比べることで、《麗子微笑》 の秘密を検証しようという試みが放送されました。
見比べてみたことで、顔や手をデフォルメしていることや、
ライティングに対する劉生独自の演出があることなどが判明。
“やっぱり劉生は異端児だった” 的な感じでまとめられていました。

その放送時、ちょうどリアルタイムで番組を見ていた僕。
そのコーナーを観た率直な感想は、
「いや、劉生もいいけど、塩谷さんの作品もいいじゃん!」 でした。
番組的には、なんだか劉生の噛ませ犬のようになってしまっていましたが。
(塩谷さんは人が好過ぎるので、その演出を受け入れてしまったのでしょう)
少女の髪や肌、衣装の質感の描写、背景と少女との対比、
それから、あえて少女に微笑ませなかったところも含めて、
劉生をモチーフにしながらも、ちゃんと塩谷さんらしさのある作品でした。

『日曜美術館』 の1コーナーでしか観られないのはもったいない!
そう思っていただけに、テレビ越しでなく、
今回、実物を目にすることが出来て、嬉しい限りでした。




さらに、展覧会では、その際に制作したドローイングも併せて出展。
これらも 『日曜美術館』 でチラッとだけ放送されたものです。




また、当初の予定では、今回の展覧会を、
『日曜美術館』 のために制作した作品だけで構成する予定だったそうですが。
塩谷さんご本人曰く、劉生に真剣勝負を挑みたかったとのこと。
劉生の作品をオマージュして急遽制作した新作を2点発表しています。
そう言われてみると、こちらの植物を手にした女性像は・・・・・




《麗子肖像(麗子五歳之像) 》 へのオマージュが、うっすらと感じられます。


(注:岸田劉生の 《麗子肖像(麗子五歳之像)》 は出展されていません)


また、二十日大根を描いたこちらの作品も・・・




どこか劉生の静物画を彷彿とさせるところがあります。
葉っぱの部分が画面に収まっていない。
→グッと近づいたような印象を受ける。
対象物に迫ったように感じられるところが、劉生に通ずるのかもしれません。


やはり劉生は偉大なのか。
はたまた、塩谷さんが劉生を超えたのか。
時代を超えた真剣勝負。
ジャッジするのは、皆さまです!
星


ちなみに。
展覧会では、『日曜美術館』 ではボツ (?) となった、
幻の作品 《麗子解剖之図》 も特別に紹介されていました。




こちらは、《麗子微笑》 の麗子の顔を徹底解剖したもの。
表情筋や頭蓋骨を想定した姿が描かれています。
塩谷さん曰く、一般の子どもと比べて、
麗子の頭蓋骨は約1.3倍大きいのだとか。
《麗子微笑》 が不気味に感じられるのは、「顔デカイからや!」 なようです。




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アートで一言 ~シカゴ美術館編~

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美術館に行きたい!
・・・・・・・でも、行けない。

そんな時は、インターネット上で美術鑑賞を。
太っ腹にも、その膨大なコレクションを、
無料公開している世界各国の美術館のサイトを訪問してみましょう。

本日訪れてみたのは、シカゴ美術館のThe Collection ページ
シカゴ美術館は、メトロポリタン美術館、ボストン美術館と並ぶアメリカの3大美術館の一つ。
モネやルノワールといった印象派コレクションは、
フランス国外の美術館では最大規模を誇ると言われています。

そんなシカゴ美術館のコレクションの中から、
厳選した作品の数々で、『アートで一言』 をしてみました。


●コスモ・アレクサンダー 《アレクサンダー・グラント》 1770年




飲み会の会計時、
払う気ないのに、とりあえず財布だけは出してるヤツ。




●アーヴィング・ペン 《トルーマン・カポーティ、ニューヨーク》 1948年




「メガネどこだっけ?」 のレアパターン。



●エドガー・ドガ 《黄色い踊り子たち》 1876年




『変なおじさん』 の一場面。



●エミ・フィリップス 《コーネリアス・アラートン》 1946年




右髪と左髪の戦い



●ルフィーノ・タマヨ 《マリア・イスキエルド》 1932年




原因はおそらく、
その肩に憑いた巨大魚の霊でしょうね・・・




●作者不詳 《男の肖像》 1575年




貴族のための上野クリニック



●ジュール・パスキン 《エルミーヌ・ダヴィッド》 1907年




誰が、千原せいじやねん!



インターネット上もいいですが、やはり実物を観たいものですよね。
来週には美術館が再開することを願ってやみません。




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wall to wall Noriyuki Haraguchi

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渡辺省亭ブームの火付け役としても知られる加島美術。
近世から現代までの日本美術を専門とする京橋のギャラリーです。

そんな加島美術が、つい昨日の3月7日に、
神楽坂の地に新たなギャラリーをオープンさせました。





その名は、√K Contemporary (ルートK コンテンポラリー)
次世代を担う優れたアーティストを広く紹介していく現代美術専門のギャラリーです。
いうなれば、加島美術のネクストブランドといったところでしょうか。

さて、そのこけら落としとして、
現在開催されているのが、“wall to wall Noriyuki Haraguchi” という展覧会。
「もの派」 を代表するアーティストの一人で、
国内外で活躍する原口典之さん (1946~) の個展です。
ちなみに、原口さんは、5年に1度ドイツで開催される、
世界最大の国際展 “ドクメンタ” に日本人作家として初めて選出されたアーティスト。
まさに、オープニングを飾るに相応しい豪華な展覧会といえましょう。

1階と2階。
約300平米の展示スペースで紹介されていたのは、シンプルながらも、
“もの (=物質)” そのものの存在感がダイレクトに伝わってくる作品の数々。





風景の一部として溶け込む感じではなく、
ハッキリと “そこにある” ということを主張している感じがありました。
特にインパクトがあったのが、吹き抜け空間に設置された新作の 《円塔》 です。




その高さは、実に約4m。
もはやアート作品というよりも、
何か古代遺跡のモニュメントのような印象を受けました。
ちなみに、一応、売り物ではあるとのこと。
家に4m以上の吹き抜け空間がある方は、いかがでしょうか?
一家に一 《円塔》


今後の展覧会は、基本的に1階と2階の展示フロアで開催されるそうですが。
オープニングを飾る今回のスペシャルな展覧会は、
地下にある多目的レンタルスペースも会場となっています。





スペースの壁の一部が崩落しており、
思わずギョッとしていましましたが、実はこちらも原口さんの新作。





展覧会のタイトルにもなっている 《wall to wall》 です。
モルタルで壁を作り、その一部を破壊し、その開いた空間にキャンバスを貼る。
なんともダイナミックな作品です。
何も描かれていないキャンバスに、これほどまでに心を揺さぶられた経験は初めて。
いや、きっと最初で最後の経験でしょう。


また、こちらの地下スペースでは、
原口さんの代表作 《オイルプール》 も展示されています。




表面の黒く光っているものは、顔料ではなく、オイル。
それも、廃油です。




実にドラム缶12個分の廃油が、
この鉄製の巨大なプールを満たしています。
当然ですが、匂いもします。
ただの廃油と言ってしまえば、それまでなのですが。
見れば見るほど、美しく感じられました。
さらに、見つめ続けていると、神々しさすら感じられました。

ちなみに、展覧会の会期中には、
最近では俳優としても活躍しているダンサーで舞踊家の田中泯さんが、
この 《オイルプール》 の中で踊るスペシャルイベントが開催されるとのこと。
廃油にまみれながら踊るだなんて・・・。
どろんこクイズで不正解になるよりも、悲惨なことになりそうです・・・。
とはいえ、興味津々!
気になる方は、是非、公式HPをチェックくださいませ。


さらに、今回のスペシャルな展覧会は、
√K Contemporaryの屋上にも作品が設置されています。




神楽坂の景色と絶妙に調和していました。
お見忘れなきように。




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祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に

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現在、日本民藝館で開催されているのは、
“祈りの造形 沖縄の厨子甕を中心に” という展覧会。




こちらは、日本民藝館の数あるコレクションの中から、


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


神様に捧げる酒器や位牌、木喰仏や円空仏、仏画などなど、
祈りや信仰心によって生み出された造形の数々を紹介する展覧会です。
展覧会のメインとなるのは、建物っぽい形をした謎のオブジェ。





その名も、厨子甕。
「ずし」 の 「かめ」 と書いて、「ジーシガーミ」 と読みます。

実は、厨子甕は、沖縄の伝統的な骨壺です。
火葬が一般的ではなかった沖縄。
遺体を墓室内に安置して風化させた後に、
その骨を洗って、骨壺に納める風習があったとのこと。
それゆえ、本土の骨壺よりも、大きな骨壺となったのだそうです。

今回の展覧会では、もともと日本民藝館が所蔵していたものに、
近年受贈されたものや新収蔵したものを合わせた34点の厨子甕を一挙蔵出し!
沖縄以外では初となる大規模な厨子甕の展覧会となっています。




土地開発によって出土したことで、
再びお墓の中から蘇った厨子甕の数々。
本来ならお墓の下で静かに眠っており、
人の目には一切触れられないはずのものでありながら、
その造形は、目を惹きつけられるほどに細部まで端正に作り込まれていました。





まるで、遠い未来、誰かが発見し、
再び、目に触れられることを想定して作られているかのよう。




形も素材もサイズも一様ではありませんでしたが、
それぞれの厨子甕から、職人が込めた想いや祈りが伝わってくるようでした。
星星


さて、沖縄といえば、昨年、火災により、
首里城の建物や文化財が甚大な被害を受けたのは、記憶に新しいところ。
それゆえ、現在、日本民藝館では、厨子甕だけでなく、
併設展という形で、沖縄に関するコレクションが多く展示されています。




その展示室内の一角には、
首里城再建のための寄付金箱が置かれていました。




寄付金箱も味があるのは、さすが日本民藝館。
思わず寄付したくなる寄付金箱でした (ささやかな金額で恐縮ですが)。


ちなみに。
展覧会では、厨子甕以外にも、見逃せない作品があります。
例えば、絵馬のコレクション。





絵馬だけに、馬が描かれたものが多いのかと思いきや、
馬以外にも、牛やウサギ、鳩など、さまざまな動物が描かれていました。
中でも印象的だったのが、こちらの絵馬↓




描かれていたのは、何者かの足下。
一体どんな祈りが込められているのか?
謎にもほどがあります。

謎と言えば、江戸時代に作られたという 《龍頭》 も。




・・・・・・龍なのか?
かろうじて龍に見えなくもないですが、
どちらかといえば、「ワニワニパニック」 のワニのように見えます。
それにくわえて、用途も謎。
見れば見るほど、ペッツにしか思えません。


また、《熊野本地絵巻断簡》 も見逃せない逸品です。




こちらは、新たにコレクションに加わったばかりの作品とのこと。
室町時代に制作されたものとは思えない彩色の美しさ。
ゆるくて、妙な可愛さもある素朴なタッチにも注目です。




とりあえず気になったのは、僧侶の襟。
洗濯のりが効き過ぎたのでしょうか。
バリッバリになっています。
もはや何かの凶器のようです。


さてさて、コロナウィルスの影響で、
現在、都内の多くの館が、臨時休館となっていますが。
日本民藝館は会期中ずっと開館しているとのこと。
早くこの状況が収束しますように。
そんな “祈り” を込めて、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。




狛犬の彼も、皆さまの来館を前足を長くしてお待ちしております。


注:とはいえ、社会状況が急速に変わっている今日この頃、
  お出かけの際には、念のため公式HPや電話などで確認されることをオススメします。


日本民藝館
 〒153-0041 東京都目黒区駒場4-3-33
 電話 03-3467-4527  FAX 03-3467-4537





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ピエール=エリィ ド ピブラック展 In Situ

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実は、ここ最近、縁あって、
バレエ鑑賞をするようになりました。
バレエというと、セレブでお上品なマダムたちが、
「オホホホ」 と楽しむものというイメージがありましたが (←どんなイメージだ!)。
実際に観てみると、ダンサーの動き体は、まるでアスリート、
その肉体から生み出される踊りと、衣装や舞台美術、音楽との融合、
まさに、バレエは総合芸術であることを実感させられた次第です。

今週末に開催予定だった牧阿佐美バレエ団による公演、
『ノートルダム・ド・パリ』 を心から楽しみにしていたのですが、
残念ながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、中止となってしまいました。
ぜんぶコロナのせいだ (泣)。



というわけで、少しでもバレエ欲を満たすべく、
本日は、銀座のシャネル・ネクサス・ホールにやってきました。
現在、こちらで開催されているのは、
“ピエール=エリィ ド ピブラック展 In Situ” という展覧会。




こちらは、パリ生まれの写真家ピエール=エリィ・ド・ピブラックの日本初個展で、
パリ・オペラ座のバレエダンサーたちの姿を追った 《In Situ》 シリーズを紹介するものです。




2年間にもわたって、ダンサーたちと時間をともに過ごしたというピブラック。
そうして制作された 《In Situ》 シリーズは、全三部作となっています。
まず一つめは、「Confidences」 。
リハーサル中や楽屋でのダンサーたちの動きをモノクロで撮影したシリーズです。




撮影に使用されているのは、特殊なレンズを用いた無音カメラとのこと。
それゆえ、まるで隠し撮りのような仕上がりとなっています。
2年間の密着があったからこそ捉えられた貴重なショット。
舞台裏でのダンサーの姿が見られるシリーズです。


二つめのシリーズは、「Analogia」。
こちらは、「Confidences」 とは違って、カラー作品。
ダンサーたちが、オペラ座のガルニエ宮のさまざまな場所で、
パフォーマンスを繰り広げる姿を広角レンズで撮影したシリーズです。




ダンサーたちは、神出鬼没 (←?)。
中には、こんなところでもパフォーマンスを披露したものもありました。




たぶん真似しようとする人はいないでしょうが、
念のため、「※特別な訓練を受けています」 というテロップがあったほうがいいかも。

なお、このシリーズで個人的に一番惹かれたのは、こちらの一枚。




シャガールの天井画で知られる客席を大胆に使って、
2人のダンサーが 『ロミオとジュリエット』 を演じています。
斬新すぎる無観客公演です。


3つめのシリーズは、「Catharsis」。
会場内でひときわ照明が落とされた一角に展示されていました。




ちなみに、上の会場風景の写真は、
手振れしているわけでも、ピンボケしているわけでもありません。




「Catharsis」 は、舞台上で踊るダンサーの姿を、
1960年代の古いレンズを用いて撮影し、抽象的かつ絵画的に仕上げた作品シリーズです。
じーっと眺めていると、ダンサーの動きがうっすらと見えてきませんか?


バレエという題材だけに、ドガを彷彿とさせる作品もあり。




その大胆な構図から、ソール・ライターを彷彿とさせる作品もあり。




会場はそう広くはないですが、
実に見ごたえたっぷりの展覧会でした。
バレエ好きな方はもちろん、
バレエに興味のない方にもオススメです。
星


余談ですが。
この展覧会を観た結果、
やはり実際のバレエが観たくなってきました。
むしろバレエ欲が高まってしまったような・・・(←本末転倒)。




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アートで一言 ~アムステルダム国立美術館編~

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美術館に行きたい!
・・・・・・・でも、行けない。

そんな時は、インターネット上で美術鑑賞を。
太っ腹にも、その膨大なコレクションを、
無料公開している世界各国の美術館のサイトを訪問してみましょう。

本日訪れてみたのは、アムステルダム国立美術館のコレクション紹介ページ です。
アムステルダム国立美術館は、オランダの首都アムステルダムにあるオランダ最大の美術館。
フェルメールの 《牛乳を注ぐ女》 や、
レンブラントの 《夜警》 を筆頭に、特に17世紀オランダ絵画が充実した美術館です。

そんなアムステルダム国立美術館のコレクションの中から、
厳選した作品の数々で、『アートで一言』 をしてみました。


●オットー・ファン・フェーン 《ユリウス・キウィリスとバタビア人の陰謀、聖なる森》 1600~1613年




かれこれずーっと乾杯の挨拶。



●アレクサンダー・ユーゴー・バッカー・コルフ 《縫物をしている二人の女性》 1880年




金のなる木と信じている。


●ジーン・ウジェーヌ・チャールズ・アルベルティ 《剣を持つ戦士》 1880年




むしろ、隠したほうが卑猥。



●バーナード・ブロマーズ 《おしゃべりする隣人》 1880~1907年




匠のリフォームによって、
おばあちゃんの憩いの場が生まれた。




●サンドロ・ボッティチェッリ 《ホロフェルネスの頭を持ったジュディス》 1495年




Hey ホロフェルネス!何か音楽かけて。



●ルイ・バーナード・コクレールズ 《母と子》 1794年




お母さんの、ちょっといいとこ見てみたい!!
そーれそれそれ、イッキ、イッキ、イッキ、イッキ、
はい、はい、はーい、はーい!!




●作者不明 《双子の肖像》 1617年




♪し~らこ~ し~らこ~
 た~っぷり~ し~らこ~



インターネット上もいいですが、やはり実物を観たいものですよね。
来週こそは、美術館が再開することを願ってやみません。




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VOCA展2020

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全国の美術館学芸員、ジャーナリスト、研究者などに、
40才以下の若手作家の推薦を依頼し、その作家が平面作品の新作を出品するという方式で、
全国各地から未知の優れた才能を紹介していく展覧会。
それが、VOCA展です。

壁面に展示できる平面作品で、250cm×400cm以内のサイズであればOK!
絵画作品や版画作品に限らず、写真作品も出展OKとなっています。
また、VOCA展がスタートした頃は、まだブラウン管の時代でしたが、今や薄型モニターの時代。
“厚さ20㎝以内であれば平面とみなす” というルールが適用されるため、映像作品も余裕でOKです。
なお、厚さ20㎝ルールを解釈すれば、
20cmに満たない薄型の立体作品も、OKということ。
ようは、ほとんど何でもあり状態な展覧会です (笑)

村上隆さんや奈良美智さん、蜷川実花さん、会田誠さんをはじめ、
現在日本を代表するアーティストの多くが、若き日にVOCA展に出展しています。
いうなれば、VOCA展は若手作家の登竜門。
多くの若手作家にとって、VOCA展は憧れのステージなのです。


・・・・・・・・・・・それだけに。
今年はちゃんと無事に開催できるのかと、ヒヤヒヤしておりましたが。
(春のセンバツ甲子園が、史上初の中止となっただけにアセアセ




どうやら3月12日に展覧会は開幕したようです。
(看板が小さい気がしますが、毎年こんなサイズでしたっけ??)
しかも、無観客開催ということもなく、
ちゃんとお客さんを入れる形で開催しています。
無事に開催されて、ホッと一安心。
上野の森美術館の勇気ある決断にエールを送りたいと思います。星
(ただし、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、
 館内の換気状態を保持できるよう、お客さんが一定数を超えた場合は、入場制限をするそうです。)



さて、令和初となる記念すべき今回のVOCA賞を受賞したのは、
田中義久さんと飯田竜太さんによるアーティストデュオNerhol (ネルホル)
写真を200層ほど重ね、その塊 (?) を彫るという独特な作風で知られています。
なお、Nerholというちょっと変わったユニット名は、
田中さんが 「アイデアを練る」 、飯田さんが 「作品を彫る」 ことに由来しているのだそう。
「ネル」 と 「ホル」 でNerhol (ネルホル)。
一人が頭脳労働、もう一人が肉体労働。
現代アート界のナポレオンズといったところでしょうか。
さて、これまでNerholは、自身で撮影したポートレートを素材にしていましたが、
今回の新作 《Remove》 では、過去の記録映像を素材にしていました。





全体的にうねるように彫られているため、像がなんとも判別しづらいですが。
中央の男性は、確実に上半身裸です。
もしや変態?ジロジロ見ない方がいいヤツ?
・・・・・かと思いきや。
1969年のアメリカの宇宙飛行士の、
重力を除去する効果についてのテストプログラム中のワンシーンとのこと。
像が歪められたことで、普通の記録映像が妙に怪しげなものに感じられました。


VOCA奨励賞に輝いたのは、アンミカさんと一字違いの菅実花さん。




こちらの新作 《A Happy Birthday, selfiewithme》 に写っているのが、菅実花さん本人です。
あれっ?でも、2人ともまったく同じ顔をしていますね。
ということは、菅実花さんは双子なのでしょうか?
実は片方は、自分の顔を型取りして制作されたラブドールなのだそう。
見比べてみましたが、どっちが人間で、
どっちが人形なのか、全くわかりませんでした (汗)。
技術の進歩に驚かされるとともに、
どこかうすら寒くなるところのある作品でした。


また、同じくVOCA奨励賞に輝いたのが、李晶玉さん。
今回は、オリンピックをモチーフとした 《Olympia 2020》 なる作品を発表しています。




絵とデジタルプリントがミックスされた不思議な味わいの作品でした。
何よりも目を引いたのは、女性の後ろにうっすらと浮かび上がる影。
女性よりも明らかに影のほうが大きいのです。
もしかしたら、この影はに日に日に大きくなり、
東京オリンピックの開幕の頃には、この影が画面全体を覆っているのでは?
そんな不吉な妄想に駆られてしまいました。


さて、この他にも、大原美術館賞さんを受賞された浅野友理子さんを含め、




受賞作家は計6名いらっしゃいましたが、
惜しくも受賞しなかった作家の中にも、気になる作家は多く存在していました。
特にイチオシなのが、立原真理子さん。




実はこちらの作品は・・・・・・




網戸に刺繍を施したものです。
「その発想はなかった!」 と、
思わず手を叩きたくなりました。
VOCAアイデア賞があれば、間違いなく彼女が受賞です。


また、「その発想はなかった!」 といえば、高本敦基さんの作品も。




パッと見は抽象的でカラフルな作品です。
しかし、よーく見てみると、あることに気が付かされます。




日常の何気ないシーンを捉えたスナップ写真。
その中に映りこんだ記号の部分を、
絵の具で反復して描き、画面全体を覆っているのです。
普段あまり気に留めていませんが、
街中にはさまざまな記号が溢れていたのですね。
『ピタゴラスイッチ』 の1コーナーになりそうな作品です。


ちなみに。
もう1人気になって仕方がないのが、増田将大さん。




彼はまずモチーフとなる場所を撮影して、
その画像を同じ場所に投影し、さらにその光景を撮影するのだそう。
そして、その行為を何度も繰り返すのだとか。


・・・・・・・・・・何のために?
アートテラーを10年以上やっているので、
さすがに、多少はアートが理解できるようになってきましたが。
久しぶりに、ナチュラルな 「どういうこと??」 が飛び出しました。

もっとわからないのが、その入れ子のような光景を、
最終的にはシルクスクリーンと絵の具を使って、作品に仕上げていること。


・・・・・・・・・・何のために??
写真でいいじゃん。
インスタレーションでいいじゃん。

やはりアートは奥が深い。




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第23回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)

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昨日紹介したVOCA賞と並ぶ、美術界の春の風物詩。
それは、岡本太郎現代芸術賞。通称TARO賞。
岡本太郎の遺志を継ぎ、「時代を創造する者は誰か」 を問うための賞です。

国籍、年齢の制限はなし。
プロアマ問わず誰でも応募可能となっています。
さらには、表現の技法も一切制限なし!
高さ5m×幅5m、もしくは、奥行き5m以内であれば、平面でも立体でもOKとなっています。
まさに、美術界の異種格闘技戦のような公募展といえましょう。

その第23回目、令和初となるTARO賞の入選作品が、
例によって、今年も川崎市岡本太郎美術館に一堂に会しています。




応募総数は、昨年の416作品を上回る452点。
その中から、厳正な審査を経て入選したのは、たった25作品です。
25作品の中で頂点に輝き、見事チャンピオンの座を獲得、
つまり岡本太郎賞を受賞したのは、野々上聡人さんの 《ラブレター》 という作品でした。




壁全体を埋め尽くす絵画 (時々、映像)。
そして、その中央に積み上げられたたくさんの立体。
これらはすべて、この10年で作り続けていたという膨大な作品から、
野々上さん自身が、良いと思えるものをセレクトしたものなのだそうです。




実は、美術の教育を全く受けていないという野々上さん。
これまでアートの公募展に一回も応募したこともなかったのだとか。
ノーマークながらも、圧倒的なインパクトでチャンピオンに。
昨年末のM-1のミルクボーイと同じスタイルの勝ち方ですね。

さらに、史上最高レベルの激戦となった昨年末のM-1同様、
今年の岡本太郎現代芸術賞 (TARO賞) は史上最高レベルの激戦だった模様。
段ボール製の仮面が壁に敷き詰められた本濃研太さんの 《僕のDNAが知っている》 や、




架空の古美術店をモチーフにした村上力さんの 《(上)一品洞「美術の力」》 を含め、



(↑店主は太郎さん)


なんと史上初となる5作品が特別賞を受賞しています。
皆さま、おめでとうございます!



さて、そんな特別賞の作品の中で、
個人的に一番印象に残っているのは、森貴之さんの 《View Tracing》 です。




暗幕を抜けると、そこに広がっていたのは、
ポリゴンで構成されたヴァーチャルな世界でした。





・・・・・・いや、待てよ。
冷静に考えると、ポリゴンは、2次元の世界。
つまり、ここは平面の世界なのでしょうか。
でも、この空間の中で、自分は自由に動き回ることが出来ています。
つまり立体の世界のはず。
今、自分は2次元の世界にいるのか。
それとも、3次元の世界にいるのか。
考えれば考えるほど、よくわからなくなってくる・・・。
実に奇妙な体験ができる空間でした。


ちなみに、特別賞受賞作品のうちの1点、
藤原千也さんの 《太陽のふね》 という作品ですが・・・・・




なぜか、ビニールでスッポリと覆われていました。
時期が時期だけに、そして、モチーフが船だけに、
横浜港に停泊していたクルーズ船を連想してしまいましたが。
本物の巨木を素材にした作品ということで、
どうやらウイルスとはまた別の何かが発生してしまったとのこと。
残念ながら、近いうちに撤去・・・もとい作家の元へ出港してしまうそうです。


なお、準グランプリに当たる岡本敏子賞を受賞したのは、
陶を手びねりし、奇妙な生物のオブジェを作る根本裕子さん。
今回は、架空の生物ではなく、《野良犬》 を制作しています。




一体一体が、違うポーズ、違う表情をしています。
それぞれの性格までもが伝わってくるようなリアリティがありました。
岡本敏子賞を受賞するに相応しい素晴らしい作品です。
ただ、あまりにも野良犬たちの姿にリアリティがあり過ぎて・・・・・




その奥の壁に展示された井上直さんの絵画、
《Ⅴ字鉄塔のある惑星A》 に近づきづらかったです (笑)
まるで野良犬たちが、絵画を守っているかのよう。
井上さんからすれば、“余計なことしてくれるなよ” といった感じでしょう。


ちなみに、顔面のインパクトが圧倒的な佐藤圭一さんの 《おねすと》 や、


(↑ナダルみたいなのが混じっているような・・・)


青木繁の 《海の幸》 をモチーフにしたであろう丸山喬平さんの 《幸について》 など、




入選作家の作品の中にも気になったものは多数ありました。
中でも一番気になったのは、そんたくズというフリーの芸人による、
《そんたくズ岡本太郎美術館記念コントライブ ~死ぬのはお前だ!アジア初の逆デュシャン展~ という作品。




正確には、まぁ、作品と言っていいのか、よくわかりませんが。
実際に土日にこのステージでコントライブをするのだそうです。
いや、する予定だったそうです。
しかし、昨今のコロナウィルスの影響により、
ライブを中止せざるを得なくなってしまったようです。
そのことを知らせる張り紙も。




彼らは政府の判断に対して、相当ご立腹のようです。
忖度しないんかい!




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岡本太郎の版画

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昨日ご紹介した通り、こんな状況でも、
元気に川崎市岡本太郎美術館は開館していますが。
表参道にある岡本太郎記念館も、変わらず元気に開館しています。




さすが太郎さんパワー。
ウイルスを寄せ付けないようです。
(注:医学的根拠は何もありません)


さてさて、そんな岡本太郎記念館では、
現在、“岡本太郎の版画” という展覧会が開催されています。

自分の作品が個人の所有物となることを毛嫌いした岡本太郎は、
その生涯で、誰でもいつでも見ることの出来るパブリックアート作品を数多く制作しました。
それと同時に、量産可能なマルチプル作品、
例えば、時計やトランプ、鯉のぼりやウィスキーのおまけ…etcも数多く手がけました。
版画作品も、そのうちの一つ。
多くの人々が手にすることが出来る版画作品も、多く遺しているそうです。
そんな太郎さんの版画作品に焦点を当てたのが、今回の展覧会。
意外にも、太郎さんの版画にスポットが当てられるのは、今回が初めてなのだそう。




会場では、太郎さんの手掛けたリトグラフやシルクスクリーンなど、





多彩な技法で制作された版画作品の数々が紹介されていました。
絵画作品と比べてしまうと・・・・・




さすがに画面から伝わってくるパワーは弱まっていますが。




それでも、並の版画作品とは違って、
禍々しく呪術的なパワーが満ち満ちていました。
こんな版画を何枚も摺ることとなった職人さんは、相当ぐったりしたに違いありません。
星


ちなみに、こちらの壁に展示されていた6点の版画は・・・・・




なんと木版画で制作されています。
つまり、浮世絵と同じように、
摺り師と彫り師の職人と共同して制作したということ。
会場では、そんな貴重な試し刷りの段階のものも紹介されていました。




細かいことは気にしない。
そんなイメージのある太郎さんですが・・・・・




意外にも、指示を細々と書き込んでいました。
しかも、「ナオス」 とか 「キレイニ」 とか、若干キレ気味。
不満が爆発だったのでしょう。


また、貴重といえば、版画の原板も展示されています。




なお、その原板を使って制作された作品が、こちら↓




基本的に版画作品というものは、
原板よりも摺られたもののほうが印象に残るものなのですが (←当たり前といえば当たり前!)。
こと、太郎さんに限っては、
原板のほうが摺られたもの以上にインパクトが強かったです。
むしろ、原板そのものが作品といった印象でした。


ちなみに、今回紹介されていた版画作品の中で、
特に気になったのは、《コンポジション》 という作品です。




コンポジションというだけに、抽象的な作品なのでしょうが。
じーっと見ていると、だんだん太郎さんの顔にも見えてきました。
目元 (?) がやや似ています。


そうそう。
太郎さんといえば、春になったこともあり、
応接間にある太郎さんの等身大人形が衣替えしていました。




ネクタイも太郎さんデザインのものに。
気のせいかもしれませんが、
目元がややメイクしたみたいな感じになっていました。
ぺこぱ風味。




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新・無料で観れる 美術百選 《調布市文化会館たづくり (東京都調布市)》

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京王線調布駅のほど近くにある調布市文化会館たづくりに行ってきました。




ちなみに、施設名にある 「たづくり」 とは、「調布」 の別の読み方とのこと。
かつては、「たづくり」、もしくは 「てづくり」 とも読んでいたのだそうです。

と、そんな調布トリビアはさておきまして。
一見すると、どこにでもありそうな外観の文化会館ですが、
実は館内のあちこちに、多数のアート作品が設置されているのです。
例えば、建物の東側の窓には、大胆に7階から12階を使って・・・・・




小林万里子さんによる 《ナンジャモンジャの樹》 という作品が描かれています。
なお、全部の絵を繋げると、こんな感じになるそう。




また例えば、1階にあるホールの入り口近くには・・・・・




大理石の彫刻作品が数点設置されています。
なんとこれらの作品は、19世紀イタリアで活躍した彫刻家チェーザレ・ラピーニによるもの。
もしかしたら、調布市は、港区や品川区よりも、リッチな街なのかもしれません。


さらに、調布市文化会館たづくりの一角には、こんなスペースも。




ゲゲゲギャラリーです。
何を隠そう、水木しげるは、調布市の名誉市民。
それにちなんだスペースのようです。
ケースの中には、水木しげる本人直筆のイラストが飾られていましたが・・・




どことなくコレジャナイ感が漂っていました。
(間違いなく、本物のはずなのですが・・・)


さてさて、そんな数ある調布市文化会館たづくりのアート作品の中で、
こういう時だからこそ、是非皆さまに紹介したいのが、角文平さんの作品です。
角文平さんは、日常的に見慣れたものをモチーフに、
思わずクスッとなるユーモラスな作品を手がけるアーティスト。
そんな彼の現状唯一のパブリックアートが、こちらの作品です。




新・無料で観れる 美術百選 097  角文平 《World Tour》


突如として階段に現れたのは、空港を彷彿とさせる案内標識。





とりあえず案内に従って、階段を上ってみることにしましょう。
すると、踊り場の壁に、調布を代表する名所、深大寺の光景が現れました。




さらに進むと、別の案内標識が登場します。





どうやら次の目的地は、上海のようです。
案内通り、階段を14段上ると、今度は上海の景色が現れました。




その後、階を上へ上へと進むごとに、
カトマンズ、パリ、そして、ケベックと、世界を西へ西へと進んでゆくことに。




そして、最終的には・・・・・




リオデジャネイロにたどり着きました。
まさか、何の変哲もないビルの階段で、世界旅行気分が味わえるとは!



・・・・・・ただし、あくまで味わえるのは気分だけ。
今いる場所は、紛れもなく調布市です。


<無料で観れる美術 データ>

調布市文化会館たづくり

住所:東京都調布市小島町2-33-1
アクセス:○京王線 「調布駅」 より徒歩4分




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ふつうの系譜  「奇想」があるなら「ふつう」もあります

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近年、江戸絵画が人気です。
中でも人気なのが、伊藤若冲や曽我蕭白といった 「奇想」 の絵師たち。
昨年の今頃は、東京都美術館で、
“奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド” が開催され、大きな話題となりました。
ちなみに、今年の4月からは、東京都江戸東京博物館にて、
“特別展 「奇才―江戸絵画の冒険者たち―」” の開催が控えています。
まさに、「奇想」 の無双状態です。


と、そんな昨今の 「奇想」 ブームに対して、
「ちょっと待ったー!」 と声をあげたのが、府中市美術館。
「奇想」 が 「奇想」 としての魅力を発揮できるのは、
それを引き立たせるための 「ふつう」 の江戸絵画があるからこそ。
であれば、今こそ、「ふつう」 の江戸絵画にスポットを当てようではないか。
そんな一周周ったコンセプトで開催されているのが、
“ふつうの系譜  「奇想」があるなら「ふつう」もあります” という展覧会。




「ふつう」 にも、「ふつう」 ならではの魅力がある。
そんな 「ふつう」 の (でも、見落としがちな) ことを、
「ふつう」 にわかりやすく、かつ、「ふつう」 に面白く伝えてくれる展覧会です。
星星星
ハッキリ言って、「ふつう」 にオススメです。


さてさて、「ふつう」 とは言うものの、
この展覧会における 「ふつう」 とは、 “一般的” という意味ではありません。
「ふつう=主流派」。「ふつう=王道」。「ふつう=正統派」。
漫才に例えると、ミルクボーイの行ったり来たり漫才や、
ぺこぱのノリつっこまない漫才が、「奇想」 であるならば、
爆笑問題や中川家、ナイツの漫才を 「ふつう」 と評するようなものでしょうか。
「ふつう」 の江戸絵画の展覧会という言葉だけみると、
9段階評価でいう 『中の中』 の作品が紹介されている印象を受けるかもしれませんが。
会場には、土佐光起の 《菊鶉図》 や、




岸恭の 《四季花卉図屏風》 をはじめ、




絵師の名前こそピンとこないものの、
『上の上』 ないしは、『上の中』 クラスの作品が集結していました。

どの作品も、「ふつう」 に美しく、
「ふつう」 に目を惹かれてしまいましたが。
中でも目を惹かれたのは、幕末から明治にかけて、
京都画壇で活躍したという塩川文麟の 《柳汀飛蛍図》 です。




ほの暗い闇の中に浮かぶ蛍の光。
この光の部分は、金泥を使って描かれています。
つまり、実際にキラリ (正しくは、ドロリ?) と画面で光っていました。
照明の明かりでなく、蝋燭の明かりの中で観たら、もっと臨場感が増すことでしょう。


また同じく目を惹かれたのが、鈴木松年の 《朝陽蟻軍金銀搬入図》




画面の中央いっぱいに描かれた太陽に気を取られ、
一瞬気が付かなかったのですが、よく見ると、足元に蟻の大群が描かれていました。
しかも、さらに、よく見ると、せっせと金銀を運んでいます。




ダリよりも先に、蟻の群れを描いている画家が日本にいたとは。
それも、ダリよりもシュールな設定だとは。
「ふつう」 に何だか誇らしい気持ちになりました。


また、紹介されているエピソードが印象的だったのが、冷泉為恭の 《五位鷺》




ある日、醍醐天皇が池に鷺がいるのを見て、
六位の蔵人に、「あの鷺を捕まえてこい」 と命じました。
鷺を捕まえたことのない六位の蔵人。
おそるおそる鷺に近づき、とりあえずこう言ったそうな。

「天皇の命令だぞ!」




すると、鷺は飛ぶことなく、
無事に捕まえることが出来たそうです。
そのエピソードを聞いた天皇は、「なんと殊勝な鷺なのだ!」 と感動。
そして、鷺を五位に叙したのだとか。
それが、五位鷺の名の由来とのこと

・・・・・・・・ん?
鷺を捕まえた蔵人よりも、鷺のほうが位が上になってるじゃん。
蔵人はこの人事が不服だったに違いありません。


もう一つ印象的だったのが、狩野栄信の 《菊慈童・菊図》 で紹介されていたエピソード。




菊慈童は、中国の周の穆王の寵愛を受けていたという美少年。
しかし、周囲の妬みからあらぬ罪をかけられ、彼は都を追放されてしまいます。
そして、人里離れた山で一人過ごすことに。
そのことを不憫に思った穆王は密かに、菊慈童にある経文を届けさせました。
王から頂いた経文を忘れぬよう、
山の中に咲いていた菊の葉に書き、毎日お経を唱えていた菊慈童。
ある日、その菊の葉から流れた水を飲んだところ、とんでもない奇跡が起こりました!
なんと菊慈童は不老不死になったのです。

・・・・・・・いやいやいや。
人里離れた場所で、それも一人きりなのに、不老不死って。。。
逆に地獄だよ。


ちなみに。
「奇想」 がお好きな方もどうぞご安心を。
今回の展覧会では、「奇想」 と 「ふつう」 の中間、
まさにハイブリッドのような江戸の絵師も紹介されています。
特にフィーチャーされていたのが、岸駒。
若冲や応挙よりもずっと若い世代 (第7世代?) の京都の絵師です。





《虎図》《白蓮翡翠図》 も、
一度目にしただけで脳裏に焼き付くようなインパクトがありましたが。
とりわけインパクトがあったのが、こちらの 《寒山拾得図》 です。




暗い夜道。
一人で歩いていると、背後から謎の足音が聞こえてくる。
それも、どうやら二人組のようだ。
歩くスピードをあげると、背後の足音もスピードがあがる。
歩みを止めると、背後の足音もピタッとやむ。
間違いない。誰かに付けられている。
勇気を出して振り向くと、そこに立っていたのは、怪しげなこの2人組。
そして、ニタニタ笑いながら、こう言うのです。

「この開運の数珠、買いませんか?」

買わねーよ。




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深井隆 -物語の庭-

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新型コロナウィルス感染症拡大防止のため、
当初予定していた3月7日からの開催が見合わされていた展覧会、
“深井隆 -物語の庭-” が、3月14日に板橋区立美術館にて無事に開幕いたしました。




こちらは、日本を代表する現代彫刻家の一人で、
2018年まで母校である藝大で彫刻科の指導に当たっていた深井隆さんの個展です。
90年代の作品から未発表の新作まで、30点ほどが紹介されています。




深井さんといえば、翼のある椅子。
あるいは、深井さんといえば、馬。
もちろん、それらの作品も展示されています。





初めて出合う作品であるはずなのに、
遠い昔に、一度ならず目にしたことがあるような。
それは、いつか夢の中で見た情景だったかもしれませんし、
いつか絵本や物語を読んで思い浮かべた情景だったかもしれません。
作品と向き合った際に、一瞬にして、どこか懐かしい気持ちを覚える。
それが、深井隆ワールドです。


どの作品も、心にじんわりと染み込みましたが、
特に印象的だったのが、《幻想の闇より》 と名付けられた作品です。




パッと見た瞬間、拷問の一種か何かなのかと思いました。
あるいは、全体的には、虫のようにも見えます。
虫とベッドから連想して、カフカの 『変身』 の冒頭、
「朝起きたら、いきなり毒虫になっていた」 が頭に浮かびました。
どちらにせよ、あまり心地の良いものではありません。
ところが、ちゃんと向き合ってみると、
不思議なことに、そこまで不穏な印象は受けませんでした。
どうやらこちらの作品は、天から降り注ぐ光を表しているのだそう。
むしろ祝祭感の溢れる作品でした。


また、新作の 《青空―2020》 も印象深いものがある作品でした。




これまでの深井作品に登場する翼の色は、
金や銀が多かったのですが、今回の翼の色は青。
目に飛び込んできた瞬間に、まずワシのマークの大正製薬を連想してしまいました (笑)
その後、しばらく眺めていたら、鯨の尾っぽのようにも見えてきました。
もしかしたら、この床の下に巨大な鯨が泳いでいるのかも。
思わず、そんな妄想が頭をよぎる作品でした。


ちなみに。
新作といえば、2頭の馬が仲良く向き合った 《対話》 も印象的。




こちらは、土台となる部分には他の作品同様に、
楠が使われていますが、馬に関しては陶で制作されているそうです。
なお、作品が設置されているクラシカルなキャビネットは、
普段は、板橋区立美術館の1階で、チラシ置きとして使われているとのこと。
このキャビネットに前々から目を付けていたという深井さんたっての希望で、
今回は2階の展示室で、作品を置くための展示台として活用されているのだそうです。

板橋区立美術館には何度も足を運んでいる僕ですが、
このキャビネットに関しては、全くのノーマークでした。
そんな板橋区立美術館を知り尽くした深井さんが、
作品の選定から配置までディレクションした今回の展覧会。
これ以上無いくらいに、作品と空間がマッチしていました。




というか、作品と床が一体化していました。
星星
もはやこの展覧会のために、
板張りの床にリニューアルしたのかと思ってしまったほど。
(リニューアル前は、グレーの絨毯が敷かれていました)




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新型コロナウイルスの影響による延期のお知らせ

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本日は、3月20日。
僕の誕生日です。

平常時であるなら、とてもおめでたい日なのですが、
新型コロナウイルスの影響により、世の中に自粛ムードが漂っている中、
誕生日で浮かれるのは、いかがなものかと自分なりに判断しまして。
今年は、誕生日を自粛。
つきまして、歳を1つ重ねるのも、来年に延期となりました。
よって、今年は36歳のままでお送りしようと思います (笑)


さて、世の中にはもっと大変な方がいらっしゃるので、
僕の仕事の影響なんて、そうたいしたことではないのですが。
やはり、新型コロナウイルスの影響は少なからずあります。
今週末に予定されていたトークショーは、延期。
来週予定されていた 『芸術新潮』 の取材も、延期。

本来なら、本日告知しようと思っていた4月5月のあれやこれやも、
予定通り、無事に開催できるのかも、だんだんと危ぶまれてきました (汗)
6月予定されていたトークショーも・・・・・。
せめて9月から予定されているアートテラー人生最大の大仕事までには、収束していますように。



・・・・・・・と、暗い話ばかりしていても仕方がないので。
ここ1か月くらいにあった楽しい出来事の話を。
(↑たぶん神様からの誕生日プレゼントでしょう)

まずは、先月2月29日に、
東海ラジオの番組 『和田彩花のビジュルム』 にゲスト出演させて頂きました。

和田彩花さんは、ハロプロのアイドルグループ、アンジュルムの元リーダー。
美術好きが高じて、大学では美術史を専攻。
さらに、大学院にも進み、美術史を研究しているほどのお方で、
これまでに、『乙女の絵画案内 「かわいい」を見つけると名画がもっとわかる』 など、




美術関係の著書も出版されています。
僕の中では勝手に “同志” とシンパシーを感じていましたが (←人気や実力は雲泥の差!)。
なんとなく同じような立ち位置だけに、
ご一緒する機会はまぁ無いだろうと思っていました。
が、しかし、このたび初競演を果たすこととなったのです。




和田さんは、想像していた通り、美術愛の強い人物でした。
トークの端々から、本当に美術が好きなんだなぁというのが伝わってきました。
もはやどっちが進行役かわからないくらいに、
お互い好き勝手にトークを続けて、あっという間に収録は終了。
とても楽しい時間でした。

ただ一つ、その楽しい収録の裏で、衝撃的な出来事がありました。
毎回ゲストが出演する番組と疑うことなく、収録に臨んだところ、
和田さんが番組の冒頭で、「今回は初めてゲストが来てくれています」 と一言。

“え~~~っ!毎回ゲストがいるわけじゃないの??
4年も続いてきた番組なのに、初ゲスト?!責任重大すぎるだろ!!”

(注:実際は、ゲストは2人目だったそうですが)

そういうことは事前に教えておいて欲しかったです。
なお、その翌週の放送 (3/7オンエア) で、さらなる衝撃的なお知らせが。
なんと、今月3月いっぱいで番組は最終回を迎えるのだそうです。

“めちゃめちゃ貴重な回にゲスト出演しちゃったよ (汗)”

番組のリスナーの皆さま、この場を借りて、ごめんなさい。


そして、ラジオといえば、今週16日に、
TOKYO FMの 『THE TRAD』 に出演させて頂きました。
内容は、いよいよ本日よりBunkamura ザ・ミュージアムで開幕した展覧会、
“超写実絵画の襲来 ホキ美術館所蔵” に合わせて、超写実絵画の魅力をプレゼンするというもの。
お相手は、元TBSアナウンサーの吉田明世さん。
そして、なんとなんと稲垣吾郎さん。

まさか自分が、稲垣吾郎さんと共演する日が来ようとは!
想像だにしていませんでした。
やっててよかった、ホキ美術館親善大使。
すべての関係者の皆さまに感謝です。

楽しい時間は、早く過ぎてしまうもの。
あまりにもあっという間に終わったので、
もしかしたら、夢だったのかもしれないとも思いましたが。
出演後、番組から写真が届いたので、どうやら夢ではなかったようです。




ちなみに、せっかくの機会でしたので、
お二人に 『東京のレトロ美術館』 をプレゼント。
稲垣さんに、「貰っちゃっていいの?」 と言ってもらった際に、
つい反射的に、「ハイ、吾郎さん!」 が飛び出そうになりましたが、なんとか押し戻しましたw
すぐさまパラパラっと捲ってくださり、
行ってみたい美術館がたくさんあるなぁと、気に入ってくださった様子。
スマスマを観てたあの頃の僕に、
「いつかラジオで稲垣さんと共演することになるよ」 と教えてあげたい。
「しかも、自分が書いた本をプレゼントするんだぞ」 と教えてあげたいです。


人生って何があるかわかりませんね。
たぶんこの先も何か面白いことがあるでしょう。
そう信じて、コロナ禍を乗り切りたいものです。


『THE TRAD』 での稲垣さんのやり取りを聴きたい方へ。
3月23日までは、radikoで放送を聴くことが出来るようです↓
http://radiko.jp/share/?t=20200316161830&sid=FMT





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バンクシー展 天才か反逆者か?

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横浜中央郵便局の別館部分をリノベーションし、
昨年3月15日にグランドオープンした複合型体験エンターテインメントビル。
その名も、アソビル。




現在、そんなアソビルで開催されているのは、
“バンクシー展 天才か反逆者か?” という展覧会。




イギリスを拠点に活動する謎の覆面アーティスト、
あのバンクシーの日本初となる大々的な展覧会です。
2018年にモスクワからスタートしたこの展覧会は、
これまでに、マドリード、リスボン、香港など世界5都市を巡回。
トータルで100万人以上を動員しているそうです。


さすがに、バンクシーの代名詞ともいうべき、
グラフィティアートの実物は展示されていませんが。
(壁の一部を切り取って運んでくるわけにはいかないでしょうから)
世界各国のバンクシーコレクターのコレクションを中心に70点以上が出展されています。




それらの中には、例のオークションの一件で話題となった 《風船と少女》 や、


(↑安心してください。シュレッダーにかけられていませんよ)


ウォーホルの 《モンロー》 をパロった 《ケイト・モス》




小池都知事も大好きな (?) ネズミをモチーフにした作品群など、




「これぞバンクシー」 というべき、
代表的な作品が数多く含まれています。




また、会場では、2015年に5週間限定で開園された、
“逆ディズニーランド” 的テーマパーク・ディズマランドの映像や、




バンクシーがパレスチナにオープンしたウォールドオフホテル、
通称 “世界一眺めの悪いホテル” の再現インスタレーションの紹介も。




まさに、バンクシーの展覧会の決定版といった内容でした。
バンクシーが好きな方はもちろん、
これを機にバンクシーを知ってみたい方にもオススメです。
星星


嬉しいことに、展覧会は全面的に写真撮影OK!
それだけに、映えるスポットも多数用意されています。




こちらは、バンクシーのアトリエの再現↓




その一角に座るパーカーを目深にかぶる怪しげな男が、バンクシーです。




一応、どんな顔をしているのか覗き込んでみましたが、顔はわかりませんでした。
やはり覆面作家ですからね。


ちなみに。
こちらの世界巡回展に関して、バンクシー本人はオフィシャルサイト上で、
「この展覧会は同意したものではなく、フェイクである」 と揶揄する声明を出しているのだとか。
とはいえ、バンクシー自身もこれまでに、
大英博物館やメトロポリタン美術館に無断で自分の作品を設置しています。
それを考えると、フェイクと揶揄しつつも、
実は、裏でバンクシー本人が糸を引いているのかも。
もしかしたら、展覧会会期中に、バンクシー本人が、
横浜にふらっとやってきて、会場のどこかに落書きをしていくかも!
バンクシーならやりかねません (笑)
そういう意味でも、隅から隅まで見逃せない展覧会です。




なお、展覧会のラストには、落書き可能なホワイトボードが設置されていました。




全体をくまなくチェックしましたが、
この日の段階では、バンクシーらしきものはありませんでした。




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【特別展】桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―

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新型コロナウイルスの影響で、お花見も自粛ムードが強まっていますね・・・。

と、そんな今だからこそ、ぜひ観に行きたいのが、
山種美術館の “【特別展】桜 さくら SAKURA 2020 ―美術館でお花見!―” という展覧会です。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


奥村土牛の代表作の一つで、醍醐寺のしだれ桜を描いた 《醍醐》 や、


奥村土牛 《醍醐》 1972(昭和47)年 紙本・彩色 山種美術館


開化と同時に葉をつける山桜をモチーフにした横山大観の 《山桜》 を筆頭に、


横山大観 《山桜》 1934(昭和9)年 絹本・彩色 山種美術館


会場を埋め尽くしているのは、
山種美術館コレクションの中から厳選された桜の名画の数々。




まさに、桜満開、春満開な展覧会です。
上野公園や代々木公園など、
花見の自粛を要請されている桜の名所と違って、山種美術館はどれだけ滞在してもOK!
たまには、美術館でお花見するのも悪くないかもしれません。
星星


また、さらに嬉しいのは、東京にいながらにして、
日本三大桜の一つに数えられている福島の三春滝桜や、


橋本明治 《朝陽桜》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館


約3万本ともいわれるシロヤマザクラが豪華絢爛に咲き乱れる吉野山など、




日本全国の桜の名所の光景を楽しむことが出来るところ。
サザエさんのOPばりに、ちょっとした国内旅行気分が味わえました。
さらにさらに、もう一つ嬉しいのが、第二会場が展開されている夜桜コーナー。




現時点で、今年は日本各地で桜のライトアップの中止が決定しています。
今年はその分、山種美術館で夜桜を満喫くださいませ。


さてさて、出展作品の中で個人的に印象に残っているものをご紹介いたしましょう。
まずは、小茂田青樹の 《春庭》


小茂田青樹 《春庭》 1918(大正7)年 絹本・彩色 山種美術館


一見すると、うららかな春の光景なのですが、
よくよく見てみると、桜の枝がなんとも奇妙な感じです。
どことなく寄生獣のよう。
桜の樹の下には、なんとやらが埋まっていると言いますが。
もしかしたら、この桜が人間を捕まえ、そして、そのあとに。。。
自分で想像しておきながら、ゾッとしてきました。


続いては、菱田春草の 《桜下美人図》


菱田春草 《桜下美人図》 1894(明治27)年 絹本・彩色 山種美術館


何と言っても気になるのが、女性たちのヘアスタイルです。
一人だけではなく、全員が全員変。




一番左側の人は、バルーンアートで作ったプードルみたいだし。
センターの2人は、『&』 という文字みたいですし。
お互いがそれぞれ “変なヘアスタイル・・・w” と含み笑いをしているようにも見えます。


最後に紹介したいのは、渡辺省亭の 《桜に雀》


渡辺省亭 《桜に雀》 20世紀(明治-大正時代) 絹本・彩色 山種美術館


桜の木の枝に止まる3羽のスズメが妙にエモかったです。




「俺、スズメ辞めるわ」
「マジで?」
「辞めてどうすんだよ?」
「昔から鷹になりたかったんだわ。だから、鷹になれるよう頑張ってみようと思う」
「・・・・・そっか。お前なら、なれるかもな。頑張れよ」
「もし、お前が鷹になったらさ、その時は遠慮なく俺たちのこと食べろよ」
「お前ら・・・・・」


ちなみに、花より団子派の皆さまへ。
今回も山種美術館のミュージアムカフェ、
カフェ椿では、展覧会限定の和菓子が提供されています。




2個よりお持ち帰りも出来るそうですよ。


 ┃会期:2020年3月14日(土)〜5月10日(日)
 ┃会場:山種美術館
 ┃
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2020/sakura2020.html

~読者の皆様へのプレゼント~
“桜 さくら SAKURA 2020” の無料鑑賞券を、5組10名様にプレゼントいたします。
住所・氏名・電話番号を添えて、以下のメールフォームより応募くださいませ。
https://ws.formzu.net/fgen/S98375463/
なお、〆切は、3月29日です。当選は発送をもって代えさせていただきます。




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特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」

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3月13日から東京国立博物館でスタートする予定だった “特別展「法隆寺金堂壁画と百済観音」”




残念ながら、例のウイルスの影響により開幕が延期となっています。
現時点で開幕日は未定ではありますが、
来るその日に備えて、先日、プレス向けの内覧会が開催されました。


(注:館内の写真撮影は、特別に許可を得ております。)


展覧会のメインとなるのは、
世界最古の木造建築とされる奈良・法隆寺金堂・・・・・


《法隆寺金堂模型》 昭和時代 20世紀 法隆寺 [全期間展示]


その壁面に描かれていた壁画です。
これらの壁画は、創建当時、つまり約1300年前に描かれた貴重なもの。
ところが、1949年に発生した火災により、壁画の大半が焼損してしまいました。
こちらは、その焼損後の姿を忠実に再現した精巧なレプリカ↓




すっかりモノクロの画面となってしまっていますね。。。


そういうわけで、今回の展覧会では、
法隆寺金堂壁画の実物は展示されていませんが。
代わりに、焼損前に描かれた貴重な模本の数々が紹介されています。
例えば、山梨県の放光寺に伝わるこちらの模本。


《阿弥陀浄土図》 祐参筆 1852年 山梨・放光寺蔵 [全期間展示]


実は、現存する金堂壁画の中で、最も古いとされるもの。
幕末に模写されたのだそうです。

また例えば、明治時代に桜井香雲が模写したこちらの模本。




壁画全十二面を記録した最古の模本だそうで、
放光寺の模本とは違い、傷や剥落部分も忠実に再現されているのが特徴です。

さらに、興味深かったのが、昭和時代に制作されたこちらの模本。




昭和14年。法隆寺壁画保存協会が発足。
荒井寛方、中村岳陵、橋本明治、入江波光といった、第一線で活躍する日本画家が、
それぞれ長となり、メンバーを率いて、4班体制で金堂壁画の模写が進められることに。
しかも、当時は軍事用だった蛍光灯を用いて、
傷や剥落部分だけでなく、色彩も忠実に模写したのだそう。
日本文化財保護史に残る一大プロジェクトです。
ただ、残念なことに、全十二面の模本は実現できなかったとのこと。
戦争の激化によるプロジェクトの遅れにくわえて、法隆寺金堂の火災。
それらの災難と比べたら、ウイルスの影響で展覧会の開幕が、
1ヶ月伸びてしまうくらい、どうってことないような気がしてきました。


さてさて、展覧会のもう一つのメインが、
かつて法隆寺金堂に安置されていた仏像たちです。
中でも目玉となるのは、《観音菩薩立像(百済観音)》




1997年にルーヴル美術館で公開されて以降、
法隆寺から出たことがないという貴重な仏像です。
今回は、実に23年ぶりの東京公開。
はるばる法隆寺から上京してきたところ、
まさか無観客状態の日々を過ごすことになろうとは。
さすがの百済観音も予想していなかったでしょう。

と、それはさておき。
特徴的なのは、何と言っても、そのプロポーション。
像高は、209cm。小顔でスリム。
モデル体型であるのを通り越して、横から見ると・・・・・




もはやエヴァンゲリオンに近いものがあります。
まさに、人を超越した姿。
神秘的で神性すら感じられました (←神ではなく、仏ですが)。
また何よりも目を惹きつけられたのが、水瓶の持ち方。




ソッと。フワッと。
実に軽やかに水瓶を持っています。
その優美な姿に見蕩れるとともに、若干の不安感も覚えました。
もし、中身が入っているなら、
頸の部分をもっとしっかり握ったほうがいいんじゃないかな??
観るものにアンビバレントな感情を抱かせる仏像です。

ちなみに。
《観音菩薩立像(百済観音)》 は、微笑みを浮かべた表情も魅力の一つなのだそうですが。




肉眼では今ひとつよくわかりませんでした。。。
しかし、提供頂いた広報用画像では、その微笑みが確認できました。




思っていたよりは微笑んでいましたが、
思っていたよりは目が笑っていなかったです。
運転免許証の表情みたいでした。


なお、《観音菩薩立像(百済観音)》 の他にも、
金堂の本尊釈迦三尊像の左右に安置されている国宝の 《毘沙門天立像》 と、




国宝の 《吉祥天立像》 が特別に出展されています。


国宝 《吉祥天立像》 平安時代・承暦2年(1078) 法隆寺蔵 [全期間展示]
画像提供;奈良国立博物館(撮影:森村欣司)



彼らのパワーで、展覧会が一日も早く開幕しますように。
星星


 ┃会期:開幕日未定〜5月10日(日)
 ┃会場:東京国立博物館 特別4室・特別5室
 ┃
https://horyujikondo2020.jp/





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芸術家!歌詞穴埋めクイズ

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例えば、ジッタリン・ジンの 『プレゼント』 という曲。




この曲の歌詞の中には、
「あなたが私にくれたものシャガールみたいな青い夜」 というフレーズがあります。

例えば、Airの 『リヴ』 という曲。




この曲の歌詞の中には、
「くしゃみかみ殺した瞬間の顔が ピカソ、キュビスムってた」 というフレーズがあります。


さて、それを踏まえて、今回お届けするのは、
ある曲の歌詞の中に登場する芸術家の名前を当てるクイズ。
前後の歌詞から推理して、〇〇〇〇の中に入る芸術家の名前をお考えくださいませ。
(注:〇〇〇〇は、必ずしも作家名の文字数と一致しているわけではありません)

【第1問】 難易度スター

悲しきプロボウラー/ 桑田佳祐 & The Pin Boys (2020年)

さよなら涙
ハジき飛ばせよ

愛の旅路で迷子になって
夢の途中で叩き起こされ
まるでこの世は〇〇〇〇の叫び
弱音吐いたり泣いたら負けさ









(ヒント)
“まるで” の使い方にはやや疑問が湧きますが、
何はともあれ、「叫び」 といったら、もうこの人しかいないでしょう。








正解は・・・

ムンク

でした。




【第2問】 難易度スタースター

○○○○の汽罐車 -○○○○'s Steamroller-/山下達郎 (1991年)

虹色のシャンペインを
かたむける君の
見つめる絵は○○○○
おぼろげな汽罐車が走る
音も立て









(ヒント)
タイトルにすでに、その名前が使われています。機関車をモチーフにした絵画で知られる芸術家と言えば?
それにしても、シャンペインって・・・・・。発音がいいのか悪いのか。








正解は・・・

ターナー

でした。




【第3問】 難易度スタースタースター

たずねびと/さだまさし (1980年)

いつもの様に この店のカウベル
鳴らして ドアを開いて
狭いカウンター とまり木にすがれば
黙っていても出てくるアメリカン それから
ほの暗い柱の陰に
○○○○のおなじみのポスター









(ヒント)
確かに、この芸術家のポスターは、喫茶店によく飾ってあるイメージがあります。








正解は・・・

ロートレック

でした。




【第4問】 難易度スタースタースタースター

Looking for yourself/夏木マリ (2007年)

昔 〇〇〇〇って絵描きがさ
6才でコック7才でナポレオンだって!
そんなことってヤツは本物さね
天才じゃないの でしょ あたしたち
だから 行き急ぐなってもんよ?!









(ヒント)
「6才の時、コックになりたかった。
 7才の時、ナポレオンになりたかった。
 そして、私の野心は、それ以来着実に成長し続けている」
という彼の言葉を歌詞にしたものと思われます。








正解は・・・

ダリ

でした。




【第5問】 難易度スタースタースタースタースター

ピアニッシモで…/久保田早紀 (1984年)

壁には○○○○ 枯葉色の森
あなたのひざに 頬杖ついてみる
束の間 男と女になるのは
明日にしましょう 白い部屋で









(ヒント)
人物や静物以外にも、風景を描いてはいますが。
枯葉色の森を描いているイメージは、そんなにありませんでした。
山はよく描いていますが。








正解は・・・

セザンヌ

でした。




【第6問】 難易度スタースタースタースタースタースター

金の月/美川憲一 (2012年)

外は居待 (いま) ちの 金の月
満つれば欠ける 金の月
あんた奪って 死ぬのもいいと
○○○○の絵を見て おんなは泣いた









(ヒント)
曲全体に激しい情念が渦巻いています。
そういえば、この画家の人生にもさまざまな情念が渦巻いていますね。








正解は・・・

(竹久)夢二

でした。




【第7問】 難易度スタースタースタースタースタースタースター

酸素/BURGER NUDS (2017年)

虎ノ門辺りの オーセンティックバーで
「月の鼻水」っていう名のちょっと高めのカクテル飲みに行こうよ
さっきから○○○○の絵みたいなバカ顔下げて
地下鉄を待ってるアイアンマン 中国から来た可愛い子達









(ヒント)
「バカ顔」 とは、かなり辛辣な言い回しですが。
まぁ、あながち、そう外れてもいないような・・・。








正解は・・・

アンリ・ルソー

でした。




【第8問】 難易度スタースタースタースタースタースタースタースター

あのひとが帰る朝/あべ静江 (1973年)

迷わないわ もうわたし
離れてみて
愛を......愛を 知ったのよ

○○○○の絵を 壁に飾って
あなた好みに なったでしょうか









(ヒント)
1番の歌詞では、「長くのばした 私の髪は  あなた好みに なったでしょうか」 でした。
ショートヘアよりはロングヘア好き。
そんな “あなた” が壁に飾っていそうな画家を考えましょう。
・・・・・・って、そんなヒントでわかるわけがないですよね。
1番の歌詞から考えると、○の中には4文字が入りそうですよ。







正解は・・・

ユトリロ

でした。




【第9問】 難易度スタースタースタースタースタースタースタースタースター

ペイパー・ドリーム/山口百恵 (1980年)

ひとり色が違う夜の中で
青いジープが 二人を誘う
マストで叫ぶカモメにも
優しくなれるのは不思議ね
夢に触れる指先
二人だけの旅へと
○○○○の風が
肌の中までしみる









(ヒント)
「○○○○の風」 もよくわからないですが、
それ以前に、全体的に状況がよくわからないです。
完全にシュルレアリスムの世界ですが、
○○○○に当てはまるのは、シュルレアリスムの画家ではありません。
個人的な見解ですが、山口百恵のアンニュイな雰囲気とは通ずるところがある気がします。







正解は・・・

ローランサン

でした。




【第10問】 難易度スタースタースタースタースタースタースタースタースタースター

イミテーション・コンプレックス/井上陽水 (2002年)

君も参加して喧嘩
恋するたびに むしろ罪を帳消しに 解り合えるまで瞑想
悲しみの果て 身に余るラブロマンス
悶え苦しむ○○○○
恋は全部、イミテーション









(ヒント)
何度も歌詞を読み直してみましたが、
井上陽水の意図が全く汲み取れませんでした (汗)
ちなみに、この歌詞は3番の歌詞。
1番と2番の同じところにはそれぞれ、
「レストラン」 「チャイナタウン」 のフレーズが入っています。
「レストラン」 に近いっちゃ近いかも。








正解は・・・

レンブラント

でした。



ということで、出題はここまで!
10問中何問正解できましたか?
3割でも正解できれば立派なものです。




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