先日10月1日に、約1世紀ぶりに往年の姿を取り戻した東京駅丸の内駅舎。
約5年半に渡って工事が続けられていたドームの内部も、この通り↓
・・・と、この大々的なニュースの陰に、すっかり隠れる形で (?)
2006年より一時休館を続けてきた東京ステーションギャラリーも、10月1日に再開!
今回のリニューアルオープンは、単なる再開に留まらず。
パワーアップしたリニュアルオープンとなっていました。
まず何と言っても、スペースがパワーアップ。
新築部分と、赤煉瓦の壁の展示室という旧来の展示室を織り交ぜた3階建て構造に大変身!
そして、場所も移転し、丸の内北口改札に直結する位置に!
駅から徒歩0分の場所に位置することから、
『日本一アクセスのしやすい美術館』 であることは疑いようのない事実です。
さて、そんな東京ステーションギャラリーでは、東京駅復原工事完成記念展として、
“始発電車を待ちながら 東京駅と鉄道をめぐる現代アート9つの物語” が開催中。
こちらは、本城直季さんや、
《small planet tokyo-station》
秋元さやかさんをはじめ、
《地をうごく 山形 2012 4月17日~5月3日》
8人と1組の現代アーティストが、
『鉄道』 もしくは 『東京駅』 をテーマに、新作を発表する美術展です。
『鉄道』 をテーマにした現代アーティスト展と聞いて、
鉄道模型用の線路を使った 《10番目の感傷(点・線・面)》 でお馴染みのクワクボリョウタさんの名前が、パッと浮かびましたが。
そんな僕の期待に応えるように (←?) 、
今回の美術展には、ワクボリョウタさんの新作 《Lost #8(tokyo marunouchi)》 が出展されていました。
それから、『鉄道』 をテーマにした現代アーティスト展と聞いて、
プラレールを使ってスケールの大きなインスタレーション作品を作るパラモデルの名前も、パッと浮かびましたが。
またまた、そんな僕の期待に応えるように (←??) 、
パラモデルの新作のインスタレーション 《パラモデリック・グラフィティ》 が発表されていました。
(美術展の初っ端に、この空間が飛び込んできますので、インパクトは抜群ですw)
そんなわけで、いい意味で予想通りで、期待を裏切らない美術展でした。
もちろん、僕が予想していなかったアーティストの作品にも出会えたわけで。
その中でも特にヤマガミユキヒロさんという方の作品が、自分的にはツボ。
こちらの 《platform no1/no2》 という作品は、一見すると写真のようですが。
実は、細密に描かれた鉛筆画。
そのモノクロな鉛筆画をスクリーンにし、
同じ位置から撮った映像を映し出すという新しいタイプの作品です。
「2度手間じゃね?」 と思える、このまどろっこしいほどの行程が、
これまでに観たことのない世界観を生み出していました。
この 《platform no1/no2》 以外にも、
東京駅の構内を描いた 《little trip》 と東京駅の丸の内駅舎を描いた 《東京駅の眺望》 が出展されていました。
この3点のヤマガミユキヒロさんの作品が観られただけでも、行った価値が大いにありました。
ちなみに、 《東京駅の眺望》 は、工事中の丸の内駅舎を描いているため、
美術展の会期中に、復元ver.に変わるとのこと。
来年2月24日の会期終了までに、もう一度くらい訪れてしまいそうです。
美術展としては、アーティストのチョイスが絶妙ですし、
作品自体も面白く、何も文句のつけようがないのですが。。。
美術作品に対する解説が、ほとんど無かったことは、改善の余地がありそうな気がしました。
おそらく、秋元さやかさんの作品は、解説がなければ、
何を表しているものなのか、ほとんどの方が理解できない気がします。
それと、スタッフさんの気合が空回りすぎていたのも気になりました (?)
例えば、クワクボリョウタさんの作品を観賞している際に、
「この後、○○に注目ですよ!」
と、ネタバレ気味の声掛けをしていたり。
芝川敏之さんの作品の前では、
「これって、○○を表しているんですよ」
と、観ていたお客さんに話しかけ、
「あ、そうなんですね。どうやって、これを作ったんですか?」
と聞かれると、
「それは、私はわかないので、聞かないでください」
と、返し、
「・・・・・・。」
変な空気が生まれていました。
まだまだ、東京ステーションギャラリーは、始発が進行したばかり。
今後の運行が、より快適なものになることに期待です。
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始発電車を待ちながら
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新・無料で観れる 美術百選 《總持寺(東京都足立区)》
“無料で観れる 美術百選” の終了から約1ヶ月― 。
3年半にも及ぶチャレンジを終え、解放感を味わえると思いきや・・・。
僕は悩んでいました。
「果たして、僕は、無料で観れる美術作品に、すべて出合ったのだろうか?」
と。
「まだ、まだ見ぬ無料で観れる美術作品があるのではなかろうか?」
僕の無料で観れる美術作品を探す旅は、まだ終わっていないような気がしてなりません。
そこで、僕は、再び立ち上がりました!
『無料で観れる美術作品を、あと100点紹介しよう!』
この使命を達成するため、またまた走り始めます!
・・・というわけで、威勢よく走り始めたのは、いいですが、どこに行きましょう??
今回は、 “新・無料で観れる 美術百選” の記念すべき第1回目。
門出を祝うに相応しいビッグネームの無料で観れる美術作品に出会いたいところです。
過去100回に登場していないアーティストで、
なおかつ第1回目に相応しい超大物と言えば、彼しかいないでしょう!
ライフ誌が選んだ “この1000年で最も重要な功績を残した世界の人物100人” に唯一選ばれた日本人。
そう。葛飾北斎です。
無料で観れる葛飾北斎の作品はないものか。
我々スタッフ (←?) が一生懸命、一生懸命探しました。
そして、無料で観れる葛飾北斎の作品が見つかりましたよ。
やってきたのは、東武大師線大師前駅。
ちなみに、東武大師線は、西新井駅と大師前駅しか無い単線です。
こちらの駅に降り立ったのは、初めて。
写真だけ見ると、なんだかパリのようではないですか? (注:実際は、足立区です)
駅を出ようとした時、衝撃の光景が!
自動改札じゃない!しかも、改札に誰もいない!!
まさかまさかの無人駅。
前言撤回。全然、パリのようではありません。
というか、東京のようでもありません。 (注:実際は、足立区です)
無人改札を抜けて、しばし、てくてくと歩いていくと、参道にぶつかります。
そして、この参道の先に待ち構えているのが、
總持寺。通称、西新井大師です。
川崎大師と並んで、関東三大大師に称される西新井大師。
僕が得た情報によりますと、
こちらの西新井大師に、なんと北斎の晩年最大級の肉筆画があるのだとか。
しかも!
その肉筆画を公開するのは、毎年10月第1土曜日だけなのだとか。
さらに言えば、公開時間は午前10時から午後4時まで。
つまり、一年365日のうち、たった6時間しか公開されないという幻の無料で観れる美術作品なのです。
僕が訪れたこの日は、2012年10月6日。
スケジュール案内板 (?) にも、きちんと “北斎会” の文字が書かれています。
超レアな作品との対面に、ドキドキワクワクが止まりません。
もし、今日を逃せば、来年まで待たなくてはいけないのです。
荒くなった息を整えて、いざご対面!
新・無料で観れる 美術百選 001 葛飾北斎 《弘法大師修法図》
モチーフも迫力がありますが、
単純に縦150cm横240cmという大きさも迫力がありました。
これまでに数々の北斎作品を目にしてきましたが、そのどれよりも圧倒的に大きかったです!
それに、毎年6時間しか公開されないだけあって、保存状態も最高!!
もしかしたら、美術館でお金を払って観た北斎作品の数々よりも、
今回、西新井大師で観た 《弘法大師修法図》 のが感動は大きかったかもしれません。
これだから、無料で観れる美術作品の旅はやめられません。
無人駅に着いたときは、どうなることかと思いましたが (笑)
ここまで来た甲斐はありました。
西新井大師さん、ありがとう!
また来年!
<おまけ>
西新井大師に安置されていた謎すぎる地蔵です↓
塩にまみれた塩地蔵。。。
塩キャラメル、塩麹と、食品界には、塩ブームが沸き起こっていますが。
まさか、地蔵界にも塩ブームが (笑) ?!
ともあれ、西新井大師に行けば、この塩地蔵も、もれなく無料で観れます。
<無料で観れる美術 データ>
總持寺
住所:東京都足立区西新井1-15-1
アクセス:○東武大師線「大師前駅」より徒歩5分
この美術室を盛り上げるワンクリックも、無料で出来てしまいます。
歴史を見てきたボタンたち ~精巧・華麗・ポップ~
先日初めて訪れて以来、すっかりお気に入りの美術館の一つとなったアクセサリーミュージアム。
夏休み期間が終わったとのことなので、再び足を運んできました。
常設展示されたアクセサリーとは、二度目ましてですが。
それでも、前回と変わらず、質、量ともに大満足!
この感動は、もはやアクセサリーミュージアムでは、デフォルトのようです。
さてさて、前回訪れた時、企画展示室は、とんぼ玉で埋め尽くされていましたが。
今回訪れた時には、企画展示室が・・・
たくさんのボタンで埋め尽くされていました!
その数、なんと約600個!!
さらに驚くなかれ。
その約600個のボタンは、すべて南畝隆顕さんという方のコレクション。
大学を卒業してすぐの春、初めて訪れたニューヨークにて、
2個のボタンと出会ったのがきっかけで、ボタンコレクターになったのだそうです。
(注:ボーンコレクターではありませんw)
もちろん、一口にボタンと言っても、その形や大きさは様々。
すべてを集めていたら、キリがありません。
そこで、南畝さんは、最初に購入した2個のボタンと同じ、
“直径1インチ” のボタンだけをコレクションすることを決めたのだとか。
ちなみに、南畝さん曰く、
素材の扱いの面白さや意匠 (配置やサイズバランス) の素晴らしさが、
最も顕著に表れるサイズが、直径1インチなのだそうです。
確かに、そう言われて観てみると。
これ以上小さいと、デザインの幅が制限されそうですし。
これ以上大きいと、自由度は高くなるものの大味になりそうですし。
1インチというサイズは、これ以上でもこれ以下でもない絶妙なサイズである気がします。
今回の展覧会では、そんな南畝さんの1インチボタンコレクションを、
素材 (画像は、僕のイチオシの “ハードラバー” 製のボタン) や、
時代 (画像は、 “ヴィクトリアン期” のボタン) 、
そして、テーマ (画像は、 “花” がテーマのボタン)
など、 『アメトーーク』 のように、さまざまな “くくり” で、展示しています。
一つの “くくり” の中に、いろんな表情のボタンがあるので、
それぞれを、じっくり見比べていると、時間がいくらあっても足りません (笑)
ボタンのサイズは、1インチなのに、楽しみ方は、無限大。
“歴史を見てきたボタンたち ~精巧・華麗・ポップ~” は、12月4日まで。
最後に。
たくさんの美しい1インチボタンに交じって、
なぜか1枚だけ展示されている謎のエッチングを発見!
どうやら描かれているのは、18世紀のオシャレ男子とのこと。
上の画像にあるような鏡面仕上げのボタンを服に付けたなら、
女子なんて、メロメロだぜ!
・・・の図。
いや、メロメロっていうか、単に眩しいだけでは (笑) ?
いつの時代も、男子のモテ願望は、果てしない。
1インチのボタンもオススメですが、美術ブログのランキングに協力出来るボタンもオススメです。
空想動物の世界展
龍に、ペガサスに、ガネーシャに。
今、様々なモンスターが、古代オリエント博物館に大集合しています。
ハロウィンの季節にピッタリの “空想動物の世界展” は、11月11日まで。
僕も、モンスターは好きな方ですが、
世の中にも、モンスター好きの方は、意外に多いらしく、
古代オリエント博物館にしては (←失礼!) 、平日でもお客さんで賑わっていました。
確かに、 《ケルベロス小像》 や、
《辟邪》 (中国などで古来より信仰された、疫鬼を懲らしめ退散させる善神)
《ヴィヤーラ》 (古代インドのライオンに似た怪物)
・・・などなど。
純粋に造形が面白い作品が、たくさん展示されていました。
個人的なお気に入りは、シリアで出土したとされる 《魔除けの眼》
効果無さそう~ (笑)
これで退散する “魔” なんて、たかが知れています。
それから、こちらのモンスターもお気に入りに。
破壊の神シヴァが第三の目から生み出した怪物・キルティムクハです。
何でも、あらゆるものを食べてしまうモンスターだそうで、
最終的には、自分の体も食べてしまって、顔しか残っていないのだとか。
まさに、モンスター級の食欲と言えましょう (笑)
この他にも、たくさんのモンスターが次から次へと登場して、
モンスター好きとしては、テンションが上がりっぱなしだったのですが・・・あれっ?
美術館の展示室の残り半分は、“空想動物の世界展” ではなく、
なぜか、モンスター関係なしの古代オリエントの器の展示。
そもそも、そんなに広くない古代オリエント博物館の展示室。
その半分のスペースでしか、 “空想動物の世界展” が開催されていないとは・・・。
思っていたより、小規模な展覧会に、ちょっとガッカリしました。
ただ僕は、ガッカリするくらいで済んでいましたが。
会場では、 「これだけ?!」 と監視員に詰め寄っているお客さんがいらっしゃいました。
あのお客さんもまた、モンスターでした。
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深沢紅子展 野の花によせて
人は、素晴らしいアートに出会うと、
「なんだ、これは!」
とか、
「全俺が泣いた」
とか、
「なんも言えねえ」
とか、様々な反応で、感動を覚えます。
そんな心が揺れ動くアート作品は、本当に素晴らしいものですが。
たまには、大きな感動こそありませんが、
日々の生活でブレてしまった心が、ぴたっと凪状態に戻るようなアート作品は、いかがでしょうか?
もし、そんなアート作品を求めているのでしたら、
武蔵野市立吉祥寺美術館で開催中の “深沢紅子展 野の花によせて” をオススメいたします。
こちらは、生涯を通して花を描いた女流画家・ 深沢紅子 (1903~1993) を紹介する美術展。
全国的な知名度はないですが (←失礼) 、彼女のファンは少なくなく、
郷里である盛岡と毎年避暑で訪れていた軽井沢に、それぞれ個人美術館があるそうです。
今回の美術展は、軽井沢の深沢紅子野の花美術館の協力のもと、
《ワスレナグサ》 や、
《エゾカワラナデシコ》 、
《テッセン》 など、
晩年の深沢紅子が野の花を描いた水彩画の数々が紹介されていました。
どの野の花の絵も、かよわく品の良さが滲み出ている作品ではありましたが。
植物図鑑のように精確な絵というわけでも、
色彩が、ハッとするほど美しいというわけでもないので、
アートに感動や面白さを求める人には、少々物足りなさを感じるかもしれません。
しかも、描かれているのは、バラや桜といったメジャーな (←?) 花ではなく、
ビナンカズラやハクチョウゲ、フシグロセンソウ…といった馴染みのない野の花が大半。
モチーフにすら、少々物足りなさを感じるかもしれません。
深沢紅子さんの世界は、決してアートの本筋ではないでしょうが。
こういった作品も含めて、アートなのだと、実感しました。
普段、味の濃いアートに慣れてしまった人も、
たまには、こうした滋味深いアートを味わってみてはいかがでしょうか?
入館料も100円と大変に優しい価格です。
ちなみに、展示に対して、一つだけ提案させてもらえるのならば。
今回の出展作品のほとんどが、水彩画で、
鑑賞者の目線の高さに合わせて、展示されていたのですが。
展示作品の中には、野の花を描いた屏風絵もあり、
その屏風絵は、高さの関係で、しゃがむか中腰で観なければなりませんでした。
・・・が、描かれているのが、野の花だけあって、
そうやって観賞したほうが、かえって自然に感じられたのです。
思い切って、野の花の水彩画を、足もと近くに展示してしまった方が、良かったのでは?
(↑かなり斬新な展示方法ですがw)
それと、調子に乗って、もう一つ提案させてもらえるならば (笑)
野の花をモチーフにした作品に交じって、深沢紅子の描いた油彩画も展示されていたのですが。
《縞のブラウス》
それらは、イマイチだったので、無くてもよかったです。
(↑だいぶ調子に乗った提案です)
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第三十五話 国宝ハンター、忘れる!
~前回までのあらすじ~
国宝が1件。
国宝が2件。
国宝が3件。
・
・
・
国宝が248件。
国宝が249件。
これまでに、ハンティングしてきた国宝の数は、249。
・・・ん?本当に、249??
(お詫び)
前回の国宝ハンターで、
「<次回予告>
次回は、いよいよ250件目となる記念すべき国宝。
スペシャルな国宝を求めて、国宝ハンター、ついに九州に初上陸!!」
と、大々的な予告をしたのですが。
250件目の国宝ハンティングを目前に、
パソコンに溜まった国宝の写真を整理していたところ・・・
2012年8月26日に、 《紙本著色華厳宗祖師絵伝〈/(華厳縁起)〉》(ジャンル:絵画) を観ていたことが発覚しました。
観たことを忘れていた自分の失敗を、あえて棚に上げますが (笑)
「もっとインパクトがある国宝だったらなーーー」
というわけで、前回の国宝ハンターで紹介した 《紙本墨画山水図〈雪舟筆/〉》 が、
249件目の国宝でなく、実は、記念すべき250件目の国宝だったようです。
煽るだけ煽って、こんなオチですいませんでした。
決して、 『芸能☆BANG+』 のような演出をしたわけではないのです (>_<)
九州に行く予定は、変わりはないのですが。
それを紹介するのは、251件目でも252件目でも、もはや同じこと (笑)
そこで、今観られる国宝を、時間があるうちに観に行ってしまうことにしました。
やってきたのは、土浦駅。
自宅から土浦駅まで、片道1時間半。
電車に乗ってるだけで、ちょっとヘロヘロです。
その土浦駅から、徒歩で15分。
土浦城跡 (亀城公園) に到着しました。
本丸は無いのに、西櫓と東櫓だけは再建されている公園です。
そして、何故かニホンザルもいる公園です。
この公園の脇にあるのが、土浦市立博物館。
何の変哲もない (←失礼!) 市立の博物館に見えますが。
実は、ここに2つしかない茨城県の国宝のうちの1件があるのです。
その国宝が公開されるのは、毎年10月上旬だけとのこと。
それでは、早速、中に入ってみましょう。
入館料は・・・えっ?
105円って・・・何故に消費税価格(笑)
美術館で5円のお釣りをもらうという初体験に戸惑いつつ、いよいよお目当ての国宝のもとへ。
《短刀〈銘筑州住行弘/観応元年八月日〉》(ジャンル:工芸品) です。
これまで数々の国宝の刀を観てきましたが、いまだに価値がよくわからない僕ですが。
今回は、ちゃんとこの刀の鑑定書である折紙 (“折り紙付き” という言葉の語源) も展示されています。
さて、この折紙には、 『代五百貫』 とあります。
調べてみたところ、江戸時代の貨幣価値を現代の価値に換算すると、一貫≒15万円だとか。
ということは・・・な、な、7500万円!!
そんな高価な刀が、105円で見れるとは (笑)
今現在の国宝ハンティング数 251/1086
国宝ハンターは、ランキングにも挑戦中
マリー・アントワネット物語展
そごう美術館で開催中の “マリー・アントワネット物語展” に行ってきました。
行く前から、薄々予感はしていましたが・・・。
会場内のお客さんの9割が、女性。
それも、おそらく、ベルばら世代の女性 (笑)
それに加えて、マリー・アントワネットのイメージに合わせて演出されたゴージャスでセレブリティな展示空間。
アラサー男子の僕には、なかなかアウェーな美術展でした。。。
とは言え、僕が感じた居心地は、さておきまして。
展覧会としては、予想していたよりも、遥かに面白い内容でした!
正直なところ、僕は、この美術展に対して、
「どうせマリー・アントワネットが所持していた品々を、これみよがしに見せる展覧会なんだろうなァ」
と、勝手なイメージを抱いていたのですが、
実際の展覧会は、そんな薄っぺらい内容のものではありませんでした。
確かに、マリー・アントワネットが所持していた扇子や、
時計なども展示されていましたが。
今回の展覧会のメインとなるのは、マリー・アントワネットその人。
彼女が、どういう人間で、どういう生き方をし、どのようなイメージを持たれ、
そして、どのような最期を迎えたのかを、客観的に浮き彫りにした展覧会でした。
マリー・アントワネットと言えば、
「パンがなければケーキを食べればいいじゃない?」
というKYな発言をした女王というイメージしかなかったですが、
今回の展覧会を通じて、真実のマリー・アントワネット像を知れた気がします。
さてさて、展覧会に行けば、より詳しくマリー・アントワネットの人生がわかりますが。
こちらのブログでは、マリー・アントワネットの人生を、駆け足でご紹介していきましょう。
まずは、14歳のマリー・アントワネットから↓
ハプスブルグ家の皇后マリア・テレジアの下から2番目の子として生まれたマリー。
わずか11歳にして、ルイ15世の皇太子との結婚が決められたのだそうです。
そして、このエッチングが描かれた年に、のちのルイ16世と結婚。
フランス国民が、マリーの美しさに熱狂したとのことですが、
それに反して (?)、ルイ16世のビジュアルは・・・。
王位についている時に、このように描かれるのですから、
実際は、もっと “へちゃむくれ” だったに違いありません (←失礼!)
しかし、このルイ16世。
見かけによらず (?) 、手先は、かなり器用だったそうで。
会場には、ルイ16世が、妻のマリーに贈ったとされる自作の時計のねじが展示されていました。
とても王様が作ったものとは思えない精巧な出来でした。
さてさて、美女と珍獣カップルゆえに (?) 、
マリーとルイ16世の間には、結婚後7年も夫婦生活は無かったそうですが。
マリーが23歳の時に、最初の子を妊娠。
フランス王室のしきたりに従って、その出産は、なんと・・・
完全公開で行われたのだとか!!
このしきたりに対するマリーのカルチャーショックぶりは、ハンパなかったのだそうです。
子供が出来るまで、遊びまくっていたマリーも、子供が増えるにつれて、良きママに。
その頃描かれた肖像画には、子供と一緒のものが多いのだとか。
公私ともに充実していたマリーに思えましたが、
宮殿の財政が次第に悪化、民衆は、その非をマリー一人に負わせ、糾弾するようになります。
その頃、描かれたマリーの風刺画が、こちら↓
完全に悪意の塊で描かれた絵です。。。
ヴィジェ・ルブランによって描かれた肖像画と比べてみると、
絵のモデルが同一人物とは、到底思えません。
そして、1789年。
フランス革命が勃発。
マリーが36歳の時に、国王一家はタンブル塔に監禁されてしまいます。
そして、翌年1793年の10月16日12時15分。
マリー・アントワネットは、ギロチンにより処刑され、37歳の短い生涯を閉じるのです。
今回の展覧会の最後を飾るのは、処刑台に向かうマリー・アントワネットの姿を描いた一枚。
《コンシェルジュリを出るマリー・アントワネット》 です。
毅然とした態度で、階段を上るマリーの後ろ姿に、震えるほど感動してしまいました。
彼女の激動の人生を、展覧会を通じて追体験してきただけに、その感動はひとしおです。
今回の展覧会は、この一枚を観るための展覧会だったと言っても過言ではありません。
さて、この展覧会には、もう一つの感動ポイントが。
それは、再現されたマリーのドレスの数々が展示された写真撮影可能なコーナー。
そのゴージャスで宮殿のような雰囲気に、思わず脳内で・・・
この曲がループ再生されました (笑)
まさに、皆が思い抱くお姫様のイメージそのままの世界観に、
ドレスを見つめる女性客の目が、少女のような目になっていたのが印象的です。
ちなみに、そのコーナーの中で、衝撃的なモノを発見!
これは、マリーの時代に上流階級の女性たちの間で流行ったとされる “軍艦ヘアスタイル”
当時のオシャレ女子たちは、こぞって、こんなヘアスタイルをしていたのだとか (笑)
ちょっと前に、ギャルの間で、 “名古屋巻き” が流行っていましたが。
この軍艦ヘアスタイルに比べたら、名古屋巻きなんて、だいぶ普通です。
「こんなヘアスタイルをしてみたい」
そんな奇特な方のために。
会場には、記念写真用のカツラが用意されています。
良かったら、被ってみては、いかがでしょう?
マリー・アントワネットの生涯を、
本物の美術品の数々で紹介するという展覧会そのものも面白かったですし。
美術館であることを忘れさせる、作り込まれた会場の演出も素晴らしかったです。
惜しいのは、ここがそごう美術館であったこと。
普通の美術館と違って、そごう内にあるため天井が低く、
どうしても宮殿という感じには、一歩及ばない気がしました。
限りなく、3つ星に近い2つ星。
たぶん今後の巡回先の美術館や博物館では、もっと素敵に感じられるに違いありません!
<巡回情報>
・愛媛県美術館 2012年11月29日(木)~ 2013年1月20日(日)
・沖縄県立博物館・美術館 2013年2月8日(金)~4月14日(日)
・福岡県立美術館 2013年4月27日(土)~ 2013年6月23日(日)
・兵庫県立美術館 2013年7月6日(土)~9月1日(日)
・岡山シティミュージアム 2013年9月11日(水)~10月27日(日)<予定>
最後に、個人的に印象に残った1枚。
こちらは、 《ノートル=ダム橋とシャンジュ橋の間でおこなわれた船乗りたちのゲーム》 です。
いつの時代も、こういうバラエティ番組みたいなことは盛り上がるのですね (笑)
パンが無ければ、美術ブログに協力すればいいのに
原鉄道模型博物館
今回、僕は、横浜に・・・
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
目的地は、こちら↓
横浜三井ビルディング。
エントランスには、鉄道をイメージしたパブリックアートが。
そう。こちらのビルの中には、
今年の7月10日にオープンしたばかりの鉄道に関する博物館があるのです。
その名も・・・原鉄道模型博物館。
こちらは、原信太郎氏の所蔵する鉄道関係コレクションと、
彼が製作・所蔵している世界一ともいわれる膨大な鉄道模型を一般に公開している博物館です。
そう聞くと、鉄ちゃんでない人は、
「マニアックそうなミュージアムですね。ハハハσ(^_^;)」
と、リアクションするのでしょうが (僕もそうでしたw)
実は、意外や意外。
なんとオープン55日目にして、来館者10万人を突破したという、隠れた超人気ミュージアムなのです!
それならば、アートテラーとして行くしかありません。
入館料の1000円を払って、まず博物館に足を踏み入れると、
そこには、原信太郎氏が制作した数々の鉄道模型が展示されていました。
中には、小6で作ったという最初の鉄道模型もあり、
その非凡な才能を、まざまざと実感させられました。
・・・と、ここで。
「原信太郎氏って何者??」
という方のために、簡単にご説明を。
原信太郎 (1919年生まれ) は、コクヨ元専務にして、世界的に著名な鉄道模型製作・収集家。
その生涯で制作した鉄道模型の数は、2000点を超え、
コレクションした鉄道模型の数は、6000点を超えるのだそうです。
また鉄道模型に留まらず、鉄道そのものが好きな彼は、
これまでに、国内の全線を制覇したのはもちろん、海外にも何度も鉄道旅行に出かけているのだとか。
さらに、
一番切符 (一番最初に発券された切符) のコレクションにも情熱を傾けており、
1933年に開通した帝都電鉄 (現・京王線) の1番切符は、手に入れるために前日から駅に並んだのだとか。
(しかし、実際に手に入れたのは、通し番号が2番だったそうで。
「なぜ、1番でないのか?」 と駅員に詰め寄ったところ、
「1番は上司のために取っておいた」 と回答され、猛抗議の末に、1番を譲ってもらったのだとか)
・・・とまぁ、一言で言ってしまえば、リアル電車男です (笑)
原鉄道模型美術館には、そんな原さんが制作・収集した鉄道模型が、多数展示されています。
ちなみに、この横浜にオープンするまでは、
シャングリ・ラ鉄道博物館として、自宅を非公開の博物館にしていたとのこと。
鉄道ファンなら一度は訪れてみたかった博物館が、
こうして一般公開されたわけですから、最速で来館者が10万人を突破するのも納得です。
さて、この原鉄道模型博物館の最大の目玉は、
こちらの “いちばんテツモパーク” 。
一番ゲージ (縮尺約1/32) の室内の鉄道ジオラマとしては、世界最大規模を誇るのだとか!
約310平方メートルの面積に広がった鉄道模型の世界は、
鉄道ファンならずとも、しばらく眺めてしまう魅力がありました。
その大きさもさることながら、朝から夜へとライティングが変化する演出や、
無料で貸し出してくれるオペラグラスなど、細やかな配慮がなされていて感激。
惜しむらくは、 「写真撮影が出来たらなァ・・・」 ということです。
(会場には、やたらと 『写真撮影禁止』 の文字が踊っていました)
また、こちらのジオラマは広がる部屋の隣には、
横浜の今昔を再現したHOゲージ (※)のレイアウトが広がっていました。
桜木町を模した駅があるので、走っているのは、京浜東北線。
自分が一番利用する電車が走っているということもあって、
小さいながらも、 “いちばんテツモパーク” よりも、僕はこちらのが観ていて楽しかったです。
(※ これが、どういう規格かは、よくわかりませんが。一番ゲージよりは、かなり小さかったです)
さて、そんな原鉄道模型博物館ですが、オススメ度としては、1つ星。
鉄道ファンでなくても、鉄道模型の奥深い世界は楽しめましたし。
世界最大級の鉄道ジオラマも、純粋に楽しめました。
しかし、原鉄道模型博物館に滞在中、終始、心にザワザワしたものが・・・。
というのも、
「小5で関西に一人旅に行ったとき、祖父から75円旅費を出してもらった」
(当時の銀行員の月収は、70円)
とか、
「子供の時に、祖母にねだって買ってもらったライオネル社製の鉄道模型が495円だった」
(当時の首相の月給は、450円)
とか、
「延べ380ヵ国に鉄道旅行に出かけた」
とか。
登場するエピソードが、どれもこれもお金持ちなエピソードすぎて、
貧乏人の僕には、心から、 “素晴らしいコレクションだなァ♪” とは思えませんでしたw
(↑心も貧しい)
実際、博物館内で、
「ま、金持ちの道楽ね」
というマダムの声を、何度も耳にしました (笑)
ちなみに、男性のお客さんは、
誰一人として、そんなことを言っていませんでした。
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Film:22 『カラヴァッジョ~天才画家の光と影~』
デレク・ジャーマン監督による 『カラヴァッジオ』 を取り上げましたが。
今回は、2010年に日本で劇場公開されたカラヴァッジョの映画を↓
■カラヴァッジョ~天才画家の光と影~
監督:アンジェロ・ロンゴーニ
撮影監督:ヴィットリオ・ストラーロ
出演:アレッシオ・ボーニ、クレール・ケーム、ジョルディ・モリャ
2007/イタリア/133分
「まず何よりも。
デレク・ジャーマン監督の 『カラヴァッジオ』 と違って、
きちんとカラヴァッジョの生涯が描かれていました。
カラヴァッジョ入門としては、ベストな映画だと思います。
・・・と、映画と言いましたが。
この映画が公開されたのは、実は、日本だけだそうで。
もともとは、イタリアで前後編に分けて放映されたドラマシリーズなのだとか。
しかし、それを知った上で、我が家のテレビで観てても、
「これは劇場で観たかったなァ~」
と何度も思ってしまうほど、映像美の冴える作品でした。
きっと本国イタリアでも、
「これは劇場で上映するべきだ!」
と、イタリア人の視聴者は思っていたのではないでしょうか。
さてさて、他の画家なら、いざ知らず。
カラヴァッジョと言えば、破天荒な人生で、お馴染みの画家。
(↑平成ノブシコブシの吉村なんてメじゃない)
暴力的なシーンも、たびたび登場しますし、
ベッドシーンも、たびたび登場しますし、男色シーンも、登場します。
“これって、イタリアでは、ゴールデンタイムで放映されていたの??”
と心配してしまうこと、しばしば。
一番心配になってしまったのは、カラヴァッジョが死刑執行を見学しているシーン。
罪人の女性が、死刑執行人の手によって、首を切り落とされるのですが。
思っていたよりも、普通に、首がボトリと落とされました (笑)
おそらく、あのシーンは、多くのイタリア人の子供に、トラウマを植え付けたことでしょう。
そんな風にカラヴァッジョの人生も、余すことなく描かれていましたが。
もちろん、画家としてのカラヴァッジョも、余すことなく描かれています。
代表作である 《果物籠を持つ少年》 も、
《ロレートの聖母》 も、
《聖ヨハネの斬首》 も。
エピソードを交えて登場しています。
カラヴァッジョ好きとしては、カラヴァッジョの絵が登場するたびに、
まだ実物を見たことのないカラヴァッジョ作品への想いが強まりました。
特に観てみたくなったのは、 《トカゲに噛まれた少年》
この絵の登場シーンは、コントのようで笑えました。
(おそらく、この映画で唯一笑えるシーン)
(星2つ)」
~映画に登場する名画~
《聖マタイの召命》
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ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展
こちらは、約230点ものルオーの作品を所蔵しており、
さらには、ルオー・ギャラリーという展示スペースを設けていることから、
“世界で唯一のルオーの美術館” を標榜してる美術館です。
そんなルオーの美術館だけあって。
これまでに、 “ルオーと風景” や、
“ジョルジュ・ルオー 名画の謎” など、様々な切り口のでルオー展を開催してきているわけですが。
現在、パナソニック 汐留ミュージアムでは、
『サーカス』 を切り口にした異色のルオー展が開催中。
サーカスをテーマにしたルオー作品は、もちろんのこと、
ルオーが当時観ていたサーカスのポスターやパンフレットまでも紹介しています。
“ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展” は、12月16日まで。
さてさて、ルオーと言えば、 “20世紀最大かつ最後の宗教画家” と評される画家。
それだけに、あまり、サーカスとルオーというイメージが結び付かなかったのですが。
《道化師》 や、
《青いピエロたち》 、
そして、 《踊り子と白い犬》
…と、意外にも、サーカスを題材にした作品を、たくさん残しているのです。
実は、ルオー作品の約3分の1が、サーカスを題材にしているのだとか。
まさに、 “ICIRCUS” な男です。
そんな “ICIRCUS” なルオー なパナソニック 汐留ミュージアム。
普段のルオー以外の美術展以上に、今回のルオー展には気合を入れているようで。
ただ単に、ルオーのサーカス作品を並べるだけでなく、
サーカスをイメージした展示空間の演出で、ルオーのサーカス作品の魅力を最大限に引き出していました。
正直に言ってしまうと、実は、そこまでルオーの作品が好きではない僕ですが (笑)
その僕からしても、今回のルオー展は、とても魅力的に感じました♪
楽しさと悲しさの交じったサーカス独特の雰囲気を、見事に表現した会場に拍手。
そこまでルオーの作品が好きでないこともあって、
僕自身は、今回のルオー点の演出ばかりに、どうしても目が向いてしまいますが。
ルオーが好きな人にとっては、
パリ市立近代美術館所蔵の 《タバランにて(シャユ踊り)》 や、
ポンピドゥー・センターが所蔵する 《うつろな夢》 、
ジュネーブに住むどなたかが所蔵する 《傷ついた道化師》
などなど、世界中から本邦初公開を含む貴重なルオー作品が拝めるとあって、
絶対に見逃せないルオー展と言えましょう。
ちなみに、個人的に、一番印象に残っているのは、
今回のルオー展のポスターにも使われている・・・
アサヒビール株式会社所蔵の 《貴族的なピエロ》
ルオーは、その生涯で多くのピエロを描いているそうですが、
4つボタンの衣装を身に纏ったピエロは、かなりのレアケースなのだそうです。
それはともあれ、このピエロ。
顔の雰囲気や全体的な体型から、はんにゃの金田に見えてきてしまいました。
「いや、俺、金田じゃねーし!」
そう切り返されそうな気がします (笑)
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鳥類の多様性~日本の鳥類研究の歴史と成果~
今年2012年は、何を隠そう、日本鳥学会が創設されてちょうど100年目の年なのです!!
・・・と言われたところで、全く馴染みのない日本鳥学会。
一体、どんな研究をしている学会なのか。
日本と世界の多種多様な鳥の標本を交えつつ、
その百年に渡る研究成果を、ざっくりと紹介している展覧会が、東京科学博物館で開催されています。
“鳥類の多様性~日本の鳥類研究の歴史と成果~” は、12月9日まで。
鳥学に親しみがない人にでも楽しめるように、
ところどころで、一般向けなトピックも紹介されていましたが。
基本的には、 『DNAバーコーディング』 に、 『生物種の分子系統』 に、 『保全生物学』 に…と、
鳥学を齧ったことがある人以上を対象にしたような小難しいトピックが多かった気がします。
鳥学に親しみがない人でも楽しんで学べるという展覧会では無かったかも。
さてさて、そう広くない会場に、これでもかというくらいにトピックが紹介されていましたが。
鳥学に親しみがない自分としては、最終的に印象に残ったトピックは、たったの2つだけ。
(↑鳥頭にもほどがあるw)
“ここ最近になって、鳥の分類が、大きく変わった!” ということと、
“一夫一婦制の鳥でも、繁殖相手に別の鳥を選ぶことはよくある” ということです。
仲がいい夫婦を 『おしどり夫婦』 と例えていましたが、
鳥は意外と浮気性と知ってしまった今、気軽に、 『おしどり夫婦』 という言葉は使えなくなりました (笑)
ただ、鳥学のお勉強的な側面は抜きにして。
様々な鳥の剥製を目にできたのは、純粋に貴重な体験だったように思えます。
トキの剥製をはじめ、様々な珍しい鳥の剥製が展示されていたので、
鳥にそこまで思い入れがない僕でも、それなりに驚きをもって展示を楽しむことが出来ました。
また数ある剥製の中で、もっともレアな剥製が、
こちらの山階鳥類研究所が所蔵するカンムリツクシガモの標本2点↓
レアと言われたところで、鳥学に馴染みのない人 (僕を含む) は、
「ふ~~~~ん。」
おそらく、こんな反応をしたことでしょう (笑)
しかし、鳥学を齧ったことがある人に、この剥製が展示されていることを伝えたなら、
カンムリツクシガモキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
と、狂喜乱舞してしまうほどの代物なのだとか。
というのも、カンムリツクシガモは、すでに絶滅してしまった鳥で、
その標本は、世界にたった3点しかないという貴重なものなのだそうです。
そのうちの2点を雌雄で所有しているのが、千葉県の我孫子にある山階鳥類研究所。
とりわけカンムリツクシガモの雄の方は、
世界でたった1点しかない標本ということもあって、貴重も貴重。
あまりに貴重なため、普段は、耐火性のキャビネットで、厳重に保管されており、
一般人はおろか、研究者にさえ、ほとんど公開しないという最高クラスの標本なのだとか。
そんな超超超レアなお宝が、何と何と、この期間だけ科博で普通に展示されているのです。
あまりに普通に展示されているので、最初は、普通に素通りしてしまいました (笑)
無知って、怖いですね(;^_^A
ただ、普段は公開されないという時点で、
《モナ・リザ》 や 《真珠の耳飾りの少女》 や 《ツタンカーメンの黄金マスク》 よりも、確実に貴重な展示品なのに。
対面しても、特に大きく感動しなかったのは、僕が鳥学に疎いからでしょう (笑)
無知って、怖いですね(;^_^A
せっかくなので、この展示を観た後に、
科博の常設展会場の鳥コーナーにも足を運んでみました。
たくさんの鳥の剥製が、ギッシリと並べられている様は、圧巻。
思った以上に見応えがありました。
特に気に入った鳥は、ヘキサン (ヘキサゴンじゃないですよ)
こんなにも綺麗な鳥がいるのですね♪
それと、ツッパリのコント衣装を着ているようにしか見えないカサドリ。
シロフクロウとイヌワシは、まるで漫才をしているような感じで並べられていました (笑)
ちなみに。
この展覧会を開催中の国立科学博物館を含む5つの施設で、
“鳥クイズ&スタンプラリー2012” なるイベントが開催中。
3つのスタンプを集めれば、グッズがもらえると聞いたので、
上野動物園にも足を運んで、3つのスタンプをゲットしてきました。
(国立科学博物館では、こちらの展示と常設展で計2つのスタンプをゲットできます)
3つのスタンプを集めると、もれなく・・・
4つの中から好きなキーホルダーを1つ選んで貰うことが出来ます。
僕は、左から2番目のハシビロコウのキーホルダーを貰いました。
お時間のある人は、是非チャレンジしてみてくださいませ。
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第三十六話 国宝ハンター、ぶらぶらする!
~前回までのあらすじ~
日本全国にある国宝を、その目に焼き付けるために、日々奮闘し続ける国宝ハンター。
前々回に、 「次回は、250件目のスペシャル!」 と予告しておきながら、
実は、カウントミスで、すでに250件目を見てしまっていたことが前回に発覚。
結果として、嘘をついた形になってしまって、申し訳ありませんでした。
私のことは嫌いでも、国宝のことは嫌いにならないでください
2012年10月。
私事ですが、父方の祖母の七周忌のために、長崎県の五島列島に行ってきました。
隠れキリシタンの島として、重要文化財の教会は、いくつもありましたが。
五島列島に、国宝はありませんでした。
では、長崎の本土に国宝は、いくつあるのかと調べたところ・・・3件あることが判明!
しかも、五島列島から船で長崎本土に向かうと、
その長崎港ターミナルの周辺に、3件の国宝がまとまって存在しているとのこと!
これは、行くしかない!!
というわけで、五島列島から船で、長崎県の本土へ。
こちらが、船から見た長崎県。
この景色が夜になると、 “世界新三大夜景” の一つになるのですね!
しかし、国宝ハンター的には、三大夜景よりも国宝。
夜まで待たずに、長崎県の本土を散策です。
まず、やってきたのは、こちら↓
現存する日本最古の木造教会 《大浦天主堂》 です。
「長崎には坂が多い」 とは聞いていたので、
ある程度の予想はしていましたが、その予想を上回る坂の上に 《大浦天主堂》 はありました。
しかも、坂の上には、さらに急な階段。
おばあちゃん泣かせな 《大浦天主堂》 です!!
では、早速、中に入ってみましょう。
(ここからは、撮影禁止です)
これまでに、建築ツアー等で、いくつかの教会の中に入ったことがありますが。
さすがに唯一の国宝の教会だけあって、内部空間の素晴らしさは、トップクラス。
丹下健三設計の東京カテドラル聖マリア大聖堂で感じたのと同じくらい敬虔な気持になりました。
いやぁ、本当に来て良かったです!
こんな無駄に可愛らしいベンチと、
コナンの謎のイベントさえ無ければ、もっと良かったです (笑)
《大浦天主堂》 を観た後は、
長崎県美術館や中華街、思案橋など、長崎ぶらぶらと歩き回りつつ、崇福寺へ。
こちらは、1629年に長崎の華僑の人々によって創建された寺院だそうで。
中国様式の寺院としては日本最古のものなのだとか。
一見すると、単なるトンデモ建築にしか見えない、こちらの寺院ですが (←失礼!)
なんと、この寺院の中には、2つの国宝があるのです!
一つは、この三門をくぐった先にある・・・
門。
門の先に、また門!
この門こそが、国宝の 《崇福寺第一峰門》 です。
2つ目にある門なのに、 崇福寺第一峰門とは、これいかに。
とりあえず、こちらの門の特徴は、複雑すぎる軒裏。
複雑すぎる軒裏とは対照的に、
描かれている装飾は、ヘタウマというか雑というか・・・ (笑)
ちなみに、門の裏には・・・
妙に可愛いコウモリの姿が♪
しかし、なんでまた、門にコウモリが?
浦澤直樹の 『BILLY BAT』 ??
さて、 《崇福寺第一峰門》 をくぐれば、国宝の 《崇福寺大雄宝殿》 がお目見えです。
特徴的なのは、なんと言っても、逆さに設置された擬宝珠。
これをギョーカイ用語 (?) で、 “宝珠付き垂花柱” というのだそうです。
おそらく、覚えたところで、ここ以外では使わない言葉でしょうけれども (笑)
せっかくの国宝の建築なのに、
狭い敷地にいろいろと作ってしまったため、サイドの建築との距離が近すぎる 《崇福寺大雄宝殿》
結果として・・・
隣の建物と雨どいを共有することになっちゃっています (笑)
こんなにも肩身の狭い国宝建築は、初めて観ました。
というわけで、長崎にある3つの国宝をすべてハンティング。
これにて、長崎完全制覇です!
今現在の国宝ハンティング数 254/1085
国宝ハンターは、ランキングにも挑戦中
東洋の磁器に憧れて
「せっかく長崎に来たならば♪」 と、長崎駅より電車に乗って、
ハウステンボス駅まで足を運んでみました。
こちらの駅を降りて、すぐに目の前に現れるのが、ハウステンボス。
・・・と、思いきや。
こちらは、ホテルオークラでした (皆騙されて、写真を撮っていましたw)
ハウステンボスは、ホテルオークラの先にありました。
せっかく来たのはいいですが、
帰りの飛行機の時間も迫っているので、そうゆっくりもしていられず。
5700円もする1DAYとくとく入場セット券は、とてもではないですが買えません(。>0<。)
そこで、ここから、さらにバスに乗って、
フリーゾーンへと向かうことに。
フリーゾーンとは言えども、オランダの街並みを堪能したり、
サウザンド・サニー号があったり、
わりと楽しむことが出来ました。
と、そんなフリーゾーンの中に、
ポルセレインミュージアムなる美術館を発見。
これは、アートテラーとしては、見逃すことが出来ません。
しかも、入館料は、400円とのこと。
ますます見逃すことが出来ません。
『ポルセレイン』 というのが、何なのか、よくわからないままに入ってしまいましたが (笑)
どうやら、 『ポルセレイン』 とは、英語で “磁器” とのこと。
17世紀中期より、ヨーロッパの貴族たちに愛された伊万里の磁器を中心に展示した美術館のようです。
館内は写真撮影OK。
伊万里焼自体は、これまでに何度も目にしていますが、
洋風の建築の中に、伊万里焼が並べられている様子は、なかなか新鮮です。
ちなみに、こちらの部屋の天井を飾るのは、マイセンのシャンデリア。
その豪華さに、思わずため息を漏らしてしまいました。
・・・と、ここまでは、それなりに感銘は受けつつも。
「観光地によくあるタイプの美術館だよなぁ」 と、高を括っていたのです。
ところが!
こちらの展示室に続くお部屋には、衝撃的な光景が広がっていました。
思わず目を見張った衝撃的な光景が、こちら↓
右も左も、全部が磁器。
こちらは、ドイツのシャルロッテンブルグ宮殿にあるという 「磁器の間」 を再現した部屋なのだとか。
ちなみに、この部屋に使われている磁器の数は、全部で3000点 (!)
悪趣味も通り過ぎると、震えるほどの感動を生むのですね!
この部屋を体験出来るだけでも、訪れる価値ありです。
・・・しかし、ハウステンボスを訪れる人は、
こういう美術館を求めて来ているわけではないので、ほとんど人が入っていなくて残念。
ハウステンボスでなく、どこか別の場所に、移転すればいいのに。
もちろん、 「磁器の間」 の先にも、
素晴らしい磁器は展示されています。
(とに~イチオシは、これ↓)
「磁器の間」 は、インパクト勝負。
じっくり個々の作品を楽しみたいなら、 「磁器の間」 以外の展示室で。
どちらも楽しめるのが、この美術館の最大の魅力です。
ちなみに、美術館のちょうど真ん中に当たるサロン室では、
“東洋の磁器に憧れて” というミニ展示が、11月11日まで開催中。
こちらは、フランスのシャンティーイ窯の 《色絵傘人物図壺》 や、
イギリスのチェルシー窯の 《色絵花鳥面取花瓶》 など、
東洋の磁器に憧れたヨーロッパ人が、東洋の磁器を模倣して制作した焼物を紹介した展示です。
どちらかと言えば、ヨーロッパを真似する側の日本人なので、
逆に、こんな風に真似されているものがあったかと思うと、ちょっと誇らしい気持ちになります。
「いやぁ、ヨーロッパに真似されるなんて、日本も捨てたもんじゃないね」
と、ご機嫌な気持ちで、美術館を出ると、そこは、ハウステンボス。
思いっきり、ヨーロッパを模倣した街並みでした。
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幻のゴッホ展
ハウステンボス内のポルセレインミュージアムが、
想像していた以上に面白い美術館だったため、すっかり当初の目的を失念していましたがf^^:
ハウステンボスまで足を運んだ真の目的は、こちら↓
「全52作品中、日本初公開なんと36点」 にして、
「自画像8点を一挙公開」 にして、
さらには、 「弟テオの肖像画を初公開!」 というトリプル日本初なゴッホ展。
その名も、 “幻のゴッホ展” を観るために、ハウステンボスへとやってきたのでした。
この美術展のポスターは、都内で何度か目にしていたのですが。
そのたびに、
「長崎は、遠いよなァ・・・」
「この美術展のために、ハウステンボスまでは足を運べないよなァ・・・」
と、諦めていました。
(東京で告知するなよ!)
まさに、僕にとっては、幻の “幻のゴッホ展” 。
ところが、ひょんなことから、長崎に行くことになって、
そして、時間的にも、ハウステンボスまで足を運べることになって。
まさか、この美術展を観る機会が巡ってくるだなんて、こんな展開を誰が予想していたでしょうか。
このタイミングで、七周忌を迎えてくれた天国のおばあちゃんには、感謝の気持ちでいっぱいです (←?)
さてさて、会場となるのは、ハウステンボス内にあるハウステンボス美術館。
オランダのベアトリクス女王陛下の住んでいる宮殿の外観を、
オランダ王室の特別の許可のもと、忠実に再現したパレスハウステンボス内にある美術館です。
外観の立派さに関しては、世界の名だたる宮殿美術館と肩を並べられるのではないでしょうか。
しかし、内部に関しては・・・(苦笑)
普通のホワイトキューブの美術館よりは雰囲気はありましたが、
東京都庭園美術館と比べてしまうと、 “まぁ、再現しただけ” な感が否めません。
ただ、美術館の内装は、ともかくも。
開館20周年記念として、東京や大阪などの大都市に巡回しない大規模なゴッホ展を開催するのは、とても立派。
2年前に東京で開催されたゴッホ展にも出展された 《グレーのフェルト帽の自画像》 をはじめ、
日本初公開となる 《自画像》 や、
同じく日本初となる 《肉屋の眺め》 など、
オランダのゴッホ美術館が誇る名画の数々を、
日本で一番オランダっぽい (?) ハウステンボスで堪能できるのは、至福の時間。
この感動は、ハウステンボスまで足を運ぶという苦難を経た人間にしか味わえません(笑)
もちろん美術展としても、興味深い内容になっていました。
ただ単に、ゴッホ美術館から借りたゴッホの作品を並べるのではなく、
「どのように描き始めたのか?」 や 「どんな色だったのか?」 のような質問形式のキャプションを用いて、
ゴッホの作品の秘密に迫るスタイルの美術展でした。
それゆえ、美術作品を観ているというよりも、
ゴッホの解説書を読んでいる感じに近かった気がします。
(↑これに関しては、賛否分かれるでしょうが。僕は、アリだったかなと思います)
そういうわけで、今回のゴッホ展では、
さまざまなゴッホ美術館の研究成果も併せて、展示されていたのですが。
その中でも、一番の発見が、こちらの絵に関して↓
これまで、ゴッホの自画像と思われていたそうなのですが。
20年にも及ぶ研究の末に、耳の形や、顎鬚の色から、
ゴッホではなく、弟のテオの肖像画であることが判明!
タイトルも、 《テオ・ファン・ゴッホの肖像》 に変更になったのだそうです。
ゴッホと思われていた絵が、そうではなく弟の絵だった…という事実も驚きですが。
正直なところ、その事実に辿り着くまでに、20年も要したということに驚きました (笑)
また、2年前に東京で開催されたゴッホ展では、
《ヒバリのいる麦畑》 というタイトルで紹介されていた絵が・・・。
研究の末、飛んでいるのが、ヒバリではなく、ヤマウズラであることが判明!
タイトルも、 《ヤマウズラの飛び立つ風景》 に変更されていました。
「・・・いや、そう言われても、ヒバリもヤマウズラも、どんな鳥かわからないし」
という僕のような人間のために、
会場には、ちゃんとオランダの博物館より借りてきたヒバリとヤマウズラの剥製も展示されていました。
2種の鳥の剥製を見比べてみると、全く似通っていない鳥であることがわかります。
ただ、その剥製の鳥と、描かれている鳥を比べても、
鳥素人である僕には、どっちの鳥なのだか、全く分からず。。。 (笑)
こういう細かいことを研究している人がいて、
美術の世界は成り立っているのだなぁ・・・と、作品とは別のところに感銘を受けました。
最後に、今回のゴッホ展で、個人的に印象深かった作品を、いくつかご紹介。
まずは、 《仰向けになった蟹》
どのようにして、蟹を仰向けにした状態で描こうと思い至ったのか、気になるところです。
仰向けにさせられた蟹が不憫でならない。
続いて、 《積み上げられたフランス小説》
色彩的には、あまりゴッホっぽくない一枚。
ただ、本の積み方の乱雑さに、ゴッホの性格が出ているような気がしました。
ラストは、ゴッホの代名詞であるヒマワリを描いた一枚。
日本初公開の作品と聞いて、期待していたのですが・・・。
「枯れてるのかよ!!」
思わず、三村風にツッコんでしまいました。
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没後120年記念 月岡芳年
こちらは、前後期に分けて約200点以上の月岡芳年作品を紹介する大回顧展。
ちなみに、月岡芳年の回顧展が、都内で開催されるのは、実に17年ぶりのことなのだとか。
浮世絵好きの方にはお馴染みの月岡芳年ですが。
浮世絵にあまり興味のない方にとっては、
「月岡芳年?誰??」
という人物でしょう。
そこで、まずは簡単に、月岡芳年についてご紹介。
月岡芳年 (1839~1892) は、幕末から明治期に大活躍し、 『最後の浮世絵師』 と称される人物です。
芳年の師匠に当たるのが、
近年人気急上昇中の浮世絵師・歌川国芳。
芳年の “芳” の字は、国芳から一字を頂いたものなのです。
(ちなみに、上の肖像画を描いたのは、月岡芳年です)
さてさて、月岡芳年と言えば、 「血みどろ絵」 で人気を博した浮世絵師。
「血みどろ絵」 とは、なかなか聞き慣れない美術用語ですが、
読んで字のごとく、血みどろで凄惨な絵を描くジャンルのことです。
例えば、芳年が描いた 「血みどろ絵」 を、いくつか紹介しますと・・・
(注:心臓の弱い方はご注意ください)
《英名二十八衆句 稲田九蔵新助》
《魁題百撰相 冷泉判官隆豊》
いやぁ、怖いですね。。。(iДi)
画像でも十分怖いですが、実物はもっと怖い。
というのも、血のりが、まるで本物のように見えるのです。
何でも、芳年は、わざわざ赤い顔料に膠をブレンドして、血のりのべったりとした感じを再現したのだとか。
いや、そこまでしなくて、いいですって (泣)
ただ、怖いことは、怖いのですが。
不思議と、厭な気持にはなりません。
残虐なシーンが登場するドキュメンタリーを観ているというよりは、
『キル・ビル』 や 『バトル・ロワイヤル』 のようなスプラッターアクションを観ている感じ。
あくまで、娯楽としての 「血みどろ絵」 という気がしました。
今回の月岡芳年展には、もちろん、そんな彼の 「血みどろ絵」 も展示されていましたが。
展覧会全体としては、 「血みどろ絵」 は2割程度で、
むしろ月岡芳年の風景画 (《東海道 名所之内 由比ヶ浜》)や、
武者絵 (《正清三韓胎児晋州城合戦之図》) 、
美人画 (《吾襦絵姿烈女競 和貴妹》) に、
妖怪画 (《和漢百物語 不破伴作》) などなど、
多彩なジャンルの芳年作品を展示することで、
月岡芳年のマルチプレーヤーぶりにスポットを当てていたように思えました。
さらに、今回の展覧会では、新発見されたという 《袴垂保輔鬼童丸術競図》 の下絵を紹介したり、
月岡芳年の戦争カメラマン的な一面を紹介するなど、
(描かれているのは、なんと西郷隆盛の切腹の場面!)
「血みどろ絵」 というイメージで凝り固まった月岡芳年の正しい姿を、
余すことなく紹介しようという意欲的な展覧会だったように思います。
ちなみに、僕のイチオシは、 《東名所隅田川梅若之古事》 。
水面に揺れる月の表現が、抜群に素晴らしい一枚です。
月岡芳年は、こういう風情のある絵も描けたんですね (←超上から目線!)
そして、もう一つ推したいのが、八百屋お七を題材にした 《松竹梅湯嶋掛額》
上下2枚でワンセットな浮世絵です。
まるで映画を観ているかのような臨場感。
なんともドラマチックな場面です。
映画ならば、確実にクライマックスシーンでしょう。
その最高の見せ場でのお七のこの表情。
セリフはなくても、すべてを表情が語っている気がします。
こんな表情を出来る女優さんは、そうそういないのでは?
浮世絵とは頭では分かっていても、名演技だなァと思ってしまいました。
さて、ここまで紹介した絵は、前期のものばかりですが。(前期は、10月28日まで)
後期は、11月1日から11月25日までの会期で開催されるそうです。
後期には、芳年の代表作にして、
あの夏目漱石が購入したけれど怖くなって処分したという逸話の残る・・・
《奥州安達がはらひとつ家の図》 が展示されるそうです。
怖いもの見たさで、後期も行かなくては!
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素晴らしきミュージアムショップの世界 商品番号69
レストランやカフェに行った時、こんなことありませんか?
食べ終わって、いよいよ会計という時に、誰が支払いをするかで揉めてしまうこと。
(注:写真は、マクドナルドです)
「ここは、私が・・・」
「いや、私が・・・」
「いやいや、私の方が・・・」
「いやいやいや、前回支払って頂いたので、今回は私が・・・」
と、無限ループになってしまうことも、しばし。
そんな状況を打開するためにオススメのミュージアムグッズがあります。
それが、こちら↓
フレンチ・カンカンの脚形をしたルーレット (500円) です。
こちらは、現在、パナソニック 汐留ミュージアムで開催中の “ジョルジュ・ルオー アイ・ラブ・サーカス展” で展示されている…
《フレンチ・カンカンの脚形をしたルーレット》 の復刻版。
使い方は、簡単。
テーブルの真ん中に、このルーレットを置いて、
指で強く弾くだけ。
すると、くるくるとルーレットが回り始めます。
そして、止まった時に、
足の先が向いていた席に座っていた人が、お支払い。
ゴチになります!
実は、こんな遊びが、100年前のパリのキャバレーで大流行していたのだとか。
100年後の東京でも流行る・・・かもしれません。
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