現在、三井記念美術館では、 “超絶技巧!明治工芸の粋” が開催されています。
こちらは、明治時代の工芸品コレクションとしては、
質・量ともに世界一の呼び声が高い村田コレクションを体系的に紹介する初の展覧会です。
10000点 (!) に及ぶ村田コレクションの中から、
選りすぐりに選りすぐられた明治時代の超絶技巧の工芸品が約160点ほど紹介されています。
“超絶技巧って。ちょっとハードルを上げすぎじゃない?”
と思っているアナタ。
甘いです!
超絶技巧という表現は、むしろ控え目なくらい。
展示されているのは、どれも超超絶技巧な工芸品でした。
まず紹介したい超超絶技巧な工芸品は、
昨年の 『美の巨人たち』 でも取り上げられた安藤禄山の 《竹の子、梅》 。
清水三年坂美術館蔵
画像で見る限り、竹の子と梅にしか見えません。
これが工芸品とは、誰が思うでしょうか。
しかし、この 《竹の子、梅》 が、何よりもスゴいのは、実物を前にしても、やはり竹の子と梅にしか見えないこと。
竹の子の皮の繊維質の描写、梅の実の艶、梅の葉っぱの葉脈など、どれをとっても本物そのもの。
少しも、作り物らしい箇所が見当たらないのです。まさに完コピ。
さらに、驚くべきは、その素材。
これが、木彫というならば、まだ100歩譲って、理解できなくはないですが。
なんと、こちらの 《竹の子、梅》 は、牙彫作品。つまり、象牙で出来ているのです。
象牙をどう加工したら、竹の子の皮の繊維質の描写、梅の実の艶などが完全再現できるのか。
もはや頭で理解できる範疇を超えています。
人間業とは、とうてい思えません。
では、安藤禄山は、どのようにして、この牙彫作品を作ったのでしょうか?
・・・・・・・・・・・・・・。
実は、よくわかっていないのです。
弟子を取らなかったそうなので、この超絶的なテクニックは、いまだに謎に包まれたまま。
そもそも安藤禄山という人物自体、生年月日や素性が明らかになっていないそうです。
たぶん、宇宙人とかです。
今回の展覧会には、 《竹の子、梅》 以外の安藤禄山作品も展示されています。
パセリにパイナップルに焼き栗に蕪に・・・どれも、もれなくスゴい作品でした。
これらの安藤禄山の作品を観に行くだけでも、十分に行く価値ありです。
・・・・・・が!
他にも、まだまだスゴい作品が登場するのが、今回の展覧会。
例えば、こちら。
無銘 《瀑布図》 清水三年坂美術館蔵
フツーに上手い滝の絵に見えますが。
なんと、絵の具ではなく、刺繍で描かれた絵画。
長さや縫う方向を変えることにより、白一色の糸だけで水の質感を再現しているのだとか。
そのあまりにスゴすぎるテクニックを目の当たりにして、頭がオーバーヒートしてしまいました。
ちょっと滝に打たれてきます。
また、明珍による自在置物 《蛇》 も、超超絶技巧な逸品。
清水三年坂美術館蔵
自在置物とは、体の各パーツを、文字通り自在に動かせる置物で、今でいう、フィギュアのようなものです。
こちらの 《蛇》 は、何と約260個のパーツが繋ぎ合わされているとのこと。
体を真っ直ぐ伸ばしたり、くねくねさせたり、とぐろを巻くことだって可能だそうです。
まさに自在。
続いては、白山松哉の 《渦文蒔絵香合》 。
清水三年坂美術館蔵
これまで紹介したものと比べると、そこまで超絶技巧な感じはしませんが・・・。
展示ケース内に設置されたルーペで、是非覗き込んでみてください。
ビッチリと描きこまれた渦巻き模様に、思わず呑みこまれそうになります。
と、ここまで紹介したのは、ごくごく一部。
他にも、超超絶技巧で作られた工芸品が、会場には山ほど展示されています。
これは、行かねば。
見逃すと、超絶後悔する展覧会です。
三井記念美術館の展示室の重厚な雰囲気が、
村田コレクションとピッタリと共鳴していたのも、見逃せない理由の一つ。
他の美術館で開催されていたら、ここまでの感動はなかったかもしれません。
ちなみに、超絶技巧の明治工芸と言えば。
僕の好きな漆芸家・柴田是真の作品も、多数紹介されていました。
《沢瀉片喰に蝶図蒔絵印籠》 清水三年坂美術館蔵
明治工芸のスターが勢ぞろい。
明治工芸版の 『天下一武道会』 といった印象でした。
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超絶技巧!明治工芸の粋
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