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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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徒然草 美術で楽しむ古典文学

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サントリー美術館で7月21日まで開催中の “徒然草 美術で楽しむ古典文学” に行ってきました。
こちらは、日本三大随筆の一つに数えられる 『徒然草』 をテーマにした日本初、いや世界初の美術展です。
その感想を、徒然なるままに、パソコンに向かって書き付けてみようと思います。

さてさて、まずは何よりも。

“そもそも 『徒然草』 をテーマにした美術展って成立するのだろうか??1階分しか会場を使ってなかったりして・・・”

と、会場に足を踏み入れるまで、心配も心配だったのですが。
それは、全くの杞憂に終わりました。
ちゃんと2階分の会場を使っていましたし、美術展としてもバッチリ成立していました。


美術展は、 『徒然草』 の作者である吉田兼好にスポットを当てるところから始まります。

吉田兼好
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)


吉田兼好の名前は、かろうじて覚えていましたが。
よくよく考えてみると、 『徒然草』 の作者であること以外、何も知りません (汗)
一体、どんな人物だったのでしょう?


・・・・・・・・が。
意外や意外に、 『徒然草』 が有名であるのとは裏腹に、
作者の吉田兼好その人がどのような人物だったのか、専門家でもよくわかっていないとのこと。
なので、吉田兼好を描いた肖像画が数点展示されていましたが、全員別人のようでした (笑)

吉田兼好  海北友雪筆 《兼好法師像(模本)》 一幅 江戸時代 17世紀 個人蔵

吉田兼好  尾形乾山筆 《兼好法師図》 
一幅 江戸時代 17世紀後半~18世紀前半 個人蔵


さらに、 『徒然草』 自体も、鎌倉時代末期に書かれてから、
約100年経った室町時代に入ってから、ようやく浸透したそうで。
ブレイクするのは、さらに、それから時代を経て、江戸時代になってからとのことでした。
(『徒然草』 が全244段に分けられたのも江戸時代になってから)
古典の授業で習わなかった 『徒然草』 の真実 (?) が、いろいろと明らかになりました。


そして、江戸時代に 『徒然草』 がブレイクしたのをきっかけに、
当時の多くの絵師たちが、 『徒然草』 を主題にした絵を描くようになります。
今回の美術展では、それら 『徒然草』 の一場面を描いた絵画作品を、
『源氏物語』 を描いた絵を <源氏絵> と呼ぶことに倣って、 <徒然絵> と暫定的に命名。
会場では、そんな <徒然絵> の数々が、まとまった形で紹介されていました。

徒然


そんな数ある <徒然絵> の中で、質・量ともに最高峰とされるのが、
サントリー美術館のコレクションに加わったばかりの海北友雪筆 《徒然草絵巻》
なんと 『徒然草』 のすべての段 (全244段) が絵画化されているという超大作です。

徒然草  海北友雪筆 《徒然草絵巻》 二十巻のうち巻一(部分) 
江戸時代 17世紀後半 サントリー美術館蔵


今回の美術展では、初公開となる 《徒然草絵巻》 が、
会場を広く使って、惜しげもなく全20巻すべて展示されていました。

会場


しかも、それぞれの巻に、わかりやすい現代語訳付!

現代語訳


《徒然草絵巻》 を観賞しつつ、 『徒然草』 も読めてしまうという一石二鳥な展示になっていました。
で、このような形で、 『徒然草』 を、初めてまとめて読んだわけですが。
「なるほどなぁ。」 とか 「わかる(笑)!」 と共感させられるエピソードが、あまりに多くて驚かされました。
早速、帰りに本屋さんに立ち寄ってしまったほどです。
『徒然草』 を読みたくなるなる美術展。
星星


最後に、個人的に印象に残った <徒然絵> をご紹介いたしましょう。
一つは、熱田神宮所蔵の 《徒然草図屏風》 です。

徒然草図屏風  伝住吉如慶筆 《徒然草図屏風》 
六曲一双のうち右隻 江戸時代 17世紀 熱田神宮蔵


よりにもよって描かれているのは、京都の仁和寺の僧がやらかしてしまった失敗談の数々。
なぜ、そんな絵を、わざわざ熱田神宮が所蔵しているのか。
いろいろと想像をめぐらせてしまいます (笑)

ちなみに、この仁和寺の僧の失敗談 (第53段) の内容を簡単にまとめると、以下のようになります。

 “仁和寺のとある法師が、宴会を盛り上げるべく、鼎をすっぽり顔に被って踊りました。
  大ウケしたのちに、被っていた鼎を外そうとしたのですが・・・全く抜けません!
  力任せに抜こうとすれども、抜けないどころか血が垂れてきて、周りはドン引き。
  叩き割ろうにも頑丈な鼎だけに、ビクともしませんでした。。。
  仕方がないので、鼎を被ったままの姿で、お医者さんのもとへ行く法師。
  しかし、そんな法師に対し、お医者さんは、
  「このようなことは本にも書いていないし、代々伝わってきている対処法もないです。」 と、答えたそうな”


普通に、今読んでも笑える面白エピソードだけに、
《徒然草図屏風》 以外の <徒然絵> にも、多数取り上げられていました。
そのほとんどが、鼎を被って踊っている場面を描いている中で、
江戸の絵師の中でも抜群のお笑いセンスを持つ英一蝶だけは・・・

英一蝶  英一蝶筆 《徒然草・御室法師図》 
一幅 江戸時代 17世紀後半 個人蔵 (注:展示期間は6/11~6/30)


あえて、このシーンをチョイス。
確かに、お笑い的には、この場面をチョイするのが正解です。
さすがお笑いセンスが光っています。




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