三菱一号館美術館で開催中の “ヴァロットン ―冷たい炎の画家” に行ってきました。
こちらは、スイスに生まれ、パリで活躍した画家フェリックス・ヴァロットン (1865~1925) の回顧展です。
《20歳の自画像》 1885年 油彩/カンヴァス
ローザンヌ州立美術館 Photo: J.-C. Ducret, Mus?e cantonal des Beaux-Arts, Lausanne
「ヴァロットン?誰??」
というのは、普通の反応ですので、ご安心を。
そもそも今回開催されるヴァロットン展は、日本初となる回顧展。
それどころか、実は、このヴァロットン展は、日本に先駆けて、
パリのグラン・パレ、アムステルダムのゴッホ美術館を巡回しているのですが、それらも初の回顧展。
日本だけでなく世界的に、 「ヴァロットン??誰??」 現象が起こっているのです。
これまで世界でもフィーチャーされていなかったということは、
よっぽどたいしたことない画家なのかと思いきや・・・・・真実は、その逆。
今回のヴァロットン展の回顧展を通じて、まとまった形で彼の作品を目にしましたが、
「何で、こんなスゴい画家が今までスルーされていたんだ!」
と、カルチャーショックを覚えました。
これまでヴァロットンを見過ごしてきた学芸員さんは、何をやっていたのか。
その目は節穴なのか。
とにもかくにも、ヴァロットンの回顧展を開催してくれた三菱一号館美術館の慧眼に拍手です。
行かないと後悔するレベルの美術展。
ヴァロットンのスゴさ。
それは、何よりも構図の斬新さにある気がします。
例えば、こちらの 《ボール》 という一枚。
《ボール》 1899年 油彩/板に貼り付けた厚紙
パリ、オルセー美術館 ? Rmn-Grand Palais (mus?e d'Orsay) / Herv? Lewandowsky
ボールを追いかける少女と立ち話に興じる夫人たちの姿が、
まるでクレーンカメラで撮ったような視点で描かれている斬新な作品です。
こんなアングルを100年も以上も前に考え付いてしまっていることに、ただただ驚かされましt。
また、西洋絵画ではお馴染みの題材 『スザンナと長老たち』 (出典:旧約聖書) を、
ヴァロットン流にパロディしてしまった 《貞節なシュザンヌ》 も構図のセンスが光る作品。
《貞節なシュザンヌ》 1922年 油彩/カンヴァス
ローザンヌ州立美術館 Photo: J.-C. Ducret, Mus?e cantonal des Beaux-Arts, Lausanne
従来の西洋絵画なら、貞淑な妻スザンナが、スケベな老人2人に水浴を覗かれるシーンが描かれていますが。
ヴァロットンの 《貞節なシュザンヌ》 では、貞淑な妻でなく娼婦に姿が変えられています。
そして、逆に、スケベな老人 (というよりも中年) を誘惑しています。
老人 (というよりも中年) は2人とも後ろ姿でしか描かれていませんが、スケベそうなのは伝わってきます。
ハゲ具合から察するに。
今回のヴァロットン展には、油彩画だけでなく、
三菱一号館美術館が所蔵するヴァロットンの版画作品も約60点展示されていましたが。
版画作品においても、ヴァロットンの抜群のセンスが遺憾なく発揮されています。
特に印象的だったのが、 《お金(アンティミテⅤ)》 という作品。
《お金(アンティミテⅤ)》 1898年 木版/紙 三菱一号館美術館
この余白 (余黒?) の使い方!
なんというハイセンス!!
どうしても版画は油彩画と比べてしまうと、地味な印象が否めないものですが、
ヴァロットンに関しては、版画も油彩も同じくらいに楽しむことが出来ました。
版画も油彩もハズレなしです。
そんなヴァロットンに呼応するかのように、
三菱一号館美術館の展示も、センスの良さが光っていました。
会場の雰囲気も、是非お楽しみくださいませ。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
あくまで個人的な感想ですが、今回のヴァロットン展は、
老若男女が楽しめる美術展というよりは、PG12指定の大人の美術展といった印象でした。
心理サスペンスのような作品あり、昼ドラのような作品あり、
そして、クールなエロティシズムを感じる官能的な作品あり。
さらには、 『タモリ倶楽部』 を彷彿とさせる作品 (《臀部の習作》) もありました。
昼よりも、夜に訪れたい美術展。
(毎週金曜は、20時まで夜間開館されています)
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ヴァロットン ―冷たい炎の画家
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