現在、根津美術館で開催されている美術展では、
国宝4件、重要文化財35件を含む約100件のとある共通点を持った名品が紹介されています。
例えば、国宝の 《瀟湘八景図 漁村夕照》 。
牧谿筆 中国・南宋時代 13世紀 根津美術館蔵
(注:展示は10月19日まで)
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
例えば、 《平治物語絵巻 六波羅合戦巻断簡》 。
日本・鎌倉時代 13世紀 個人蔵
例えば、《大井戸茶碗 銘 須弥(別銘 十文字)》 。
朝鮮・朝鮮時代 16世紀 東京・三井記念美術館蔵
その共通点とは、現在の姿は、すべてオリジナルの作品から改変されたものであるということ。
元々は絵巻の形式だったものを、所有者が勝手に一部を切り取って、掛軸にしてしまったり。
茶碗としては少し大きかったので、一度割って、寸法をちょうど良くしたものであったり。
そんなリメイク美術品 (?) が一堂に会されると、
これまで特に意識されていなかった日本特有のリメイク文化が浮き彫りに。
日本文化の新たな一面に気づかされる美術展と言っても過言ではありません。
“名画を切り、名器を継ぐ 美術にみる愛蔵のかたち” は、11月3日まで。
展示されている作品は、さまざま。
作品が改変された理由も、さまざまでした。
こちらの重要文化財の 《石山切 伊勢集》 の掛軸たちは・・・
伝藤原公任筆 日本・平安時代 12世紀 東京・梅澤記念館蔵
西本願寺が、女子大学を創設するための資金を集めるために、
『本願寺三十六人歌集』 のうちの 「伊勢集」 をページごとに分断し、財界人たちに売却したのがその理由。
佐竹本と呼ばれる現存最古の三十六歌仙絵の巻物は、
重要美術品 《佐竹本三十六歌仙絵 斎宮女御(部分)》
日本・鎌倉時代 13世紀 個人蔵
(注:展示期間は9/20~10/13、10/28~11/3)
高額すぎるという理由から、大正8年に各歌仙ごと (つまり36枚) に分断。
抽選によって、それらは売却されたのだとか。
また、改変には、こんなパターンも。
あの志賀直哉の旧蔵品として知られる 《白磁壺》 は、
朝鮮・朝鮮時代 17~18世紀 大阪市立東洋陶磁美術館蔵
1995年に盗難に遭い、その際に、バラバラに破損してしまったのだそうです。
が、事件後、修復技術の粋がつくされ、奇跡的に元の姿に復活。
近くで観ても、一度バラバラになったものだとは、全く思えませんでした。
今回展示されていた作品の中で最も印象的だったのは、
10月1日まで公開されている重要文化財の 《青磁輪花碗 銘 馬蝗絆》 です。
(画像は、こちら)
青磁にヒビが入ってしまったことを嘆いた室町幕府8代将軍・足利義政は、
これに代わる品を送って欲しいと、明国に送り返したそうな。
すると、明は、こんな素晴らしい名品を、今の時代には作れないと、器を鎹で止めただけで返却。
その鎹を見て、大きな蝗のようだと、義政は、 「馬蝗絆」 という銘を付けたのだとか。
めでたしめでたし。
・・・・・いやいやいや。
カスタマーセンターが、そんな対応したら、絶対にクレームになるはず。
昔の人は、のどかです。
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