今年ラストに読んだ芸術家をテーマにした小説は、こちら↓
■北斎と応為
作者:キャサリン・ゴヴィエ
出版社: 彩流社
発売日:2014/6/12
ページ数:(上)272ページ (下)300ページ
浮世絵師・北斎の娘、応為 (おうい) こと葛飾お栄の謎に包まれた生涯を描き出す!
「美人画では娘に敵わない」 と北斎をして言わしめた実在の娘・お栄 (画号は応為) 。
緻密な描写、すぐれた色彩と陰影表現を得意とし、父と共作するだけでなく、代作もしていた!
歴史の闇に消えていった 「もうひとりの北斎」 を、綿密な調査と豊かな想像力で描き出した歴史フィクション!
(「BOOK」データベースより)
「今年の2月に、太田記念美術館にて、 《吉原格子先之図》 を観て以来、
葛飾北斎の娘、応為のことが気になって気になって仕方がありませんでした。
もしかして、恋?
それはともかくとして、葛飾北斎を主人公にした映画や小説はあるものの、
その娘、応為を主人公にした映画や小説は、あまり見かけたことはありません。
もしあれば、絶対に読むのになぁ。
・・・と思っていた矢先、本屋の新刊コーナーで見つけました。
タイトルもズバリ、 『北斎と応為』 。
おそらく高橋克彦さんか宇江佐真理さんあたりの新刊だるう。
しかし、作者の名前に目をやって、驚きました。
キャサリン・ゴヴィエ?誰?!てか、外国人!!
そう、こちらは、カナダのペンクラブ元会長である女流作家によって描かれた小説。
しかも、日本をテーマにした小説、もちろん江戸時代を舞台にした小説を描くのは、今回が初めてとのこと。
どちらかと言えば、偏見は持っていない自分ですが。
さすがに、この小説を読むまでは、外国人の方に時代小説はムリだろう、と、不安でした。
結論から言えば、全っ然、違和感が無かったです!
多少は、海外小説特有の和訳感 (←?) はありましたが、
言われなければ、日本人の作家が書いたと思ってしまったレベル。
この小説を描くために、キャサリンさんは、とても骨を折ったのでしょう。
葛飾応為のために、ありがとうございます。
小説のキーとなるのは、北斎と応為の関係性。
もちろん、この小説内での北斎も、絵師としての才に恵まれていますが。
寄る年波には勝てず、80歳以降の北斎は、どんどんと衰えていきます。
そんな北斎を生活面だけでなく、絵師としても支えたのが応為。
『The Ghost Brush』 という原題が付けられているように、応為は北斎のゴースト。
つまり新垣さんだったのです。
応為が北斎のゴーストであったというのは、定説ではないので、
あくまで、この小説内でのフィクションの設定ではありますが。
まるで応為がキャサリンさんに乗り移ったかのように、心情も含めてリアルに描かれているため、
きっとそうだったんだろうなぁ。
と、自然に読んでしまいました。
さてさて、衝撃だったのは、やはりそのラスト。
北斎の死後も、北斎の印章を使い、絵を描き続けていた応為を、思いもよらない結末が待ち受けています。
え~~~、こんなラストなの?!ウソだろ、おーーーい!!!
と思わず叫びたくなりました。
気になる方は、是非、こちらの小説を手に取ってみてください。
この結末は、きっとフィクションでしょう。
いや、フィクションであって欲しい。
でも、実際の応為が、どんな最期を迎えたのかわかっていない以上、
こういう結末もさもありなん、といったところなのでしょうか。
(星3つ)」
~小説に登場する名画~
《唐獅子図》
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Book:17 『北斎と応為(上)(下)』
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