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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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着想のマエストロ 乾山見参!

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5月27日 (水) より7月20日 (月・祝) まで (一部展示替えあり) 、
サントリー美術館で開催されている “着想のマエストロ 乾山見参!” 展に行ってきました。

着想のマエストロ 乾山見参!


乾山見参・・・。
こんなにも、ど直球なダジャレのタイトルが付けられた美術展が、かつてあったでしょうか。

美術展のタイトルこそ、ちょっと遊んでいますが。
美術展そのものは、いたって真剣。
尾形光琳の弟にして、江戸時代を代表する陶工の一人・尾形乾山の活動の全貌に迫った展覧会です。


実を言うと、これまでに尾形乾山の作品に魅力を感じたことはありませんでした。
彼の師である野々村仁清の作品と比べてしまうと、
イマイチ造形的にパッとしないというのが、僕の中での尾形乾山評。
例えば、

色絵定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿  尾形乾山 《色絵定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿》
元禄15年(1702) MOA美術館蔵


この手のタイプの尾形乾山作品を目にすると、

「野々村仁清なら、もっとシャープな角皿を作るだろうに。もっと四角さを意識したデザインをするだろうに。」

と思ってしまうわけです。
ところが、会場内のキャプションに書かれた・・・

『絵画をうつわで飾るのではなく、絵画をそのままうつわとする。まさに着想の転換です。』

という一文と出合って、ようやく乾山作品に対してストンと落ちるものがありました。
なるほど。
造形的にイマイチなのではなくて、端から、そこで勝負はしていなかったのですね。

そう考えると、尾形乾山が白泥に銹絵という地味なモノトーンの作品を多く残した理由もわかります。

銹絵山水文四方火入  尾形乾山作 尾形光琳画 《銹絵山水文四方火入》
江戸時代 18世紀 大和文華館蔵


なるほど。
これは水墨画を、それも年月が経って、
イイ感じに色合いが風化した水墨画をイメージしていたのですね。

確かに、この着想はなかったです。
思わず、 「着想のマエストロや~」 (←彦摩呂?) と心の中で叫んでしまいました。
星星


会場には、他にも 「着想のマエストロや~」 と叫びたくなる乾山作品が多数紹介されています。

蓋物  尾形乾山 重要文化財 《白泥染付金彩芒文蓋物》
江戸時代 18世紀 サントリー美術館蔵

マーガレット  尾形乾山 《色絵菊図向付》 江戸時代 18世紀 五島美術館蔵


造形はひとまず脇に置いておいて、
デザインだけに着目すると、とても江戸時代の作品とは思えない斬新さがありました。
ジャクソン・ポロックを彷彿とさせたり、はたまた少女漫画の付録を彷彿とさせたり。
個人的にオススメなのは、京都国立博物館が所蔵する 《色絵石垣文皿》
画像がなくて恐縮ですが、このお皿のデザインのポップさは、一見の価値アリです。


ちなみに、もう一つ個人的にオススメなのが、
乾山の晩年の作品とされる 《武蔵野隅田川図乱箱》 です。

武蔵野隅田川図乱箱  尾形乾山 重要文化財 《武蔵野隅田川図乱箱》
寛保3年(1743) 大和文華館蔵


もはや陶磁器ではなく木箱に絵を描いたところに、乾山の本質 (本性?) を見た気がしますが。
それはともかくも、波も千鳥も、驚くほどにユルいタッチで描かれていました。
かなりの脱力系。
『ぐでたま』 くらいに、ゆるいです (笑)






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