東京ステーションギャラリーで開催中の “没後30年 鴨居玲展 踊り候え” に行ってきました。
今年で没後30年を迎える洋画家・鴨居玲 (1928~1985) の大規模な回顧展です。
知名度はそこまで高くない鴨居玲ですが。
熱心なファンは意外と多く (かくいう僕もその一人です!) 、
5年に1度のペースで、鴨居玲の巡回展が企画されているほどです。
つまり、単純計算して6度目となる今回の鴨居玲展。
おそらくこの鴨居玲展こそが、鴨居玲展のベスト版!
断言しましょう。
これを超える鴨居玲展は、きっとこの先、開催されません。
鴨居玲の熱心なファンはもちろん、鴨居玲を知らない方も足を運ぶべき美術展です。
まず何と言っても、出展作品のラインナップがベストofベスト。
安井賞受賞作 《静止した刻》 を含む鴨居玲の代表作の数々が余すことなく出展されていました。
1968年 東京国立近代美術館所蔵
さらに、鴨居玲の初期の作品から、
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
鴨居玲の遺作や遺品までもが出展されています。
しかも、出展作品約100点のうちの約30点が初公開作品とのこと。
個人蔵の貴重な作品も多いので、中には、もう二度と目にできないものもあるはずです。
と、出展作品のラインナップがベストofベストな上に、
時に痛々しさすら覚える精神性の高い鴨居玲の作品と東京ステーションギャラリーの煉瓦壁とが、
これ以上ないというくらいにベストマッチ!
作品と空間のあまりの共鳴ぶりに、思わず鳥肌が立ってしまいました。
こんなにもゾクゾク来た展示空間は初めてかもしれません。
実はつい2週間ほど前、石川県立美術館を訪れた際に、
鴨居玲の代表作 《1982年 私》 を鑑賞しました。
1982年 石川県立美術館蔵
真っ白のキャンバスの前で苦悩の表情を浮かべているのは鴨居玲本人。
作品と向き合っていると、彼の心の中に渦巻く渇いた叫びが聞こえてくるかのようでした。
十分に心を掴まれましたが、いかんせん石川県立美術館は普通の白い壁、たかが知れています (←?) 。
その 《1982年 私》 が、東京ステーションギャラリーの煉瓦壁の空間に展示されると、どうなるのか?
絵の中に渦巻いていた渇いた叫びが、
閉鎖的で重厚な煉瓦壁の空間の中で増幅していました。
心を掴まれるというのを通り越して、胸がギューッと締め付けられ苦しさを感じたほどです。
痛々しい。でも、目を背けられない。
そんな不思議な引力を持った作品です。
同様に他の鴨居玲作品も、
東京ステーションギャラリーの煉瓦壁によってパワーが増幅していた気がします。
このブログは、
「美術を、もっともっと身近なものに。もっともっと楽しいものに。もっともっと笑えるものに。」
をスローガンに掲げています。
鴨居玲の作品は、確実に、その真逆をいっています。
楽しくないし、笑えません。
それどころか、暗い気持ちになるかもしれないし、
心が抉られるかもしれないし、精神を黒く塗りつぶされるかもしれません。
それでも、あえて自信を持ってオススメしたいと思います。
人間の本質を絵画で表現する。その一つの到達点を鴨居玲作品に見ました。
そして、その鴨居玲作品の魅力を最大限に増幅させているのが、東京ステーションギャラリーの空間です。
これほどまでに、 “凄味” を感じる美術展には、そうそう出合えないでしょう。
ちなみに。
精神的に怖い絵を多く描いた鴨居玲ですが、本人の風貌は怖くありません。
それどころか、美術界屈指のハンサムだったそうです。
なので、今回の美術展のポストカードには、鴨居玲のポートレートも。
ハンサムにもほどがあります (笑)
最後に告知を。
この鴨居玲展を、6月17日の水曜夜に新潮講座の一環で、
東京ステーションギャラリーの閉館後に、100名限定で貸切らせて頂けることになりました。
当日はこの展示室にて、担当学芸員さんと僕とで掛け合いをしながら、鴨居玲の魅力をお伝えいたします。
詳細をお知りになりたい方は、以下のメールフォームに、
「鴨居玲展 貸切講座」 と添えて、お気軽にご一報くださいませ。
通常のアートツアー同様に、初参加の方も、お一人で参加の方も大歓迎です。
http://homepage3.nifty.com/art-teller/tony_contact.htm
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没後30年 鴨居玲展 踊り候え
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