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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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特別展 蔵王権現と修験の至宝

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三井記念美術館で開催中の “特別展 蔵王権現と修験の至宝” に行ってきました。

修験道
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


仏教や神道など、宗教美術をテーマにした展覧会は、これまでにも多く開催されていますが。
こちらは、ほら貝をブオ~ンと吹く山伏でお馴染みの修験道をテーマにした展覧会です。
修験道の世界を紹介する展覧会は、東京ではほとんど開催されたことが無いとのこと。
それに加えて、今回の展覧会には、修験道の “総本山” である奈良吉野山地の大峯山 (金峯山寺) と、
日本一危険な国宝として知られる 「投入堂」 で有名な鳥取県三徳山三佛寺に伝わる名品の数々が大集結!
東京で開催される修験道の展覧会としては、史上最高レベルと言っても過言ではありません。


まず会場で目を惹くのは、金峯山山上から出土した遺物の数々。
その中でも特に見逃せないのが、国宝の 《金銅 藤原道長経筒》 です。

国宝  平安時代・寛弘4年(1007) 金峯神社  
(注:展示期間は8月29日~10月4日)



一見すると、海苔の缶にしか見えませんが。
よく見ると、表面に銘文が刻まれています。
その字体がシャープで力強く、不思議と惹き付けられてしまいました。

ちなみに、この経筒の中に入っていた 《紺紙金字弥勒上生経残闕(寛弘4年奥書)》 も出展されています。

紺紙金字弥勒上生経残闕  平安時代・寛弘4年(1007) 個人蔵


発見された時に、すでにボロボロだったそうですが。
そのボロボロ具合 (?) も含めて、神秘的な魅力がありました。


さて、それらの出土品もさることながら、やはり今回の展覧会で目を惹くのが、蔵王権現像。
修験道の本尊です。
会場には、これでもかと蔵王権現像の姿が。
完全に三井記念美術館が蔵王権現像にジャックされていました。

蔵王権現像  蔵王権現像


右手は三鈷杵を高く振り上げ、左手はピースサインにも似た剣印を結ぶ。
そして、右足は高く蹴り上げ、左足は岩の上で力強く踏ん張る。
この独特過ぎる蔵王権現像のポージングは、
修験道の開祖・役小角が1000日にも及ぶ修行の末に、岩の下から現れた姿を現しているのだそうです。

今回出展されていた数ある蔵王権現像の中で、
もっとも素晴らしかったのが、如意輪寺が所蔵する重要文化財の 《蔵王権現像》

蔵王権現像  源慶作 鎌倉時代・嘉禄2年(1226) 如意輪寺
(注:展示期間は8月29日~9月23日)



全体のプロポーション。
あの独特の難しいポージングを違和感ないように見せるバランス感覚。
そして、バックの炎の表現。
どこをとってもパーフェクトな蔵王権現でした。


そんな如意輪寺の 《蔵王権現像》 と比べてしまうと、
佐野美術館が所蔵する重要美術品の 《蔵王権現像》 は・・・

蔵王  平安時代 佐野美術館


なんとも素朴でユーモラスな印象です。
右足がやや不自然なのも愛嬌ですね。


会場には、他にもユーモラスな 《蔵王権現像》 が。
右手が短いものや、

右手


右足をあげていないものや、中途半端にちょっとだけあげているもの、

蔵王権現像


極めつけは (?) 、左右逆の 《蔵王権現像》 もいました。

蔵王 (一人だけ振付を間違ってしまっているような感じですw)


ちなみに、立体ではないですが、
平面の蔵王権現像の最高峰・国宝の 《蔵王権現鏡像》 も出展されています。

国宝 蔵王権現鏡像  平安時代・長保3年(1001) 總持寺 Image: TNM Image Archives


いつもは東京国立博物館の本館に展示されている彼ですが。
ライティングのおかげで、いつもより3割増しでカッコよく見えました。
というか、単純にトーハクで観るよりも図像が見やすかったです。
ありがたや。


三井記念美術館の開館10周年のメモリアルイヤーを飾るに相応しい充実の展覧会でした。
2ツ星。
星星




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