Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の “ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生” に行ってきました。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
こちらは、ウィーン美術史美術館のコレクションの中から厳選された70点の作品を紹介する展覧会です。
展覧会のテーマは、タイトルにもあるように、ズバリ 「風景画」。
しかし、僕らがイメージするような、いわゆる 「風景画」 オンリーの展覧会ではありません。
展覧会の冒頭で紹介されていたのは、風景画ではなく宗教画や神話画でした。
[写真左] バスティアーノ (セバスティアーノ)・マイナルディに帰属 《二人の天使のいる聖母子》 1500年頃 油彩・板
[写真右] イェルク・ブロイ(父) 《五色鶸と聖母子》 1523年 油彩・板(リンデン)
この時代 (15世紀頃) は、風景は、宗教画や神話画の背景にしか過ぎなかったのです。
そんな脇役だった風景が、17世紀には、風景画として主役を張るまでに大出世。
[写真左] ヤーコプ・ファン・ロイスダール 《渓流のある風景》 1670-80年頃 油彩・板で裏打ちされたキャンヴァス
[写真右] ヤン・ファン・ホイエン 《メルヴェデ川越しのドルドレヒトの展望》 1644年 油彩・キャンヴァス
そんな風景のサクセスストーリーを丹念に追った展覧会なのです。
ちなみに、風景画が誕生したとは言っても、
必ずどこかに人が描かれており、全くの無人の風景画はありませんでした。
これは、西洋が人間中心主義であったがゆえとのこと。
完全に風景オンリーの風景画が誕生するには、19世紀の印象派の時代まで待たなければならないそうです。
(注:今回の展覧会では印象派の作品は展示されていません)
「なぜ、人間中心主義だった西洋で、印象派の風景画の中から人が消えてしまったのか。」
研究者の間でも、その答えは明確には出ていないそうです。
その話を聞いて、ふと思ったのですが。
印象派の風景画には、この風景を見ている俺、描いている俺 (=画家) が投影されているのではないかと。
そういう意味では、結局のところ、西洋には完全なる風景画は無いのかもしれません。
と、まぁ、いろいろと思いを巡らせることが出来る非常に興味深い展覧会でした。
2ツ星。
“風景画の誕生” というタイトルから、地味そうな展覧会を予想していましたが・・・。
大反省ですm(__)m
さてさて、現実的な風景だけでなく、廃墟のある風景や、
[写真左] アダム・ベイナーケル 《ティヴォリ付近の風景》 1648年頃 油彩・板(オーク)
[写真右] ニコラス・ベルヒェム 《水道橋の廃墟のある風景》 1675年 油彩・キャンヴァス
冥界の風景など、
ヒエロニムス・ボスの模倣者 《楽園図》 1540-50 年頃 油彩・板
展覧会では、さまざまなジャンルの風景画が紹介されていましたが。
なかでも一番気になったのが、月暦画です。
[写真左] レアンドロ・バッサーノ(通称) 《1月》 1580-85年頃 油彩・キャンヴァス
[写真右] レアンドロ・バッサーノ(通称) 《2月》 1580-85年頃 油彩・キャンヴァス
月暦画とは、12か月のそれぞれを、
象徴的人物像や動物、月々の労働や、それらを含む自然の風景などによって表わしたもの。
言うなれば、カレンダーのようなものです。
例えば、こちらは、レアンドロ・バッサーノによる月暦画 《5月》 。
レアンドロ・バッサーノ (通称) 《5月》 1580-85 年頃 油彩・キャンヴァス
空がどんよりしていて、五月晴れな感じは一切ないですが、5月です。
描かれている人の営みを見れば、きっと当時の人は、「あぁ、5月だなぁ」 と感じたのでしょう。
さてさて、気になるのは、空を飛んでる2人の天使。
と思ったら、天使ではなく、5月なので双子座のシンボルが描かれているのだとか。
実は、他のレアンドロ・バッサーノの月暦画にも、
ちゃんと空に星座のシンボルが描き込まれていました。
《2月》 は魚、《3月》 は羊、《4月》 は牛、そして、《6月》 はザリガニ・・・・・ん?ザリガニ??
なぜか、かに座は、ザリガニで表現されていました (笑)
ちなみに、レアンドロ・バッサーノ以外にも、
マルテン・ファン・ファルケンボルフの月暦画が展示されています。
こちらの月暦画にも、上空に星座のシンボルが描かれていたのですが・・・
[写真左] マルテン・ファン・ファルケンボルフ 《ノリ・メ・タンゲレ(4月)》 1580-90年頃 油彩・キャンヴァス
[写真右] マルテン・ファン・ファルケンボルフ 《五千人のパン(7月)》 1580-90年頃 油彩・キャンヴァス
「小っさ!!」
描くなら描く。
描かないなら描かない。
どっちかにして欲しいところです。
最後に、今回の展覧会で一番見逃せない作品をご紹介。
ヨアヒム・パティニールの 《聖カタリナの車輪の奇跡》 です。
ヨアヒム・パティニール 《聖カタリナの車輪の奇跡》 1515年以前 油彩・板
ヨアヒム・パティニール (1480年?~1524年) は、西洋で 「最初の風景画家」 と呼ばれた人物。
奥行きのある画面を作り出すために、
遠景に青色を効果的に用いたことから、“青のパティニール” とも呼ばれているそうです。
その作品は、現在知られている限りで10数点しか確認されていないのだとか。
そういう意味では、同じく青でお馴染み (?) のフェルメールよりも希少な画家と言えるでしょう。
この秋、見逃せない作品です。
┃会期:2015年9月9日(水)~12月7日(月)[10/5(月)のみ休館]
┃会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
┃http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien/index.html
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http://homepage3.nifty.com/art-teller/tony_contact.htm
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