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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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根津青山の至宝 初代根津嘉一郎コレクションの軌跡

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財団が創立して今年2015年で、ちょうど75周年を迎える根津美術館。
それを記念した特別展 “根津青山の至宝 初代根津嘉一郎コレクションの軌跡” が、現在開催中です。

根津
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


初代根津嘉一郎 (号 青山 1860~1940) は、いかにして美術コレクターとなったのか。
そして、いかにして、そのコレクションを形成していったのか、を紹介する展覧会です。

「創立75周年記念特別展」 と銘打つだけあって、ラインナップは超豪華!
国宝の 《鶉図》 や、

鶉図


国宝の 《那智瀧図》 も、

那智の滝


惜しげもなく出展されていました。
他にも国宝3件、さらに重要文化財は43件も出展するという大盤振る舞い。
こんなにもまとめて名品を展示してしまっては、
今後、これを超える展覧会を企画するのは至難の業です。
“そこまで出してくれなくても大丈夫ですよ” と、逆に心配になるくらいでした。
書画と茶道具の名品が中心なので、やや渋めではありますが、
根津美術館のベストofベストと言っても過言ではない展覧会なので、3ツ星。
星星星


さてさて、数ある展示品の中で特に見逃せないのが、
初代根津嘉一郎がコレクターとして、その名を世に知らしめたという重要文化財 《花白河蒔絵硯箱》 です。

花白河蒔絵硯箱  重要文化財 《花白河蒔絵硯箱》
1合 木胎漆塗 日本・室町時代 15世紀 根津美術館蔵



この硯箱をどうしても手に入れたかった初代根津嘉一郎は、
大阪で開催される入札会の会場に、汽車に乗ってまで向かったのだとか。
そして、当時の売立での最高金額16500円で入手したそうな。
ちなみに、個人的に調べてみたのですが、この当時の公務員の初任給は14円程度。
ということは・・・・・いや、もう金額は考えないことにしましょう。


こちらの 《交趾大亀香合》 も、コレクター初代根津嘉一郎の性格が垣間見える作品。

交趾大亀香合  《交趾大亀香合》 漳州窯系
1合 施釉陶器 中国・明時代 17世紀 根津美術館蔵



亀の香合と言えば、サントリー美術館で絶賛開催中の “藤田美術館の至宝” にも出展されていますが。
関西を代表するコレクター・藤田傳三郎が亡くなる10日前に、
現在の価格にして9億円という破格の金額で落札したという逸話付の 《交趾大亀香合》 があります。
実は、この時、落札して喜んだ藤田傳三郎の影で、落札できずに悔しい想いをしたのが初代根津嘉一郎。
それから25年の時を経て、ようやく緑色の亀の香合を手に入れることが出来たのだとか。
もはや執念ですね。


と、このように今回の展覧会では、初代根津嘉一郎のエピソードが多く紹介されていました。
美術品そのもののストーリーではなく、
言うなれば、美術品にまつわるサイドストーリーという感じですが、
なかなか知る機会の無いエピソードばかりだったので、興味深かったです。


ちなみに。
基本的には、展示作品は根津美術館のコレクションによるものですが。
中には、石川県立美術館蔵の 《色絵白雁香合》 のように、

色絵  《色絵白雁香合》 1合 施釉陶器 オランダ 17世紀 石川県立美術館


初代根津嘉一郎が見たがった、または欲しがった美術品も紹介されていました。
夢が叶って、きっと初代根津嘉一郎も喜んでいることでしょう。


 ┃会期:2015年9月19日(金)~11月3日(水・祝)
 ┃[ただし9/21、10/12(ともに月・祝)、11/2(月)は開館し、10/13(火)は休館]
 ┃会場:根津美術館
 ┃
http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/index.html




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