すごいぞ、これは！

現在、埼玉県立近代美術館では、“すごいぞ、これは！” という展覧会が開催されています。
何はさておき、展覧会タイトルのインパクトがすごいぞ、これは！


（注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。）


こちらは、近年注目を集めている障害のある作家が制作した作品を紹介する展覧会です。
その手のアウトサイダーアート展、アール・ブリュット展は、ここ最近毎年のように開催されているので、

“あぁ、またやるんだ。『24時間テレビ』 くらいに風物詩になりつつあるなぁ”

くらいに思っていたのですが。
“すごいぞ、これは！” と、自らハードルを上げるだけあって、
ここ最近のアウトサイダーアート展、アール・ブリュット展とは一線を画したすごい展覧会でした！



この展覧会の肝はなんと言っても、
全国の美術館学芸員や美術の専門家がそれぞれに、
「すごいぞ！」 と推薦した12名のアーティストたちの作品を紹介している点。
特に勝ち負けはないのでしょうが、
おそらく12名の方々は、他の人に負けじと、真剣に隠し玉のアーティストを推薦したはず。
その結果、すごい内容の濃い展覧会となっていました。


“すごいぞ、これは！” と先にタイトルで言われてしまったため、
僕は、意地でも、「すごいぞ、これは！」 と言わないようにしようと心に誓っていたのですが。
結果としては、「すごいぞ、これは！」 を連発してしまいました （笑）

今回展示されていた中で、
特に 「すごいぞ、これは！」 と思ったのが、西脇直毅さんの 《猫紋づくし》 という作品です。
離れて見ると、何のことやら。




これくらい近づいて見ても、やっぱり何のことやら。




では、ギリギリまで近づいてみましょう。
すると、自然に口から、あの言葉が飛び出るはずです。

　　


「すごいぞ、これは！」

画面を埋め尽くしているのは、猫。
それもキャラクター化された可愛い猫。
たまに、犬やワニや兎など、別の動物も混じっています。
画面を水玉で埋め尽くす草間彌生さんの作品を筆頭に、
画面を何かでビッシリ埋め尽くす作品自体は、そう珍しくないのかもしれないですが。
それらは基本的に、強迫観念というか、圧迫感があるのに対し。
西脇直毅さんの作品の場合は、むしろポジティブな印象。
いつまでも見てられる、というか、いつまでも見ていたくなる作品でした。

ちなみに、モノクロだけでなく、カラーver.もあります。




続いて、思わず 「すごいぞ、これは！」 の声が漏れたのは、伊藤輝政さんの作品群。



　　


デコトラにクレーン車に、右翼の街宣車に。
これらはすべて紙で制作されています。
会場に展示されているのは、伊藤輝政さんが制作した作品のごく一部。
なんと、彼は誰に見せるわけでもなく、約30年の間で約800台も作り上げたのだとか。
そして、今もなお、作り続けているのだとか。


作り続けているといえば、藤岡祐機さんの作品も、「すごいぞ、これは！」 でした。




アクセサリーのショーケースを思わせる展示ケースに飾られていたのは、不思議な形態の何やら。

　　


実は、こちらは紙に無数のハサミを入れることで誕生した作品です。
細かい幅でカットする際に、絶妙に力を入れることで、紙が撚れてスパイラル状に。
結果として、2次元の紙から、3次元の不思議な形態が生まれているのです。


最後に 「すごいぞ、これは！」 と紹介したいのが、杉浦篤さんです。

　　


壁一面に貼られた杉浦篤さんの作品。
この味のある写真は、一見するとかなり年季が入っているように思えますが。
実は撮られて10年くらいしか経っていないものなのだとか。
ちなみに、撮影したのは、杉浦さんの家族であったり、知人であったり。
杉浦さんは気に入った写真を見つけると、それをひょいと拝借し、大事に保管する癖があるのだとか。
そして、その写真を何度もこすったり、なでたりすることで、この作品が出来上がるのだそうです。
いや、正確には、杉浦さん自身は、おそらく作品ともなんとも思っていないはず。
かつて普通の写真だったはずのものが、味のある何かに変化していることに、
「すごいぞ、これは！」 と驚いた周りの人物が、勝手に作品と認識しているに過ぎないのです。
もともとは朝鮮の雑器だったものを、茶の湯の名品と珍重しているのに近いものがあります。



他にも、たくさんの 「すごいぞ、これは！」 がありましたが、記事はこの辺りで。
見逃せないぞ、これは！




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