本日ご紹介するのは、三菱一号館美術館で開催中の “プラド美術館展―スペイン宮廷 美への情熱”。
スペインにある世界有数の国立美術館、プラド美術館の珠玉のコレクションを紹介する展覧会です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
実は、これまでにも、プラド美術館展と銘打った展覧会は、
2002年には東京都美術館と大阪市立美術館で、2006年には国立西洋美術館で開催されています。
しかし、今回のプラド美術館展には、過去2回のプラド美術館展とは決定的に異なる点があるのです。
それは、展覧会が、小さい作品によって構成されているということ。
エル・グレコ 《受胎告知》
1570-72年 油彩・板 26.7×20cm プラド美術館蔵 © Archivo Fotográfico, Museo Nacional del Prado. Madrid
ディエゴ・ベラスケス 《ローマ、ヴィラ・メディチの庭園》
1629-30年 油彩・カンヴァス 48.5×43cm プラド美術館蔵 © Archivo Fotográfico, Museo Nacional del Prado. Madrid.
たまに大きな作品もありますが、出展作のほとんどが小さな作品です。
「なぁんだ。小さな作品なら、パッとしなそうだからいいや・・・」
と思っていませんか?
いやいや、今回のプラド美術館展は、あえて小さい作品にこだわった展覧会なのです。
小さいからこそ精密で繊細な、
小さいからこそ隅々まで神経が張り巡らされたような、
小さいからこそ親密で愛おしくなるような、そんな作品ばかりがセレクトされています。
さらに、作品保護の理由から、公開や館外への輸送が激しく制限される貴重な板絵が約35点も出展!
2015年にもなって、このセリフは言いたくなかったですが、まさに 「宝石箱や~!」 な展覧会でした。
見るべき作品はたくさんありますが。
まずは何と言っても、日本初公開となるヒエロニムス・ボスの作品です。
奇想の画家と言われるヒエロニムス・ボスの真筆作品は、現在確認されているのは、たった20点ほど。
そのうちの貴重な1点が、こちらの 《愚者の石の除去》 です。
ヒエロニムス・ボス 《愚者の石の除去》
1500-10年頃 油彩・板 48.5×34.5cm プラド美術館蔵 © Archivo Fotográfico, Museo Nacional del Prado. Madrid.
ボスが活躍した時代のネーデルラントでは、
頭の小石が大きく成長するとバカになってしまうので、その石を取り除く手術が必要と信じられていたのだとか。
描かれているのは、そんな手術の場面です。
「私、失敗しないので」 とばかりに執刀する外科医。
しかし、その頭には、なぜか漏斗が。
実は、漏斗は愚行のメタファー。
つまり、この手術はイカサマの手術ということなのです。
確かに、患者の頭の中からは、小石ではなく青い花が取り出されています。
・・・・・って、結局、頭から青い花を取り出したのなら、結果的には手術成功なのでは??
ともあれ、小さな画面に、不可思議なドラマがいっぱい。
良質の短編映画を観ているようでした。
また、“シャルダン展” を筆頭に、静物画に定評のある (?) 三菱一号館美術館。
今回も、派手さは無いものの、なぜか惹かれてしまう、
そんな静物画の名品が数多くセレクトされていました。
特に印象的だったのが、こちら↓
フアン・バン・デル・アメン 《スモモとサワーチェリーの載った皿》
1631年頃 油彩・カンヴァス20×28cm プラド美術館蔵 © Archivo Fotográfico, Museo Nacional del Prado. Madrid.
スモモとサワーチェリーが、お皿に乗っているだけなのですが、惹き付けられるものがありました。
作品のキャプションには、
「バン・デル・アメンが用いた強烈な光の対比が、作品全体のドラマチックな性格を強めている。」
とありましたが、さすがにドラマチックとまでは思いませんでした (笑)
スモモとサワーチェリーが、お皿に乗っているだけなので。
最後に、もっとも印象に残っている作品をご紹介。
フランスの不詳の画家による 《自らの十字架を引き受けるキリスト教徒の魂》 です。
十字架、多っ!
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プラド美術館展―スペイン宮廷 美への情熱
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