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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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始皇帝と大兵馬俑

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1974年、中国の農夫が井戸を作ろうと、
自宅の庭を掘った所、偶然発見されたことで世界的な大ニュースとなった兵馬俑。

兵馬俑  1号兵馬俑坑 秦始皇帝陵博物院蔵
©陝西省文物局・陝西省文物交流中心・秦始皇帝陵博物院



史上初の中国統一を成し遂げ、最初の皇帝となった始皇帝のお墓を守るべく、
副葬品として埋葬された兵士や馬をリアルに再現した等身大の陶製の人形です。
その数、実に約8000体!
しかも、それぞれ異なった風貌をしているというから驚きです。


さてさて、兵馬俑の一部は、これまでに何度も来日しており、
兵馬俑の名を冠した展覧会も多く開催されてきたようなのですが。
意外にも、東京国立博物館で兵馬俑をフィーチャーした展覧会は、これまで開催されたことがなかったとのこと。
そんな東京国立博物館が満を持して、この秋冬に開催するのが、特別展 “始皇帝と大兵馬俑” です。

会場  会場
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)


展覧会の前半は、秦王朝や始皇帝に関する出土品の数々が紹介されています。

会場

会場  会場


正直なところ、会場を訪れてすぐは、

“(こういうのよりも) 早く兵馬俑が観たいんだよなァ。”

と、思っていたのですが。
せっかくだからと、キャプションを読みながら見てみると、
興味深いものが多く、気づけばじっくりたっぷり楽しんでいる自分がいました。
特に印象に残ったのは、こちらの 《双龍壁文空芯磚》
宮殿の回廊と地面を繋ぐ階段の一つとして使われていたと推測されるものだそうです。

蒼龍


紀元前3世紀に作られたと考えると、その技術力の高さには驚かされるのですが。
それを打ち消すかのような (?) フリーハンド感。
どことなく、さくらももこの世界を彷彿とさせるものがありました。

他にも、玉のアクセサリーや精巧に作られた剣、
重量単位を統一するために始皇帝が作らせた基準となる重りなど、
その文明の高さに驚かされる出土品は多かったです。


そのため、すっかり本来の目的を忘れてしまっていましたが (笑)
いよいよ兵馬俑とご対面です。
でも、その前に、始皇帝陵の西側の坑から出土したという青銅製の精巧な馬車の模型とご対面。

会場  会場


実は、こちらは実物ではなくレプリカなのですが、
所蔵元である秦始皇帝陵博物院にも2体しかないという貴重なレプリカです。
東京国立博物館の展示では珍しい真っ白な空間に、よく映えていました。

銅馬車  1号銅車馬 [展示は複製] 原品=秦時代・前3世紀 
西安市臨潼区秦始皇帝陵銅車馬坑出土 秦始皇帝陵博物院蔵 ©陝西省文物局・陝西省文物交流中心・秦始皇帝陵博物院



そして、今度こそ、本当に兵馬俑とご対面です。
約8000体ある兵馬俑のうち、今回日本に来ているのは10体。
「8000分の10」 と聞くと、だいぶ少ない気がしますが (ぶっちゃけ、僕もそう思っていました) 。
今回の展覧会のために精巧に作られた70体のレプリカ兵馬俑を従えた展示空間は、圧巻も圧巻でした!

兵馬俑

展示  展示


「こんなにも壮大なスケールを感じる展覧会が、かつてあったでしょうか?!」

と声を大にして言いたくなるくらいの圧倒的な展示空間。
例えとして、巧いものが思い浮かばなくて恐縮ですが、
あえて挙げるなら、恐竜展の迫力に近いものがありました。
ともあれ、東京国立博物館の本気が伝わってくる展覧会です。
文句なしに3ツ星。
星星星


さて、空間全体を味わった後は、10体ある兵馬俑を一つ一つ味わいましょう。
パッと見、ピスタチオの左のヤツっぽい将軍俑や、

将軍  将軍俑秦時代・前3世紀 
西安市臨潼区秦始皇帝陵1号兵馬俑坑出土 秦始皇帝陵博物院蔵 ©陝西省文物局・陝西省文物交流中心・秦始皇帝陵博物院



パッと見、アホの坂田歩きしているように思える立射俑も味わい深かったですが。
(実際は、矢を射る所作のようです)

立射  立射俑 秦時代・前3世紀 
西安市臨潼区秦始皇帝陵2号兵馬俑坑出土 秦始皇帝陵博物院蔵 ©陝西省文物局・陝西省文物交流中心・秦始皇帝陵博物院



個人的には、水鳥の俑がお気に入り。

水どり


このようい精巧で、かつ愛らしい水鳥の俑は、全部で20体出土しているとのこと。
他にも、鶴やガチョウの俑も出土しているのだとか。
それらの俑は皇帝の祭祀に供されるために飼育していた水禽を表現したものという見解があるのだそうですが。
もしかしたらもしかして、マンに一つの可能性として、
水鳥も軍団を作って、戦争で戦っていたのかもしれませんよね。
と、考えると、少しだけほのぼのとした気分になりました。




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