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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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鴻池朋子展「根源的暴力」

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ほぼ毎日のように、美術館や博物館、ギャラリーを訪れています。
そのため、数年前に観た展覧会の記憶が、
うっすらしたものになっている、または、すっぽり忘却されてしまっている。
そんなことも少なくありません。

が、5年以上経った今でも、全く記憶が風化してない展覧会があります。
それは、2009年に東京オペラシティアートギャラリーで開催された、
“鴻池朋子展 インタートラベラー 神話と遊ぶ人” という展覧会です。
あの展覧会が無かったら、僕は今ほど現代アートに心を開いていなかったかもしれません。


あれから6年。
鴻池朋子さんの大規模な個展が、神奈川県民ホールギャラリーで開催されています。
その名も、 “鴻池朋子展「根源的暴力」” です。

鴻池


『暴力』 という言葉にギョッとさせられましたが。
鴻池さんは、2011年3月11日の震災をきっかけに、
作品に対するスタンスや思想が大きく変化してしまったのだそうです。
そんな彼女曰く、

「人間がものをつくり生きてゆくということは、自然に背く行為であり根源的な暴力です。」

とのこと。
それでもアート作品を生み出さずにはいられない。
今回の展覧会を通じて、アーティストの業のようなものを感じさせられました。


展示されていた作品は、すべてが新作。
鴻池さんらしい作品もあることにはありましたが。

鴻池


《名づけようのないもの》 と名付けられたシリーズや、

なづけようの


アメーバや粘菌といった原始的生物を想起させる作品など、
これまでの鴻池さんのイメージと結びつかない素焼粘土製の作品が多く発表されていました。
また、素焼粘土の作品以上に、展覧会のウエイトを締めていたのが牛革を素材にした作品です。

皮  牛側


今回の展覧会もメインビジュアルとなるのが、牛革を縫い合わせて作製された約20mの 《革緞帳》

牛皮  牛皮


床面にもその姿が映り込み、それはそれは圧巻の作品でした。
なめらかで力強く、テクスチャや風合いが魅力的な牛革。
しかし、もとは生物の皮である (しかも、それを剥ぐ) と考えると、
どこか “残酷さ” のようなものも、併せ持った素材なのかもしれません。
今回の展覧会のキーワードである 「根源的暴力」 を表現するには、確かにピッタリの素材です。


さて、今回の鴻池朋子展ですが。
超個人的な意見を言わせてもらうと、やや期待を裏切られた気がしました。
鴻池朋子さんの独自の作品世界が好きだったのですが。
今回の作品は、プリミティブで、地域も年代も不詳の誰かが制作した作品かのような印象を受けました。
これまでの作品が、鴻池朋子さんにしか書けない絵本という感じなら、
今回の作品は、どこかで伝承されている神話や民話といった感じでした。
確実に、鴻池朋子らしさは、薄まっていました。

勝手に自分の中で鴻池朋子像を作り上げて、
裏切られただなんだと言われるのは、本人にとっては心外も心外でしょうが。
好きなバンドのCDを買い続けていたら、4枚目、5枚目くらいのアルバムで、
「あれっ、これ、僕の好きな感じじゃなくなってきたなぁ・・・」 と妙に淋しくなってしまった。
そんな心境に近いものがあります。
星




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