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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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あなたに見せたい絵があります。

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これまでに、

「印象派はお好きですか?」

とか、

「なぜ、これが傑作なの?」

とか、

「アンフォルメルとは何か?」

とか。
何かキャッチコピーみたいな感じのタイトルの美術展を開催してきたブリヂストン美術館。
今回の美術展のタイトルは、こちら↓

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-あなたに見せたい絵があります。


“あなたに見せたい絵があります。”
何とも泣けそうな気配がする美術展タイトルです (笑)

「あなたに見せたい絵があります。…って、どの美術展も、そうじゃないの?!」

という至極まっとうなツッコミは、脇に置きまして。
こちらは、今年でブリヂストン美術館が開館60周年を迎えたのを記念して、
ブリヂストン美術館と姉妹美術館である石橋美術館の両館が所蔵する代表作品109点を、
一挙に公開するという超豪華スペシャルな美術展。

どれくらい豪華かと言いますと。
マネの 《自画像》 や、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-自画像


ルノワールの 《座るジョルジェット・シャルパンティエ嬢》

座るジョルジェット・シャルパンティエ嬢


ピカソの 《腕を組んで座るサルタンバンク》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-腕を組んで座るサルタンバンク


…といったブリヂストン美術館の誇る目玉コレクションが、
もれなく出展されているのは、もちろんのこと。

石橋美術館所蔵の重要文化財・雪舟の 《四季山水図》 が、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-四季山水図(春幅)


全4幅勢ぞろいで、特別のケースに入れられて展示されていたり。

昨年開催された “青木繁展” では目玉扱いだった 《海の幸》 が、

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-海の幸


今回の美術展では、添え物くらいの扱いをされていたり。
ブリヂストン美術館側だけでなく、福岡の石橋美術館側のラインナップもスゴすぎました。
これは、まさに、石橋財団コレクションのオールスター戦と云ったところ!

さらに、それに加えて、今回の美術展では、
今年からブリヂストン美術館のコレクションに加わったルーキー (=新所蔵品) も初披露されています。

印象派の画家の一人カイユボットが、第2回印象派展に出展したうちの1作 《ピアノを弾く若い男》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ピアノを弾く若い男


レースのカーテン越しに差し込む光の具合だけでなく、
室内の温度、耳を澄ませばピアノの音色までも伝わってくるような作品でした。
黒く光るピアノに、ピアノを弾く男性の手や、
室内の壁紙が映り込んでいるという描写もお見事。


新所蔵品は、もう一点あります。
岡鹿之助の 《セーヌ河畔》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-セーヌ河畔


セーヌ河畔を描いた作品なのに、
現実感がないほど、メルヘンチックな世界が広がっています。
何となく、お菓子とかおもちゃの国っぽいイメージ?


《ピアノを弾く若い男》 も、 《セーヌ河畔》 も、お世辞抜きで素敵な作品でした。
このご時世に (?) 、こんなにも素晴らしい絵をコレクション出来たブリヂストン美術館。
(しかも、2点も!)
その実力には、ただただ驚くばかりです。
星星星
「このまま70周年を目指して頑張ってください!」 の意味も込めての3つ星。


さてさて、今回の美術展。
ただただ、石橋コレクションを見せびらかすだけの美術展ではありませんでした。
「自画像」 「ヌード」 「レジャー」 「海」 …など11のテーマに分けて展示。
さらには、展示作品すべてにキャプションを付けるという、力の入れようでした。
テーマが小分けにされており、なおかつキャプションは詳細。
そのおかげで、美術展に飽きることなく、
また、109点すべての作品に向き合うことが出来ました。

印象に残っている作品は、たくさんありますが。
厳選して、いくつかをご紹介。
まずは、中村彝の 《自画像》

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-自画像


「?!」

なんなのでしょう、この人をイラッとさせる表情は!
第一印象で、カチンと来るものがあります。
しかし、中村彝は、日ごろから、こんな表情だったとのこと。
キャプションによると、彼のあだ名は、 “にがむし”
確かに (笑) !
“にがむし” というあだ名は、言い得て妙です。


続いても、ちょっとカチンと来た作品。
和田英作によるヌード画です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-チューリップ


明らかに、メインは、このヌードの女性なのに。
この絵のタイトルは・・・

《チューリップ》

確かに、チューリップは描かれていますけれども (苦笑)
明らかに、そっちはメインじゃないでしょ!
潔くないにもほどがあるタイトル。


ブリヂストン美術館で何度も観ている作品ながら、
今回のキャプションを、よく読んだことで、新たな事実を発見した一枚も。
アンリ・マティスの 《赤い胴着の女》 です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-赤い胴着の女


描かれているのは、マティスのモデル兼秘書のリディア・デレクトルスカヤ。
彼女は、細いウエストが魅力の女性だったとのこと。

「ふむふむ。ウエストが細いのかぁ・・・って、細すぎ!」

くびれ、どんだけ!


普段は、東京ではなかなか目に出来ない石橋美術館コレクション、
その中から、純粋に気に入った一枚を。
古賀春江の 《素朴な月夜》 です。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-素朴な月夜


タイトルも、メルヘンチックですが、
作品世界そのものも、何ともメルヘンチック。
フクロウや犬 (?) の置きもの、
墜落しそうな飛行機に、何故か机の下に置かれたメロンやリンゴ。
これでもかというくらいに、いろいろなことが詰め込まれた、おもちゃ箱のような一枚です。



そうそう。最後に、一つだけ。
で、つまるところ、 “あなたに見せたい絵があります。” とは、
一体、どの絵を指してのことだったのでしょうか?
109点全部??
ただ、思い返せば、1点だけ、
特別な感じで展示されていた作品があるにはありました。

それは、宮本三郎による 《石橋正二郎氏像》

あれが、僕らに見せたい絵だったのかしら??




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