日本初の写実絵画専門美術館であるホキ美術館が開館して、ちょうど丸5年が経ちました。
それを記念して、現在は、“3つの個性 ―表現の可能性を探る―” という展覧会が開催されています。
こちらは、ホキ美術館に関わりの深い作家の中から、
五味文彦さん、大畑稔浩さん、島村信之さんの3人をピックアップし、
代表作や今回のために描かれた新作を含む彼らの作品を紹介する展覧会です。
「写実絵画なんて、(絵のめちゃめちゃ巧い) 誰が描いても一緒でしょ?」
と、思っていませんか?
いえいえ、ちゃんと作家によって、ちゃんと個性はあるのです。
ホキ美術館で一つ一つの作品に、じっくり向き合えば、きっと個性が感じられるだろうとは思いますが。
作品数も作家の数も多いので、個性を感じられるまでには至らない方が大半なはず。
そういう意味では、今回の展覧会は、あえて3人の画家に絞り、
それぞれの作家作品を24点ずつ紹介しているので、それぞれの作家の個性は感じ取りやすくなっていました。
写実絵画のより深い楽しみ方を実感できる展覧会かと思われます。
2ツ星。
さて、何と言っても気になるのは、3人の作家の新作でしょう。
まず、女性像を得意とする島村信之さんの新作は、
これまでのように太陽光に照らされる女性像ではなく、月明かりに浮かび上がる女性像でした。
島村信之 《月夜》 2015年 ホキ美術館
その一方で、最近、昆虫の標本にハマっているそうで、
昆虫の標本を描くシリーズも初めていくとのことでした。
島村信之 《オオコノハムシ-擬態-》 2015年 ホキ美術館
ふり幅の大きさに、驚かれされます。
とても同じ作家の作品とは思えません。
大畑稔浩さんは、自宅からすぐ近くのところにある場所を季節ごとに描いたシリーズを展開。
大畑稔浩 《気配―夏》 2014年 ホキ美術館
大畑稔浩 《気配―秋》 2015年 ホキ美術館
作品に、よりリアリティをもたせるため、
樹皮には樹皮の粉末を、葉っぱには葉っぱの粉末を混ぜているとのこと。
確かに、そう言われてみると、
他のどの作家よりも、マチエール (=絵肌) が強調されていた気がします。
毎回、衝撃を受けていますが、今回の五味文彦さんの新作にも、衝撃を受けました。
その作品が、こちら↓
五味文彦 《樹影が刻まれる時》 2015年 ホキ美術館
作品の途中段階では、最終的には影になっている箇所も、みっちり葉っぱを描き込んでいたそうです。
ところが、最終的には思い切って、その箇所をグレーに潰してしまったのだとか。
なんと、もったいない!
しかし、あえて潰したことで、手前の樹木が際立ったような気がします。
この作品を目にした時に直感したのは、
「琳派っぽい!」
ということ。
技法は写実。それも、ヨーロッパ的な写実なのですが。
(画面左の) 樹木が際立ったデザイン性。
フラットな画面。大胆な構図。
まさに、琳派の絵画のようです。
写実絵画という西洋の技法を用いて、日本絵画の伝統的なスタイルを実現してしまうだなんて。
今後、写実絵画の未来を切り開いていくのは、間違いなく五味文彦さんだと思います。
もう一つの新作、《UTSUSEMI》 も良かったです。
五味文彦 《UTSUSEMI》 2015年 ホキ美術館
ちなみに、展覧会としてフィーチャーされているのは、こちらの3名の作家ですが。
野田弘志さんの 《「崇高なるもの」》 シリーズの新作や、
石黒賢一郎さんのガスマスクをモチーフにした作品など、
他の作家の新作も、常設展という形で紹介されています。
それらもお楽しみに。
最後に、一つ告知を。
ホキ美術館にコレクションされている写実絵画の魅力を、
1時間たっぷりご紹介する番組が、12月6日の15時よりBS日テレにて放映されます。
ナビゲーターは住吉美紀さんと、そして、なんとなんとアートテラーのとに~です。
(写真左より、ホキ美術館館長、住吉美紀さん、僕)
良かったら、是非ぜひご覧くださいませ。
(そういう理由で、12月6日はアートツアーはお休みですw)
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3つの個性 ー表現の可能性を探る―
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