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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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杉本博司 ハダカから被服へ

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原美術館で、3月31日より始まった美術展、
“杉本博司 ハダカから被服へ” へ行ってきました。
7月1日まで。


杉本博司さんと言えば、日本を代表する世界的な写真家。
水平線だけを写した 『海景』 シリーズや、
映画を一本上映している間、ずっと露光させ続ける 『劇場』 シリーズ、
世界的に有名な建築を撮った 『建築』 シリーズ…など。
これまでに様々なシリーズを発表し続けています。

はてさて、今回は、どんな写真展になのかしら・・・と思いきや、
もちろん杉本博司さんの写真作品が中心にはなっているものの、
彼の所蔵する絵画が展示されていたり、
彼がデザインした文楽の衣装が展示されていたり、
はたまた、アルミニウムの彫刻作品あり、
公益財団法人京都服飾文化研究財団蔵のドレスが展示されていたり。
およそ、写真展とは言いきれない、不思議な美術展となっていました。


何でも、今回のコンセプトは、
「人類の歩みを服飾の歴史として捉える」 美術展とのこと。
もはや、杉本さんは写真家という枠を飛び出してしまっていました。
(どこへ向かおうとしているのか?)

とは言っても、今回の美術展の一番の核となるのは、もちろん杉本博司さんの写真。

アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】-ハダカから被服へ


このチラシにも使われている 《スタイアライズド スカルプチャー》 シリーズです。

す、すたいあらいずど??




『ステイン・アライブ』 ではなく、スタイアライズド。
これは、ガブリエル・シャネル、イヴ・サンローラン、川久保玲など、
20世紀を代表するファッションをマネキンに着せ、彫刻的にとらえたシリーズ。
同じファッションながら、女性誌に載る写真と、
杉本博司さんが撮った写真で、こんなにも違う表情になるものかと、静かな感動がありました。
確かに、ファッションを写した写真というよりも、彫刻を写した写真のようでした。

また、このシリーズの中に、三宅一生さんのファッションをとらえた写真があったのですが。
以前、21_21 DESIGN SIGHTで観たアーヴィング・ペンの写真とも、やはり違いました。
ざっくり言うと、アーヴィング・ペンは楽しげで、杉本博司さんは重厚的。
…というより、重々しい?
ともあれ、杉本博司さんの 《スタイアライズド スカルプチャー》 シリーズの写真を観て、

「わぁ~♪着てみたい~♪」

とはならない気がします (笑)



さてさて、肝心の美術展全体の率直な感想としては、

「これで、1000円は高いなぁ」

という印象。
さらっと観たなら、ものの5分で観終わってしまう美術展でした。
原美術館の雰囲気も味わうということでしたら、十分満足できるのでしょうが。
さすがに、もう10回以上は通っているので。。。

とまぁ、美術展そのものには、あまり面白みを感じませんでしたが。
1点だけ、グッと来た作品がありました。
(たぶん、杉本さんも、今回の美術展で、実は一番見せどころと思っている作品ではないかと)

それは、原美術館の1階展示室のサンルームから見える庭に設置された 《アートのほうき かえりな垣》 という作品。
(画像はありません。あしからず)

杉本博司さん曰く、原美術館の庭園は素晴らしいが、ただ一つ残念なのが、エアコンの室外機。
それが、庭園の景観をダメにしているとのこと。
なんとかならないものか。
そこで、杉本さんは、思いついたのです。

ひらめき電球

ほうきを、たくさん並べて、垣にして隠してしまえばいいのだと。
作品に使われているのは、ただのほうきではありません。
一本250円 (!) の中国製のほうきです (笑)
そのリーズナブルなほうきが、
妙にアートな空間とマッチしているのは、ある意味で見もの!
正直、僕的には、被服うんぬんは、どうでも良かったですが、
この 《アートのほうき かえりな垣》 という作品 には、やられました。
星




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