今年2016年は、日本とイタリアの国交が樹立して、ちょうど150年目に当たる節目の年。
それを記念して、今年は、イタリア美術の大規模な展覧会が続々と開催される予定です。
その栄えあるトップを飾るのが、東京都美術館で開催中の “ボッティチェリ展” 。
《春(ラ・プリマベーラ) 》 や 《ヴィーナスの誕生》 でお馴染みのサンドロ・ボッティチェリの大規模な回顧展です。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております)
《春(ラ・プリマベーラ) 》 や 《ヴィーナスの誕生》 こそ来日していませんが。
それらと並んで代表作である初期の傑作、
《ラーマ家の東方三博士の礼拝》 が、待望の初来日を果たしています。
しかも、もったいぶることなく (?) 、会場に入ってすぐのところに展示。
まさか、一発目から 《ラーマ家の東方三博士の礼拝》 に出合うとは。
心の準備が出来ていなかったので、初っ端から度肝を抜かれました。
サンドロ・ボッティチェリ 《ラーマ家の東方三博士の礼拝》
フィレンツェ、ウフィツィ美術館Gabinetto Fotografico del Polo Museale Regionale della Toscana
Su concessione del MiBACT. Divieto di ulteriori riproduzioni o duplicazioni con qualsiasi mezzo
描かれているのは、東方に住む3人の博士 (=占星術の学者たち) が、
星の光によってベツレヘムの地に導かれ、そこで出会った幼子イエスを礼拝する場面。
聖書画としては、わりとポピュラーな画題です。
しかし、この作品は、そんな東方三博士の礼拝を画題としながらも、
当時の権力者であったメディチ家の主要人物たちを、ちゃっかり描きこんでいます。
それどころか、ボッティチェリは自分自身もちゃっかり描きこんでいます。
現代に例えるならば、歴史モノの映画の本編に、
映画会社のオーナー一族をカメオ出演させ、監督自身も映り込んでいる・・・そんな感じでしょうか。
と、いきなり目玉作品が登場してしまったのですが。
これで終わりではありません。
今回のボッティチェリ展は、まだまだ目玉作品があるのです。
例えば、ボッティチェリの代表作の一つとされる 《書斎の聖アウグスティヌス》 。
サンドロ・ボッティチェリ 《書斎の聖アウグスティヌス》
フィレンツェ、オニサンティ聖堂Archivio Fotografico. Opificio delle Pietre Dure di Firenze
また例えば、数ある聖母子像の中でも最高傑作の呼び声高い 《聖母子(書物の聖母)》 。
サンドロ・ボッティチェリ 《聖母子(書物の聖母)》
ミラノ、ポルディ・ペッツォーリ美術館 © Milano, Museo Poldi Pezzoli, Foto Malcangi
さらには、日本が唯一所蔵するボッティチェリ作品 《美しきシモネッタの肖像》 も展示されています。
サンドロ・ボッティチェリ 《美しきシモネッタの肖像》
丸紅株式会社 ©Marubeni Corporation
さらにさらに!
晩年の傑作といわれる 《アペレスの誹謗》 も初来日しています。
古代ギリシャでもっとも著名な画家アペレス。
そのアペレスが描いたとされる現存しない絵画を、ボッティチェリが想像力を駆使して復元した作品です。
描かれているのは、美しい女性が、半裸の男性の髪を掴んで、
玉座に引きずっていくという、なんともバイオレンスなシーン。
実は登場人物は、すべて何かの寓意であり、
美しい女性は 『誹謗』、半裸の男性は 『無実』、玉座に座るのは 『不正』 の寓意なのだそうです。
他にも、『無知』 『嫉妬』 『懺悔』 などの寓意が画面に登場しています。
気になったのは、『真実』 の寓意。
思わず、 「この緊迫した状況で、何をしてんねん!」 とツッツみたくなりました。
ここぞという時には、『真実』 なんて役に立たないのかもしれません。
美味しいものは先に食べてしまうタイプの展覧会、というわけではなく。
美味しいものは先に食べ、その後、何度も美味しいものが食べられる展覧会でした。
文句なしに3ツ星。
“ボッティチェリ展” を観なければ、2016年が始まらないと言っても過言ではないでしょう。
ちなみに、ボッティチェリの作品だけでなく、彼の師に当たるフィリッポ・リッピと、
フィリッポ・リッピ 《聖母子》
ヴィチェンツァ市民銀行Collezione Banca Popolare di Vicenza
ボッティチェリの弟子であり、フィリッポ・リッピの息子フィリッピーノ・リッピの作品も紹介されています。
インパクトがあったのは、フィリッピーノ・リッピの 《洗礼者聖ヨハネ》 《マグダラのマリア》 。
衝撃的なほどにガリガリでした。
この絵がラストに展示されていたせいで、
ボッティチェリの作品の印象が一瞬吹き飛んでしまいました (笑)。
今回のボッティチェリ展に対しての唯一のクレーム (?) と言えば、それくらいなものです。
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ボッティチェリ展
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