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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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MOTアニュアル2016 キセイノセイキ

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今年5月30日から、改修工事のため長期休館となる東京都現代美術館。
その休館前ラストの展覧会として、“MOTアニュアル2016 キセイノセイキ” が開催されています。

帰省


MOTアニュアルとは、1999年より東京都現代美術館で行われているグループ展のシリーズ。
今回は、東京都現代美術館とアーティストたちによる組織ARTISTS' GUILDとの協働企画なのだとか。


キセイノセイキ。
「帰省の盛期」 なのか、「奇声の精気」 なのか、はたまた 「寄生の清輝」 なのか。
どの漢字を当てるのか、公式には名言されていませんでしたが。
どうやら、「規制の世紀」 という字を当てるようです。

21世紀に突入してから、表現行為への規制が、より厳しくなっています。
今、この時代に表現することとは何か。
そんなナイーブなテーマに、あえて公立の美術館が、
アーティストとともに向き合ったチャレンジングな展覧会でした。

会場には、規制というテーマと関連深い様々な作品が勢ぞろいしています。
例えば、齋藤はぢめさんの 《CLEAR》 という作品。

齋藤はぢめ《CLEAR》  齋藤はぢめ 《CLEAR》


えっ、女子高生がスミノフアイス飲んでるの?!
安心してください、モデルは二十歳過ぎてますよ。
しかし、制服と飲酒という取り合わせに、眉をひそめた方は少なからずいらっしゃるはず。
青少年への影響を考えると、規制される可能性もなくはなさそうです。


また、例えば、アルトゥル・ジミェフスキの 《繰り返し》 という作品。

繰り返し 繰り返し
アルトゥル・ジミェフスキ 《繰り返し》


こちらは、被験者を囚人と看守の2つのグループに分け、
監獄と言う状況下におかれた人間がどのようにふるまうか観察した有名な心理実験、
いわゆるスタンフォード監獄実験を、ポーランドで再演した記録映像作品です。

キャプション


作品には、このようなキャプションが添えられていました。
これもまた、規制の一種と言えましょう。


企画の立ち上げから参加し、それ以来、
規制について考え続けているという小泉明郎さんは、こんな新作を発表しています。

壁  小泉明郎 《空気》


壁には何も展示されていません。
でも、それが、作品なのです。
・・・って、どういうこと?
実は本来なら、ここに絵画が飾られる予定でした。
しかし、その絵画の内容をかんがみて、結局は自主規制したのだそうです。
(その作品自体は、アトリエにあるとのこと)


と、このように自主規制のパターンもあれば、
橋本聡さんの作品のように、美術館によって規制されていたパターンも。

規制  橋本聡 《抽象直接行動198の方法(仮)》

規制  

規制  規制


一口に規制と言っても、ケースはさまざま。
アートを考える上で避けては通れないテーマなので、いろいろと考えさせられました。


・・・と、アートを生業とするアートテラーにとっては、大変興味深い展覧会ではあったのですが。
一般の方にとって面白い展覧会であったかというと、正直、微妙なところです。

まず、全体的なトーンとして、表現に対する規制を、マイナス寄りなものに捉えていた印象を受けました。
(アーティストが企画している展覧会なので、そうなるのは仕方がないのでしょうが。)
アートを楽しみたいお客さんの中には、
暴力的なシーンを見たくない人や、性的な表現に嫌悪感を抱く人も少なからずいらっしゃいます。
規制することで、安心してアートを楽しむことが出来る。
一種のセーフティーネットのような役割があります。
規制には、そういったプラスの側面もあるはずなのに、その視点がすっぽり抜けていたような。
観客の立場にも立った議論が、もっとあっても良かったような。

というか、よくよく考えてみますと。
普通のサラリーマンや主婦が、こ規制について考えさせられたところで、
表現活動を生業にしているわけではないのですから、一体、何を思えばいいのか、と。
普段、表現が規制されるという経験は、そうそうないはずです。
そもそも最初から観客の存在を想定してなかったのでは?

ただでさえ、現代アートはとっつきづらい、難しいと一般的には思われているのに。
「現代アートの面白さを伝えよう」 ではなく、「今、この時代に表現することとは何か。」 という、
二歩も三歩も先に進んだテーマを掲げたところで、果たして一般のお客さんがついてくるのでしょうか。
アーティストのアーティストによるアーティストのための展覧会といった感じでした。
星


とは言え、面白い作品が無かったわけではありません。
特にインパクトを受けたのが、高田冬彦さんというアーティストです。
こんな注意書きが添えられていましたが。

性表現  


彼の作品には突き抜けたバカさがあり、
不愉快を通り越して、一種の爽快感すら覚えました。

高田  高田
高田冬彦 《Japan Erection》


こちらは、 《Japan Erection》 という作品。
日本列島の形をした男根をつけたヤマトタケルが、
その日本列島自身で、部屋中のものをなぎ倒すという映像作品です。
発想がぶっ飛びすぎてて、不覚にも吹き出してしまいました。
惜しむらくは、コスプレのクオリティの低さ。
みすず学苑のCMの並にクオリティが低いコスプレです。






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