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Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
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第2回ホキ美術館大賞展

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写実絵画界のM-1グランプリ。

・・・と僕が勝手に呼んでいる “ホキ美術館大賞” が今年も開催されています。
第2回となる今回は、93点がエントリー。
前回以上に激戦だったそうで、入賞作はそのうちの37点にとどまりました。

栄えある第2回ホキ美術館大賞を受賞したのは、
鶴友那さんの 《ながれとどまりうずまききえる》 という作品。

第2回ホキ美術館
第2回ホキ美術館大賞受賞作 鶴友那 《ながれとどまりうずまききえる》 2016年


どうしたってモデルの女性に目が向かってしまいますが。
この絵のメインモチーフは、生と死を連想させる水とのこと。
絵の前に立つと、水の流れが感じられます。
それだけでなく、水の流れる音や、水辺の匂いも感じられます。
さらには、まるで自分がこの川の中に立っているような感覚に。
足元に水のひんやりとした感触まで感じられてきました。
五感で感じる水。
確かに、水が主役の作品です。

でもでも、やっぱりモデルの女性も気になってしまうのが、男の悲しい性。
作家ご本人に尋ねてみたところ、本人自ら川に寝そべってポージングしたとのことでした。
まさに全身全霊を傾けた力作。
第2回ホキ美術館大賞を受賞するのも納得の作品でした。


また、第2回ホキ美術館大賞準賞を受賞したのは、後藤勇治さんの 《ガスタンクのある風景》 です。

ガスタンクのある風景
第2回ホキ美術館大賞準賞受賞作 後藤勇治 《ガスタンクのある風景》 2016年


《ガスタンクのある風景》 というタイトルですが、
あえてガスタンクを遠くに小さく描いているのが、この絵のキモ。
このベストアングルに出合うまでに、作家さんは何ヶ月もこのあたりをロケハンしたのだとか。
手前の水門のハンドルとの対比が、面白かったです。


惜しくも大賞や準賞を逃したものの。
審査は激戦だったというだけあって、入選作も力作ぞろい。
ということで、個人的に 「とに~賞」 をあげたい作品をご紹介いたしましょう。
(↑作家さんは辞退するでしょうが)

まずは、藤井佳奈さんの 《少女の精神》 という作品。

少女の精神
第2回ホキ美術館大賞入選作 藤井佳奈 《少女の精神》 2016年


インパクトを狙って、ロリータファッションを描いているのかと思いきや。
作家ご本人さんもロリータファッションに身を包んでおり、
ロリータファッションに魅せられた少女たちの気高い精神を表現したく作品を描いているとのこと。
少しお話しただけで、会話の端々にそのロリータファッションへの愛が溢れていました。
そんな作家さんが描いているゆえ、絵からはその愛情がひしひしと伝わってきました。
特に、フリルやレースの表現は秀逸!
実際のロリータファッションに身を包んでいる女性をまじまじと見ることは出来ませんが。
こちらは絵なので、是非、まじまじとご覧くださいませ。


松永瑠利子さんの 《Self-portrait》 も印象的な一枚。

松永
第2回ホキ美術館大賞入選作 松永瑠利子 《Self-portrait》 2016年


絵と向き合った瞬間に思わず目が釘付けとなりました。
女性が一糸まとわぬ姿だから・・・・・という即物的な理由は全くなく (いや、少しはあったかも)。
体だけでなく心も裸にしたような表情の絵の中の女性に、
「あなたは、さらけ出さないの?」 と問いかけられているような気がしたのです。
人前に出るときは、芸人モード、アートテラーモードと何重にも鎧を着込んでいる僕。
それを見透かされてしまった感じがしました。
あな恥ずかしや。


それから、岡村翔平さんの 《The Glass Prison ver2》

第2回ホキ美術館大賞入選作 岡村翔平
第2回ホキ美術館大賞入選作 岡村翔平 《The Glass Prison ver2》 2016年


夜露に濡れた窓を手でサッと一拭き。
誰しもが経験ある日常の一コマを描いた作品ですね。
・・・・・と、一瞬、そのまま通り過ぎようと思ったのですが。
近づいてみると、意外な事実を発見!

画面


夜露は描かれたものではなく、
額のアクリル板の裏に直に付けられているものであることが判明しました。
(どういう仕組みなのかは謎!)
こういう表現もアリなのですね。


また、中西優多朗さんの 《水面》 も要注目作品。

中西優多朗


画面奥が曲線を描いています。
それゆえ、まるで実際に見た光景のような印象に。
また、画面奥にちらっと見える滝。
そこから発せられるマイナスイオンが感じられるようでした。
ちなみに、中西優多朗さんは、高校2年生!
ホキ美術館大賞史上最年少での入選だそうです。
清宮幸太郎君、サニブラウン・ハキーム君と並ぶ美術界のスーパー高校生。
今後にも期待です!


この他にも紹介したい作品は、まだまだたくさんあります。
気になった入選作品の作家たちに直接インタビューした模様をおさめた映像が、
近いうちに、ホキ美術館の公式HPにアップされる予定ですので、どうぞお楽しみに。


さてさて、このように若手作家も頑張っていますが。
ホキ美術館とは関係の深いベテラン、中堅の作家の皆様も負けてはいません。
この秋からホキ美術館のコレクションに加わった作品の数々も併せて公開されていました。
それらの中には、写実絵画界No.1のエンターテイナー、
(または、写実絵画界一全力でバカをやる男) 石黒賢一郎さんの最新作も。

完全防備しなければならない


これまで、たびたびガスマスクを描いてきたという石黒さんにとって、
この新作の 《完全防備しなければならない》 は、ガスマスクシリーズの決定版とのこと。
ガスマスクだけでなく、ガイガーカウンターや防護服も描かれています。(←ちなみに、すべて自前!)
そんな最新作を説明されているときに、
「防護服の皺を描くのが面倒だった・・・」 としきりにが仰っていたのですが。
離れて作品を見ている分には、

“石黒さんレベルなら、防護服に寄った皺くらい、ひょひょいと描けるだろうに??”

と、何を仰っているのか、いまいちピンと来ませんでした。
ところが、近づいた時に、その意味を知ることに!

防護服


防護服の皺って、そっちのことかーい!!

この細かい皺を1本1本すべて描いたなんて、頭がどうかしちゃってます (笑)
いや、そもそも描こうと思った時点で、頭がどうかしちゃってますよ!
スゴすぎて、思わず笑ってしまいました。
星星




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