フランスで活躍した20世紀を代表するグラフィックデザイナー、カッサンドル。
その国内では約20年ぶりとなる大々的な回顧展、
“カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命” が、現在、埼玉県立近代美術館で開催されています。
(注:館内の写真撮影は、特別に許可を頂いております。)
もし、カッサンドルの名に聞き覚えがないという方でも、
沢木耕太郎さんの 『深夜特急』 の表紙にも使われているので、
深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)/新潮社
深夜特急〈5〉トルコ・ギリシャ・地中海 (新潮文庫)/新潮社
彼のポスター作品は、一度は目にしたことがあるはず。
もしくは、カッサンドルがデザインした・・・
YSL パリジェンヌ EDP SP 50ml/イヴサンローラン
イヴ・サン=ローランのロゴは、さすがに目にしたことがあるはずです。
さてさて、会場には、『深夜特急』 の表紙でお馴染みの代表作の数々を筆頭に、
出世作である 《オ・ビュシュロン》 のポスター (横4m!) や、
あまりに人気のためキャラクターがグッズ化された 《デュボ・デュボン・デュボネ》 まで、
カッサンドルを語るうえで欠くことのできないポスター作品が勢ぞろい!
しかも、保存状態は新品かと思えるくらいに良好です!
今回出展されているこれらのポスターはすべて、
ファッションブランド 「BA-TSU」 の創業者である故・松本瑠樹氏がコレクションしたもの。
実は、世界でも有数のカッサンドルコレクションとして知られている松本氏のコレクション。
その中には、なんと直筆の貴重なポスター原画の数々も。
カッサンドルのポスターの原画が、まさか日本にあったとは驚きです。
(展覧会には、原画ももちろん展示されています)
カッサンドルのポスターは、とにかくスタイリッシュ!
幾何学的であったり、シンプルであったり、ダイナミックな構図であったり。
およそ90年前の作品とは思えないほどに、どれもこれもがスタイリッシュです。
いちいちカッコいいのです。
唯一ダサいなぁと感じたのは、貴重な初期作のポスターくらいでしょうか。
死神みたいな表情を浮かべながら、死神が持っていそうな大きな鎌で、
怪しげなヤツが大量のパスタを刈り取っているというシュールなポスター。
一体どんな人間が、このポスターを見て、このパスタを買いたくなるというのか。
謎です。
ちなみに。
今回の展覧会は、3章で構成されています。
1章では初期の作品が、2章では時代の寵児となった1920年代の絶頂期の作品が紹介されています。
そして、ラストの3章では、これまであまり紹介されてこなかった、
1930年代以降のカッサンドルの作品にスポットライトが当てられていました。
バルテュスやシュルレアリスムの画家たちと出会ったというカッサンドル。
その影響をもろに受け、作風は完全にシュルレアリスム風に。
あ、これダメなやつだ。。。
あんなにカッコいいポスターを次々に生み出していたのに。
唯一無二のオリジナリティ溢れる作風だったのに。
明らかにマグリット風、明らかにデ・キリコ風、
明らかにエルンスト風、そして、明らかにダリ風。
シュルレアリスムの作家の後追い感がハンパありません。
ポスター作家としては超一流、でも、シュルレアリスムの作家として二流だったようです。。。
光と影で言ったら、カッサンドルの影の部分。
カッサンドル本人は、展覧会でスポットライトを当てて欲しくなかったかもしれません。
さて、結局、1930年代以降は、絶頂期ほどの活躍はなかったというカッサンドル。
それだけに3章では、なんとも切ない気分になりました。
ただ、逆に、才能の塊の完璧な人間ではなかったことがわかって、愛おしい気持ちもわきました。
また、自分も頑張ろうと、心強い気持ちにもなりました。
愛しさとせつなさと心強さと、が同時に味わえる展覧会です。
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カッサンドル・ポスター展 グラフィズムの革命
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