Quantcast
Channel: アートテラー・とに~の【ここにしかない美術室】
Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼

$
0
0




現在、世田谷美術館では、“花森安治の仕事―デザインする手、編集長の眼” が開催されています。

展覧会


こちらは、朝ドラ 『とと姉ちゃん』 で、
唐沢寿明が演じたカリスマ編集者・花山伊佐次のモデルとなった花森安治の足跡を辿る展覧会です。

花森
花森安治、東麻布の暮しの手帖研究室にて、1967年9月、写真提供:暮しの手帖社


展覧会のメインとなるのは、花森安治のライフワークである 『暮しの手帖』。(『とと姉ちゃん』 では、『あなたの暮し』)
その膨大な数の関連資料が、会場にびっしりと並べられていました。

美しい暮しの手帖
『美しい暮しの手帖』 1世紀1号(創刊号)、発行:衣裳研究所、1948年9月20日刊、暮しの手帖社蔵


ちなみに、編集長兼ジャーナリストでもあり、
装丁家、イラストレーターでもあったマルチな才能を持つ花森安治。
彼が編集長を務めた創刊号から153号 (2世紀53号) まで、
その表紙絵を全て手掛けていたそうで、展覧会ではそんな貴重な原画の数々も紹介されています。

原画
表紙原画、画:花森安治、『美しい暮しの手帖』(1世紀1号、1948年9月20日刊)に掲載、世田谷美術館蔵


これまで、『暮しの手帖』 という雑誌名から、
おそうざいの作り方とかアップリケの縫い方とか赤ちゃんの寝かしつけ方とか、
そういう主婦向けの情報満載のお上品な雑誌だとばかり思っていたのですが。
コンセントの性能をテストするために5000回抜き差ししてみたり、
自動トースターの性能をテストするために食パン43088枚を焼いてみたり、
広告を一切入れずに、ガチで検証した商品テストを記事にする・・・。
『暮しの手帖』は、実は相当にパンクな雑誌だったのですね。
今のネット番組に通ずるものがありました。
一番衝撃を受けたのは、火事をテストする記事です。
このために築15年の住宅を購入し、実際に火をつけて検証。
「まず石油ストーブを板の間に倒してみた」 のページは、
全盛期のビートたけしやテリー伊藤でも太刀打ちできないほどに、パンクな画でした (笑)

天ぷら
中吊り広告「暮しの手帖2世紀3号」、デザイン:花森安治、1969年11月1日刊行用、世田谷美術館蔵


↑この疑問も、絶妙なラインで攻めてますよね。
『さまぁ~ずの神ギ問』 に投稿したら、リンゴ9個揃いそうです。


・・・・・と、『暮しの手帖』 と天才プロデューサー花森安治は、大変興味深いのですが。
『とと姉ちゃん』 を通じ、いろいろ知ってしまっていたせいで、
残念ながら、今回の展覧会では、そこまでの驚きはありませんでした。
ただ、今回の展覧会は、『とと姉ちゃん』 の人気に乗っかったものではないそうで、
数年前から展覧会の準備を進めており、その最中に朝ドラ化されるのを知って驚いたとのこと。
たまたまタイミングで重なってしまっただけのようです。
もし昨年に展覧会が開催されていたなら、もっと発見の多い展覧会になっていたはず。
星


とは言え、展覧会では、『とと姉ちゃん』 ではあまり触れられなかった、
晩年の花森が繰り返し発信したメッセージ 「一銭五厘の旗」にスポットが当てられていました。

一銭五厘の旗
『一銭五厘の旗』、編著・装幀:花森安治、発行:暮しの手帖社、1971年10月10日刊、暮しの手帖社蔵


一銭五厘とは、戦時中のハガキの値段。
ハガキ1枚の令状で、戦争に召集された人々と、
食品添加物や公害問題に直面した当時の人々の暮らしを重ね合わせ、警鐘を鳴らしたのだとか。
ジャーナリズムとは何か、考えさせられるものがありました。



とりあえず、このブログも広告を一切取っていないので、
これからも一般の方々の目線に立って、いろんな記事を発信していこうと思います。
展覧会の率直な感想を述べたり、お茶漬け食べたり、国宝を求めて日本を飛び回ったり。




1位を目指して、ランキングに挑戦中!(現在7位ですアップ
下のボタンをポチッと押して頂けると嬉しいです!

Blogランキングへ  にほんブログ村 美術ブログへ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 5005

Trending Articles