世界で唯一のルオーの美術館
それが、パナソニック 汐留ミュージアム。
これまでにも、 “ルオーとグロテスク” や、 “ルオーと風景” など、
20世紀最大かつ最後の宗教画家ジョルジュ・ルオー (1871-1958) をテーマにした美術展を開催してきました。
そんなパナソニック 汐留ミュージアムで、現在開催されているのが…
“ジョルジュ・ルオー 名画の謎” という、これまたルオー推しの美術展。
正直なところ、これまでにも、常設展示を含め、
パナソニック 汐留ミュージアムでは何度もルオー作品を目にしているので、
“パナソニック 汐留ミュージアムのルオーは、お腹いっぱい(* ̄◇)=3 ”
と、ファーストインプレッションでは、全く食指が動かなかったのですが。
・≪裁判官≫はトレーシングペーパーに描かれていた!?
・≪古きヴェルサイユ≫の内部には、まだ乾いていない絵の具がある!
・ハサミで切断されていた≪キリストと子供≫!!
・≪聖書の風景≫の裏面は前衛絵画!?
・キャンバス地に描かれているように見える≪マドレーヌ≫、でも実は・・・。
名画にまつわるさまざまなミステリーとエピソードをご紹介します。
という、今回の美術展の概要を知ったのと、
公式HPで紹介されている会場風景を目にして、食指がグイグイと動き始めました。
「ルオーの謎に、迫らねば」
(脳内BGM)
会場にひとたび足を踏み入れると、
そこかしこに、謎の足跡が付けられていたり、キャプションが本の形になっていたり、
美術展会場と云うよりは、ちょっとしたアトラクションのていをなしていました。
出展されている作品は、新所蔵品の2点を除けば、
(おそらく) これまでに一度くらいは、こちらの美術館で目にしたことがある作品ばかり。
しかし、今回の “名画の謎を解く” という演出のおかげで、実に新鮮に楽しむことが出来ました!
この美術展は、本当に企画力の勝利。
美術品は、見せ方で、いかようにも面白くなる…というお手本のような美術展でした。
2つ星。
子どもも大人も楽しめる美術展と言えましょう。
さてさて、そんなわけで、今回の美術展には、感心しきり。
とにかく解説がわかりやすい。
例えば、 《裁判官》 という作品。
こちらは、キャンバスではなく、
トレーシングペーパーのような薄い紙に描かれている作品なのだとか。
そのヒントは、一体、この絵のどこに??
解説に従って、絵の右上を、よく見てみました。
すると、数字の 『2』 を反転したような文字が (指摘されないと、気づかないレベルです)
つまり、この絵の支持体がキャンバスでなく、薄い紙であることがわかります。
続いて、解説に従って、別の箇所に注目すると、
薄い紙ゆえに、皺が寄ってしまっているのが見て取れました。
本来の美術観賞とは、違う形なのかもしれませんが、これはこれで、面白い鑑賞体験でした。
(ルオーとしては、気づかれたくなかったに違いありませんw)
また、今回の解説を通じて、こんな発見もありました。
まずは、ルオーの風景画をまとめて、ご覧くださいませ。
《聖書の風景》
《冬 人物のいる風景》
そして、参考に出光美術館が所蔵する 《聖書の風景》
(今回の美術展には、出展されていません)
すべて違う絵に見えますが、ルオーの描く風景画には、ある共通点が!
どの絵にも、
『水平線・月・塔 (または塔のようなもの) ・人々』
が、必ず描かれているのです。
これは、ルオーが、絵画を一種の建築と考えていたそうで、
絵を構築する一定のルールに沿って、絵を描いていたことに由来するものなのだとか。
そのルールを知った上で観てみると・・・
室内を描いた 《古びた町外れにて(台所)》 という一枚にも、同じルールが貫かれているのが、わかります。
月に代わってフライパン (笑)
丁寧な解説以外にも、楽しませる演出がたくさん。
ルオーが数多く描いた顔のアップの絵にちなんで、福笑いコーナーがあったり。
(やってみると、意外と楽しかったですw)
こちらの 《マドレーヌ》 を含めた3点の作品は、
ある理由から、普段は、なかなか美術館でお目にかかれない絵の裏側も展示されています。
絵の裏側を見れる、貴重な機会でした。
そして、極めつけが、パナソニック 汐留ミュージアムならではの演出。
こちらの 《ブルターニュの風景》 の絵の脇には、謎のスイッチが。
それを動かすと、パナソニック 汐留ミュージアムで使われている最新LED照明から、
そこら辺の美術館 (?) で使われている普通の照明に切り替わるという仕組み。
照明一つで、
“えっ、こんなに作品のイメージが変わるの?!”
という驚きを、是非皆様も体験してみてくださいませ。
個人的な感想としては、
LED照明の場合はスッキリ、従来の照明の場合は重厚という印象を受けました。
好みは、人それぞれかなという気がします。
他にも、いろいろと発見がある美術展。
500円と、ワンコインで観られるのも嬉しい限り。
ただし、これから行かれる方は、水曜休館ということには要注意!
(今年から、水曜休館になったそうです)
自分は、それを知らずに、
先週の水曜に行ってしまったので、トボトボ歩いて帰るハメに・・・。
テンションが下がりきって、上の絵のような状態になりました (笑)
美術ブログのランキングが下がると、やっぱり、こんな状況になります (笑)
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ジョルジュ・ルオー 名画の謎
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